ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- Blood Lily
- 日時: 2009/12/29 15:17
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
またまたまた消えた((汗
http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=12943
上記からどうぞ。
- Re: Blood Lily ( No.27 )
- 日時: 2010/01/07 12:10
- 名前: ラビ ◆bIXnO7zfJs (ID: xq4DbqqB)
アーッ(゜×゜;;;)
まさかの発言ですねー。
カルボナーラって……イケ、るのでしょーか
- Re: Blood Lily ( No.28 )
- 日時: 2010/01/08 23:57
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
いけます!
- Re: Blood Lily ( No.29 )
- 日時: 2010/01/09 00:13
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
第13夜
地雷の描く故は
下級都市のもはや政府から見捨てられた都市。
その廃墟と化した都市で殺.戮が行われていた。
灰色の街で、一点だけ違う赤の色。
「キクリ、ソレぐらいでいーっしょ」
都市の滅び行く人間を放り投げ、キクリと呼ばれた少女が顔を上げる。
赤い着物に、黒いおかっぱ頭で動きが人間ではないほどぎこちない。
「アンデットにする人間、全部タヒんじゃったじゃん」
そのキクリを咎める事もせず、笑顔で事を見ていたのはヴィンスだった。
「ファーザーに怒られても、知らねェよ?」
「……イイ」
「あ?」
「彼ニ怒ラレテモ、別ニイイ」
キクリが物凄い速さでヴィンスに近づく。 気づけばすぐ目の前にいた。
「……速いね、さすが」
「……ケケケケケケケケケケケケ」
不気味な音で笑いながら、キクリがヴィンスにそっと抱きつく。
ヴィンスはあやす様に肩を抱き、
「いいよ。 そんなに欲しいのなら、あげる」
笑顔を崩さずにキクリに何かを注いだ。 目には見えない、彼の能力。
「おはよう、キクリ」
「……肩が、こる」
今までのぎこちない動きとは違い、人間のようなしなやかな動きを見せる。
「キクリ、もう人を殺.しちゃダメだよ」
「? 何で」
「アンデットの材料がなくなるから。 っつっても俺が作るのはアンデットじゃないんだけどね」
「……お前には、私がいればいい」
「ん、そーだね」
キクリのおかっぱを撫でながら、ヴィンスが岩から立ち上がる。
「廃れてるねー」
街の感想を呟いて、その場から立ち去った。
その3日後。
「何だ、コレ……」
灰色の街にラズたちが足を踏み入れた。 どす黒い血の跡に顔もしかめずに、どんどん街へ入っていく。
「見慣れた光景」
トトがそう呟くのを聞いて、ラズが頷く。
シヴァが解体されている人間を見て、
「キラー、か? アンデットか?」
「キラーならアンデットにしちゃうんじゃなぁい?」
「だよな」
トトの意見に賛同して首を傾げる。
「アンデットが食い散らかしたのか? でもあいつらなら骨の髄までしゃぶるだろうなぁ」
「キラーか、それ以外か。 共食い?」
今度はラズに答えを求める。
「だとしたら……異常かも」
- Re: Blood Lily ( No.30 )
- 日時: 2010/01/09 09:24
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
「昨日、廃墟都市が何者かによって全滅した」
フィーロの報告に、リリーとノエルが顔を見合わせる。
「廃墟都市に住んでいた移住民がころされたと、ラズの方から連絡が回っている」
「反政府?」
真っ先にリリーが尋ねた。
「アンデットかキラーか判らないが、その確率は高い。 あるいは食料が無くなっての共食いも考えられるが、どう見ても全員同じ時間帯にタヒんでいるらしいからそれは考えにくいだろうね」
「そこであなた達には、今すぐフロウ公爵に会いに行って欲しいのです」
ミリアの要求にノエルが首をかしげ、リリーは少しだけ驚いたような顔をした。
「まだ、生きてるんですか?」
「失礼な言い方ですよ、リリー」
リリーを注意してから、ミリアが呆れたようにノエルを見る。
「まさか、フロウ公爵をご存じないのですか?」
「あはは。 非常識ッスから♪」
能天気に笑うノエルをひとまず無視して、ミリアが話を進める。
「フロウ公爵はここからかなり離れたルルダムという上流都市のお屋敷にいらっしゃいます。 政府の中で最も長老故、失礼な行動は慎んでください。 特にノエル」
「あーい」
「あなたは本当に心配ですっ。 リリーに常に見張ってもらう事にします! 本当に心配なんですっ」
「まぁまぁミリア。 ノエルだって最低限のマナーはあるんだしさ」
「初対面の人に平気でタメ口なのはあなたぐらいです! リリー、ちゃんと見張って置いてくださいっ」
そんなミリアにも呆れ顔になっていたリリーはすぐに表情を戻して「はい」と返事をした。
それに気づいたノエルが
「器用な奴」
そうぼやいた。
- Re: Blood Lily ( No.31 )
- 日時: 2010/01/09 11:49
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
上級都市ルルダム。 中心区からかなり離れた北にある都市。 雪がおさまってきた中心区と比べると、まだまだ冬の景色が広がっている。
「ここに、ルルダム公爵がいるのね」
「つか、フロウって誰? 聞いた事ねーけど」
「フロウ・アルファルド。 政府の中で最年長のご老体と聞いた事があるわ。 欠かせない重要人物だけど、何故か姿を見られる事を嫌い、本部にも来た事がないの」
「変人だなー」
「……それ、本人の前で言わないでね。 でも、うん。 かなりの奇天烈な人だと聞いた事があるの」
「変態じーさん」
「殴るわよ」
リリーが少し本気で忠告した。
「絶対に失礼な態度とらないでね」
「あいよ。 わかってまっせ」
(凄く不安になってきた……)
ルルダムの森の奥にひっそりと建っている屋敷を見て、ノエルがまず一言。
「薄暗」 リリーが軽く頭を叩く。
確かに鬱蒼とした森の中にこんな古い屋敷があるとかなりの不気味さがある。
「きちんとして」
「つか、何しに公爵の所行くわけだよ」
「聞いてなかったの?」
顔をしかめ、大きくため息をつく。
「反政府が動き回っていて、公爵もいつ殺.されるか判らない状況でしょ。 だから本部に移行してもらうように承諾してみるの」
「ンなの、政府の奴らが行けばいーんじゃんよ」
「私もそう思ったけど、政府は忙しいからって」
「どんだけだよ」
リリーが階段を上がり、扉のベルを押す。
「まあ、どうあれ失礼な態度は控えるように」
「わーったって!」
ノエルが返事をしたのと同時に扉が開き、中からフリルのドレスを着た少女が顔を出した。
金髪碧眼で、美しい顔立ちをしている。 年齢はノエルと同じぐらいだ。
「どちら様ですか?」
ハキハキした声で訊ねた。
「死神養育機関から来ました、リリーです。 こちらはノエル。 政府からの託でフロウ公爵にお会いしたいのですが」
「アルファルドに……。 お入り下さい。 許可をとってみます」
「お願いします」
後ろにいたノエルに目配せをし、中に入ろうとすると、少女が思い出したように、
「死神である証拠をお願いします」
手を差し出してきた。
「これが私達の鎌以外の証拠です」
リリーとノエルが服を捲りあげ、腕を見せる。
それぞれの腕に刻まれている痛々しい刻印。 少し形は違うが、明らかに死神養育機関で用いられている刻印だ。
少女は頷き、
「確認しました。 危険人物視されているリリーさんと、修羅一族の末裔であるノエルさんですね。 どうぞ」
情報なら何でも知っているという前置きなのか、あえてそう言った。
若干の苦笑いに苦労しながら、ノエルが拳を握り締める。
「ノエル」 「ダイジョブ。 気にしない」
少女に案内されて、一つの扉の前に立つ。
「アルファルド。 客人が来ております」
少女が扉に向かってそう言った。
しばらくしても、返事はない。
「顔は……控えますか?」 少女が再度尋ねると、中から低い男の声がした。
「いや、少しその二人とは話がしたい。 入れてくれ」
想像していたよりずっと若い声だった。
少女が扉を開ける。 軋む音。
中に入るとかすかな芳香の香りがした。
「主らは……死神の子か?」
椅子に体育座りをしているのは、まだ二十代ほどの男だった。
長い赤毛の髪を一つにまとめ、左目は潰れているのか、痛々しい傷がある。 切れ長の目で、女性から人気のありそうな美形だった。
リリーが軽く頷く。 ノエルは少しだけ呆気にとられていた。
「そこに座れ。 主も話したいことがあるのじゃろう?」
「質問を、いくつか」
「リリー、聞いて無いぞ」
ノエルが後ろから囁いたが、リリーはそれに答えず、フロウに向き合ってソファに座る。
「主らと会うのは少々楽しみじゃった。 フィーロ・ディネガンは相変わらずかの?」
「はい。 相変わらずです」
「そうか。 ……主の質問とは?」
「まずは、どうして私達にお会いしたいと思ったのですか?」
リリーの突然の発言に、ノエルが慌てる。
「おいおい、ンな事言ってねぇぞ」
「先ほど、私達と話がしたいとおっしゃっていました。 どうして政府の人間ではなく、私達があなたに伝言を言いにいかなければならなかったのか、少し不思議だったんです。 説明も、政府が忙しいからだけでしたし。 でも、先ほど確信しました。 あなたが政府に、私とノエルに伝言を言いに来させて欲しいと依頼したんですよね」
「……主の頭の回転には天晴れじゃ。 シヴィア、主の頭もちとはようなればいいんじゃが」
無表情で先ほどの少女───シヴィア・イグシルに話しかけた。
シヴィアは無表情で、
「珍しいですね。 あなた様が人に姿を見せるなんて。 意外です」
フロウの発言を無視した。
「あの、本当に……政府ン中で一番年がイッてんですか?」
ノエルの質問に、リリーが小さくため息をつく。
「何じゃ、主。 わしも死神じゃき、外見は若ぅなっておる」
「死神!?」
ノエルが大声を出し、リリーも意外そうに目を大きく見開く。
「え、っつっても死神って少ししたらタヒぬって聞かされてたけど!?」
「まぁ、大半はそうじゃな。 シヴィアも死神じゃ」
「お前も!?」
敬語なんてもうすっかり忘れているノエルが、シヴィアに目を移す。
「わけアリでの」
「シンシアよりも年上ってわけか!?」
「シンシア……、シンシア・ベリアムか」
ノエルが驚愕の表情で焦り始める。
「シンシアに……苗字あったのか?」
「人間誰でも苗字はあるかろうに。 アレの事はよう知らんが、ベリアムという名前だったらしいのぅ。まあ本部に入れば苗字を抹消されるため、戸籍上は“孤児”扱いになるが……」
爪を研ぎながら、フロウが向かいに座るリリーを見る。 シンシアによく似たアイスブルーの瞳。
「主、シンシア・ベリアムの娘か? 顔立ちがよう似とるんじゃが」
「血筋上はそうです」
その発言に、複雑な親子関係を察したのかそれ以上はフロウも何も言わなかった。
「用件を話します。 政府に戻ってきていただきたい。 反政府も何をしでかすか判らない。 あなたは政府の重要人物として、タヒんでもらう訳にはいかないんです」
シヴィアがカップに紅茶を注ぐ。
芳香と甘香りに少し酔いながら、ノエルが訝しい目でフロウを見る。
「……それは、却下する」
「フロウ公爵!」
「無理だ。 わしはここを離れん」
「反政府が、いつ来るか判らないのにですか?」
「言ったじゃろう? わしらは死神じゃ」
しばらく睨みあっていたが、リリーの方が折れて目を逸らす。
「わかりました。 政府にはそう言っておきます」
「リリー、いいのかよ」
「……てか、ノエル。 あれほど敬語使えって言ったのに何フツーに話してるのよ。 冷や汗かいたわ」
「っ、あ! わっせてた……」
フロウが紅茶を飲みながら、 「修羅の主は、もう衝動は起こらないのか?」
ノエルの体が硬直する。
ジロリとフロウを睨みつけ、 「気に障ったか? それはすまぬな。 わしのいかんクセじゃ」
フロウが無表情で礼を述べた。
「穢れた血を洗い流すようにしてこれからも生きるのかと思っただけじゃ」
鋭い音がした。
「ノエルっ」
リリーが怒鳴る。
鎌を発動させたノエルとシヴィアが睨みあう。
鎌と鎌をぶつけ合い、ノエルが歯軋りをした。 シヴィアは無表情で、フロウを庇うように前に立つ。
「止めなさい、ノエル」
リリーの注意も聞こえないのか、鎌を抑えつけようとする。 シヴィアも、そんな華奢な体のどこに力があるのか知らないが、必死で耐えている。
「お引取り下さい」
シヴィアの言葉に、更に怒りが増したのか、
「どけよ、殺.されてーのか」
ノエルが低い声で訊ねた。
脅しにも表情を崩さず、シヴィアが真っ直ぐな目でノエルを睨む。
「そういうところ、本当に修羅ですよね」
「っのやろ!」
乾いた音がして、シヴィアの体を押す。 鎌と鎌がぶつかり合う。
「反政府も政府も関わらずに同族を殺.すなんて、修羅のやりそうな事じゃないですか」
「黙れっ!」
「本能のままに動いてるんでしょう? 修羅の血が騒いで飢えと乾きが増してくるんでしょう?」
「黙れっ!」
「私はタヒにたがり屋だから殺.されてあげます。 修羅によってその命を閉じます」
「黙れぇっ!!」
刻印が、広がる。
ドクンッと心臓の高鳴る音。
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