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壊れたボクと儚い天使(グロアリ)
日時: 2009/10/09 16:34
名前: テト (ID: VZEtILIi)

シリアス&重たい&グロありです(汗)
それでもばっちこいやぁ!という人は、ご覧下さい。

■登場人物■

吉祥アキ(きちじょうあき)
17歳。5年前のある事件で、左目を失い、前髪で隠している。少年の割りにはキレイな顔立ちの為、時折噂される。あまり人と話さない。

鈴山梨乃すずやまりの
17歳。幼い性格の屋上登校。かなりの美人で、天真爛漫。8年前の監禁事件の被害者で、時折歪んだ表面を持つ。

東雲宇美しののめうみ
17歳。素行不良少年で、アキとは同じクラス。女子から異様にモテ、とっかえひっかえしている。アキは苦手らしい。

向坂安寿さきさかあんじゅ
16歳。他校の不良高校の1年。派手でその外見を裏切らない事も多々している噂。

主題歌
http://www.youtube.com/watch?v=-Wlg0VeBHus
エンディング
http://www.youtube.com/watch?v=vBCWe7nf3WY

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Re: 壊れたボクと儚い天使 ( No.8 )
日時: 2009/10/07 17:31
名前: テト (ID: VZEtILIi)

僕は梨乃が学校にいるのを見た事がなかった。
梨乃を見かけるのは、必ず昼休みの屋上。それ以外では百パーセント見かけない。
短い休み時間にも屋上を見たけれど、いなかった。
本当に、何年生なんだろう。
学校は生徒数が多いから、3年間で全然同じクラスにならない子もいる。
梨乃が2年生なら、離れたクラスの子は知っているのかもしれない。

昼休みが終わりに近づいて、僕はからっぽになった弁当箱を二つ持って、梨乃と別れた。
「バイバイ、アキ」
梨乃は長い、色素の抜けた髪をなびかせて、僕に手をふった。
「バイバイ、梨乃」
僕が手を振ると、本当に嬉しそうにぶんぶんと手を振り返す。
屋上の扉を閉めて、階段を下りる。
その間、僕はずっと梨乃の事を考えているんだ。

 
         ♪


どんなにキレイに笑っても、歌っても、あなたは私を蔑んだ。
汚い、穢れた豚だと罵り、私に石を投げつけ、たらりと流れる赤い血で染められた私の顔を醜いと言う。
そして、私が泣いたり怒ったりすると、酷い仕打ちをしてくる。

爪を剥がれたり、内臓を削がれたり、目を潰されたり、果てには私の魂を釘うちにした!
許さないッ!
あなたは私を失敗作だと言うけれど、私がこうなったのは全部あなたのせいッ!

憎い、彼が……私から全てを奪ったあいつが憎いッ!



           ♪


教室に入ると、同じクラスの東雲くんが近づいてきた。
「なぁ、ずーぅっと思ってたんだけどさ」
「……」
「お前って、弁当二つ持ってきてるけど、誰と食べてんの?」
「……友達、だけど」
東雲くんは、正直苦手だ。クラスのリーダーみたいで、女の子とっかえひっかえしてるし、格好いいけれど少し怖い。
見た目が派手すぎる、というか。

今も僕より頭1個分高い所から、こちらを見下ろしている。
「へ〜。何ていう子?」
あまり、梨乃の事は喋りたくなかった。
僕自身、人と接するのはどの分野よりも苦手だから。
「アキ?」
肩を掴まれて、思わず驚いた。
いや、それ以前に。今、何て言った?

「あ……アキ?」
「へ?あぁ、うん。お前、“アキ”だろ?え、違かったか?」
「……」
本当に驚いた。この人は初めて話した人ともこんな風に自然に喋るのか。少しだけ、羨ましい。憎らしい。
「えっと……。内緒なんだ」
「カノジョ?」
「ち、違うけど……」

そんなんじゃない。
梨乃は僕にとって、好きとかキライとか、そういう次元を超えて、特別な子だった。
まだ出会って2ヶ月しか経ってないけど、あの透明な声と髪、優しそうな顔立ちや雰囲気が、僕の心を包んでくれた。
真っ黒な、僕の心を。

「友達以上、恋愛未満っつーわけね」
違うけど。
「なあ、知ってるか?さっきさ──」
東雲くんが口を開きかけた時、
「キャアアアアッ」
隣のクラスから女子生徒の悲鳴が聞こえた。

授業に来ていた先生が驚いて隣のクラスへと走る。
こっちのクラスの生徒も、興味心で廊下から覗いている。
東雲くんも薄笑いで廊下に行き、隣のクラスを見て、苦笑いした。
何があったんだ?
そう思って呆然と突っ立ってると、隣のクラスから先生の怒鳴り声。

「下がれッ!下がらんかッ!」
それでもしつこい生徒は、携帯なんて取り出して写真を撮っている。
フラッシュの音がしばらくして止み、その人ごみの中から先生二人に両脇から抱えられて、一人の女生徒が出てきた。

腕から出血しているのか、廊下に点々と血痕が付着している。
顔は俯いて見えなかったけれど、ぐったりしていた。
でも、何も携帯で写真を撮らなくてもいいとは思うけど。
僕は廊下に出て、携帯の画面を見る東雲くんに
「どうかしたの?さっきの子」
「あぁ、“飛鳥川ルイ”だろ?なんか、中学の頃から病んでるっぽい」
「病んでる……?」
ふいに、脳裏に自分が映った。頭を振って気を落ち着かせる。

「病んでるって……どうして?」
「噂じゃさ、なーんか男にボロッカスにされたとか、援交してたとか、身内に不幸が続いたとか……。あんまいい噂じゃねぇけどな。ならガッコ休めよ」
東雲くんの言い方が少し感に触ったけど、本当にそうだと思う。
苦しいのなら、逃げだせばいいんだ。リセットして、時間をいったん止めて、巻き戻しする。
逃げて、たとえ人から「弱虫」だのと言われても、必死で、逃げればいい。

僕だって、そうしたんだから。
心がどんなに壊れても、ぐちゃぐちゃにされても。

Re: 壊れたボクと儚い天使 ( No.9 )
日時: 2009/10/07 18:09
名前: テト (ID: VZEtILIi)

その日の放課後、荷物を抱えて教室から出ると、
「吉祥」
「……何ですか、先生」
「いやー、実は資料室にコレ、置きに行ってもらえないかな?僕、ちょっと用事ができて……。キミ、部活入ってないから、頼めるよね」
「わかりました」
仕事を押し付けられてしまった。

少し重めの資料を持って、階段を下りる。学校内は広くて、迷いそうになる。
資料室に着いて、荷物を扉の近くに置き、片手で何とか扉を開けた。
資料室は薄暗くて、埃っぽい。
資料を机の上に置いて、カーテンを開ける。

資料も片付けなければいけないんだろうか。
どこに置けばいいのかさっぱりだ。適当に片付けておけばいいか。
引き出しを開けて、資料を分別してしまっていると、隣の教室から、壁を蹴る音がした。
驚いてびくっと体を強張らせ、しばらくじっとていると、また聞こえた。

不気味だ。ホラーか何かか?
資料を急いで片付けて、資料室から出る。隣は、第一理科室だった。
誰かいる気配はないけれど、扉を左に引くと、開いた。鍵がかかっていない。
かけ忘れたとか?

理科室に入ると、独特な匂いがする。
誰かがいる。
ぐるっと見渡して、視界にソレが入った。
性格には、その子。

「ッ」
驚きすぎて、肩の力が入る。
短い黒髪に、腕には包帯が巻いてある。靴下は履いていない。
キレイな顔をしているけど、殺気が出ていた。
この子、さっき先生に抱えられた子じゃないか?病んでるとか噂されて、写真まで撮られた……。

「……か、海斗?」
その子が虚ろな目で僕を睨んで、そう呟いた。
カイト?僕を誰かと勘違いしているのか?
「海斗……ッ、海斗なの?お前が海斗なのッ!!」
ふらふらした足取りで、その子が近づいてくる。
でも足がもつれたのか、その場に倒れこんだ。

「だ、大丈夫?」
「離してッ!お前が言ったんでしょッ!私に散々あんな事言っておいてッ!」
「落ち着いてって」
「私がどれだけ苦しんだかッ!わからないだろうね」

確か、名前は“飛鳥川ルイ”だったはず。
「あ、飛鳥川さん。僕は海斗っていう人じゃないよ。落ち着いて。息、吸って」
飛鳥川さんは亡霊のような表情で、泣きはらした目で僕を見て、落ち着いたのか、小さく息を吸った。
僕はハンカチを出して、飛鳥川さんの涙をふき取る。

「大丈夫……?」
「あ、ありがと……。ご、ごめんね。ちょっと、さ、錯乱しちゃって……」
「なら、いいけど」
あまり、人とは関わらないようにしておく。
ハンカチをポケットにしまって、僕は立ち上がった。
「もう、平気かな」
「……大丈夫。あ、ありがとう……。こうやって、声、かけてくれた人……あんま、いなかったから。驚いた……」

かすかに微笑んで、まだ少し震えているけど立ち上がる。本当に大丈夫だろうか。何だか、少し危なさそうな人なんだけど。
「……ねえ、お願いが、あるんだけどね」
「何?」
静かに聞くと、飛鳥川さんがそおっと僕の手を握った。

「……か、海斗にさ。私が会いたいって言ってるって伝えて……?」

Re: 壊れたボクと儚い天使 ( No.10 )
日時: 2009/10/07 18:27
名前: テト (ID: VZEtILIi)

主題歌決まりました


http://www.youtube.com/watch?v=-Wlg0VeBHus

鬼束ちひろsの「かげ」です

Re: 壊れたボクと儚い天使 ( No.11 )
日時: 2009/10/07 18:32
名前: テト (ID: VZEtILIi)

エンディングは
こちらです

http://www.youtube.com/watch?v=vBCWe7nf3WY

元ちろせsです。

Re: 壊れたボクと儚い天使 ( No.12 )
日時: 2009/10/08 14:35
名前: テト (ID: VZEtILIi)

どうして断れなかったんだろう。
海斗って誰だ?
飛鳥川さんに頼まれた、謎の人物「海斗」さんへの伝言は、「会いたい」というものだった。
どうしよう。
第一見知らぬ人を捜すなんて、どこにいるのかもわからないのに。

家に帰ると、お菓子のいい匂いが漂っている。
この匂いは、クッキーだろうか。
「アキ、お菓子焼けたけど食べる?」
「ありがとう、お母さん」
お母さんは、元々あまり気が強い方じゃなかった。神経質で、か弱くて、体も弱かった。
それは、今も同じだけど、数年前。僕が大切な友達を失った時、必死で僕を守ろうとしてくれた。

正直、お母さんの方が気がめいっていたのに。
そう思うと、情けなくて、自分の力の無さに愕然としてくる。
やっぱり、断ろう。
飛鳥川さんには悪いけれど、僕には飛鳥川さんの事情を知りたくないし、どっちでもいい。
彼女が錯乱しようが、どうだっていい。

──本当に?

自分の部屋に入って、制服を脱いでいる途中、声が聞こえた。
わかってる。幻聴だ。
“ここ”にキミがいるわけ、ないんだから。

──アキ、本当に天使は、いないと思うか?

いないに決まってる。
なのにキミはそうなりたいと言って、僕を地上に置いて空に行ってしまった。
キミを、憎んだ事だってあったのに。
僕の心を壊したのは、キミの死だったから。

「アキ?大丈夫?」
気づくと、お母さんが部屋の外で心配そうに声をかけていた。
「だ、大丈夫」
「そう……。入るね。お菓子、持ってきたから」
遠慮がちに言って、部屋に入ってきて、机の上にクッキーを置くと、出て行った。
もう、思い出さない方がいいんだ。
キミの事も、狂っていた自分の姿も。


         ♪


私が初めてあの家に来た時、あなたはとても優しくしてくれた。
甘える私の頭を撫でて、強く強く抱きしめてくれた。
泣いている私を、慰めてくれた。
学校でいい成績をとると、褒めてくれた。

あれは、私の幻想だったのかしら。
だって、今のあなたはあまりにも卑劣で、恐ろしく、夜の帝王のような、地獄の魔王のような、低い声で私を冒涜するのだから。

あの日、私は間違えてあなたの事を違う名前で呼んでしまったわね。
すると、あなたはいきなり私の胸倉を掴み、目をカッと見開いて、自分の事は名前で呼べと怒鳴った。
挙句の果てには、私の腕の、細い血管の部分をナイフで刺して、痛みで顔を歪ませる私を笑いながら見ていた。

どうして?
どうしてこんなにも変わってしまったの?

でも、私には味方がいたの。
あなたを屈服させる清き精霊が、私にはついていたの。
いくら、あなたが私を「失敗作」だと罵っても、彼女だけは微笑んで、私を救ってくれた。
ねぇ、わかる?
一人ぼっちになるのはお前なんだよ?
私がどれほどお前を憎んでいて、愛しているのかわかる?
わからないだろうねぇ。
だから、わからせてやるの。


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