コメディ・ライト小説(新)
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- 推しはむやみに話さない!
- 日時: 2022/07/01 00:45
- 名前: 狼煙のロコ (ID: hDVRZYXV)
自分の推しを教えると、学校生活即終了!?
何としてでも推しを隠し通せ!
一風変わった高校で、主人公(JK)は今日も今日とて、
推しはむやみに話さない!
どうもどうも、狼煙のロコです♪
『推しはむやみに話さない!』へようこそ。
予め言っとくと、この作品はやべえと思います。いろんな意味でね。
また、本作のキャラである前萌 寧音がまたすげえ奴で、明るめな空間にシリアスなパンチを与えてくれやがるかもしれません。
ご了承ください\(^^)/
一応既に終わりは考えていて、それに向けまったく肉づけしてない中身をねじ込む感じですかね。
まあ気が向いたら見てくれや。
伏線は頑張って入れたいところだが、難しいと思う今日この頃の私は、ラストまで見てくれることを望んでいます。
ご感想、ご指摘等ありましたら、本スレ、または雑談スレ『ナマケカフェ』にてお待ちしてます!
以上作者からの挨拶でしたあ。
『#目次!』
キャラ紹介 >>01
1話 >>02 2話 >>03
3話 >>04 4話 >>05
5話 >>06 6話 >>07
7話 >>08 8話 >>09
9話 >>10 一気見! >>02-10
【見えない!? アニメイトの刺客編】
10話(?視点) >>11
11話 >>12 12話 >>13
13話 >>14 14話 >>15
15話 >>16 16話 >>17
17話 >>18 18話 >>21
19話 >>22 20話 >>23
21話 >>24 22話 >>25
23話 >>26 24話 >>29
25話 >>30 26話 >>31
27話 >>32
背後鬼ルールまとめ >>33
28話 >>34 29話 >>35
30話 >>36←new!
一気見! >>11-
『#お知らせ!』
4/5 閲覧回数200突破!
ありがとうございます!
4/15 【見えない!? アニメイトの刺客編】スタート!
お楽しみに!
12/30 閲覧回数500突破!
ありがとうございます!
『#読者様からのありがたき返信!』
りゅ さん >>19-20 >>27-28
- Re: 推しはむやみに話さない! アニメイト編開幕! ( No.12 )
- 日時: 2021/05/12 19:42
- 名前: 狼煙のロコ ◆g/lALrs7GQ (ID: hDVRZYXV)
『#推し会議だからしょうがない!』
キーンコーンカーンコーン
水曜日。今日も終礼のベルが鳴った。いつもと同じ……と言いたいところだけど、ちょっと違う。
クラスのみんながソワソワし始めている。もちろん私も。
教卓に立つ篠崎先生が、コホンと一息ついた。
「えー、みなさん今日は水曜日ですね~」
焦らすような口振りだ。教室内のソワソワが増していっている。
先生はニヤリと笑い、両手で黒縁の眼鏡を正す。
また一息。すると、手の平を教卓に押し付けて、前に体重をかけた。
「そうです。待ちに待った『推し会議』の日です!」
「うおおおおおおおおぉおお!!!!」
「きゃあああああああぁああ!!!!」
その言葉と同時に教室中に大歓声が沸き起こった。みんな拳を掲げたり、抱き合って泣いたりし始めた。
「ついにこの時が来てしまったか。ふっ……」
「やっと、やっとなのね!! みんな、私たちに恵みがもたらされたわ!」
「おぉ、神よ」
大げさ? そんなことはない。至って普通だ。だって推し会議だからね。しょうがないね。
まあ私にはこんな大胆なことはできない。両手を組んで、瞳から少量の涙を流すくらいだ。短い一言を添えて。
「あぁ、感謝申し上げます。ブラジルの人聞こえますか」
まあさっきまで私も雄叫び上げてたんだけどね。だって推し会議よ? それくらい許してもらわないと。
先生が教卓をトントンと指で叩く。
「はーい静かに静かに~。さっさと話終わらせて、すぐ推し会議行きましょうね~」
「先生! それは無理なお願いだぜ! だって推し会議だぜ? しょうがないだぜ」
前の席の蛇瀬くんが机の上でブレイクダンスをしながら、申し立てていた。
あまりにも強く手を押し付けたせいで、教卓ごと倒れそうだが、絶妙なバランスで保っている先生もそれを聞いて大きく頷く。女の先生だからね。バランス感覚がいいんだきっと。
「蛇瀬くんの言い分も分かりますが、これが終わらないと推し会議行けませんから。10秒で終わらせるので我慢して下さいね」
「分かったぜ。先生」
蛇瀬くんは素直に席に着いた。
先生もニッコリ笑顔で、バランスボールならぬバランス教卓をしながら話を続ける。
「一つ。今日の推し会議楽しも。二つ。中間テストまで一カ月切ったよ。べんきょしよ。三つ。朝の曲がり角暴走族に注意だよ。以上、解散!! 気をつけ礼、さよ!」
「さよ!!」
本当にジャスト10秒で終わらせ、挨拶も雑に終わらせた。
推し会議だからね。しょうがない。
みんな一目散にそれぞれの会議室へと向かっていった。先生もだ。
私と、もう一人残して……。
私も早く行かないと。
教室から出ようとしたその瞬間だった。
「あ! 待ってよ。野花ちゃん」
……声をかけられてしまった。なるべく近づきたくなかった子。名前は……。
「どうしたの? 前萌ちゃん」
「え~。たまたま二人きりになったんだもん。少し話したいなあって思ったの~」
たまたまなんて嘘だ。あえてだ。あぁ、私もさっさと教室から出ればよかった。
前萌 寧音。
おそらく、私の推しを暴こうとしてる子……。
- Re: 推しはむやみに話さない! アニメイト編開幕! ( No.13 )
- 日時: 2021/06/15 00:28
- 名前: 狼煙のロコ ◆g/lALrs7GQ (ID: hDVRZYXV)
『#前萌ちゃんは分からない!』
「みんな早いよね~。まあ~。推し会議だもんね~」
「そうそう。みんな推し会議大好きだからね。もちろん私も! 前萌ちゃんも早く行かなくていいの?」
私は明るく笑顔で前萌ちゃんに接する。
まあ、険悪なムードにはしたくないし。何より、推しを暴こうとしてるなんて、私の思い込みかもしれないからね。
前萌ちゃんは小さく笑った。まるで私の言ったことがおかしかったかのように。
改めてこの子の顔を見てみる。
丸く整った顔。キメの細かい肌。ほのかに赤い頬。薄い桃色の瞳……。
くっ! 割と可愛い。私が言える立場じゃないけど……。
あと特徴的なのは髪型だろうか。少しくせ毛の茶髪。ボリュームがあり、髪で小さなリボンを四つも作っている。
くっ! ちょっと可愛い。
制服の首元に花のブローチがついている。何の花だろう? 分かんないけど、まあ……可愛いね。
なんてこった。やっぱり推しを暴こうとしてるなんて私の思い過ごしで、本当はただ可愛いだけなのか?
「ね~。そんなにじろじろ見てど~したの~」
前萌ちゃんがクスっと笑いながらこちらを見てくる。
「いや。なんでもないよ!」
「え~~。そう言われると逆に気になるな~」
「いや、ほんとに大したことないから」
前萌ちゃんは口元をにやつかせ、顔を近づけてきた。
冷や汗が私の頬をつたう。
「まあ、いいや。ごめんね~急に呼び止めちゃって~」
前萌ちゃんは私から離れて、身体ごと後ろに向けた。
ふぅ。危なかった。もし君可愛いね~なんて言ったら最後。ドン引かれからの険悪ムード発生だ。
うん。やっぱり前萌ちゃんは可愛い! 私の推しを暴くなんてことしない! 二十回くらい、いやそれ以上に暴こうとしていた感あったけどそれでも違うはず。
私が敏感になってただけだ。
そう考えるほうがこの先、楽だよね。
私が心の中で自己完結していると、前萌ちゃんがまたこちらを振り向いた。
まだ何かあるのか、わざとらしくにやけている。
「それじゃ、あんまり話せてないけど、推し会議に行こっか~。紫ちゃんのこと、いっぱい語ろう~」
「そういえば、前萌ちゃんは永音派だったね~」
「そ~。ていうか野花ちゃんは紫ちゃんを名前で呼ぶんだね~。珍し~~」
目を大きく開いて、意外そうな顔をしている。まあ、理由なんて単純なんだけど。これくらいは言ってもいいかな~。
「あー。それは──」
「まあ、いいや」
おん? また「まあ、いいや」カットか。地味に傷ついたぞ前萌ちゃん!
“まあ、いいや”。やっぱり言わないほうがいいのかもしれないし。
前萌ちゃんは続ける。
「それより野花ちゃんの推しは~~。えっと~~~~。なんだっけ~?」
あっ……。
「未公表だよ」
自分でも怖いくらいに無機質な声だった。
やっぱりこの子は。
「そうだった~~~。まだ公表してないんだ~~。へ~」
前萌ちゃんは一歩二歩と軽快に、また私に近づく。
「ねえ。それってずっと言う気はないの~?」
「ないよ」
今、この子また笑った。悪質な笑い。心の中が思わず表に出たんだろうか。
だけど、ぶりっ子の腹黒とかそういうのではない。実際ぶりっ子じゃないし。
よく分からない。分からないけど、一つ言えるとすれば、
この子は絶対に何かを隠している。
「ね~ね~。それって野花ちゃんにとっても、大変だしつらいんじゃない~?」
「ないかな」
「同士と推し語り合えないんじゃな~い?」
「そうだね」
「独りぼっちな気持ちにならな~い?」
「ならない」
前萌ちゃんに色々質問される。それに対して私はイエスとノー。その二つをまるで、ロボットのような口調で乱用していた。
「そっかそっか~。色々聞いちゃってごめんね~。あ、さすがに時間やばいかな~。私そろそろ行くね~~。またね~~」
あ、終わったんだ。
「うん! バイバイ!!」
私は前萌ちゃんからのお別れの挨拶を聞いて、すぐにそう言った。
それもとびっきりの笑顔で。毎朝、六間くんにしているように。
教室から走って出ていくのに大きく手を振る。
うーーーーーーん!!! スッキリしたーーーー!!
私も早く行こっと。
前萌ちゃんが出ていってから、少し時間が経ってから私も教室を後にした。
中央階段で三階まで上って、第三多目的室に向かう。
少し遅れちゃってる? いや、時間は大丈夫、なはず!
第三多目的室の前に着いたので、まずは一息ついた。
そして、扉を思いっきし、開ける!!
「こんにちはーーーーー!! 大柴 野花。ただいま参上です!!」
ふっ。今日も決まった。これが陽キャってやつやで。
しばらく自惚れていると、奥から男の先輩が歩いてきた。
「おーおー。元気だなー。野花」
「こんにちは! 柊先輩!」
この人は三年、柊 真夜先輩。未公表派の代表だ。
柊先輩は歯を出してニーッと笑う。すごく、清々しい笑顔だ。
それから先輩は手を叩いて、みんなに大きな声で告げる。
「よし! 野花来たから、推し会議始めるぞーー」
- Re: 推しはむやみに話さない! アニメイト編 ( No.14 )
- 日時: 2021/05/29 13:21
- 名前: 狼煙のロコ ◆g/lALrs7GQ (ID: hDVRZYXV)
『#出席確認は欠かせない!』
「んじゃ、名前言うから返事してなー」
柊先輩が、席に着いたみんなの前で出席確認を始める。
普通どこの推し派でも素早く終わらせるために、組ごとにいるか、いないかだけを確認していく。でもここ未公表派は人数が少ないからか、一人ずつ名前を呼ばれる。
このゆったりした感じ、大好きなんだよね。
柊先輩は早速、名前を呼ぶ。
「まずは一年。一組、浦鳥 太一」
「いるっしょーー!! へっへへ、俺ってばかっこいい」
「二組、鬼灯 優太」
「はーい。僕。いるのー。ねむーい」
「三組、有明 生面」
「はい! います! さっきは渋滞作って迷惑かけました。すいません」
「四組、大柴 野花」
「はーい! わたくし大柴 野花は今日も元気でーす!」
ふふふ~。この不思議空間に埋もれないため、積極的にアピールアピール。
カッコつけたがりの浦島太郎、じゃなくて浦鳥 太一くん。
いつもゆるゆるふわふわしてる、けだるけ鬼灯 優太くん。
二次元から来たような見た目をしてる超絶イケメン、有明 生面くん。渋滞とはおそらく女子の。まあ、日常茶飯事だ。
「五組、耳成 久留」
「いるいる~超いる~。イエーイ! 今日も楽しみー」
「六組、前途 未来」
「はいいます」
「七組、御星 神梨」
「はい! 私、御星 神梨。十五歳! どこにでもいる普通のJK。これから始まる推し会議。一体全体どうなっちゃうの~。星!」
「八組、九 一」
「ふふっ、いるよ。今日も絶好の推し会議日和だ。みんな楽しもうではないか」
陽キャ、とにかく陽キャで、夕星高校の『大和ギャル三人衆』の一人、耳成 久留ちゃん。ちなみにキキもその一人。
いつも前髪で両目を隠していてミステリアス、そしてなぜかキキが恋人だと自称する前途 未来ちゃん。
目がでかい、瞬きが少ない、潤いがすごいの三拍子が揃った、少女漫画大好きの御星 神梨ちゃん。そっちのほうが少女漫画のキャラでしょ!
博士っぽいキザ+中性的な可愛い顔という特殊属性を持つ、青縁メガネの似合う九 一くん。
やっぱりみんなキャラ濃いなあ……。
「次二年いくぞー。三組、茶田 鈴蓮」
「いるんだよ~。みんな仲良くするんだよ~」
温かな声でみんなの心を癒してくれる、みんなのお母さん的な存在の茶田 鈴蓮先輩。周りを見てみるとみんな顔がとろけてしまっていた。優太くんはもう寝てしまっている。
「七組、奈良庭 鼓」
「いるわ! み、みんなが揃うなんて珍しいじゃない。いつも誰かしら帰っちゃってるのに……。べ、別に嬉しいとかそういうんじゃないんだからね!! って聞いてるの! みんな起きろーーー!!」
はい。ツンデレです。怒ってないときが異常の奈良庭 鼓先輩。鈴蓮先輩のゆったりボイスのあとに鼓先輩の怒号が飛ぶのは、もはや一種のサウナと化している。
そして、ラストは……
「そして最後に三年九組、俺、柊 真夜だ」
屈託のない笑みで、いつものようにみんなを照らす太陽のような人、柊 真夜先輩だ。相変わらず、見えないハズの光が柊先輩から放たれる。確か夕星高校七不思議の一つだったはず。
「以上、一年八人、二年二人、三年一人、計十一人。全員揃ったなーー。すげえ」
本当にすごい。全員揃うのは二カ月、つまり初の推し会議ぶり。今日はいつもより楽しくなりそう!
柊先輩も嬉しそうにしながら、みんなに言った。
「それでは、推し会議を始める」
- Re: 推しはむやみに話さない! ( No.15 )
- 日時: 2021/06/07 18:13
- 名前: 狼煙のロコ ◆g/lALrs7GQ (ID: hDVRZYXV)
『#ここが大好きで仕方がない!』
柊先輩の合図と同時に、未公表派のみんなが待ってましたと言わんばかりに雑談を始めた。
「なあなあ! 一も『草木の町人』の最新話読んだっしょ?」
「おやおや太一くん。それは愚問だね。僕は、『草木の町人』博士だよ? どんな情報だって一番に嗅ぎつけるのさ」
「時幻様がちょーかっこよかったっしょー!!!」
「まさか、強敵五人をもまとめて蹴散らしてしまうとはね。彼の意志には僕も痺れてしまったよ」
太一くんと一くんは時幻様の話をしていた。二人ともとにかくはしゃいでいてなんだか可愛い。
一くんは、今週の話の伏線なんかも語っている。
時幻様派のりりり先輩もこんな感じなんだろうか。いや、それ以上だな。
興奮したりりり先輩を、周りのみんなが落ち着かせようとしている様子を想像すると……わ、笑わずにはいられない……くくっ。
「なに笑ってんの気持ち悪い」
「あ、ごめんごめん未来ちゃん。思い出し笑いっていうか、今想像笑いっていうか……くくっふふふ」
「気持ち悪い以上に怖い」
前髪で両目を隠している未来ちゃんから、冷たい視線を送られていることがなぜだか分かる。
やめて! そんな目で私を見ないで!
「まいいけどそれより話ってなに?」
未来ちゃんは言葉の間に間髪入れずに、私に質問をぶつけてきた。
そうだ、話をするって言ったんだった。いっけね~忘れてた~。てへぺろりん!
「えっとさ。キキから日曜日にアニメイト行くの誘われた?」
「誘われたけど断った一人で行くから」
まるで当たり前のようにそう言った。まあそりゃそうだ。未公表派だからね。誰かと一緒に行ったら推しがばれてしまうだろう。私が言えないことだけどね。
そう軽い相槌を打っていると、もう一人の女の子が割り込んできた。
なんと私の憧れし陽キャの中の陽キャ。くるくるパーマの久留ちゃんだ。
「えー! 未来ちゃん断ったのー? 一緒に行った方がいいって。キキという恋人がいるし」
「それはキキが勝手にそう言ってるだけ」
「冷たいこと言わないのーーー。本当は嬉しいんでしょう。このツンデレめ」
「うざいうるさいやかましい」
「おやおや否定はしないのかな? つまり……ふぉっふぉっふぉ」
「……ちっ」
未来ちゃんから飛ばされる罵倒に久留ちゃんは物怖じせずに、ひたすらに誘い続ける。
さすが久留ちゃん! これが陽キャのウザ絡みっすね! 私も見習うっす!
私も未来ちゃんを誘うぞ!
「そうだよ未来ちゃん! みんなと一緒に行った方が楽しいって!」
「そういうあなたは推しがバレない様にする方法でもあるの?」
「ふふん。一応ね」
そう。あるんだよ。推しがバレない方法。なんてったって夕星アニメイトなんだから。今から私が説明して進ぜようぞ。
「夕星アニメイトは広いでしょ? つまりお店の中じゃみんな別行動になるんだよ」
「でも結局一緒に帰るんでしょその時に何買ったか聞かれたり見られたりしたらどうするわけ」
「大丈夫! みんな優しいから!! そんなことしないって」
「雑で単純」
そう。雑だ。単純だ。でもこれでいいのだ。実際いつもこれでなんとかなってるし。
私の説明に久留ちゃんもうんうんと頷いていた。
「のーちゃんの言う通りだよ。私も一緒に行くからさー。ねー行こうよー未来ちゃん。キキとアニメイトデート楽しみなよー」
「もう分かった一緒に行くから」
久留ちゃんの強い後押しがあってか。未来ちゃんは半ば諦め気味にOKをした。
「ってことでー。私と未来ちゃんも一緒に行くから。よろしくのーちゃん!」
「オッケー」
さすが久留ちゃん! まさか未来ちゃんにお誘いOKさせるなんて。しかもさりげなく自分自身も行くことにしてる。やっぱすごいっす! 私も見習って未来ちゃんを、YESマンならぬOKガールにしてみせます!
「おやおや。君たちも日曜日アニメイトに行くのかい。奇遇だね。僕も太一くんと一緒に行くんだよ。もしかしたら会えるかもしれないね。楽しみだ」
聞き耳を立てていたのか。一くんが細やかな笑みで近づいてそう言った。太一くんも後ろで手を振っていた。
そうか。やっぱりみんな推しの梅雨コスは欲しいんだよね。こりゃ急がないと、目当ての物が売り切れちゃうかな? つってね。まあ私は大丈夫だろう。
それにしても……。
周りを見ると、みんな楽しそうに話している。本来あるはずの推し会議は、自分たちの推し派を増やす計画や今後の推し関連イベントの出し物を決めるものだと楓が言っていた。
ここではそんなことをしない。みんなが自由にこの時間を過ごしている。この高校に入ってわざわざ未公表派に入るなんて、みんなの冷たい視線に晒される。そんな風に思っていたけど、思ったより全然楽に過ごせるのだった。
本当にこの高校に来てよかった。
そして、これからも、こんな風にのんびりと過ごせたら良いなと思う私であった。
うん! 日曜日のアニメイトは本当に楽しみ。楓にキキに小麦ちゃん。さらに未来ちゃんに久留ちゃんも一緒に行くことになった。もしかしたら当日はもっと色んな子に会えるかもしれない。
よっし! 六間くんのグッズ、沢山買うぞーーーーー!!!
しばらくして、今日の推し会議も終わりを迎えた。
- Re: 推しはむやみに話さない! ( No.16 )
- 日時: 2021/06/16 18:42
- 名前: 狼煙のロコ ◆g/lALrs7GQ (ID: hDVRZYXV)
『#今日は苦も雲もありゃしない!』
ああ、今日はどうしてこんなにも清々しい気分なの。
空には雲一つなく、一面が青く染まっている。太陽も華やかに輝き、私の心をポカポカに暖めてくれる。今が梅雨の時期だなんて到底信じられない。
とにかく今日は最高の日なのだ! なんてったって、そう。ついに来てしまったのだ。
今日は、六月二十日、日曜日の今日は……
「みんなとアニメイトに行く日だーーーーー!!」
ああ、なんて甘美な響き、アニメイト。これほどまでに心を躍らされるなんて。
足元がいつもより軽い。リュックも軽い。六間くんグッズを中に大量投入するため!
逆に重いのは私の財布! お年玉を解禁したんでね、ええ。
今日の私、本気ですよ?
っと、そろそろ待ち合わせ場所の夕星駅に着く頃だ。時間は問題なし。この新品の腕時計があれば、私は無敵だ。一秒の狂いもないし、それに可愛い。なんと『草木の町人』の女性人気投票で一位、二位、三位の永音、美知留ちゃん、双葉ちゃんがデザインされているのだ!
去年の私の誕生日の、お母さんからのプレゼントである。だが、私が六間くん推しだと知っていての行為だったから、今でも少し複雑な気分だ。
まあ、今日はそんなこと気にせず、楽しむぜぇ。
「おーーい! のーちゃーん!!」
前から楓の声。見ると、駅の前で大きく手を振っていた。私もそれに答えるように手を振り返す。
その後、私が駅まで全速力で走ったことは言うまでもない。
「はぁ、はぁ。おまたせ」
「おはようのーちゃん! そしてお疲れー」
楓の軽い笑いに続き、三人の声も耳に入ってきた。
「お、おはようございます。大柴さん。大丈夫ですか」
「まあ、のっちーなら大丈夫でしょ。はいはいおはよー。元気出してこー」
「おはよう」
小麦ちゃんに、キキに、未来ちゃん。みんな来るの早くね? あとは私の陽キャ師匠、久留ちゃんが来てないのか。
ビリにはならなくて良かったと安堵していた私だったが、楓からすぐに衝撃的事実を告げられた。
「久留ちゃんは今日急用で来れないんだって。うぅ、残念」
「し、仕方ないですよね」
まあ、一緒に行くってのも急だったし、こういうこともあるんだろう。けど、これは本当に偶然に急用が入ったからなのか。もしかしたら。
私は、未来ちゃんの方に視線をやる。うん、やっぱり怒りのオーラが出てるね。知ってた。
「私を釣るなんていい度胸」
小さくそう呟いた未来ちゃんに飛びついたのは、キキだった。
「未来ーーーー!! 今日は来てくれてありがとう。嬉しいよお!! 久留に協力してもらって本当によかったー。聞いたよ聞いたよ。私と一緒にいるの、いつも最高に嬉しいんだって!? まさかそんな風に思ってくれてたなんて……。ああぁ。神様、仏様、久留様。感謝感激ヤマアラシ。あいらぶゆーー未来ーーーー!」
「そんなこと一言も言ってないベタベタくっつかないで離れて」
キキが過度の愛情アタックを繰り返し、未来ちゃんが冷たくあしらう。いつもと同じのどかな風景だ。
小麦ちゃんはまだ慣れていないので、慌てふためき、頑張って止めようと試みていた。しかし、次第にパニックに陥り、リボンを大きく揺らしながら、地面にへたり込んでしまったのだった。それを楓は大きく笑いながらただただ見ていたのだった。
ま、なんだかんだで賑やかで、楽しい友達だ。だが、駅前で行われている喜劇を、周りの視線に耐えながら見るほど精神は図太くないので、私が幕を下ろしてやった。
「それじゃ、アニメイトにレッツゴーゴー!」
「おーー!」
楓の掛け声に合わせ、みんなで空に拳をあげる。
つっても、アニメイトは目の前にどでかく建ってるんですけどね。