コメディ・ライト小説(新)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 君は愛しのバニーちゃん【完】
- 日時: 2024/09/24 01:36
- 名前: ねこ助 (ID: tOcod3bA)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13998
小説大会2024・夏 金賞🥇ありがとうございます✨
★まず初めに★
R18ではありませんが、下ネタ満載のラブコメになります。
やたらとパンチラが出てくる青年漫画のような作風を意識した作品の為、苦手な方は回れ右してください(^^;;
別名義でラブコメ・ミステリー・ホラーなど、その時の気分で色々と執筆しています。
ラブコメに関しては(君バニもしかり)箸休め的な感覚で、何も考えずに自由に執筆しております。
なので、読者の方にも何も考えずにサラッと読んで笑って頂ければと思います(^^)v
★あらすじ★
パンツにおっぱい!!! ……最高かッ♡♡♡
【下心満載のチャラ男家庭教師(21)✖️純真無垢な中学生(14)】
今日もピッチリと七三に髪を固め、ダサ眼鏡の仮面を被って下心満載で家庭教師に勤しむ。
そんなどうしようもない男の、おバカな初恋奮闘物語——。
昔からモテ男でチャラ男な瑛斗は、大学でもその名を知らない人はいない程の、超がつくほどの有名人。
合コンに行けば百発百中、狙った女は逃さない。
落とした女の人数は数知れず……。
そんな百戦錬磨な瑛斗(21)も、ついに本気の愛に目覚める!!!
そのお相手は……
なんとまさかの、中学三年生!
天使のように愛らしい美兎を前に、百戦錬磨の瑛斗も思わずノックダウン。
パンツやおっぱいの誘惑に時々(いや、結構毎回)負けつつ、今日も瑛斗は純愛を貫く……っ!!
だってそれが、恋ってもんだろ!?
ちょっとエッチな、男性目線のラブコメ!
だけど——
そこにあるのは、紛れもなく純愛(下心有り)なんだ!
◆目次◆
1)これは、純愛(下心あり)物語>>01
2)ライバル、現る>>02
3)グッジョブ、山田>>03
4)レッツ、いちご狩り!>>04
5)お願い……先っちょだけ!>>05
6)江頭◯:50>>06
7)パンパンでパイパイ♡>>07
8)夕日に誓って、零した涙 >>08
9)ついに、ゴールイン!?(仮)>>09
10)給水・夏の陣2020>>10
11)悪魔、再び>>11
12)闘う男、スーパーマン>>12
13)それは綺麗な、花でした♡>>13
14)ハイセンス波平、輝きを添えて>>14
15)おっぱい星人、マシュマロン>>15
16)これはつまり、“愛”の試練>>16
17)腰振れ、ワンワン>>17
18)感動の名シーン(童話ver.)>>18
19)殺人級、サプライズ>>19
20)君の名は。>>20
21)それすなわち、愛の結晶>>21
22)イエス♡マイ・ワイフ>>22
23)滾るシェンロン、フライアウェイ>>23
24)これぞ、愛のパワー♡>>24
25)おまけ>>25
26)あとがき>>26
- 滾るシェンロン、フライアウェイ ( No.23 )
- 日時: 2024/08/20 04:19
- 名前: ねこ助 (ID: n8TUCoBB)
今日は、美兎ちゃんが受験した『葉練池高等学校』——略して”ハレ高”の合格発表の日。
電話での結果報告を待っているだけだなんて、そんな事できなかった俺は美兎ちゃんに内緒でハレ高までやって来ると、ドキドキと鼓動を高鳴らせながら校門前で美兎ちゃんの姿を探した。
きっと、美兎ちゃんなら無事に合格しているはずだろう。そうは思っても、やはり緊張はする。
嬉しそうに笑顔を咲かせる生徒達や、涙を流しながなら帰宅してゆく生徒達を横目に、美兎ちゃんとお揃いで購入した合格祈願の御守りをギュッと握りしめる。
何故、受験生でもない俺が御守りを持っているかだなんて、そんなの理由は一つしかない。ただ、美兎ちゃんとお揃いで持っていたかったからだ。
きっと、これで御利益も2倍なはず。
(うさぎちゃん……)
中々見つからない美兎ちゃんの姿を探し求めて、校門前をふらふらと彷徨い歩く。
いくら探しても見つからない美兎ちゃんに不安を募らせると、流れ出そうになる涙をグッと堪える。その顔は、堪えすぎるあまり般若の如く形相へと近付き、まるでメンチを切っているヤンキーのようだ。
黒縁眼鏡に七三という髪型で、その見た目にそぐわずヤンキーのような表情を見せるダサ男。そんな俺を見て、不審そうな顔を見せながら通り過ぎてゆく中学生達。
「——あっ! 瑛斗せんせぇ〜!」
———!!
待ち望んでいたその姿を目にした瞬間、俺はヤンキー般若から瞬時に破顔させると、両手を目一杯広げて天使を受け止める体制に入った。
今までにも何度か訪れたこの機会。きっと、今回も俺の期待も虚しく、天使ちゃんは直前になって小悪魔ちゃんへと変わるのだろう。
そうは思っても、ニヤケ顔が止まらない。
(さぁ……! 今日こそ俺の胸に飛び込んでおいで♡♡♡♡)
———ドン
「はへ……?」
その軽い衝撃と共に間抜けな声を漏らした俺は、両手を広げたままその場で固まった。
「瑛斗先生っ! ……受かったよ! ミトも衣知佳ちゃんも、2人共合格したよっ!」
美兎ちゃんの可愛らしい声を聞きながら、俺の鼻からタラリと流れ出る鼻血。
これは、夢なのだろうか——? その確かな温もりに下へと視線を移してみると、俺の身体にギュッとしがみつきながら満面の笑顔を咲かせている美兎ちゃんがいる。
(フギュッ……!!? グホォォォオーー!?♡!?♡!?♡ なんだコレ!? ……夢!!? 夢なのか!!? 俺は白昼夢でも見ているのか……っ!?♡!?♡)
「ガハァ……ッッ!!♡!!♡!!♡」
その信じがたい光景に思わず吐血すると、その口元と鼻血をこっそりと拭って平静を装う。
「っ、……合格おめでとう、美兎ちゃん」
「うんっ!」
大興奮の美兎ちゃんは、そう笑顔で答えながらもギュウギュウと俺を抱きしめる。
そんな姿が愛おしすぎて、今すぐにでも抱きしめ返したいところだが……。俺のシェンロンが今にも大暴れしてしまいそうで、正直それどころではない。
ズキズキと痛む股間をモジモジとさせながら、抱きしめたい欲望と我慢との狭間で、宙に浮かせたままの両手の指をワキワキとさせる。
(っ、……ぐあぁぁぁああーー!!! 今すぐ押し倒したいっ♡!!♡!!♡!!♡)
美兎ちゃんもその気のようだし、俺としては今すぐにでも押し倒してあげたいところなのだが……。
こんな場所でフライアウェイしてしまったら、間違いなく俺はすぐさま複数の先生達によって取り押さえられてしまうだろう。そしてそのまま、警察の元へとフライアウェイだ。
俺は獄中結婚だなんて、そんな未来は望んじゃいない。ここは何とか堪えるしかないのだ。
(静まれ……っ、俺の燃え滾るシェンロンよ……!!!)
蕩けた顔と般若の如く形相で、1人耐え忍ぶ俺の顔はまさに百面相状態。ここが学校でさえなければと、そればかりが悔やまれる。
「——あっ! 瑛斗先生だ!」
そんな悪魔の声と共に、ワラワラと集まり出した美兎ちゃんの同窓生達。その中には勿論市橋少年の姿もあるが、今の俺は幸せだからそんな事は大して気にはならない。
何より、全く鎮まる気配を見せないシェンロンを抑えるのに手一杯で、正直それどころではなかったりする。
「もぉ〜。美兎ったら、突然いなくならないでよね」
「ごめんね。瑛斗先生が居るのが見えたから、早く報告したくて……」
悪魔にそう返事を返しながらも、エヘヘッと笑って見せる美兎ちゃん。
そんなに俺に会いたかったとは……。こんなにも情熱的に迫られてしまっては、俺のシェンロンは鎮まるどころか大暴走だ。こんな場所で人目も憚らずに迫ってくるとは、なんて大胆なアプローチ。
(っ……なんてどエロい小悪魔ちゃんなんだ……ッッ♡♡♡♡)
その素敵な脳内変換に、更なる暴走の兆しを見せ始める俺のシェンロン。もはや、誰にも止められはしないだろう。
未だ俺に抱きついたままの美兎ちゃんの温もりに酔いしれながら、まるで拷問のような苦しみに小さく呻いては苦悶の表情を浮かべる。
もうこのままいっそ、美兎ちゃんと一緒に大人の世界へとフライアウェイしてしまおうかと、覚悟を決めて抱きしめ返そうとした——その時。
「もぉ〜、いつまで抱きしめてるの? 瑛斗先生、困ってるよ」
「……あっ! ホントだ! つい嬉しくって……。瑛斗先生、ごめんなさい」
悪魔の余計なお節介で、あっさりと離れてしまった美兎ちゃん。俺のこの覚悟は、一体どこへ着地すれば良いというのだろうか……?
(クソッッ!! っ、……この悪魔めっ!! 俺のせっかくの覚悟を邪魔しやがってっ!!!!)
着地点を見失った両手をそのままに、俺はその悔しさから涙を滲ませると天を仰いだ。
そもそも、すぐに抱きしめ返す勇気をもてなかった俺が悪いのだ。そんなこと頭の片隅ではわかっている。
できるものなら、5分前に戻って全てをやり直したい。
未だかつて、こんなにも悔やんだ事があっただろうか——? いや、ない。
「く、……っ」
あまりの悔しさから小さく声を漏らすと、両手を握り締めてプルプルと震える。
「……あ、そ〜だっ! 瑛斗先生! ミト受かったから、ご褒美にレストランに連れて行ってくれるんだよね!?」
後悔に打ちひしがれている俺に向けて、満面の笑顔を見せる美兎ちゃん。その瞳はキラキラと輝き、まるでこの世に2つとないダイアモンドのように美しい。
これは間違いなく、恋する乙女の瞳。
「……っ、うん♡」
俺は瞬間に破顔させると、美兎ちゃんを見つめてだらしなく微笑む。
「え〜! いいなぁ〜!」
「前から約束してたの。合格したら、美味しいレストランに連れて行ってくれるって。……瑛斗先生、衣知佳ちゃん達も一緒じゃダメ?」
———!!?
(フグゥ……ッッ!?♡!?♡!?♡)
突然の美兎ちゃんからのおねだり攻撃にビクリと飛び跳ねると、その可愛さの衝撃に気を失いかけてはフラリとよろける。
恋する乙女の猛追は留まる気配を見せないばかりか、こんなにも俺に向けて必死にアピールをするとは……。愛しすぎて、たまらない。
これはもう、シェンロン発動許可がおりたと言っても過言ではないだろう。
「……うん♡ (いつでも準備はできてるから)いいよ♡」
「えっ!? ホントにっ!? やったぁ〜!」
「良かったね、衣知佳ちゃん」
俺達の門出を祝ってくれているのか、それは大喜びで満面の笑顔を咲かせる悪魔。そんな悪魔の思いを、決して無駄にはしない。
俺は今から——。
(うさぎちゃんと一緒に、大人の世界へとフライアウェイだ……ッッ♡♡♡♡)
もはやまともに話しなど聞いていない俺は、アダルトな妄想に取り憑かれたまま不気味な笑顔を浮かべる。
もうすぐ美兎ちゃんも高校生。少しばかり早い気はするが、美兎ちゃんが望むのなら俺が応えないわけがない。
ゾロゾロと着いてくる生徒達に気付かないまま、その素敵な妄想にうっとりとしながらレストランへと向かい始めた俺。その目には、もはや隣にいる美兎ちゃんの姿しか映っていない。
予め行く予定でいた少し高めのレストランへと着いた時には、時すでに遅し。途中、美兎ちゃんが大勢いるように見えたのは、どうやら俺の錯覚ではなかったらしい。
何故か美兎ちゃんを含めた計5人の生徒達にご馳走する羽目になった俺は、その後予定していたシェンロンを発動することもなく、代わりに財布から大量の現金をフライアウェイさせたのだった。
- これぞ、愛のパワー♡ ( No.24 )
- 日時: 2024/08/20 16:40
- 名前: ねこ助 (ID: n8TUCoBB)
俺は電柱の影に身を潜めると、コッソリと顔を覗かせて目の前に見える中学校を眺めた。
美兎ちゃんの合格発表が無事に終わって二週間と少し。俺は、ちょっとした尾行を続けている。尾行とは言ったものの、要するにストーカーだ。
家庭教師をお役御免になってしまった今となっては、美兎ちゃんに会う口実が見つからないから仕方がないのだ。
定期的にラ◯ンのやり取りをしているとはいえ、そのほとんどが潰れた顔の『山田さん』の写真付き近況報告。そんな犬っコロの報告などではなく、俺は美兎ちゃんの写真付き近況報告が欲しいのだ。
それとついでに、好きなタイプと好きな体位と俺への気持ちも……是非とも教えてもらいたい。
「…………」
とはいえ、そんなこと本人に言えるはずもなく、悲しいかな気付けばストーカーとなっていた。俺にできることといえば、こうして陰ながら美兎ちゃんの身の安全を見守ることしかできないのだ。
今日も今日とて、安定のストーカーの真っ最中である。
自分の卒業式をさっさと済ませた俺は、飲み会の誘いを全て断ると美兎ちゃんの学校へとやって来た。なんという運命か、今日は美兎ちゃんの通う学校でも卒業式が行われているのだ。
待ちに待った美兎ちゃんの卒業式。本当なら堂々と嫁にもら……いや、祝ってあげたいところだが、それができないならせめて見守ってあげたい。
美兎ちゃんが大人へと一歩近付く、大切な日なのだから——。
(完全なる大人になる日は、俺がちゃんとお手伝いしてあげるからねっ♡♡♡♡)
「……グフッ♡ グフフフフッ♡♡♡」
電柱の影に身を潜めながら不気味に微笑むと、通りすがりの通行人が不審そうな目を向けて俺を避けてゆく。そんなことお構いなしで”貫通式”の妄想に酔いしれると、危うく垂れかけたヨダレをジュルリと啜る。
どうやら無事に卒業式を終えたらしく、チラホラと校門前へと集まり出した生徒達。最後の記念にと、同窓生らと楽しそうに写真を撮っている。
そんな光景を眺めながら、俺は美兎ちゃんの姿を探して懸命に目を凝らした。
———!
同窓生らに囲まれて、楽しそうに笑っている美兎ちゃん。その姿を捉えた俺の瞳は瞬時にハートを型取ると、鼻の下を目一杯伸ばして顔を蕩けさせた。
(あぁ……! 俺の愛すべき天使ちゃん!! 相変わらず、なんて可愛さだ……ッッ♡♡♡♡)
電柱の影からそっと右手を伸ばすと、その手に握った携帯で美兎ちゃんの姿を連写しまくる。こんな事をしていて言うのもなんだが、決して読者の皆んなには真似はしないで欲しい。
デレデレとした顔で連写しまくる今の俺の姿は、間違いなく変態ストーカーだ。皆んなにはこうはなって欲しくない。
「あぁ……っ、うさぎちゃん♡ 愛してるよ……♡♡♡♡」
溢れ出る想いに小さく吐息を漏らすと、目の前に見える美兎ちゃんに向けて愛を囁く。
許されるものなら、今すぐ君の目の前に姿を現してこの想いを告げたい。だが、今日の俺は生憎と未変装。『カテキョの時間』がないのだから当然と言えば当然なのだが、卒業式終わりに急いで駆け付けたので、ダサ男へと変装する余裕がなかったのだ。
スーツ姿とはいえ、チャラさが隠しきれていない今の俺では、美兎ちゃんの目の前に姿を表すなんて事はできない。
悔しさにグッと涙を堪えると、携帯越しに見える美兎ちゃんの姿を見つめてハァハァと身悶える。
———!!!
携帯に映し出された光景にピキリと青筋を立てると、みるみるうちに鬼のような形相へと変わってゆく俺の顔。右手に持った携帯をミシリと響かせると、俺は勢いよく校門前へと視線を移した。
そこに見えるのは、楽しそうに美兎ちゃんと話している少年の姿。その頬はほんのりと赤く染まり、明らかにデレデレとしているのがわかる。
(っ、市橋ぃぃぃいい……ッッ!!!!)
血走った瞳で市橋少年を睨み付けると、食いしばった歯をギリギリと鳴らして身体を震えさせる。
この少年の存在をすっかりと忘れてしまっていたが、確かコイツもハレ高に受かったと言っていた。ということは、今後もおそらく美兎ちゃんへのアプローチを続けるつもりでいるのだろう。
——そんな事、当然この俺が許す訳もない。
(ぶっ、殺す……っっ!!!!)
「……ワンッ!」
———!!?
突然の犬の鳴き声に驚いてビクリと飛び跳ねると、隠れていた電柱から飛び出してしまった俺。犬の飼い主らしきお婆さんは、そんな俺に向けて「あらあら、ごめんなさいねぇ」と告げると、そのまま柴犬を連れて通り過ぎてゆく。
バクバクと脈打つ胸元にそっと手を添えると、チラリと前方にある校門前へと視線を向けてみる。すると、犬の鳴き声につられたらしき数人の生徒達が、何事かとこちらへ視線を向けている。
その中には、なんと美兎ちゃんの姿も——。
(!!!? っ、……ヤ、ヤやヤや、ヤベェ……!?△!?♯!?)
焦った俺は、1人その場であたふたとする。
もう一度電柱の影に身を隠そうかとも一瞬考えるが、そんな事をしたって今更遅い。むしろ、今ここでそんな事をしてしまえば逆に怪しさ全開だ。
パニックに陥った俺は、バクバクと鼓動を跳ねさせたまま呆然と立ち尽くした。
(どどどど、どうすればいいんだ……っっ!!?!!?)
何故か、俺の頭の中で警察に連れて行かれるシーンが思い浮かび、ヒヤリと嫌な汗が額を流れる。
これは、予知夢——。これが俺の、数分後の未来だというのだろうか……?
(うさぎちゃん……っ)
数分後の自分の未来を案じて、美兎ちゃんを見つめたまま薄っすらと涙を滲ませる。そんな悲しいお別れだけは、絶対に御免だ。
だが、この状況を打破する術が見つからない。とりあえず、何事もなく過ぎ去ることを祈るしかないのだ。
ここまでで、およそ3秒。やたらと長く感じる3秒間だ。
俺はゴクリと小さく唾を飲み込むと、何事もなかったかのように美兎ちゃんから視線を逸らそうとした、その時——。
「——瑛斗先生っ!」
———!!?
俺の元へと駆け寄って来る美兎ちゃんの姿を見て、俺はビクリと肩を揺らすと固まった。
「え……?」
確かに今の俺は、ダサ男の変装をしていない。なのに、そんな俺に向けて『瑛斗先生』と言った美兎ちゃん。
俺の聞き間違えだろうか……?
そのまま俺の目の前までやって来ると、ピタリと足を止めた美兎ちゃん。そんな姿をジッと見つめながら、俺はゆっくりと開かれてゆく口元に集中すると固唾を飲んだ。
「今日は眼鏡、掛けてないんだね?」
「……え?」
「卒業式、来てくれてありがとう」
「え? う、うん。……卒業、おめでとう」
この状況が上手く飲み込めない俺は、とりあえず美兎ちゃんに向けてヘラリと笑ってみせる。
「え!? 嘘っ! 瑛斗先生なの!? ……凄いイケメンじゃんっ!」
「こんにちは! この間はご馳走様でした! わぁ……! やっぱり凄くイケメンですね!」
悪魔を筆頭に、ワラワラと集まり出した市橋少年with生徒達。沢山の生徒達に囲まれて、何故かそのまま記念撮影へと突入。もう、何が何やらさっぱりわからない。
だが、警察に連れて行かれる未来は回避できたようだ。
それにしても、どうして今の俺を見て”瑛斗先生”だとわかったのだろうか……?
チラリと美兎ちゃんの姿を盗み見ると、そんな俺と視線を合わせた美兎ちゃんがニッコリと微笑んだ。
(フゴォォォオ……ッッ♡!?♡!?♡!?♡ もう……っ、そんな事どーでもいい!!!!)
美兎ちゃんの可愛い笑顔にノックアウトされた俺は、ふらつく足元をグッと堪えると、少しばかり垂れてしまったヨダレをそっと拭った。
俺に向けて微笑んでくれる。その事実さえあれば、他の事などどうでもいいのだ。
(愛してる♡ 愛してる♡ 愛してる♡ 愛してる♡ ……愛してるよ♡ うさぎちゃんッッ♡♡♡♡)
その後、生徒達と別れた美兎ちゃんを連れて帰路につく道すがら、隣りを歩く美兎ちゃんを見つめながら呪文のような愛を囁く。
「……美兎ちゃん。よく、俺だってわかったね?」
「うんっ。知ってたから」
「……え?」
(知ってたって……、何を……?)
バクバクとし始めた鼓動を感じながら、隣にいる美兎ちゃんを見つめて小さくゴクリと喉を鳴らす。
「瑛斗先生が変装してるの、ミト知ってたの」
「……えっ!!?」
(し、ししし、知ってた……!!? エッ!!? いい、いつから!?△!?♯!?◯!?)
ズンドコズンドコと鼓動を鳴り響かせながら、パニックで1人その場であたふたとする。
一体、美兎ちゃんはいつから気付いていたというのか……。
もしや、思わず目の前に飛び出てしまった文化祭の時? それとも、あの夏祭りの時だろうか……? いや、もしかしたら最初から——!
やましい事だらけで、もはや尋常じゃない程の音を立て始めた俺の心臓。このままでは、心臓破裂で爆死してしまいそうだ。
隣にいる美兎ちゃんを見つめながら、その口が開かれるのを緊張した面持ちで見守る。
「文化祭の時にね……気付いちゃったの。何で変装してるのかは知らないけど。きっと、何か事情があるのかな〜? って」
そう言ってフフッと笑って見せた美兎ちゃん。とりあえず、文化祭の時と聞いて一安心する。
どうやら、夏祭りのマシュマロ事件やブランコでの初対面は、俺と同一人物だとは思われていないらしい。それさえ隠蔽できるのなら、正体がバレようと何ら問題はないのだ。
普段のチャラ男バージョンの俺では怖がられるかと思って変装していたが、どうやら不要な心配だったらしい。とはいえ、これもダサ男の俺として築き上げてきた、確固たる信頼があってこそなのだ。
——そう! これこそが、愛のパワー♡♡♡♡
「そ、そうなんだよね……ちょっと事情があって。それにしても、よくわかったね」
「うん。だって、左目のホクロが同じだったもん。声だって同じだし」
「ハハッ。そっか、声は変えられないもんね。……それにしても凄いね、皆んな気付かなかったのに。健達だって、言われなきゃわからないって言ってたよ」
「うん。……ミトね、瑛斗先生の事ちゃんと見てるよ?」
そう告げると、ほんのりと赤く頬を染めた美兎ちゃん。これは、俺に恋していると思って間違いないだろう。
俺の瞳に映っている美兎ちゃんから確かに感じる、俺への愛情。これこそが、待ちに待っていた——!
(今度こそ正真正銘の、愛の告白……ッッ!!?♡♡!!?♡♡)
ズンドコズンドコと鼓動を鳴り響かせながら、はやる気持ちを抑えて冷静を装う。
「……え? それって、どういう——」
「瑛斗先生っ。帰ったら、山田さんのお散歩に行こうね?」
エヘヘッと微笑むと、小走りに前を駆けて行く美兎ちゃん。
(…………エッ!!?)
置き去りにされた心のまま暫し呆然とその場に佇むと、慌てて美兎ちゃんの背中を追いかける。
「み、美兎ちゃん待って〜!」
相変わらずの小悪魔っぷりに困惑しつつも、まんざらでもない追いかけっこにニヤリと微笑む。
これはつまり、美兎ちゃんを捕まえればそのまま俺のモノにしてもいいと、つまりはそういうプレイなのだ。
(全く……悪戯好きな、困ったちゃんだぜ……っ♡♡♡♡♡)
そこはかとなく深い愛のパワーで、チャラ男の姿の俺を受け入れてくれた美兎ちゃん。
ならばこの年齢差も障害さえも、全て愛のパワーで乗り越えてみせる。それが男としての、俺の果たすべき責任なのだ。
「グフッ♡ グフフフフ……ッッ♡♡♡♡」
不気味な笑顔を浮かべながら、全速力で美兎ちゃんの背中を追いかける。性別や体格差を考えるとフェアではないかもしれないが、やはりここは本気でいかせてもらおう。
なにせ、美兎ちゃんが俺のモノになるかどうかが賭かっているのだ。もはや、笑い声が止まらない。
不気味な笑い声を響かせながら走り去る俺を見て、通りすがりの人達が不審そうな目を向ける。そんな視線に気付かないまま、美兎ちゃんとの追いかけっこを堪能する俺。
その顔は、溢れんばかりの幸せな笑顔で満ちていた。
——後日。『不気味な男から女の子が逃げていた』という噂を耳にした俺。
その噂がまさか自分だとも気付かないまま、美兎ちゃんの身の安全を心配した俺は、その後も暫く護衛という名のストーカーを続けるのだった。
—完—
- おまけ ( No.25 )
- 日時: 2024/08/20 16:43
- 名前: ねこ助 (ID: n8TUCoBB)
「おいっ! これで終わりって嘘だろ!? っ、……俺と美兎ちゃんのハッピーライフは!!? これからじゃねぇーのかよっ!!?」
「まぁまぁ……。仕方ないじゃん、年齢差考えたら」
「……あぁ!? たかが7歳だろっ! んなもん、愛があれば関係ねぇ!!」
「いやいや、関係あるから。相手はまだ15歳なんだぞ? どう考えても犯罪だろ……」
「この際さ、今年高校卒業した子に乗り換えるとか! そしたらJKの制服もまだいけるし…………え、それマジ最高じゃん♡」
不気味な笑顔のままトリップし始めた健を掴むと、般若の如く形相でその首を締め上げる。すると、「ぐぇっ!」と小さく呻いた健が激しくタップする。
「まぁ、乗り換えろとまでは言わないけどさ。実際、相手の年齢考えたら無理だろ」
冷静な顔をした大和が、激しく揉み合う俺達に向けて冷めた視線を送ると小さく息を吐いた。
そんなこと、言われなくても俺が一番よくわかっている。だからこそ、この気持ちを伝えることができないのだ。
せめて、美兎ちゃんから愛を告げてくれれば——。
俺は、いつだって受け入れる覚悟も準備も満タンだ。むしろ、準備満タンすぎて今にもはち切れてしまいそうな程にパンパン。
それは勿論、この溢れん程の愛と下半身が……。連動しているのだから、こればかりは仕方がない。
「グォォォオーー!!! ふざけんなっ! ……俺のこの気持ち、どーしてくれんだっ!!!」
悔しさに大きく雄叫びを上げると、健の首を締め上げながら滝のような涙を流す。ここまで我慢してきたというのに、こんな結末ではあんまりだ。
俺の『あま〜い新婚ライフ♡』は何処へ……?
「……おいっ! 俺を殺す気かよ!? せっかくのエンディングだってゆーのに、死んでたまるかっ!」
力の抜けた俺の腕から無事に脱出した健は、ハァハァと息を荒げながら首元を抑える。
そんな健が死のうが生きようが、今の俺の悔しさに比べたらどうだっていい問題だが、やはり一応はラブコメ。ここで死なれてしまってはジャンルが変わってしまうので、無事に生還したのなら安心だ。
そんな事より、ラブコメだというのにラブが圧倒的に不足していた事の方が問題だ。
美兎ちゃんからの俺へのラブは? 俺達のラブラブな新婚ライフは? 一体、どこへ消えてしまったんだ——!
「てことで、最後まで煩い2人だったけど……。付き合ってくれた皆さん、本当にありがとう」
「……おいっ! 勝手に終わらせてんじゃねぇよ、大和! 俺はまだ納得してねぇーからなっ!!」
「え、待って待って! 俺も俺も! ……皆んな! 最後までありがとなっ! 俺の可愛い彼女を見せてあげれなかったのは本当に残念だったけ——」
「お前に彼女なんていねぇーだろ!」
「っ、……これからできる予定なんだよっ!」
「俺だってこれから美兎ちゃんとラブラブな——」
「もう……ホント煩い。最後くらい2人共ちゃんとしてくれよ。ほら、いくよ? ……せーの」
「「「今まで本当にありがとう!」」」
最後までお付き合い下さり、本当にありがとうございました。
—完—
- あとがき ( No.26 )
- 日時: 2024/08/21 06:21
- 名前: ねこ助 (ID: PsjPnYL4)
ラストまでのご愛読、ありがとうございました( ̄^ ̄)ゞ
やたらとパンチラばかり出てくる、青年漫画のようなラブコメが書いてみたい! との思いから書いてみた、【君バニ】。
いかがだったでしょうか?
作者としては、素のままに書けたのでとっても楽でした✌︎( ˙-˙ )✌︎
残念ながら、美兎の年齢を考えると瑛人とカップリングさせる結末は書けませんでしたが……。実は、続きである2ndシーズンは既に考えてあったりします。
英語教師として、美兎の通う高校に就職した瑛斗。そこで巻き起こる、パンチラやおっぱいの誘惑! そして、瑛斗の恋の行方は——? てな感じです。
”教師”と”生徒”であることに変わりはないのですが、日常的に側にいられる&美兎の年齢が上がることで、これまで書けなかった部分も書けるかも…? なーんて(°▽°)
新しいキャラも登場します。
ラストまで既に構想は練ってあるので、いつか機会があったら執筆してみたいと思っています。
はたして、需要はあるのだろうか…?( ˊᵕˋ ;)
それでは、またいつの日か会える時まで——暫しのお別れです。
最後まで瑛斗と美兎を見守ってくれた読者の皆様、本当にありがとうございました(*゚▽゚)ノ
P.s
【J・タナトス】名義でホラーも投稿しているので
興味のある方は読んで頂けたら嬉しいです(*^^*)
著:ねこ助
- ありがとうございます( *ノ_ _)ノノ╮*_ _)╮アリガ ( No.27 )
- 日時: 2024/09/20 09:03
- 名前: ねこ助 (ID: LwOm547C)
小説大会2024年夏。金賞🥇
投票してくれた皆様、本当にありがとうございました(⸝⸝› з ‹⸝⸝)♡
また、現在投稿中の【ぱぴLove】の方も
管理人・福管理人賞を頂き、嬉しい限りです(๑˃꒳˂๑)
これからも皆様からご愛読頂ける作品が作れるよう、日々精進していきたいと思います✨
なんかホント、こんなくだらない変態ラブコメディなのに…www
ありがとうございました!!!(*/□\*)♡