コメディ・ライト小説(新)
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- 狐に嫁入り
- 日時: 2018/01/29 16:41
- 名前: 一匹羊。 (ID: UJ4pjK4/)
「たすけて頂いた狐です。恩返しにきました」
「鶴かよ」
「ところで結婚しませんか?」
「不審者かよ」
ラブストーリーと呼ぶには塩対応過ぎて、コメディと呼ぶには不可思議過ぎる。
残念で微妙なファンタジーイケメンと超絶パリピで人生謳歌しまくっちゃってる(本人談)JKが恋を……出来るのか? そんなお話。
久しぶりの投稿になります。コメント歓迎ですのでよかったらどしどしください!
登場人物
高坂愛
高校2年17歳。塩対応に定評がある。自己評価が的確。成績は中の下といったところ。パリピ。流行りらしい黒髪ぱっつん。女の子大好き。
野崎舞花
高校2年16歳。骨太ぽっちゃりさん。細かいことは気にしない、愛の親友。
明石蒼馬
高校2年16歳。昔気質で頑固。どうやら好きな人がいるらしい。
桜木明日美
高校2年16歳。眉目秀麗成績優秀なリアリストだが、妙に戯けている。彼氏である修斗のことを心から信じ愛しているが恋っぽくはない。
白鳥修斗
高校2年17歳。眉目秀麗成績優秀だが天然。明日美と付き合っている。
第1章
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- Re: 狐に嫁入り ( No.26 )
- 日時: 2017/10/11 17:48
- 名前: 一匹羊。 (ID: J1W6A8bP)
>>いろはうた様
ご一読&素敵なご感想ありがとうございます!
題名から面白さが……!? 伝わっておりましたら幸せです!
ああ、不束な娘ですがよければどうぞお引き取りください……って話が進みませんがな! あんな塩娘にありがとうございます。
キャラ立ちは気にしているので意識出来ていると思うと嬉しいです。これからも見守ってやってください←
ありがとうございました!
- Re: 狐に嫁入り ( No.27 )
- 日時: 2017/11/18 12:48
- 名前: 一匹羊。 (ID: YohzdPX5)
12話
「高坂さん!」
こいつの声にここまで安堵したのは初めてだ。
「高坂さん!」
少し前までなら鬱陶しかったその声。帰れと冷たくあしらいたくなったその声。——それに、こんなにも救われた心地になる時が来るなんて!
白金が並々と揺れる長髪に、切れ長の黄金の瞳、線の細い高身長——カガリがそこにいた。
「カガリぃ」
と、私は繰り返す。涙が出そうなのを我慢しようとして、出来なかった。涙はボロボロ決壊して頰に川を作った。怖かった、不安だった、心細かった!
突然こんな世界に巻き込まれているが耐性なんてないのだ。何気ない日常をただ愛している。非日常なんてカガリだけで十分で、つまり、命の危機だとか誰かの命の責任を持つだなんて、どう考えたってお呼びじゃない。
カガリは闇の中から唐突に現れると、力強く速やかに修斗を私の腕から取り上げて、私と蛇女との間に体ごと入った。蛇女がギリギリと目を吊り上げる。
「貴様……! 人の昼餉を邪魔するか、下賤め!」
そう言われた瞬間、ふわりとカガリの背中から何かが逆立った、気がした。
「下賤はそちらです、下郎」
そう鋭く言い放ち、修斗を下に座らせると、ぶんと腕を振って駆け出した。
「馬鹿め! 隙だらけだわ!」
叫んだ蛇女の腰からずるりと這い出てきた大蛇が鎌首をもたげて、一斉に飛びかかる。その一匹一匹がカガリに牙を向いていて、私は青くなった。あんなの絶対避けきれない。ところが細腕を一本掲げたカガリは、そこに突っ込んでいく。無茶だ……!
瞬間、空間が5つに裂けた。
「ぎゃあっ」と悲鳴。飛びかかっていた大蛇がまるでただの肉塊を扱うように容易く、ちりぢりに千切れていく。カガリの爪跡が空間をも裂いているのだと気付いたときには惨状が広がっていた。カガリは2度3度と腕を振るう、その度細々に千切れた蛇が散らばり、鮮血が飛んだ。
そのまま走りよったカガリは、腰から上だけになった蛇女に腕を振り上げる。
「結界を解きなさい。さもなくば」
殺す、と意味だけが結界に響き渡る。
「貴様……貴様……神か……」
「如何にも。あなた程度どの様にも始末できます。さあ、答えを」
さらに爪が蛇女に迫る。蛇女はゼエゼエと息を整えていたが、やがて顔を上げ、そして笑った。
「嫌じゃ」
次の一瞬、その声を私は耳元で聞いた。真横に蛇女がいたのだ。その腰からは大蛇が元の様に生えていた。思わずひっと悲鳴があがる。蛇女は私を見てニンマリと笑うと、腰を抱き寄せた。ああ、そうだ、行かなくちゃ。彼女の元に。私はふらりと足を踏み出す。
その目の前で、鮮血が飛んだ。
「残念です」
そう呟いたカガリは確かに、神様だったと思う。強大な力で下界を治める、神様。気付けばカガリは腕を振り切っていて、その爪は血に染まっていた。
どうっと蛇女が倒れる。その顔は微笑んでいた。
「——汚れろ、土地神」
瞬きすると同時、世界は色を取り戻していた。私は学校のバルコニーにいて、視界の端で修斗が倒れるのを見た。
「修斗!」
「愛!」
「アイちゃん!」
蒼馬、舞花が呼ぶのを振り切って修斗に縋り付く。明日美も駆け寄ってきた。おろおろと立ち竦む。止血を、と取り乱す顔は真っ青で、明日美のそんな表情は初めて見るものだった。
「修斗、修斗っ」
肩から胸元にかけての制服が裂け、そこから大量に出血している。血の引く思いがした。
「すぐに病院に運びましょう」
言うカガリは場違いに穏やかで、泣きながら頷く傍ら、どこか恐ろしいような気持ちを感じていた。一振りの下に蛇女を制裁する姿、大怪我をした生徒を見て顔色一つ変えない姿は、暖かく人情的なカガリからは遠く離れていて。怖いと思ったのだ。だが目の前に横たわる友人の危篤に気を取られていて、それを深く考えることはなかった。
カガリが理事長の姿になって、猿に襲われたと証言したことで、修斗は速やかに病院に搬送された。午後の授業は中止になり、私たちは修斗のお見舞いに行くことにした。
病院に向かうバスの中。空気は柔らかく澄んでいて、乗客は私たちの他いなかった。
「悪かった!」
蒼馬が私に向かって頭を下げた。
「俺が余計なことを言ったからお前らを危険に巻き込んじまった。そうなんだろ、狐」
「結果的にはそうなりますが、気に病む必要はありませんよ。あれは僕の不注意です。止められる事故でした」
カガリは色素の薄い青年の姿になってバスに乗り込んでいる。本来カガリは姿を隠して様子を見てくることも可能なのだが、直接話がしたいということでバスに乗った。バス代葉っぱとかじゃないだろうな。しょんぼりと横髪を前に垂らす姿は、いつも通りのカガリに見える。
蒼馬がそれを聞いてぴくん、と耳を動かした。余談だがこの幼馴染、耳だけを意識して、もしかしたら無意識に、動かすことができる。益々ウサギだ。
「防げた?」
明日美も厳しい表情で言い募る。
「修斗はあんな怪我しなくて済んだって言うのかよ?」
カガリは益々、沈痛と言った風に表情を沈めた。
「はい……結界が現れたのは僕の結界の真ん中でした。弾こうとすれば弾けたはずです。なのに、弱っていた僕の神力は、奴を受け入れてしまった」
堪らず私は割り込んだ。
「そんな……そこまで自分のせいにしなくていいよ、カガリ! カガリは助けに来てくれたじゃん!」
そもそもカガリに私を守る義務なんてない。
「義務ならありますよ。あなたは僕の氏子です」
婚約者とはカガリは言わなかった。蒼馬は静かに告げる。
「こんな時の土地神だろ。氏子1人守れなくて何が神だ。……でも、陰陽道を学ぶものの端くれとして、お前が言霊に守られていることくらい気付くべきだった。本当に悪かった」
2人が自分を責めているのは私も辛い。そんなに責めないでと言いたい。でも、なにもかもなかったことにするには、修斗の受けた傷は深すぎて。私は話題を変えようと取り繕う。誰が悪いかではなくて何が悪いかへ。
「なんで、蒼馬に私が特異体質だって言われた瞬間あの……結界? に引き摺り込まれたの? 言霊って?」
すると、蒼馬とカガリは同時に顔を見合わせた。
「『知らない』ことがお前の引き寄せる妖怪にとってバリアになってたんだ」
「和魂狙いの妖怪にとって、高坂さんが何も知らない事実はさぞかしやりにくい盾となっていたことでしょう。ですが、こうなった今、高坂さんは全てを知る必要がある」
にぎたま……。さっきの蛇女からも出た単語だ。私の知らないそれである。
「うん、私知りたいよ。修斗みたいに巻き込まれる人を出さないために。毎日みんなと日常を送るために。最初から全てを。カガリはそれを知ってるんでしょう?」
カガリは黙って微笑んだ。
- Re: 狐に嫁入り ( No.28 )
- 日時: 2018/01/28 18:22
- 名前: 一匹羊。 (ID: UJ4pjK4/)
13話
「アイちゃん神様だったの?」
ついに神格化される時が私にも来た。
当事者である修斗も話を聞く権利を、明日美が主張したため、お話タイムは病室内に後回しされた。さて真っ白い病室。他の人もいる中で悪目立ちしているのはわかっているので、肩身が狭い。のは私と舞花だけで、他の面子は実に悠々として病室に入った。会釈して回るのは私の仕事である。お前ら『遠慮』の文字どこに忘れてきたの? 看護師さんに借りた椅子を五つ並べる、と、パジャマに身を包んだ修斗が薄く目を開き、「大所帯だな」と苦笑いした。
「修斗!」
「白鳥くん!」
私達は思わずベッドに手を置いて縋り付いた。どこか痛いところはないか、苦しくないか、それから、それから。命懸けで私を守ってくれてありがとう。死の淵から引き戻してくれてありがとう。——私のせいで傷を負わせてごめんなさい。
「はい怪我人に詰め寄らない」
冷静な声で私の襟を引いたのは、明日美である。一人腰掛けた彼女は、スーパーに寄って購入したりんごを取り出した。その皮を、明日美の鞄からすうっと出てきたナイフがスルスルと剥いていく。いや明日美、何でナイフなんて持ってるのあんた? 後林檎の皮剥き上手いね。女子力が高いというか生活力が高いというか、といったところだが、この才女に当てはまるのは前者だろう。
「ダーリン。傷の調子はどう?」
「今は麻酔が効いてるから痛くない。かなり深かったらしいぞ」
「そう。どうして入院を?」
「今日いっぱい化膿するかもしれないから様子見で」
「なるほどなるほど。めぐむんに何か言うことある?」
「えっあっ……ええ? 無事だったんだな、よかった。とか?」
一言一言、的確に。私達が質問責めにしたであろう内容を聞き出していき、とどめの一言は私のためだけのものだった。知らないうちに握りしめていた拳から力が抜ける。ああ、何というか、もう、……敵わない。私は明日美に抱き着いた。腕の中の少女がおっお盛んだなあなんて言う。
「明日美」
「なに」
「すき」
「知ってる」
「あっ修斗も、助けてくれて、最後呼び戻してくれてありがとう。無事生還しました」
「おう高坂、それくらい熱烈でもいいんだぞ」
修斗の股ぐらが平らだったらなあ……性格は割とストライクゾーンなのに。
えへん! おほんげふっ。
カガリのわざとらしい空咳が響いた。と言うより途中から本当に咳してないか? ここに来る前の一幕をようやく思い出した私は、渋々明日美から離れる。カガリの姿勢は一本の糸で吊られたようだ。そのまま人差し指を口元に当てる。口を開けない気がして、でも喉が渇いて、唇を湿らせようとした。出来なかった。
「白鳥くんの病院に向かうかたわら、僕らは話をしていました」
舞花と蒼馬の姿勢が驚くほどに美しい。元妖怪とはいえ神が姿勢を正したのだ、彼らも何か感じるものがあるのかもしれなかった。
「高坂さんが言霊に守られていたという話と、高坂さんが和魂を持つ者だという話。どちらも今までは知らなかった、いえ、知らない方が良かった。でも高坂さんはすでに秘密の一端を握ってしまった。ならばもう全て手の内に曝してしまった方がいい。他の方を巻き込まない為にも、高坂さんは知りたい。最初から全てを……正しいですか?」
ぞくぞくする。この目の前の獣から、逃げ出せないと感じる。私は戦々恐々頷いた。がくがくと壊れたような頷き方になったが、そんなの気にしていられなかった。いつの間にか体まで侭ならなくなっていた。
「すみません。でも、危険なので」
危険?
「僕が氏子たちの間の異変に気付いたのは、今から十五年ほど前のことでした。
ある地区を中心に癒しの力が高まっているのです。ある者は富に恵まれ、ある者は病から解き放たれました。それは明らかな異常です。本来人は病むも窮するも自然のままであるべきなのに、その渦は何も考えず幸を振りまいていたのです。僕はその地区を調べました。最初は、妖怪のいたずらかと思いましたよ。でも、この辺りの妖怪は僕が統括していますから、そんなことはありません。次に疑ったのは神の所業です。奇跡のレベルが群を抜いていたものですから。ところが、探しても探しても僕の他に神はいない。そうして見つけたのは人間の赤子でした。あどけなく笑う、生まれて三年も経たない子から濃密な神気が発せられていたんです。まあ、高坂さんのことなんですけどね」
「私⁉︎」
「アホか。今の流れでどうなりゃお前以外が出てくんだよ」
「アイちゃん神様だったの?」
「今からタイムスリップしてめぐむんに会える確率をどう思う、ダーリン」
「今からだとゼロ。未来の技術に期待するならゼロじゃない」
「あの、お話しないでくださいね。静かに聞きましょう。先生の言うこと聞いてくれると嬉しいです。ああ、教壇に立った経験もありますよ、もちろん。
高坂さんが神様だったわけではありません。高坂さんの片目が見えないのは知っていますよね? ……幼馴染以外の三人さん、愚痴は後で僕が聞きます。そう、見えないんです。何故って、右目に入ってるんですよ。例の、『和魂』がね。和魂とは、神の持つ霊魂の一側面です。それは人に幸を与えたり、奇跡を起こしたり、収穫を与えたりします。それから、神の優しく平和的な面を司っています。それがどうして体内に入ったりしたのか、わかりませんが。その頃、彼女は妖に食われそうになっていました。本来神から剥がれないものなのですが、滴り落ちたそれは妖を呼びます。なので僕は、彼女の右目を代償に、和魂を封じ込めたのです。彼女が妖に目をつけられないように。しかし、蒼馬さん曰く、僕の封印を逃れた者もいたようですね」
「このポンコツ。ハッ……俺の手で始末してやったぜと言いたいところだけどなあ。今の話で確信した。多分大方はこいつ自身が自分で片付けたんだよ」
「ええ、その通りです。高坂さんを狙った妖の一部は蒼馬さんがその力で始末しましたが、大部分は高坂さんの助けた獣達が退治したのでしょう。……道理で、よい加護に恵まれていると思いました。
……言霊とは、言葉の持つ力です。先ほど体感したのでは? 心象結界の中で」
「歩けると思えば歩ける。信じれば現れる……?」
「はい。心の中では暗示的に、口に出せばはっきりと、言葉が形を成します。『封印のこと』『特異体質のこと』どちらも高坂さんが知らないから、封印がより強固に働き、安全でいられたのですね。
さあ、全て、の半分です。どうすれば破られてしまった封印を元に戻せるか、考えなくてはいけません。人を巻き込まない前に、まず自分が無事でいなくてはね」
そして、カガリはいつの間にか汗に濡れていたひたいを拭った。その腕を一振りすると、白い絹の狩衣に覆われる。気付けば窓の向こうに小さい妖がうじゃうじゃしていた。
「荒療治ですが。ではまず、突然妖の結界に巻き込まれた時の身の振り方から覚えましょうか」
荒療治過ぎない?
そして世界が塗り替わる。空が赤く移り変わる。病室の窓が粉々の砕け散る寸前、、カガリがそっと私の耳にかがみこんで‘囁いた。
「あなたを守りたい、その一心なのです。あなたほど清く美しい魂を他に知らない」
それは……褒め言葉だよね? そんなに真正面から異性に褒められたのは初めてで、鼓動が速くなるのを感じた。思えばカガリは赤ん坊の頃から私を見守っててくれていたわけだし、もう少しちゃんとした扱いをしてもいいのかもしれない……。
「嬉しいことを考えてくれているのは後でじっくりお伺いしたいですが、来ますよ! 蒼馬さんは桜木さんと白鳥さんをお護りください、野崎さんはサポートをお願いします」
やっぱりこいつには塩対応でいいかもしれない。
- Re: 狐に嫁入り ( No.29 )
- 日時: 2018/01/26 20:30
- 名前: 大熊猫 (ID: 5YaOdPeQ)
お疲れ様です。更新心待ちにしておりました。愛とカガリの繋がりも見えてきて、ますます盛り上がる展開になりそう!ちゃんとラブコメ要素もあって、さすが先生です!!
- Re: 狐に嫁入り ( No.30 )
- 日時: 2018/01/26 20:54
- 名前: 一匹羊。 (ID: UJ4pjK4/)
>>大熊猫さん
心待ち……嬉しい言葉です! ありがとうございます!
笑ってほしいな〜〜と思いながら書いております〜〜