コメディ・ライト小説(新)
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- カオスヘッドな僕ら【連載終了】
- 日時: 2022/10/17 18:15
- 名前: 夢兎 (ID: gzz.lbul)
- 参照: www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode=view&no=18233
「なにがどうしてこうなった…………」
****
こんにちは。夢兎、またの名前をむうと言います。
簡単なプロフィール! 高2女子、以上!
ちょっと個性強めの妖怪幽霊たちが繰り広げる、怪異コメディです。
怖い要素は(多分)ないので、楽しく見て下さると嬉しいです。
おかしな仲間に翻弄されながらも成長する(かもしれない)主人公。
そして彼らとの出会いは一体何を生むのでしょうか?
カオスヘッドなキャラたちが繰り広げる怪異譚、始まります(いつ終わるかは分かんない!←)
【注意】
●私情により未完の作品です。(ここ大事)
●完結小説の一覧に登録しましたが、未完です(二回目)
●荒らしや中傷行為はご遠慮くださいませ。
【キャラクター】>>11
出てこないキャラもいますがお楽しみに! ちょくちょく追加予定。
【単語紹介】>>49
本編の中で出て来た単語や設定を、詳しくまとめたページです。
コメディなのにやたらと用語が多い物語ですスミマセン。
【Special Thanks】
・美奈様>>15 りゅ様>>46 閲覧をしてくれた皆様。
又とあるサイトでアイディア参考をさせていただいた皆様。
【感謝】
2021年夏☆小説大会にてコメディ・ライト版 銅賞入賞。
感謝ぁぁぁぁぁぁ(涙)>>40にコメントを記載しました。
【その他作品】
ろくきせシリーズ↓
〈鬼滅の刃 会話文短編集〉
〈鬼滅・花子くん 短編集続編 六人の軌跡〉
〈ろくきせ恋愛手帖〉
********************
【目次一覧】
一気読み>>01-
↑ここからすべてお読みいただけます。
★キャラクター別情報File★
百木周&百木朔>>22 クコ>>25 紗明>>31 栗坂八雲>>40
□第1章 リスタートする人生>>01-12
第1話「僕が死んだ理由」>>01
第2話「クコと言う名の少女」>>02>>03
第3話「やらかしてしまったので」>>04
第4話「栗坂八雲」>>05>>06>>07>>08
第5話「黒札と白札」>>09>>10
第6話「そして物語は始まる」>>12
□第2章 札狩life始めました!>>13-50
第7話「デスメタルでアタック!」>>13>>14
第8話「僕たちの非日常」>>17-20>>23-25
第9話「カオスヘッドな僕ら」>>26-28
第10話「僕たちの作戦会議?」>>29>>30>>33
第11話「刺客」>>34-39 >>41
第12話「秘められた力」>>42-48
第13話「室長室にて」>>50
□第3章 from天界管理局!
第14話「ネートル室長を探せ」>>51>>52>>54>>55
第15話「お説教、みたいな」>>56>>57
………………………………
※あとがき的な>>58
☆記録ログ☆
2020年7月下旬 スレ立て、執筆開始
2020年9月上旬 2カ月間の休載後、再び執筆開始。
2020年9.22 イメージ曲を選曲。
2020年9.23 キャラ紹介作成。
2020年9.24 改稿作業完了。
2021年2.08 高校合格。再び執筆開始。
2021年9.04 我、帰還也。(三カ月間来なかったってマジか)
2022年3.02 我、またまた帰還也(お前どんだけ失踪するんだ)
2022年10.2 連載再開。
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.53 )
- 日時: 2021/11/09 21:50
- 名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: Xkfg0An/)
こんばんは。
日曜スクーリングの帰り、電車発車残り1分で『うぉぉおおおお』と奇声を上げて勾配の急な坂道を走っている女子がいたら、それは私です。無事足が死にました。
この小説をカウンセリングの先生に見せたところ、『コメディー……だよね?』と言われ「スミマセン詰め込み過ぎました」と真顔で答えた前科があります。
※小説投稿サイトMAGNET MACROLINKにも掲載はじめました!
********
〈ルキアside〉
今日は、僕の所属する保安課の七つの班の隊長と副隊長が集まる話し合いがあり、さっき会議が終わったところだった。
僕もあくまでも子供。長ったらしい説明や難しい言葉には、ついついテンションが下がってしまう。仕事なんだし立場上文句を言うわけにはいかない。
「はぁぁぁぁ……やっと終わったぁぁ。だいたい、前の会議でも過半数が賛成してた案だったし、その話はもう終わりでいいだろうが……僕だってここに勤めてまだ半年も経っていないんだから、意見とか求めるなよ。まぁなんとかやったからいいけど……」
なんて愚痴を、自分だけに聞こえる音量で呟きながらエレベーターの場所へと足を動かす。
この後は一階のロビーの見回りに、書類の作成に、あと……。弁当を食べる時間がなかなか取れないのにイライラする。休憩は交代制で、僕が休めるのは後三十分後だ。
「………ふぅ。いけないいけない。仕事はしっかりこなさいと!」
エレベーターの前で、扉が開くのを待つ間、両手で頬を叩き気合を入れなおす。
自分は副隊長なんだ。こんなことでガヤガヤ叫ぶなんて下品だ。冷静になろう。
ウィィィィィンと、扉がゆっくりと開かれる。さて、と顔を上げた僕は、直後すぐに凍り付いた。
こともあろうか、エレベーターの中だというのに一人の天使が、他のお客に杖を振りかざそうとしているところを見てしまったのだ。しかもその天使は、腕に『保安課』と書かれた腕章をはめている。つまり、僕の同僚ということになる。
上司なのか、部下なのか分からないけど、一般人を攻撃するのは御法度に値する。
と、天使が僕に気づき、慌てて杖を背中に隠した。そのままそろりそろりとこちらを窺う。
振り返った彼の顔が明らかになり、僕はそいつが後輩であるセシルだということに気が付いた。
彼の方が二歳ほど歳は上だけれど、位はこちらの方が高かった。けど、セシルはどんなときも僕にずっとタメで接していた。
破天荒でマイペースなトラブルメーカーで、今まで何度も問題を起こしたことがあった。その度になぜか後始末は僕が担当した。
ルキアは彼と一番仲がいいと、職場では思われてるんだろう。現実はその逆だった。なんでこんなやつのために、僕の労働時間が削られるんだ。なんでなんだ。
「………ルキア4番隊副隊長っっ」
「……セシル? 一体何をしていたんですか?」
これ以上問題を起こされちゃ、お弁当を食べるどころか他の仕事をする余裕もなくなってしまう。僕はつかつかとエレベーターの中に入ると、壁際で震えているセシルの横の壁にドン! と右手をついた。
「……なんや、あんたら恋でもするんか……もぎゅ!」
「クコちゃん、シーッ!」
お客様がなにか言われたようだったが、横にいたお連れの男の子が彼女の口を塞いだので耳にすることは出来なかった。いや、今はそれどころじゃない。
「ゆ、許してルキア………! オレは決して悪いことしてな」
「その背中の物はなんですか? まさか、アレが『良いこと』だとお考えですか。ふふ」
あわあわと必死に弁解をする後輩に、『そうか、それならいい』と言えるほど僕は優しくない。フッと嘲笑してやると、泣き顔だったセシルはムッと下唇を突き出し、徐々に怒りをあらわにする。
「オレは、そこの黒札の資格者の札をとろうとしたんだよ。そう命令したのはルキアだ」
「確かに僕は君にとれといったよ、セシル。でも。奪えとは一言も口にしてないよな?」
百木朔は、黒札の資格者でもあるけれど今この場ではお客様なんだよ。それなのに君は、利用者に杖を向けたんだよ。
保安課は、天界を取り締まるもの。そして、取り締まるべき対象は、決して見誤ってはならない。先輩に何度も耳だこになるまで教われてきたこと。後輩である君にも何度も忠告した。
君は理解ったと言ったよね?
残念、何一つわかってないじゃないか。
「……申し訳ありませんお客様。うちのものがご迷惑をおかけしました。代わりにお詫び致します」
「あぁ……うん……」
百木朔は、戸惑いながらも頷く。そして、何か言いたそうに口を開きかけ、直ぐに閉じてしまう。
「どうかされました?」
「あぁ、あの、えっとね」
伝えたいことはあるんだけれど、上手く伝えれる自信がないのか、お客様はわたわたと右手を振る。何と話そうか、頭の中で何回も何回も吟味して、
「君とセシルは、仲良くないの?」
と小さな声で僕に聞いた。
大声で話さないのは、ひょっとしてセシルが傷つくと考えたのだろうか。だとしたらこの子は、とても繊細だな。
「仲良くないですよ」
にっこりと僕がほほ笑むと、お客様は困ったように首を傾げる。まだなにか聞きたいことがあるのだろうかと真顔になると、目の前の男の子はなぜか目いっぱいに涙をためていた。
「えっ」
「ひどいよ!!」
僕が驚いて一歩後ろに下がるのと、百木朔が一歩前へ体を乗り出したのがほぼ同時だった。距離を詰められ、目を白黒させると、更なる一言が返ってきた。
「なんで直接相手に言っちゃうのさ! 君の仲間なんでしょっ!? そんなケ―サツ、誰も信用してくれなくなっちゃうよ……」
………君に保安課の何が分かるんだと、僕は心の中で舌打ちをする。人間に何が分かるんだ。僕がどんな気持ちで日々この仕事をしているのか、お前は分かっているのか?
だいたい、こんなところで説教する方がおかしい。そんな大声で怒鳴ったら他の部屋に聞こえちゃうじゃないか。そうなったら目的地へ着く前につまみ出されるかもしれない。
ただ僕は、後輩に注意をしただけなのに。
「いいんだ。オレが悪かったよ」
床に座り込んでいたセシルが立ち上がって、服に着いた埃を手で払う。その顔は若干疲れているように見える。このあともたんまり仕事があるのに、大丈夫だろうか。
「ルキアはめっちゃ真面目なんだ。どれくらい真面目かって言うと、トイレの紙をわざわざ三角に折るほど。毎回毎回やってんだよ、凄くない?」
「トイレは利用客が多いです。清潔感を維持するのは大切なことですよ」
そんなことを真面目と言われても困る。僕は決して真面目じゃない。めんどくさいことは嫌いだし、オフの日はグーダラしてたい。上司に注意されたことだってもちろんあるし、気分が落ち込むこともある。
みんなはよくエリートだとか天才だとか、そんな言葉で僕を持ち上げてくれるけど……。実際は全然、そんなんじゃないんだ。
「それにさそれにさっ。ルキアって本当はすっごく面白いんだよっ」
「………え?」
お客様たちと僕が聞き返した直度、ウィィィィィンとエレベーターが12階でとまる。12階には室長室があるので、セシルを先頭に百木朔一行は扉の外へ。
「オレ、ごちゃごちゃ考えるのキライだからさっ。凄く助かってるんだよ、ルキア。ありがとうね」
すれ違いざま、セシルが僕にだけ聞こえる声の大きさで呟く。その言葉を吞み込むまで、数分かかった。意図をようやく理解し、視線を彼に移す。
セシルは無邪気ににっこりと笑った.
- Re: カオスヘッドな僕ら ( No.55 )
- 日時: 2022/10/02 23:20
- 名前: むう (ID: cClyX.aV)
お久しぶりです。なんとなんと、約3カ月ぶりの更新になりますね。
書いた本人が、お話をほぼ忘れてしまいました……PC直ったのに()
ちょくちょく頑張りますのでよろしくお願いいたします。
あとイラストも描いているのでそれも頑張ります。
--------------------
〈朔side〉
さっきのは一体なんだったんだろう……?と俺は首を傾げる。
俺たちがいる場所は天界の管理局という、いわゆる天国の市役所のような場所だ。上司から呼び出しを食らってしまったクコちゃんたちにつき合って、俺-百木朔も観光がてらついてきてしまった。
俺たちを12階の室長室まで案内してくれるのは、天界の警察である保安課の2番隊員である、セシルという天使の男の子だった。
歳は同じ位だけれど、見た目の割に幼い言動をよくとる。いつもニコニコしていて、誰に対しても愛想がいい。
だがしかし怒るときは、その笑みがフッと失われていた。
彼の先輩である、保安課4番隊副隊長のルキアに自分の失態を見られてしまい、エレベーター内は一時期一触即発の修羅場になろうとしていた。
だってだって、あのお二人どう考えてもビジネス不仲なんですもの………っ。
ルキアはルキアで真顔で「仲良くない」とバッサリ切り捨てるし、セシルはセシルで怒られている時に彼と視線を合わせなかった。
絶対仲良くないじゃん……。
なのになぜ、セシルはルキアにありがとうと言ったんだろう………。
苦手な先輩の怒りを少しでも鎮めるためだろうか。それとも意外と空気が読める子なのかな。
あーあ。ここにチカか八雲ちゃんがいれば、すぐに答えを教えてくれるのに。
釈然としないのはみんなも同じだった。クコちゃんは虚空を眺めて考え事をしているし、紗明も珍しく腕組をしている。ユルミスは、さっきから何も話さない。気まずそうな顔で後ろ側に立っている。
しいんとした空気にしびれを切らしたのか、セシルが苦笑いを浮かべながらこちらを振り返った。
「もうみんな、そんな顔しないでよ」
「………あんたが悪いんやろ。こっちは巻き込まれてんのや」
低いトーンでクコちゃんが告げる。さっきの騒動で、彼女の取り柄である明るさはごっそり持って行かれてしまったらしい。下からセシルを睨みつけるその視線も、いつもに増して鋭かった。
「こっちは給料も減ったし、後輩は解雇なったし、ついでに上司に今から怒られんのやぞ。それに仲間がついてきてくれるっちゅうことだけでも気分悪いのに、それにあんたたちのやり取りが上乗せされたら、うちもう悪魔に堕ちるかもしれん」
「……お前が悪に堕ちる想像が出来ませんね」
紗明が呆れて言う。確かに俺の中でも、クコちゃんは絶対に闇落ちしないという確信があった。あんなに自由奔放に動いて、チカのお世話もちゃんとやってくれて、毎日笑いを届けてくれるこの天使が悪魔になるなんて信じない。
「あぁあぁパイセン闇落ちしないでくださいぃぃぃぃ」
「悪魔のあんたに泣かれても説得力ないんよ、ユルミス」
ユルミスがクコちゃんの身体に腕を回す。
その力が強かったので、クコちゃんは「うわっ」とバランスを崩しかけた。
「だってえ、近代の悪魔は人を呪ったりしない善良な悪魔ですからぁ、昔とは違いますしいいい………でもパイセンが古代の悪魔になるならそれもそれでカッコいいなぁ」
おぉぉぉおいユルミス!? 君止める側じゃなかったの!?
聞き捨てならない言葉に、俺は目を丸くする。このうえなく綺麗な手のひら返し。間違いなく殿堂入りだと思う。
「悪かったよ。俺とルキアはいつもこういう感じで、そりが合わないんだ」
エレベーターのボタンが埋め込まれた壁に寄りかかっているセシルが、肩をすくめる。その表情には、少しばかりの寂しさが混ざっていた。
泣きそうなのをこちらに悟られないように、セシルはマントの袖口で顔を覆う。
「俺が保安課に入ってからずっとこんな感じ。いっつもあの調子だよ。あいつは真面目だからね。ズボラな俺とは違うのは、分かってはいたんだけど」
会議がある度にお互い眉をひそめ、廊下で会ったら顔を背け、腹を割って話そうとしたら意見は食い違う。どんな手を使っても全く関係は改善しなかったらしい。
セシルはルキアと仲良くなりたいという意思がある一方で、ルキアは彼と一切かかわりたくはないという考えのようだ。聞いていて胸が締め付けられる。
「………ルキアは、強がってるだけだよ。本当は君と話したいと思ってるはずだよ」
落ち込んでいる彼にどんな言葉をかけていいか分からなかった。でも、勝手に口が動いていた。
俺はチカみたいに考えてから喋ることが苦手で、行動が先の人間だから。
二人は、心の底からお互いを嫌っているというわけではない気がしたんだ。
決して、大嫌いと決めつけてはいないという謎の確信があった。嫌いだったら「ありがとう」とか、「悪かった」とか、そういうセリフは出てこないはずなんだ。
「そうだと、いいね。………ありがとう、慰めてくれて」
セシルはまたごしごしと顔を袖で拭う。そして、まだ右手に持ったままだった杖をマントの中に隠した。四次元ポケットか何かだろうか。どんな構造なんだろう……聞いていいのか。
ウィィィィィンと、エレベーターの扉が再度開かれる。扉の外の廊下には、皇室でよくあるような、朱色の絨毯が敷かれていた。さっきまでの階にはなかったのに。
「ついたよ。室長室」
- Re: カオスヘッドな僕ら【復刻】 ( No.56 )
- 日時: 2022/10/02 21:33
- 名前: むう (ID: cClyX.aV)
久しぶりです。むうです。
なんと……カオスヘッドな僕ら、復刻します!!
理由としましては、時間の空きが出来たこと、もう一度カキコでやってみたいと思ったことです。
なお、作者は学生ですので、不定期更新はお許しください!
ではでは、復活後も楽しくカオスに狂って行きましょう!
…………………………
〈クコsaid〉
セシルが指差したその場所はの先には、重たい木の扉があった。
横の小椅子には花瓶が置かれてあり、名前は分からんけど、大層立派な水色の花束がいけられている。
うちが前にいたときは、こんなものなかったはずやけど……あの人模様替えでもしたんかいな?
そう、なにを隠そうと、この扉は天界管理局の代表・ネートル室長の執務室だ。
彼は全身が骨のちょっと、いやかなり変わった風貌をしとるけど、その実績は確か。
数ある課を取り締まるお偉いさんでもあり、うちことクコ、そして沙明、ユルミスの上官でもある。
まあ、付き合いが長いので、上司と言うよりかはおじいちゃんの方が近い。
おじいちゃん(的な人)に会いに、人間界から戻ってきた。うちらの状況はこの一言で充分だ。
ただ……室長に呼び出された理由っちゅーのが結構痛い。
(職務怠慢、仕事放棄、既読無視、挙げ句の果てには給料ダウンか)
全て、うちが自分でしてしまったことや。怒られるんはしゃあないと思う。
逆に簡単に許されたりしたら、このままずるずるとサボって生きていくことになるだろう。
でも。
でもや。
…………………………知り合いの前で叱られるんは、ほんまに勘弁してほしい。
ズタズタに引き裂かれるプライド、しおしおになった顔面。向けられる同情の眼差し。
想像しただけで、胸の中に黒いものが溜まっていく。
「パイセン、どうしたんですか? 入るときは3回ノックですよ」
ドアノブに手を伸ばした姿勢のまま固まる天使に、後ろにいた後輩の悪魔・ユルミスが首を傾げた。
しばらくぶりだから、扉の開け方を忘れたと疑っている。
腑に落ちない表情で、彼女は横に並ぶと、さも当然かのように扉を手の甲で3回コンコンコンと叩いた。
「ば、馬鹿!! 何しよるん!??」
「え? なにって、入らないんですか? 部屋」
入らなきゃいけんのは知っとるけど、怖いもんは怖いやん!??
大声でこう叫べたら、どれだけ楽になるんだろう。
流石に年下の前で弱音を吐くわけにもいかん。変なところで、ムキになる自分がおった。
「ははあ、さては怖いんだね。お説教が。
気にすることはないよ。誰だって叱られるのは怖いさ」
セシルがのんびりと言う。
さっきまでのやり取りで少しは気分が落ち着いたのか、仕事モードから素の顔が見えつつある。
マントの懐から出した右腕をひらひらさせ、彼はニヤリと不敵に笑った。
「……試しにここから逃げてみる?
この俺に捕まらないと言い切れるなら、見逃してあげてもいいよ」
「無理無理無理無理!!!」
「清々しいほど潔いね君」
出来るわけがない。相手は保安課の、副隊長様だ。
入隊条件の一つであるテストの合格比率は、エリート団体である守人のおよそ30倍。
人間で言うところの、藝大みたいなもんや。
高い知能、高い身体能力、高い統率力。
今、よういどんでダッシュしたとしても、数秒後彼の手はうちの肩の上にある。
あと、セシルは武器の杖。エレベーターで感じたあの殺気は尋常じゃなかった。
フルフルと首を振ると、ちえっとセシルが口を尖らす。
小声だったけど、確かに「鬼ごっこしたかったなあ」と聞こえた気がするんやけど、空耳??
この子に捕まえられるくらいなら、大人しく怒られた方がマシだ。もう諦めよう。
その時。
ずっと黙って成り行きを窺っていた朔くんが、まっすぐにこちらを見つめ、恐る恐る口を開いた。
一言一言、噛み締めるように、逃さないように。
丁寧に、丁寧に床へ落とすようにして。
「く、クコちゃん。
クコちゃんはしっかりやっているって、俺知ってるから。だからきっと何とかなるよ。絶対に」
恥ずかしかったんだろう。
えへへ、と力なく口の端をあげる朔くんは、そのまま、プイッと顔を逸らしてしまった。
「‥‥…ごめん、急に。図々しかったかな」
なわけない。
言葉の力ってすごいなあって改めて確信したわ。
大丈夫、のたった3文字で、あっという間に不安を取り除けるんやもん。たった3文字やで。
なのに、心をじんわりとほぐしてくれる。暖かさを感じられる。凄いなあ。
彼の言葉に被せて、うちは感謝を伝える。
「おおきに、朔くん。おかげで肩の力が抜けたわ。ほんまにありがとうな。
うち、ちゃんと怒られるわ。みんなの前で、自分らしく生き恥晒すわ」
…………………………
ネートル室長。こんにちは、久しぶり、元気にしとった?
うちはまあ、ぼちぼちやな。
たっくさんのストレス抱えながら、呑気に馬鹿やって過ごしてるわ。
生憎、ストレスの原因究明にかかる時間には困らないものでね。
元はと言えば、あんたが与えた任務なんやで。あんたが勝手に減らしとんで、うちの給料。
最初はあんなに褒めて、持ち上げてくれとったのに、いきなりなんやねん。もしやツンデレか?
なあんて叫びたい気持ちもなくはないけれど。
うちは散々無礼をしてきたし、頭は良くないし、体力もないやんか。
でも一つだけ、めちゃくちゃいいもんを持っとるで。
仲間っちゅうもんや。
同僚とかと一緒にしてくれちゃ困るで。仲間は、何者にもかえれんものだから。
あんたがいくら、馬鹿やら阿呆やら怒鳴ろうと、周りの人たちは決してそんなこと言わんねん。
友達のお説教にわざわざついてくるじゃじゃ馬や。
決まりだの規則だのが大好きな、真面目なネートル室長の嫌いなもんよ。
見せたるで、今から。
この案内人天使のクコ様が持てる最強のカードを。
- Re: カオスヘッドな僕ら【復刻】 ( No.57 )
- 日時: 2022/10/09 14:52
- 名前: むう (ID: 61pjZFPE)
PCがやっと治りました!一年ぶりにPC執筆です。
書いた記憶のない文章が次々と発掘され、とても恥ずかしいです。
―------------
〈セシルside〉
クコがコンコンコン、と重たい木の扉を三回ノックすると、「どうぞ」とくぐもった声が中から響いた。
オレは一度身を引いてお客人であるクコたちを先に室内に入らせる。
彼らはやや緊張した面持ちで、ごくっとつばを飲み込んだ。慌てすぎたのか、百木朔が右手と右足を一緒に出したので、笑いをこらえるのに数分必死になる。
室長室には、『ボスの部屋』という言葉がしっくりくる、高級感満載の家具が置かれてあった。
入り口の横の棚には、外にあったのと同じ花瓶。床には、赤い絨毯。中央には、木製のワークデスクがドデンと構えている。
仕事机の後ろには三段もある本棚が設置されているけれど、それでも収まりきらなかったので、残りの蔵書は全て隣の書庫に管理されている……らしい。
そんな、厳格な雰囲気の漂う室内の中央に、彼—ネートル室長は立っていた。
身長は、オレの腰くらい。140から150の間らへん。
黒色のモコモコしたマントを羽織っており、俯いているので表情は確認できない。
「じ、爺さん、ひ、久しぶりやね! 模様替えしたん? 見られんもんがぎょうさんあるわ……な、なあ紗明?」
「はっ、はい、そ、そうですね、ええ」
明朗快活がウリのクコも、今回ばかりは声が震えた。
話を振られて、紗明の肩が跳ねた。
後方にいた親友は、いつの間にか自分の背中にぴったりくっついて、歯を鳴らしている。
「ちょ、ちょっと離れッ ちょ! 流石にかっこ悪いじゃないですかそれは! 見て下さい、朔さんもユルミスも引いてますよ!」
「く、クコちゃん、ちょっとそれはないかなあ……」
「ほらほら、声に出してますから!! オイ! 離れろこのアホ天使!!」
動揺しすぎて、朝モードのはずの紗明の性格がすでにブレブレだ。
服の裾を引っ張ってどかせようと試みるが、手のひらに吸盤でも付いているのか、クコは一向に離れない。
あ、あの。ついでに保安課も引いてるよ。
数分前にエレベーターでひと騒ぎを起こしちゃったけど、ひょっとして相手を間違えちゃったかな……。
やっぱり、誰だって上司の前では取り繕っちゃうものだよね。相手の方が立場が上って考えちゃうと、どうしても身体に力が入っちゃって。
うんうん、そうだよ。笑ってはいけない。これは人間の本能なんだから。うんうん。
「……ふっ、ふふふふふふw あ、ダメ、くっw」
「オイ聴いてるかクコ!? 俺に蔑まれ、保安課に笑われるとか相当だぞ!??」
紗明が声を荒げ、くるりと振り替えようとした、その時。
コツコツと足音が響き、中央で微動だにせず会話を見守っていたネートル室長が、俺達の方に向かって歩いてきた。
「……全くおぬしらは。毎度毎度、散々ワシの予定を狂わせおって」
ほとほと呆れた、とため息をつき、ネートル室長はマントのフードをとる。
あらわになった彼の素顔は、一言でいえば、まんま『ガイコツ』だった。スケルトンっていう種族らしい。落ちくぼんだ目と鼻の孔。
骨なので、心臓はなく全てがスッカスカだ。
「が、が、ガイコツ………?」
人間にとっては、ガイコツを見るなんて初めての経験。
悲鳴は出さなかったけど、朔は何度も瞬きをしている。
普通の人間なら、今の場面は失神するのがオチだが、天使とか死神とかとの付き合いで、だいぶ感覚がマヒしてるみたいだね。
「ほっほっほ。お前が百木朔か。はるばるご苦労じゃったな。調子はどうかね? もしどこか痛むようなら、薬を持ってくるが」
「い、いえ、結構です、ありがとうございます……」
朔のセリフが小さかったのか、断ったのにも関わらず室長は、マントの懐をまさぐって、彼の手にいくつかの果物を置く。
え、ただのマントだよね………? ど、どうなってるんだろう……。
「え、えっと、これは、レモン? ミカン? と、いちじく……ですか?」
「? 何言ってんの? ロヤアとムキアとウツヅキだよ?」
瞬間、朔くんはお腹にグーパンチでも食らわされたかのような、愕然とした表情を浮かべた。
あれ? なにか間違ったことを言っただろうか??
単に、果物の名前を教えてあげただけなんだけど。
「き、きっもちわるう………」と腑に落ちない顔をされたが、こっちも彼の飯能が分からない。
「ちなみにロヤアはビタミンCが豊富で、実は野菜の仲間。ムキアは冬に食べると美味しい。ウツズキは、お腹の調子を整えてくれるよ」
「知ってる。知ってるんだけどさぁ。ええ? じゃ、じゃあもしかして、セウキっていう夏の果物や、ヤヤっていうピンクの果物もあるの?」
そんなの、もちろん。
オレは腰に手をあてながら、真顔で返した。
「あるに決まってるじゃん」
「きっもちわるう…………」
- Re: カオスヘッドな僕ら【復刻】 ( No.58 )
- 日時: 2022/10/17 18:10
- 名前: むう (ID: gzz.lbul)
むうです。閲覧数2500突破、ありがとうございます。
なんと今、私はカオ僕ふくめ同時進行している小説が3つもあります(3つも!?)
その中の一つは来年賞に応募するんですが、そちらの方を頑張っているため、
こちらの連載を終了しようと思います。
完結じゃないですよ、終了です(ここ大事)。
完結処理をしておきますが、何一つ終わってませんからねこの小説……。
なお、わたしの応募作品は今「夢」をテーマにした小説なんですが、
忘れ去られた妄想たちが色々頑張る話です。
多分、そっちの世界のどこかに、百木くんもクコもいます。たぶん。
あ、あの、むうさん、他の作品は頑張って完結させてますからね(言い訳するな)
小説の殿堂ページにて掲載させて頂いています「六人の軌跡」書いたの私です。
良ければそちらもよろしくお願いいたします。
誠に勝手ではありますが今までありがとうございました。
作品は消しませんので、スレの下の下の下に、埋めさせてもらいます。
「古の文章を求めて俺はスレをさかのぼるぞ!」という猛者がおられましたら、ありがたいです。
それでは! ご愛読、ありがとうございました。
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