コメディ・ライト小説(新)

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玉響が揺蕩うので泡沫にお砂糖ご利用ですかまた会えますか?
日時: 2024/08/30 22:33
名前: 今際 夜喪 (ID: Eay7YDdj)

セーラー服の女の子、歌方海月(うたかたみつく)が誰なのかはわからないけれど、ギターは弾けるし歌えるし踊れるから、バンド組もうぜ。

#文披31題 参加作品。

◆回答欄満た寿司排水口
day1夕涼み>>1
day2喫茶店>>2
day3飛ぶ>>3
day4アクアリウム>>4
day5琥珀糖>>5

◆問うたら淘汰ラヴァーと泡沫
day6呼吸>>6
day7ラブレター>>7
day8雷雨>>8
day9ぱちぱち>>9
day10散った>>10

◆シュガーレスノンシュガー
day11錬金術>>11
day12チョコミント>>12
day13定規>>13
day14さやかな>>14
day15岬>>15

◆スイカスイカロストワンダー
day16窓越しの>>16
day17半年>>17
day18蚊取り線香>>18
day19トマト>>19
day20摩天楼>>20

◆鰹節目潰し
day21自由研究>>21
day22雨女>>22
day23ストロー>>23
day24朝凪>>24
day25カラカラ>>25

◆イマジナリティオールマイティ
day26深夜二時>>26
day27鉱石>>27
day28ヘッドフォン>>28
day29焦がす>>
day30色相>>


day31またね>>

day25 カラカラ ( No.25 )
日時: 2024/08/30 22:29
名前: 今際 夜喪 (ID: Eay7YDdj)

 炎天直下。外にいればどうしたって暑い。なのに外に出るのはどうしてだろう。茹だるような暑さを五体で浴びて、夏を享受したい。なんだかんだ言って私達は夏が好きなのだ。
 殺人光線降り注ぐ空を見る。空色の中を入道雲が流れていく。そこに蝉の合唱が混ざり、何処からかトマトの匂いがする。
 手にはサイダーの缶。私達と同じように、表面に汗をかいて、スチール缶すら灼熱に喘いでるみたいだ。
 傾け、勢い良く煽る。口内を満たす甘味と酸味と、少しの痛み。爆ぜる炭酸が喉を潤していく。キンキンに冷えた液体に、臓腑が冷やされる感触が心地良い。
 五感で夏を享受して、暑さは疎ましいのに、やっぱり夏が好き。
 隣を歩くセーラー服は、何やら缶の中に小石を詰めている。先に飲み干して、空き缶になったそれが手持ち無沙汰だったのだろうか。

「こら、ゴミで遊ばない」
「遊んでないもーん」
「じゃあなにしてんの」
「演奏」

 缶を振ると、スチールと小石がぶつかり合ってカラカラと音がする。

「ああああああああ! 真夏のジャンボリイイイイイイ!」

 カラカラカラカラカラカラ!

「うるせえ!」
「何? 選曲が駄目だった?」
「シンプルに煩いのよ、住宅路で騒がないの」
「じゃーあー」
「いや、もういいから」
「妖精! 達が! 夏を刺激する!」
「生足魅惑のマーメイドおおおお!」

 カラカラカラカラカラカラ!
 私達は煩くて近所迷惑だった。夏らしい曲って煩いのが多い気がする。

day26 深夜二時 ( No.26 )
日時: 2024/08/30 22:31
名前: 今際 夜喪 (ID: Eay7YDdj)

「糖子ちゃん、夏休みだからっていつまでもゴロゴロゴロゴロ、ゴロゴロと! 朝です! お散歩に行きましょーっ」

 と、夏休みにも関わらずセーラー服の女に叩き起こされたのは午前二時。二時起きはゴロゴロの内に入らないよ。なんなら朝のうちにも入らないからいい加減にしてほしい。

「本当にいい加減にしてほしい! 窓の外真っ暗だよ!」
「お散歩行こうよ糖子!」
「なんなの、犬なん? 犬だってこの時間に散歩しないわ。じゃあなんだろう。妖怪なん? そもそもこんな時間に高校生が外歩いてたら補導されるでしょーが。セーラー服着るのやめて」
「あ、散歩はするんだね。流石糖子」

 眠い目を擦りながら、とりあえず私達は適当なティーシャツに着替える。そうして外へと繰り出した。
 外気が思ったよりも涼しくて驚く。確かにこの時間、夏なら一番気温が低いかも知れない。
 辺りを見回して、人気の無さが不気味ですらあった。家々の明かりが落とされており、あるのは街灯と星明り。人の寝静まった夜更け。この世界に私達以外誰もいないのではないかとすら錯覚してしまう。
 私達は何も言わずに歩き出した。昼間の活気や猛暑を忘れ、生きとし生けるものが息を潜めているような不思議な時間。二人分の足音だけが響いた。
 いや、何やら音はする。ブン、カン、カン。虫の羽音と、ある程度の硬度があるものが何かに何度も当たるような音。見回せば、すぐに正体を知ることになる。近くのアパートの蛍光灯。光に引き寄せられた甲虫が、羽ばたいては蛍光灯に体当りする音だ。虫特有の理解不能な動きに恐怖と嫌悪感を抱く。

「うへぇ、虫キモーイ」
「夏の夜は虫がキモいから、外に出るべきじゃないかもね」

 子供の頃はなんともなかった虫全般、このくらいの歳から気持ち悪くて仕方がない。中学生のときはまだ大丈夫だった気がするのに、どうしてだろう。

「海月(みつく)もそろそろ気が済んだでしょ。帰ろ」
「そうだね。虫がキモいから」

 人々の寝静まった時間。風情の一つでも見つけられればよかったのだが、虫が怖いから断念。それもまた、風情と呼ぶかもしれない。

day27 鉱石 ( No.27 )
日時: 2024/08/30 22:33
名前: 今際 夜喪 (ID: Eay7YDdj)

 朝。いつも通り六時頃に起床。そう、私はいつもならそれくらいの時間に目を覚ます。四時とか二時に起こすようなアホがいなければ、ちゃんと規則正しい生活を送っているのだ。
 自室のベッドで上体を起こすと、セーラー服の少女が窓の外を見ているのが視界に写った。手首には包帯。指先には絆創膏。セミロングの傷だらけの少女は、物憂げな様子で窓の向こうをじっと見ている。
 私も彼女の視線の先を見た。なんてことない、晴れた青い空に、電線の黒が見えるばかり。住宅街にある自宅から見える景色といえばこれだ。
 ならば彼女は。海月(みつく)は、どうしてそんな顔をするのだろう。寂しそうな、思い詰めるような表情は、何を意味するのか。

「どうかしたの、海月」

 呼びかける。私の顔を見るときにはもう、なんでもないように取り繕っていた。

「どうって、何が?」
「…………いや。海月がなにもないってことにしたいならいいよ」

 踏み込んだって仕方がない。他人のことは分からない。どうしたってわからないのだ。
 海月はそう、と返事をして、窓際の机の上に何かを置いた。ハンカチで包まれた星の欠片。キラキラと色とりどりの宝石。違う、琥珀糖だ。

「あんたそれ好きだね」
「好き。糖子と同じくらい好き」

 唐突に好意を伝えられて、しどろもどろする。人に好かれることは嬉しい。胸が弾むような心地よさに、思わず口元が緩んだ。

「海月って変な奴。琥珀糖と同じくらいって何よ。私のこと、お菓子と同じベクトルで好きなわけ?」
「糖子のとうは、砂糖の糖だから」
「なにそれ、安直」
「分かりやすくていいでしょう?」

 海月は私に笑いかけると、琥珀糖を一つ摘み上げて、私の顔の前に差し出してくる。青く透き通ったそれは、ラムネかソーダの味がする。ラムネとソーダって何が違うのだろう。大体同じか。じゃあどっちの味でもいいや。
 差し出されて、しかし口を開くのを躊躇った。

「私、琥珀糖はあまり好きじゃないよ。甘過ぎるんだから」
「そういう甘味が大事になるときが来るよ」
「いつ?」
「いつか。糖分の甘さって、人に抱きしめられるときと同じくらいの優しさだよ。だから人は、人生において甘味を何度も摂取するの。ほら、糖子も食べて」

 促されるままに口を開けた。ころん、と落とされた琥珀糖を噛み潰す。シャリ、と口内に広がるのは、やっぱり甘すぎる甘味。

「そもそも、琥珀糖ってどこで手に入るの?」
「鉱山。ピッケルで岩を削ってると、そのうち色とりどりの琥珀糖が見つかるよ」

 手軽な嘘に、口を尖らせる。私の様子をしばらく楽しんで、海月も一粒、琥珀糖を口に放った。そうして噛み砕く。砕きながら話す。

「あは、冗談。最近じゃ割とどこにでも売ってるよ。スーパーでもお洒落な雑貨屋でも、お菓子屋さんでも」
「へえ。気が向いたら買ってみるよ。気が向いたら」

day28 ヘッドフォン ( No.28 )
日時: 2024/09/01 21:47
名前: 今際 夜喪 (ID: Eay7YDdj)

 学校の屋上にいる。青空が近い。入道雲は私の心情なんか知らずに悠々と流れていく。手を伸ばせば掴めそうなくらい近い。そう思って伸ばした手は、何も掴まない。蝉時雨が煩かった。
 私はいつも、何も掴めなかった。欲しいものは何一つ、手に入らない。この指の隙間をするりと抜け落ちて行く。水のように、そもそも掴めない物だったみたいに、私の元を離れていく。
 だからもう、諦めちゃいなよ。誰かの声がする。死より麗しいものは見つからない。生きていくことは苦しいこと。だからほら、そのフェンスを乗り越えて。何もできないあなたにもそれくらいのことはできるでしょう。
 それくらいのこと。
 フェンスに足をかける。着地した空間の狭さに、息が震えた。パラペットの上に立って見下ろす地面は、何度めだろう。 
 遠い地面に焦がれて、手足が引き攣るように震えて、私はちゃんと怖かったのだと知る。死ぬことが? 生きることでしょう。どっちかな。もう死んじゃえばいいじゃんって、誰かの声がする。そのくせに怖いなんて今更。臆病者。そういう自分のことが、嫌いだったんだよな。改めて自覚。蝉時雨が煩い。
 暗く濁っていくような、胸の内。落ちたってどうせ上手く行かない。落ちることすら上手にできないのなら、私には何ができるのだろう。何もできないのだろう。私には何もできない。上手な話ができない。だから、友達を笑わせることもできない。つまらない女だから、そもそも友達なんかできない。家の中に居場所を作ることもできない。地味で特に何かに秀でているわけでもない子供を、親は喜ばない。できない。なにも、できないのだ。

「なにも。私には、なにも、」

 不意に耳元に何かが触れた。柔らかいものが耳を覆って、頭部にすっぽり収まる。なんだこれ、と触れてみて、すぐにわかる。ヘッドフォンだ。

「雑音は全部、聞かなくていいよ」

 背後に誰かがいて、柔らかく私の胴に手を回してきた。聞き馴染みのある、女の子の声。

「そういうわけには行かない。いつか全部、向き合わなければならない。それは私もよくわかってるの」
「だけど、今は聞かなくていいよ。糖子は疲れちゃったんだよ」
「…………」
「なにも聞かなくていい。目を閉じて。全部忘れちゃおうよ」
「優しいね、貴女は」
「…………」
「海月(みつく)は優しいけど、都合が良すぎるくらいだよ」
「…………」
「でも、ありがとう。あともうちょっと、このまま。何も聞こえなくて、何も見なくていい。このままでいたいね」
「うん」

 遠くにあるアスファルト。そこに叩きつけられて、中身をぶちまける。それでよかったのに、私は結局なにもしないまま。
 吹き付ける風が心地良い。

Re: 玉響が揺蕩うので泡沫にお砂糖ご利用ですかまた会えますか? ( No.29 )
日時: 2024/11/13 20:40
名前: あんくるです! (ID: uEBl/Cwm)

ヨモツカミ続き書かないの?


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