コメディ・ライト小説(新)

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狐に嫁入り
日時: 2018/01/29 16:41
名前: 一匹羊。 (ID: UJ4pjK4/)

「たすけて頂いた狐です。恩返しにきました」
「鶴かよ」
「ところで結婚しませんか?」
「不審者かよ」

ラブストーリーと呼ぶには塩対応過ぎて、コメディと呼ぶには不可思議過ぎる。

残念で微妙なファンタジーイケメンと超絶パリピで人生謳歌しまくっちゃってる(本人談)JKが恋を……出来るのか? そんなお話。
久しぶりの投稿になります。コメント歓迎ですのでよかったらどしどしください!

登場人物

高坂こうさかめぐむ
高校2年17歳。塩対応に定評がある。自己評価が的確。成績は中の下といったところ。パリピ。流行りらしい黒髪ぱっつん。女の子大好き。

野崎舞花
高校2年16歳。骨太ぽっちゃりさん。細かいことは気にしない、愛の親友。

明石蒼馬
高校2年16歳。昔気質で頑固。どうやら好きな人がいるらしい。

桜木明日美
高校2年16歳。眉目秀麗成績優秀なリアリストだが、妙に戯けている。彼氏である修斗のことを心から信じ愛しているが恋っぽくはない。

白鳥しらとり修斗
高校2年17歳。眉目秀麗成績優秀だが天然。明日美と付き合っている。

第1章
>>1 >>2 >>3 >>4 >>5 >>10 >>13 >>15 >>20 >>21 >>23 >>27 >>28 >>33

Re: 狐に嫁入り ( No.21 )
日時: 2017/09/25 20:41
名前: 一匹羊。 (ID: UruhQZnK)

10話

「神罰一丁」
メグムは激怒した。

「知ってる」
「わーってんだよんなこと」
「はい、知っておりますけど……」
「だろうなと思ってた」
「むしろワンチャン狙ってた」
一斉に否定され、舞花が「あれれぇ⁉︎」と悲鳴をあげる。
「な、なんでぇ、ひどいよぅみんな」
くしくしと毛繕いするアカルを撫でながら私は首を傾げた。だって、ねえ。
「ぶっちゃけ巫女って感じじゃない」
と、言うのが私の感想だ。あくまで舞花は舞花。「ふえぇ」とか言いながら時折すっ転んで、打ち付けた場所をあざとく摩ってるのが最高に可愛らしい私の親友である。不思議な力を使ってはいたけれど、だから巫女ですはいそうですかとはいかない。
「あのな、いいか? 巫女ってのは神に仕える女性のことだ。神楽やら祈祷を行う、神職の補助役だな。近代以前はその限りじゃねえが、お前が昨日やったことは術師の真似事なんだよ。そんな力、巫女の持ち物じゃねえ」
「和風ファンタジーなら戦闘系巫女さんもあり得るんだろうけどね」
だから成績トップ組、どこからそういうの仕入れてくるわけ?
舞花は観念したように息を吐いた。
「そうだよね、そうくんがいるんだもん、そういうの詳しいよね」
因みに昨日の出来事は昨夜全員に共有されている。舞花が自分を『巫女』と言ったことも、舞花の持っていた鏡が大蛇は弾き飛ばし、そこから出てきた弓矢が大蛇を貫いたことも。
「私ね、みこじゃなくてみこなんだぁ」
……?
「どちらの管轄かが問題ですね」
「ハン、そうだと思ったぜ」
「あーね、把握したよまいぴー」
「そういうことならあの台詞もな」
例のごとくきちんと理解出来てないのは私だけってか。何それ早口言葉の一部? みこじゃなくてみこ。同じではないか。
すると、舞花はいつも持ち歩いている単語帳(開いているところはあまり見ない)を開いて『巫女』と書き付けた。
「この巫女じゃなくて」
『巫女』を塗り潰し、隣に『神子』と書き記す。
「こっちの神子……ね? わかる?」
「全然分からないけど小首傾げてるの可愛いから許すよ。説明して」
そのまま読めば「神の子供」だが、多分そうではないのだろう。キリストかな。
「私は神様からのお告げ……ご神託を授かることを代々賜ってきたおうちに生まれたの」
神に声なんてあるの? と茶々を入れたいところだが、残念ながら昨日から神と何度も会話してしまっている身、信じるほかない。たった1日で随分とファンタジー耐性が高くなったなと思う。
舞花が胸元をまさぐると、昨日と同じ鏡が出現した。それを大事に両手で持って、だからね、と舞花は続ける。
「そういう子供は不思議なものに狙われやすいから、この鏡をもらったんだよ」
なるほど。これで舞花の謎は解けた、と頷いていると舞花は大真面目な顔で私の手を握ってきた。
「私はね、初めてのご神託でアイちゃんのことを知ったんだ。私、高校に入るまではずっと虐められてた。ほら、ちょっと私……太ってるでしょ? それにのろまだし、中々仲間に入れてもらえなくて。でもね」
「ちょっと待った」
何ぞ大事なことを止めているような気もするが関係ない。私は聞き捨てならないことを聞いた。ああ、聞いたぞ。
「カガリって戦闘できたよね?」
アカルが尻尾をぴんと立てて振り返る。その愛らしい口元から、やや戸惑った神の声。
「ええ、はい。前も言った通り僕は元々荒事専門の妖怪ですから……あの、高坂さん?」
「アカルってあんたの使いだよね、それを助けた私にはなんらかの恩返しがあってしかるべきだよね」
「ですから、結婚を」
「だまらっしゃい。舞花をいじめた人間を許さない。神罰一丁」
「神の力を私欲に使うな!」
蒼馬が何か言ったような気もするが聞こえなかったので私はカガリに天罰を迫る。さあさあ。
「でっでもね!」
当の舞花に横入りされてしまったので私はとりあえず口を噤んだ。だが忘れない。忘れぬぞこの恨み。末代まで祟って余りある。
「高校を選ぶときに駄目元で土地神様にお伺いしてみたら、この学校でアイちゃんが待ってるって仰って……」
舞花の目元で透明な膜がきらめいた。
「友達が出来なかったらどうしよう、また虐められたらどうしようって私……不安だった……でも、会えた……アイちゃんに会えたよ……!」
「舞花……!」
「まいぴー!」
私たちはぎゅっとハグしあった。なんだ、ナイスなことする神様だっているんじゃないか……!
「さっきから僕の扱いひどくないですか」
さっきからじゃなくてずっとだけど。
ふふっと笑った舞花は、目尻をすっと拭った。
「神様に言われてたんだあ。アイちゃんが妖怪に狙われている。守護しなさいって。あの時のことだったんだねえ」
なるほど。だからこそ舞花は狙いが私だと分かったってわけか。
ところが、蒼馬が立ち上がった。
「……迷ったけど、修斗に言われて踏ん切りがついた。愛、お前が昨日狙われたのは……なんだよ」
アカルが蒼馬に飛びついていた。彼はその温厚な性格に反して白銀の毛並みを逆立てている。
「教えてはいけない」
「なんだよ部外者。俺が守り続けてきたんだ、明かすのも俺の勝手だろ。——愛。狙われたのは、」

お前が特異体質の持ち主だからで、これまでもこれからもずっとそれは変わらないんだ

その言葉を理解した瞬間、——
「いけない、高坂さん!」
全てが暗転した。

Re: 狐に嫁入り ( No.22 )
日時: 2017/09/30 22:33
名前: 大熊猫 (ID: A68kpmlz)

ラブコメからいきなり急展開!しばらく気になり続けております。はあ、続きが待ち遠しい...

Re: 狐に嫁入り ( No.23 )
日時: 2017/10/09 15:29
名前: 一匹羊。 (ID: UJ4pjK4/)

11話

「真っ先に呼ぶの蒼馬なんだな」
真っ先に気にすることがそれか?

それは泥水に沈むような闇だった。それでいて簡潔的に泥は私を飲み込んだ。頭まで暗闇に浸かって、足元をかけばかくほど沈んでいく。一気に脳味噌まで暗転した気がした。ここはどこ? 学校は? 皆は……? 足が動かない、そもそも感覚がない。恐怖に私は叫ぶ。
「蒼馬ーーーーーーーっ!」

「真っ先に呼ぶの蒼馬なんだな」
落ち着いた低音がどこからか、どこからも聞こえて私は一層混乱する。この声は。
「修斗……?」
呼んだ瞬間、目の前に現れたクラスメイトに私はぎょっとする。どこから湧いて出た。
「ああ、俺だ……とりあえず落ちちゅけよ高坂」
「修斗にも落ち着いてほしい」
人並みに泡を食っているのを必死に取り繕う姿に、何だかこちらが冷静になってくる。修斗って秀才ではあるけれど天才ではないんだよね。どこか凡人から離れられない。
現状、地に足は着いていない。かといって落下している感覚もない。浮遊するような心持ち。全くもって楽しくはないが。
「ねえ修斗、あんた夢の一部とかじゃないよね?」
「残念ながら現実だ。……と思うぞ。それよりここから離れよう、嫌な予感がするんだ」
「嫌な予感?」
「さっき、蒼馬はお前が特異体質だから妖怪に狙われるって言った。御狐サンはそれを止めようとしてた。止めるには理由があるはずだ。俺の予想が正しければ……あの大蛇の時と同じように、今どこかに取り込まれてるんだ。そして狙われてる」
「またあの大蛇みたいなやつが……!」
あの圧倒感を思い出した。死を鮮明に思ったことも。舞花はいない。蒼馬もいない。カガリだっていない……!
私の不安が伝わったのだろう、修斗は軽く頷いた。
「ああ、だから逃げよう」
「逃げるってどうやって」
「走るんだ!」
そう力強く宣言した瞬間、真っ黒いだけの足元にほの明るく、水色の板が点々と現れた。同時に身体が落ちる感覚。慌てて足を動かそう、とすると感覚のなかった足がすっと動き、しっかりと板を踏みしめた。修斗の手が私の手を攫っていく、ぐんと引っ張られる。
「ねえっ」危うい足元を確認し、私は叫ぶ。「今のどういうこと⁉︎ まさか、あんたまで、ファンタジー属性だって、言うんじゃ、ないでしょうね!」
「そんなのは後にしてくれ! 出口、出口はどこだ……!」
何処までも見渡せる中、闇には変わらず板が点在するだけだ。ぞくん、と頬を駆け抜けた悪寒。
「ないよ、あるわけない! 出口なんて!」
すると修斗は立ち止まって私の顔を強く睨んだ。その目には諦めが浮かんでいるように見える。
「高坂……黙っててくれよ……!」
瞬間、暗闇を染めるように響いたのは女の高笑い。誰かいる、と思った瞬間前方に女性が陣取って……足が女性じゃない! 大蛇の尾が束になっている……! 妖怪だ、見つかってしまった……! 蛇女は私に妖艶に笑いかける。嬉しくないです……!
「やっと出会えたわね。17年待ったわよ、和魂の小娘。今食べてあげるから覚悟なさい。それと、心象結界の弱点を見破ったのは見事だったわ、ボウヤ。これは心象、思えば実現する……でも説明不足だったみたいね?」
和魂、17年、と考えるより先に修斗に向かって話しかけられた言葉が胸を突いた。確かに、修斗がいる、と思えば修斗が現れたし、足が動くだろうと動かせば足が動いた。じゃあ……頭の血がざっと引く。修斗が出口を見付けられなかったのは私のせいだ。
「高坂!」
思考回路の迷宮に迷い込みかけた時、修斗が私の手を強く握り直した。そうだ。悩むのは今じゃない。今はただ——、
「逃がさないよ!」
こいつから、逃げ切ることを!
「高坂! お前、蒼馬は必ず来るって、信じるか⁉︎」
「信じる! 今までだって、いつだって、あいつは来てくれた。今来ないはず、ないんだから!」
「よく言った! 時間を稼げばあいつが来る! 俺も信じる! それまで走るんだ!」
修斗……イマイチ輝けないやつだなんて失礼なこと思っててごめん、って。あとで謝ろう……。
「、危ない!」
ぼうっとしていた刹那に引っ張られて倒れ込めば、先程踏んだ板に蛇の尾が叩きつけられ、粉々になっていた。顔を青くする暇もなく、修斗は私を抱いて転がる。背後の板が次々に割れる気配。そのまま立ち上がろう、と、支えられる背中、暗闇に起き上がる、お礼を言おう、顔を上げた、修斗が勢いよく離れていく……。修斗に尾が当たったのだ! 血が舞う。奇跡的に板の上に落下した修斗の肩の下が真っ赤に染まっていく。
「修斗ッ!」
「まあ逃げ足の速いことねぇ……お腹が空いちゃうじゃない。ボウヤまで食ってしまおうかしら?」
ずるずると蛇女が近付いてくる。考える前に立ちはだかった。私の手を引いた修斗。明日美と肩を並べた修斗。——修斗には、触れさせない。
「あらぁ……? 自分から食べられてくれるのかしら」
思えば、修斗には私を庇う理由はないのだった。あんなにも優しくしてくれるのに、多分理由はないのだろう。そんな人を、こんなところで見捨てるわけにはいかない。そう、私1人で気が済むのなら、持っていけばいい——。
「何してる高坂!」
蛇女に向かって足を踏み出しかけた刹那、喘鳴混じりの悲鳴が届く。振り返れば、血塗れの姿で、修斗は咳き込みながら必死で叫んでいた。
「馬鹿やめろ! ここでお前が食われてみろ! 俺は明日美にも! 蒼馬にも! 一生顔向けできねえよ! 勝手に死に急ぐな!」
ぱちん、と膜が割れるように、身体が傾いで、私は足を出して支えた。
——私、今、死のうとしてた——?
はっとして蛇女を見れば、悔しげに顔をしかめている。私は蛇女を思いっきり睨みつけて、修斗の元に向かった。出血がひどい。早く手当てをしないと大変なことになるかもしれない、と担ぎ上げる。
「高坂——、何して——?」
「決まってるでしょ、逃げるんだよ」
そういうと同時板を蹴った。これでも中学3年間は水泳部だったんだからね! 重い! やっぱ重いよ修斗!
「遅い」
修斗を弾き飛ばした尾が飛んでくるけど、そんなのこっちだって承知の上だ。間一髪で躱しまくる。言い忘れたけど小学6年間はドッジだって得意だった……!
蛇女の術みたいなのだって私が気を強く持てばかかることはない。このまま逃げ切れる!
「言い忘れておったがな、小娘。この心象結界、出口はあるのよ」
え? 私は耳を疑った。同時に攻撃が止まる。何だってこっちに有利になるような情報を? それなら出口は、ある、と考えて探した方がよっぽど速い。
「ただし……異界への出口がな」
異界。それは、もしかして、戻れないやつ、なのだろうか。
絶望に染まった私の顔を、面白そうに蛇女は見下した。
「この結界、成立した以上入り込むことは出来ぬ。もう貴様はどこへも逃げれぬ」
頭が真っ白になった。

そんなのは嫌だ。私は修斗を無事に返さなくちゃならない。舞花を抱き締めたい。明日美に勉強教えてもらうって約束した。蒼馬と今日も下校するんだ。
なのにこんなのってない。皆と2度と会えないなんて、あの日常が戻って来ないなんて、そんなのひどい。ああ、誰か、誰でもいい、私たちを助けて。全力で祈る。祈る、そうだ! 神様!

「カガリ——!」

Re: 狐に嫁入り ( No.24 )
日時: 2017/10/09 15:31
名前: 一匹羊。 (ID: UJ4pjK4/)

>>大熊猫さん

ありがとうございます! ラブコメファンタジーのファンタジー部分が強くなって参ります!

Re: 狐に嫁入り ( No.25 )
日時: 2017/10/11 09:26
名前: いろはうた (ID: osGavr9A)

こんにちは!!


もうまじで題名から面白さがビンビン伝わってきて、
思わずクリックしてしまいました。
愛ちゃん、ぜひお嫁に来て下s……
いや、うちに嫁に来てどうするんだ。
お狐様の所に嫁入りしなきゃ……
お話が進まないじゃないか……
断腸の思いで諦めます……


キャラの一人一人が個性的で、
キャラ被りもなく、生き生きと文章の中で
活動しているのが何とも魅力的です。
愛ちゃんの光り輝くツッコミがさく裂していて
最高に素敵だと思います(真顔)


更新頑張ってください!!


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