コメディ・ライト小説(新)
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- ぱぴLove〜私の幼なじみはちょっと変〜
- 日時: 2024/09/24 01:29
- 名前: ねこ助 (ID: tOcod3bA)
★あらすじ★
見た目は完璧な王子様。
だけど、中身はちょっと変な残念イケメン。
そんな幼なじみに溺愛される美少女の物語——。
お隣りさん同士で、小さな頃から幼なじみの花音と響。
昔からちょっと変わっている響の思考は、長年の付き合いでも理解が不能!?
そんな響に溺愛される花音は、今日もやっぱり振り回される……!
嫌よ嫌よも好きのうち!?
基本甘くて、たまに笑える。そんな二人の恋模様。
◆目次◆
♡第一章♡
1)私の幼なじみはちょっと変>>01
2)私のお兄ちゃんは過保護なんです>>02
3)君はやっぱり変でした①>>03
4)君はやっぱり変でした②>>04
5)君はやっぱりヒーローでした>>05
6)そんな君が気になります①>>06
7)そんな君が気になります②>>07
8)君はやっぱり凄く変①>>08
9)君はやっぱり凄く変②>>09
10)君は私の彼氏でした!?①>>10
11)君は私の彼氏でした!?②>>11
12)そんな君が大好きです①>>12
13)そんな君が大好きです②>>13
14)そんな君が大好きです③>>14
15)そんな君が大好きです④>>15
♡第二章♡
16)君は変な王子様①>>16
17)君は変な王子様②>>17
18)君とハッピーバースディ>>18
19)君ととんでもナイト>>19
20)君と私とロバと……①>>20
21)君と私とロバと……②>>21
22)恋人はサンタクロース①>>22
23)恋人はサンタクロース②>>23
24)恋人はサンタクロース③>>24
25)煩悩はつまり子煩悩!?①>>25
26)煩悩はつまり子煩悩!?②>>26
27)煩悩はつまり子煩悩!?③>>27
28)君とハッピーバレンタイン①>>28
- 恋人ふサンタクロース③ ( No.24 )
- 日時: 2024/09/01 22:11
- 名前: ねこ助 (ID: S55y0ege)
サンタクロースの衣装へと着替え終えた私は、左手を目線の高さまで掲げると貰ったばかりの指輪を眺めた。
その指輪はとてもシンプルな作りで、控えめなハートの形をした飾りの中央には一粒の小さな石がはめ込んである。
シンプルだけど、決して安物には見えない。きっと、それなりの値段はしたはずだ。
(そういえば、まだちゃんとお礼を言ってなかったかも……。ちゃんとお礼言わなくちゃ)
眺めていた指輪から視線を外すと、私は目の前のノブに手を掛けて廊下へと続く扉を開いた。
「ひぃくん」
扉のすぐ近くで待っていたひぃくんは、私の姿を捉えると途端に瞳をキラキラと輝かせた。
「花音っ、可愛いー!」
そう言ってフニャッと微笑むひぃくん。
私はフフッと照れた様な笑みを見せると、そのままひぃくんへ向けて口を開いた。
「ひぃくん、指輪ありがとう。絶対に大切にするからね」
私が言葉を言い終えた次の瞬間、ガバッと抱きついてきたひぃくん。
────!!
その突然の行動に一瞬驚きつつも、ひぃくんの背中にそっと腕を回してみる。
「あーっ! もぅ、可愛すぎるよ〜! 今すぐ結婚したいよー!」
(うーん……。それはちょっと困るかなぁ)
そんな事を思いながらも、フフッと小さく笑い声を漏らす。
すると、抱きしめる力をふっと緩めたひぃくんは、身体をほんの少しだけ離すと優しい眼差しを向けて小さく微笑んだ。
チュッと小さなリップ音を響かせて、軽く触れるだけのキスをしたひぃくん。
「……っ」
「可愛いー。トマトみたいだねっ」
クスッと笑ったひぃくんは、そう告げると私の頬をツンっと突く。
未だに何度しても慣れない私は、真っ赤になっているのであろう顔を隠すようにして少しだけ俯いた。
(……もぅっ。言わないでよ、ひぃくんのバカッ。余計に恥ずかしいじゃない……っ)
そんな私の様子を見てクスクスと笑い声を漏らしたひぃくんは、俯いたままの私の手を取るとベッドの上へと座らせた。
「ねぇサンタさん?」
その声に反応してひぃくんの方を見てみると、フニャッと笑いながら小首を傾げて私を見ている。
「なぁに?」
どうやら、今の私はサンタさんという設定らしい。それがなんだか可笑しくて、思わずクスリと笑い声を漏らす。
「プレゼントちょーだい?」
「……へ?」
ニコニコと微笑むひぃくんを前に、焦った私は間抜けな声を溢すと瞳を泳がせた。
(えっ……。コスプレするのがプレゼントじゃなかったの? どうしよう……っ私、本当にプレゼント用意してないのに……)
申し訳ない気持ちで押し潰されそうになりながら、眉尻を下げた情けない顔でひぃくんを見つめる。
「あのね、ひぃくん。私……、本当にプレゼント用意してないの。ごめんなさい」
自分の不甲斐なさに反省しながら謝罪の言葉を述べると、クスッと笑い声を漏らしたひぃくんが私の耳元で甘く囁いた。
「プレゼントならちゃんとあるよ?」
「え……?」
────!?
気付けば、ベッドの上で仰向け状態になっている私。
目の前には、ニコニコと微笑むひぃくんの姿。その背後に広がるのは、ひぃくんの部屋の天井らしきもの。
(……え? この状況は……一体、何……?)
突然の出来事に上手く処理しきれない私は、目の前にいるひぃくんをただ呆然と見上げる。
「プレゼントは花音だよ?」
私の上に跨っているひぃくんは、フニャッと嬉しそうに微笑むと未だ処理しきれずに呆然とする私に向かって平然とそう言い放った。
(……っ!!? えっ!? えーーっっ!!? まっ、まままっ、ちょっ……待ってっ! むっ、む、ムリムリムリムリーー!!! ひぃくんの事は好きだけど……大好きだけど……っ! ま、まだ心の準備がっ……!!!)
この状況が何を意味するのか察した私は、一人脳内でパニックを起こす。恥ずかしさで一瞬真っ赤に染まった顔は瞬時に青へと変わり、緊張からビシリと硬直してしまった身体はピクリとも動かなくなった。
そんな私を愛おしそうに見つめるひぃくんは、緊張で強張る私の頬を優しく撫でると口を開いた。
「大丈夫だよ、花音。心配しないで。凄く可愛いから」
そう告げると、とても幸せそうな顔でフニャッと微笑んだひぃくん。
(…………)
この状況下で、私が今心配しているのはどう考えたって己の可愛さである訳がない。それなのに、そんな訳のわからない事を言っているひぃくん。
(それ、本気で言ってるの……?)
あまりにも的外れなひぃくんの言葉に、軽く絶望感を覚える。
それでも、青ざめたままジッと固まるだけの私は、ゆっくりと近付いてくるひぃくんの姿を、ただ眺めていることしかできなかった。
やけにスローモーションに見えるその動きを、ただジッと見開いた瞳で追いかける事しかできない私。
(っど、どどど、どうしよう……っ。無理だよ……っ。私……、まだ無理っ……!!!)
間近に迫ったひぃくんの顔を前に、ギュッと固く瞼を閉じた──その時。
────ドンッ!!!! ────!!?
すぐ間近で鳴り響いた物凄い音に驚き、私は閉じていた瞼を勢いよく全開にさせた。
(……いっ、今のは一体、何っ!!?)
「……あっ」
私の上に跨っているひぃくんが、小さく声を漏らした。その視線は、つい先程までは私を見つめていたというのに、今はベッド傍へと向けられている。
そこにあるのは、私の部屋へと侵入する時にひぃくんが使用している窓。何やら嫌な予感がした私は、ひぃくんの視線を辿ってゆっくりと窓の方へと首を動かしてみた。
────!!?!!?
「ヒィッ……!!?」
あまりの恐ろしさに、小さく声を漏らしてブルリと震えた私。そんな私の視界に飛び込んできたのは、それは世にも恐ろしい光景だった。
窓にへばりついて私達を凝視する鬼──もとい、鬼の形相で怒り狂っているお兄ちゃんが、血走った瞳で私達を凝視している姿だったのだから。
- 煩悩はつまり子煩悩!?① ( No.25 )
- 日時: 2024/09/10 07:14
- 名前: ねこ助 (ID: m3Hl5NzI)
ソワソワと落ち着かない様子で、チラリと掛け時計に目を向ける。
(……ひぃくんまだかなぁ。彩奈はもうとっくに来てるのに。斗真くん達との約束の時間まで、あと三十分しかないよ)
大晦日の今日。皆んなでカウントダウンに行く約束をしている私は、未だに姿を現さないひぃくんに焦りを感じ始めていた。
斗真くん達と待ち合わせをしている駅までは、自宅から出発すると二十分はかかってしまう。
(もうギリギリだよ……)
痺れを切らした私は、椅子から立ち上がろうとテーブルに手を付いた。
「私、ちょっと迎えに行っ──」
「ダメ」
間髪入れずにそう告げると、ギロリと鋭い視線を向けるお兄ちゃん。
私は顔を引きつらせると、立ち上がりかけていた腰を下ろして椅子へと座り直す。
(そっ、そんなに怖い顔しなくたっていいじゃん。ちょっと迎えに行くだけなのに……)
ちょうど一週間前のクリスマスの日以来、ひぃくんの家への立ち入りを禁止されてしまった私。正直あの日は私も助かった。だけど、あの日のお兄ちゃんを思い出すと……今でも恐ろしい。
それを思い出した私は、あまりの恐怖からブルリと身体を震わせた。
「寒いの?」
震える私に気付いた彩奈が、心配そうに私の顔を覗き込む。
「だ、大丈夫だよ? ヒートテック二枚も着てるし」
心配させまいとニッコリと微笑んで返事を返すと、彩奈の隣に座っているお兄ちゃんが口を開いた。
「アイスココアなんて飲んでるからだろ? ほら。風邪ひくなよ」
呆れたような顔をしながらも、自分の飲みかけの紅茶を私に向けて差し出すお兄ちゃん。
湯気が出ていてとても熱そうだ。
「あ、ありがとう……」
(震えたのは貴方のせいです)
なんてことは、口が避けても言えない。暫くはこのトラウマが続きそうだ。
ヘラリと引きつった笑顔を見せた私は、熱々の紅茶にフーフーと息を吹きかけるとコクリと一口飲み込んだ。
◆◆◆
その後、なんとか時間ギリギリで間に合った私達は、無事に斗真君達と合流すると目的地だった神社へとやって来た。
「……うわぁーっ! やっぱり凄い混んでるね!」
カウントダウンの為に集まった多くの人集りを見て、私は大きく感嘆の声を上げた。
先の見えない行列を眺めた後、とりあえず最後尾らしき列に並び始めた私達。
(ここって、まだ神社の入り口付近だよね?)
キョロキョロと辺りを見回してみても、先頭の様子なんてちっとも分からない。諦めた私は、今度は参道脇に並んだ何件もの出店を物色し始めた。
(どれもとっても美味しそう)
その美味しそうな食べ物の匂いにつられて、グゥ〜ッと音を鳴らした私のお腹。
(お腹空いたなぁ……)
ペコペコになったお腹を摩りながら出店をジッと眺めていると、そんな私に気付いたひぃくんが話しかけてきた。
「お腹空いちゃったねー。何か買いに行こっか?」
「うんっ!」
勢いよく頷くと、そんな私を見てクスリと微笑んだひぃくん。
「並んでおくから、買いたい人は行って来な」
私達のやり取りを横で見ていたお兄ちゃんは、斗真くん達に向けてそう告げると優しく微笑んだ。
「「ありがとうございます」」
お兄ちゃんの言葉を受けて、ペコリと軽く会釈をする斗真くん達。
結局、お兄ちゃんと彩奈だけを残して出店に向かう事にした私達は、それぞれが目当ての出店へと向かって散り散りに歩き始めた。勿論、私はひぃくんと一緒に。
「適当に二人分買ってきて」と言われて、お兄ちゃんから渡された五千円札をポケットへとしまうと、目の前に立ち並ぶ出店を眺めてキョロキョロとする。
(何食べようかなー? こんなにあると迷っちゃうなぁ)
そんな事を考えながらも、緩んだ顔をニヤケさせる。
「ねぇねぇ、花音ちゃん。花音ちゃんのお兄さんて……凄いイケメンだよねっ」
私のすぐ傍へと近寄って来た志帆ちゃんは、そう小さく耳元で囁く。
「お兄さんてさ、彼女いるのかな?」
「んー……どうなんだろう?」
そんな曖昧な返事を返しながらチラリと隣を見てみると、ほんのりと赤く頬を染めた志帆ちゃんが「カッコイイなぁ〜」なんて言いながらニヤニヤとしている。
クリスマスイブの日に、何処へ出掛けていたお兄ちゃん。
(……彼女でもいるのかなぁ?)
チラリと後ろを振り返ると、少し離れた先で彩奈と二人で列に並んでいるお兄ちゃんを眺める。
(私にはダメって言ってたくせに……。自分だけ堂々とクリスマスデートなんて、許さないんだからっ!)
自分だってコッソリとひぃくんとのデートを楽しんでいたというのに、そんな事も忘れてプンプンと怒る私。彩奈と楽しそうに話しているお兄ちゃんを眺めて、プクッと頬を膨らませる。
「花音、どうしたの?」
私の顔を覗き込みながら、小首を傾げてクスクスと笑い声を漏らすひぃくん。
「ううん、何でもないよ」
「ちゃんと前見てないと危ないよ?」
「うん」
ひぃくんに向けてニッコリと微笑むと、目の前に差し出されたひぃくんの手を握った私は、再び出店に向かって歩みを進めた。
- 煩悩はつまり子煩悩!?② ( No.26 )
- 日時: 2024/09/15 18:32
- 名前: ねこ助 (ID: 5kDSbOyc)
結局無難にたこ焼きを買ってきた私は、手袋を外すと割り箸を二つに割いた。
「いただきま〜すっ」
ホカホカと湯気を出すたこ焼きを一つ掴むと、ニコニコと上機嫌な顔をして自分の口へと近づける。
「あっ、チュッ……!」
唇に触れた瞬間。余りの熱さに変な声を出してビクリと肩を揺らした私は、そのままたこ焼きを器へ戻すと自分の唇を抑えた。
(一口で食べようとしなくて良かった……)
まだ少しヒリヒリとする唇を摩りながら、手元のたこ焼きをジッと見つめる。
(んー。恐るべし、たこ焼き)
一人そんな事を考えていると、隣にいるひぃくんが焦った様な声を出した。
「花音、大丈夫!? ちゃんとフーフーしなきゃダメだよ?」
「うん……」
「今やってあげるからね」
そう言うと、自分の箸でたこ焼きを半分に割ったひぃくん。その内の一つを掴むと、フーフーと息を吹きかけて冷ました後に私の目の前へと差し出す。
「えっ……」
「はい、あーん」
フニャッと微笑んで小首を傾げるひぃくん。
(いやいやいや。それは恥ずかしいから、ひぃくん。……だってほら、皆んながこっち見てるし)
口元をヒクリと引きつらせながら周りに目をやると、クラスの子達や斗真くん達と視線がぶつかる。
「ひぃくん……それはいいよ、自分で食べれるから」
「遠慮しなくていいんだよ? はい、あーん」
「いや、遠慮とかじゃなくて……。恥ずかしいから辞めてよ、ひぃくん。皆んなが見てるよ」
「え?」
私の言葉を受けて斗真くん達に視線を移したひぃくんは、ニッコリと微笑むと口を開いた。
「大丈夫だよ? 誰も見てないから」
ひぃくんの発した言葉で、私達を見ていた全員がハッと焦った様にして視線を外した。
(……なんなのよ、その力技)
ひぃくんのその強引さに若干引きつつも、私へと視線を戻したひぃくんを見上げて口を開く。
「一人で食べれるから大丈夫だよ」
「ダメだよ、花音がやると火傷しちゃうから」
「本当に大丈夫だから」
「大丈夫じゃないよー」
そんな言い合いをひたすら繰り返す私達。その後どうにかひぃくんを説得した私は、残念がるひぃくんを横目にホッと息を吐いた。
(これでやっと食べれるよ……)
手元のたこ焼きを見つめて改めて小さく息を吐くと、先程ひぃくんが割ってくれたたこ焼きを一つ掴んで口の中へと入れる。
寒空の下で食べるホカホカのたこ焼きは、お預けをくらった分とても美味しく感じる。
(美味しい……。幸せぇ)
たこ焼きの入った口をモグモグとさせながら、途端に笑顔になった私。
「ねぇ、花音ちゃん。その指輪って響先輩に貰ったの?」
その声に視線を上げてみると、目の前にいる志帆ちゃんが私の左手を見ている。
「えっ? あ……、うん。そうだよ」
「ひょっとして、クリスマスプレゼント?」
「うん」
「いいなぁ〜! 羨ましい〜!」
そう言ってキャッキャと騒ぎ始めた志帆ちゃん。その姿が何だかとても可愛くて、思わずクスリと声を漏らす。
「花音ちゃんは何をあげたの!?」
「えっ? っ……、えっと……」
キラキラと瞳を輝かせて私を見つめている志帆ちゃん。そんな志帆ちゃんを前に、瞳を泳がせると一人オロオロとする。
(……何もあげてません)
プレゼントを用意するのを忘れた私は、結局未だに何もあげていないだなんて……。目の前にいる志帆ちゃんの姿を見ると、どうにも言いづらい。
キラキラとした瞳を向けて、私の言葉を待っている志帆ちゃん。私は引きつった笑顔でアハハと小さく声を漏らすと、コクリと小さく唾を飲み込んで覚悟を決める。
「実はね、私何も──」
「プレゼントは花音だよっ」
────!!?
私の言葉を遮って、突然会話に入ってきたひぃくん。
「えっ? それって……。キャーッ! やだもぉ〜! 変な事聞いちゃってごめんね、花音ちゃんっ!」
私の肩をパシパシと叩きながら、ほんのりと赤くなった頬を片手で抑える志帆ちゃん。
(……えっ!? ち、違う違う違うっ! 違うよ、志帆ちゃんっ!)
志帆ちゃんのその反応を見て焦った私は、カッと両目を見開くとそのまま口を開いた。
「ちっ、違うよ!? 違うからね、志帆ちゃんっ!!」
「もぉ〜! 照れなくてもいいってばぁ!」
私の言葉など全く信じていない様子の志帆ちゃん。気付けば、斗真くん達まで私達に注目をしている。
「ち……っ、違うのっ! ……っ本当に違うからっっ!!」
真っ赤になってそう訴えてみるも、そんな私が余計に怪しかったのか、志帆ちゃんはニヤニヤとした顔を見せると、「はいはい。照れちゃってカワイイんだからぁ〜」なんて言い出す始末だ。
「照れちゃって可愛いねー。花音っ」
フニャッと笑ったひぃくんは、そう告げると私の頬をツンっと突く。
(ひぃくん……お願いだから、もうこれ以上皆んなの前で変な事を言うのはやめてよ……っ)
私の横で呑気にニコニコと微笑んでいるひぃくん。
そんなひぃくんを横目に、どんどん悪化してゆく状況にどうすればいいのか分からず、ただ呆然とする私。
「おい、響。嘘つくなよな」
この状況を見かねたのか、突然会話に入ってきたお兄ちゃん。きっと、お兄ちゃんがなんとかしてくれるはず。
そう思った私は、お兄ちゃんへ向けて期待の眼差しを向ける。
「嘘なんてついてないよー。プレゼントは花音だったよ? サンタさんの格好した花音、可愛かったなぁー 」
そう言ってフニャッと笑ったひぃくんは、あの日の出来事を思い出しているのか、「あ〜、可愛かったなー。また見たいなー」なんて呑気にニコニコと笑っている。
こうして改めて言われてみると、コスプレをした事実がなんだか急激に恥ずかしくなってくる。既に赤く染まっていた私の顔は、みるみる内にその赤みを増していった。
(そんな事まで皆んなの前でペラペラと話さないでよ……っ)
ひぃくんのその呑気さを怨めしく思いながらも、恥ずかしさからキュッと固く口を結ぶ。
「この間は翔に邪魔されちゃったから、残念だったなー」
「お前は鐘でも突いてその煩悩を今すぐ消し去ってこい!」
そう言ってひぃくんをギロリと睨むお兄ちゃん。
(何でもいいから……っ。もう、この会話を終わらせて下さい)
一向に話題の変わらない状況に、ただただ私は祈り続ける。
「バカだなー、翔は。俺は子煩悩なんだよ?」
「……は?」
意味の分からないことを言い出したひぃくんに、一瞬怯んだお兄ちゃん。それでも、もう一度ギロリとひぃくんを睨み直すと口を開いた。
「花音だって嫌がってただろ!」
「嫌がってなんかないよ?」
「嘘つけっ! 真っ青な顔してビビリまくってただろ!」
(あぁ……、お願い……っ。もうこれ以上、皆んなの前で色々言うのはやめて……っ)
益々悪くなってしまったこの状況に、恥ずかしさを通り越して絶望感すら覚える。
(最悪だ……っ、なんて最悪なの……。お兄ちゃんもひぃくんも、お願いだからもう黙って……っ)
「そんな事ないよねー? 花音」
────!?
突然、私に向かって話しかけてきたひぃくんの声に驚き、ビクリと小さく震えた私の身体。
チラリと斗真くん達を見渡してみると、皆んなが私の回答に注目して視線を向けている。
「……花音?」
何も答えようとしない私に不安になったのか、途端に悲しそうな顔を見せるひぃくん。
そのまま私の肩をガシッと掴むと、今にも泣き出しそうな顔をして大声を上げた。
「そんなに俺とエッチするのが嫌なの!? ねぇ、花音っ! お願いだから何とか言ってよー!!」
────!!?!!?
(ンなっ……!?!? なっ、ななな、何て事を……っ!!)
ヒクヒクと引きつる顔面蒼白の私は、ひぃくん越しにチラリと周りを見渡した。
(こんな場所で……っ、その質問に答えろと……? 勿論嫌じゃないよ、ひぃくん……。でもね、周りをよく見てっ!)
ひぃくんの発した大声で、近くにいた見知らぬ人達までもが何事かと私達を見ている。
(こんな状況でその質問に答えろって言うの……っ? そんなの無理だよ!!)
大衆の面前で何とも破廉恥な質問をされ、まるでイジメか拷問でも受けているかの様なこの状況。
今にも意識が遠のいてしまいそうな中、ボンヤリと見えるのは遂にポロポロと涙を流し始めてしまったひぃくんの顔。
(ごめんなさい……。来年からはちゃんとプレゼント用意するから……だからもう、許して下さい……っ)
ひぃくんに揺すられてガクガクと揺れる視界の中、私は何度も何度も繰り返し小さな声で「ごめんなさい」と謝り続けた。
- 煩悩はつまり子煩悩!?③ ( No.27 )
- 日時: 2024/09/17 19:06
- 名前: ねこ助 (ID: KyQmTvxa)
「響先輩って……キャラ強烈だよね」
前方を眺めながらボソッと呟いた志帆ちゃんに、ハハハと渇いた笑い声を漏らす。
志帆ちゃんの視線を辿るようにして前方を見てみると、楽しそうにお兄ちゃんと会話をしているひぃくんがいる。どうやら、そのご機嫌はもうすっかりと元に戻ったようだ。
「昔からあんなだよ、響さんて」
「へぇ〜、そうなんだぁ……。イケメンなのにねぇ」
「うん。残念なのよ、あの人」
「勿体ないね。あんなにイケメンなのに」
私がすぐ横にいるというのに、彩奈と志帆ちゃんはひぃくんを眺めてそんな事を言っている。
(あの……その残念な人の彼女ですよ、私。見えてます?)
私そっちのけで話し続ける二人にそんな事を思いながらも、あながち間違いとも言い切れない意見に何も反論することがきない。
「でも、凄く花音ちゃんの事が大好きで大切にしてるよね。俺は優しくてカッコイイと思うな、榎本先輩」
「斗真くん……っ。ありがとう」
(なんて優しいんだろ……。私の味方は斗真くんだけだよ)
ニッコリと微笑む斗真くんを見て、ひっそりとそんな事を思う。
「私は翔先輩派かなぁ〜。……ごめんね、花音ちゃん」
エヘッと笑った志帆ちゃんに、何故か謝られた私。
「彩奈ちゃんは? 響先輩派? 翔先輩派?」
「えっ!? ……っ」
志帆ちゃんにそう問われて、チラリと私に向けて視線を送った彩奈。
(…………?)
「私は別に……っ」
そう答えると、私から視線を逸らした彩奈。その顔は、何だかいつもより少し赤い気がする。
(……どうしたんだろう?)
「彩奈……?」
「っ……もうすぐカウントダウンだね」
「え? ……あ、うん」
彩奈に言われて敷地内に設置されたモニターへと視線を移してみると、いつの間にかもう年明けまで残り五分になっている。
(もうすぐ今年も終わりかぁ……。あっという間だったなぁ)
そう思うと、今年あった出来事が色々と蘇ってくる。相変わらずひぃくんに振り回された一年だったけど、凄く充実した良い一年だった。
そしてなんといっても、念願だった彼氏ができた事は、私にとって今年一番のビックニュースだ。
(その相手がまさかひぃくんだとはね……。一年前の私には、全く予想もできなかった事だよね)
そんな事を一人考えながら、クスリと小さく声を漏らす。
「かの〜んっ! もうすぐカウントダウンだよー!」
その呼び声に反応して視線を向けてみると、ニッコリと微笑みながらヒラヒラと手招きをしているひぃくんがいる。
「うんっ!」
私は元気よく返事を返すと、ひぃくんの側まで駆け寄りニッコリと微笑んだ。
「ひぃくんっ。今年も一年、ありがとうございました」
「こちらこそー。来年もよろしくね? 花音」
フニャッと小首を傾げて微笑むひぃくん。
「うんっ」
私は笑顔でそう答えると、隣にいるひぃくんの手をキュッと握った。
◆◆◆
「長かったねぇ……」
「私なんて、寒さで足の感覚がないよ〜」
「どこかお店に入って暖まりたいね」
無事に初詣でを済ませた私達は、寒い寒いと言いながら出口へと向かって歩き始める。
モニターを見てみると、もう年明けから二時間も経過している。
(本当に長かったなぁ……)
未だ混雑している境内を横目に、隣りにいるひぃくんに向けてチラリと視線を移してみる。
なにやら、随分と必死に参拝していたひぃくん。
「ねぇ、ひぃくん。どんなお願い事してたの?」
先程、中々終わらないひぃくんに痺れを切らしたお兄ちゃんが、「まだ足りないよー!」と騒ぎ出すひぃくんを無理矢理引きづり下ろしていた。
そんな光景を思い返して、何だか可笑しくてクスリと笑い声を漏らす。
「早く花音とエッチができますようにって!」
────!!?
(聞くんじゃなかった……っ)
大声でそう言い放ったひぃくんに、一瞬で後悔した私。
フニャッと小首を傾げて微笑んでいるひぃくんを見上げながら、私は盛大に顔面を引きつらせた。
(あなたには……っ、恥じらいという感情はないんですか……?)
「残念だったな、響。願い事は他人に言ったら叶わないって知ってるか? お前は一生DTだ」
前方を歩いていたお兄ちゃんが、後ろを振り返って勝ち誇った様な顔を見せると、ひぃくんを見てフッと鼻で笑った。
「そんな事ないよー!」
ブーブーと文句を言いながら、お兄ちゃんの方へと近付いてゆくひぃくん。
「いいや、お前は一生DTだよ。大体、俺が許すと思ってるのか? 許すわけないだろ」
「……かっ、翔……っま、まさか……っ!!! ……翔は花音のお兄ちゃんなんだよ!? ダメだよ、花音が可愛いからって妹とエッチなんて……っ!!!」
お兄ちゃんの肩を掴みながら、瞳を全開に見開いて真っ青になったひぃくん。
「……はッ!!? 何でそうなるんだよっ!!」
「ダメダメダメーッ!!! 絶対にダメーッ!!! 花音は俺のお嫁さんだよーッ!!!」
前方でワーワーと騒ぎ始めたひぃくんを眺めながら、顔面を引きつらせて固まってしまった私。
(なんなのよ……、その気持ち悪い発想は……っ。そんな事あるわけないじゃん。変な冗談はやめてよ、ひぃくん)
真っ青な顔をして、お兄ちゃんの肩を揺らし続けているひぃくん。
その顔はとても真剣な顔をしていて、本気で言っているところがひぃくんの恐ろしいところだ。
「随分と気持ちの悪い事を言うのね、あんたの旦那」
いつの間に来たのか、すぐ横にいる彩奈はそう言ってドン引いた顔で私を見つめる。
(やめてよ、彩奈。私をそんな目で見ないで……っ。変な事を言ったのは私じゃなくてひぃくんなんだから……)
「離せっ! ……っ、とにかく! お前は一生DTだ! 煩悩と共に滅びろっ!」
「大丈夫だよ、翔。俺は子煩悩だから安心して?」
そういえば、さっきも子煩悩だとか言っていたひぃくん。その意味はサッパリ分からない。
「お前みたいな意味のわかんない奴、安心できるわけないだろ!?」
「我儘だなー、翔は。大丈夫だよ、直ぐにDT卒業しちゃうからっ」
ひぃくんの言葉に、一瞬顔を引きつらせたお兄ちゃん。
それでも、ムキになるだけ無駄だと悟ったのか、一度小さく息を吐くと再びゆっくりと口を開いた。
「……はっ? DT卒業なんて俺がさせると思ってるのか? 一生させるかよ」
ひぃくんを見て、フンッと鼻で笑ってみせるお兄ちゃん。
それにしても……。DT・DTと、さっきから煩い二人。
(一体なんなのよ、DTって……)
「それは翔には決められないよ?」
────!?
突然、私の方へと視線を移したひぃくんに驚き、ビクリと身を固めた私は前方に立つひぃくんを静かに見つめた。
(なっ……、何ですか……? 嫌な予感がするのは、私の気のせいであって欲しい)
「花音っ! もうすぐDT卒業だよねー?」
「へっ!? ……あ、あの……DTって……、何?」
質問の意味が分からず、思わずその場で狼狽える。そんな私を見て、ニッコリと微笑んだひぃくん。
「花音。子供って可愛いよねっ?」
「へっ……? 」
突然その質問内容を変更されて、益々意味の分からない私は素っ頓狂な声を上げた。
「子供好きでしょ?」
「えっ? ……あ。う、うん」
その返事に満足したのか、嬉しそうな顔でフニャッと笑ったひぃくんは、その視線を再びお兄ちゃんの方へと戻した。
「ほら、『うん』って言った。もうすぐDT卒業だねっ。楽しみだな〜」
「……無理矢理言わせただけだろ」
そう言って呆れた様な顔を見せるお兄ちゃん。
「……ねぇ、彩奈。DTって何?」
「…………。……ドーテー」
チラリと私を横目にした彩奈は、そう告げると小さく溜息を吐く。
(へ〜……、ドーテーかぁ……。ドーテー……、ドー…………って、あの童貞!!? ……えっ!? って事は、今の会話の意味って……)
恐る恐るひぃくんの方へと視線を向けてみると、その視線に気付いたひぃくんがバチッと瞳を合わせた。
「楽しみだねー? 花音っ」
そう言ってフニャッと小首を傾げるひぃくん。
(な……、何て事だ……。まだそんな覚悟なんてないのに……っ)
どうやら私は、「うん」と返事をしてしまった? らしい。
(どうしよう……っ。私、本当にひぃくんと約束しちゃったの……?)
目の前に見えるのは、ニコニコと嬉しそうな顔をしているひぃくん。そんな姿を見て、顔面蒼白で愕然とする私。
今にも泣き出してしまいそうな程に情けない表情を浮かべると、顔面蒼白のままアハハと渇いた笑い声を漏らす。
(お願いだから、もっとわかり易く話して下さい……)
前方で幸せそうに微笑んでいるひぃくんを見つめながら、私はただ呆然とその場に立ち尽くした。
- 君とハッピーバレンタイン① ( No.28 )
- 日時: 2024/09/24 01:29
- 名前: ねこ助 (ID: tOcod3bA)
「見て見てっ! このデコレーション、どうかな!?」
我ながら上手く出来た仕上がりに、自信たっぷりと彩奈に向けて手元のチョコを見せる。
「うんっ、可愛いね」
そう言ってニッコリと微笑む彩奈の手元を見てみると、相変わらずの上手さで、私の作ったチョコなんかよりもよっぽど美味しそうに見える。
(あー……。今すぐ食べてしまいたい。どうせ毎年くれるんだから、一つくらい今貰ってもいいよね?)
そんな事を考えていると、私の視線に気付いた彩奈が口を開いた。
「これはダメ」
「えっ……」
(ま、まさか……っ。今年からはもう、私にバレンタインのチョコくれないの?)
そんな事を考えながら、泣きそうな顔をして彩奈を見つめる。すると、突然プッと吹き出した彩奈が笑顔でチョコを差し出した。
「はい。これならいいよ」
「わ〜いっ! ありがとう、彩奈!」
途端に笑顔になった私は、彩奈からチョコを受け取るとそのまま口の中へと入れた。
(ん〜っ! 美味しぃ〜っ! やっぱり彩奈のチョコは毎年美味しいなぁ)
口いっぱいに広がるチョコを堪能しながら、思わず顔がニヤけてしまう。
毎年バレンタインの時期になると、彩奈と一緒にチョコ作りをしている私。こうして作りながらのつまみ食いも、私にとっては毎年の恒例なのだ。
(それにしても……。あれだけ何だかやたらと凝ってる気がするのは私の気のせい? ラッピングだって、他のと比べると随分と豪華だよね)
彩奈がラッピングをしているチョコを眺めながら、そんな事を思う。
「ねぇ、彩奈。そのチョコ誰にあげるの?」
気になった事を、そのままストレートに質問してみる。
毎年彩奈がチョコをあげる相手といえば、お兄ちゃんとひぃくんとお父さんと……それに私。それだけだったはずだ。
数は合っているけど、何だか一つだけ特別感が凄い。それはまるで、私がひぃくんのだけ特別に豪華にしたのと同じように。
未だ無言のままの彩奈をチラリと見ると、何だか顔が……少し赤い?
(……え? ……えっ!? もしかして……っ!)
「彩奈っ! それって……もしかして好きな人にあげるの!?」
「……っ、……うん」
顔を真っ赤に染めて、小な声でそう答えた彩奈。
(えっ!? 嘘っ! 彩奈好きな人がいたの!!? じゃあ……)
チラリとラッピングされたチョコ達を見渡してみる。
(やっぱり……っ、数が合わないわ。うっ……。今年からは私のチョコはないのねっ!? ……食べたいっ! 食べたいけど……っ。私我慢するっ! 彩奈の好きな人の為に、我慢するんだからぁっっ……!)
一人、心の中で大芝居を打った私は、気を取り直すと涙を堪えて彩奈を見た。
「誰!? 彩奈の好きな人って!?」
「……っ……。……翔さん」
「…………へっ?」
ポツリと小さな声で答えた彩奈の言葉に、間抜けな声を出してしまった私。
(えっとー……。えっ……?)
「あのー……。……それって、どちらの翔さん?」
そう問いかけた私は、引きつった顔でヘラリと笑って見せる。
そんな私を見た彩奈は少しむくれて、けれど真っ赤な顔のまま口を開いた。
「……っ。あんたのとこの翔さんよっ! もう……っ、花音のバカっ!」
────!!?
(ンなっ!? ……何ですとっ!? お兄ちゃん!? 私のお兄ちゃんなの!!?)
意外すぎる人物に、驚きすぎて声すら出ない。
見開いた瞳で彩奈を凝視すると、呆然とその場に立ち尽くす。
(えっ!? だ、だって……だって、あのお兄ちゃん!? な、何でっ!? 何でお兄ちゃん!!? 彩奈だって怖がって……あっ、あれ? 怖がって……、た……? 本当に?)
今まで目にした、数々の不可解な彩奈の態度を振り返ってみる。今にして思えば、あれは怖がっていたのではなく照れていたのだ。
「……っ、彩奈。ごめんね、気付いてあげられなくて」
「……いいよ。だって花音だもん」
未だほんのりと赤く頬を染めたままの彩奈は、プッと小さく声を漏らすと照れ臭そうに微笑んだ。
「いつから……? いつからお兄ちゃんの事が好きなの?」
「んー、気付いた時には……たぶん、中一の頃かな。でも、翔さんいつも彼女がいたから」
「そうなんだ……」
(私は知らなかったけど……。彩奈は知ってたんだね、お兄ちゃんに彼女がいた事。それでも好きって、きっと辛かっただろうな)
そんな彩奈の気持ちを思うと、何だか目頭が熱くなってくる。
「もうっ、やめてよ花音。私は大丈夫だから! それにね、今はフリーだって翔さん言ってたから。だからね、告白……してみようと思うの」
そう言って明るく振る舞う彩奈。
私はそんな彩奈の両手を握ると、今にも泣き出しそうな顔のまま笑顔を向けた。
「っ……そっか。そうなんだねっ! 私、彩奈の事応援するからねっ!」
「うんっ……。ありがとう、花音」
少しだけ照れたような表情を見せる彩奈は、そう言うと可愛らしく微笑む。
(そっか……彩奈の好きな人はお兄ちゃんなんだね。……うん。それなら私にも協力ができるかも)
目の前で可愛らしく微笑んでいる彩奈を見つめながら、親友の為にもここはなんとしても協力をしようと、私はそう固く心に決めたのだった。