ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 禁忌現実-The Fantasy to Exist-
- 日時: 2010/04/04 20:02
- 名前: 付喪 ◆29ayQzCLFo (ID: YpJH/4Jm)
〆御挨拶
どうもこんにちは、あるいはこんばんは。付喪です。
さて、付喪があるヘマをしてしまった為、この小説と同タイトルであった小説の続きを書く気が完全に無くなってしまいました。
というわけで、妖怪主体から魔術主体に変え(妖怪も出す予定)でいきたいと思います。前の小説のメインヒロインであった秋叉とかも、この小説で再登場させておきたいなー……と思っていたり。
タイトルの英語の読みは「ザ・ファンタジー・トゥ・イグジスト」、訳は「実在する幻想」です。禁忌現実は幻想という意味合いでつけたりしてみました。
作者共々、暖かい目で見守ってくださると嬉しいです。
※当然ながら荒らしは曲がれ右。
※宣伝は作者の許可を得てからやって下さい。
※魔術用語とか意味不なのが出てきたら、ご連絡は作者までry
〆目次-Index-
第一篇/魔術師の陰謀
序章/時空の旅人-The Space-Time Traveler- >>3
第一章/とある日常への来訪者-Visitor to a Certain Daily Life- >>3 >>7 >>8 >>10 >>13 >>19 >>29 >>30 >>31
第二章/交錯する舞台裏-The Backstage That Mixes- >>36 >>38 >>39 >>46 >>56 >>60 >>63 >>68
第三章/
〆訪問者様
瀬多 哉様 香織様
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
- Re: 禁忌現実-The Fantasy to Exist- ( No.3 )
- 日時: 2010/03/12 17:24
- 名前: 付喪 ◆29ayQzCLFo (ID: YpJH/4Jm)
序章/時空の旅人-The Space-Time Traveler-
見渡す限りの世界は、荒廃の一言に尽きた。我こそが一番と競い合うように空高く建っていたビルは、全ての窓は粉々に砕け散り、地震でもあったかのように脆く崩れ去っている。スーパーなどの建造物が崩れ去り、障害物が無くなった地に風が吹く。捨てられた空き缶が、カランコロンと音を立て吹き飛んでいく。
一歩足を踏み出せば、周りには人の死骸、死骸、死骸。生きている人間など、一人もいなかった。
ただ一人、自分を除いては。
「それにしても凄い惨状だな。魔力からして天罰“神焔”(しんえん)……術者は大天使『神の炎』か」
荒れ果てた世界を見ながら、他人事のように世界を荒廃させた原因を解析していく。いや、他人事でも当たり前といえば当たり前かもしれない。自分とは本当に無関係な事なのだから。
今この世界に来たばかりの自分に、どういう経緯で世界が焼き払われたかは知らない。だが一つの世界に留まる必要のない自分にとって、この世界がどうなろうが知った事ではない——それが彼女、フレデリーク=セルヴァン=シュレベールの考えだ。正確にはフレデリーク=べレンガリア=ラウル=セルヴァン=シュレベールが本名となる。長ったらしいフルネームを名乗るか名乗らないかは気まぐれだが、大抵は省略したフレデリーク=セルヴァン=シュレベールと名乗る事が多い。
フレデリークの顔は中性的だが、口調や服装からして男の子と見られる事が多い。赤毛に近い焦げ茶色のショートカットに、鳶色の目。ベレー帽の形をした焦げ茶色の帽子をやや斜めに被っており、シャツの上に茶色のベストを着ている。が、胸部の下辺りでカットされている為、赤茶色のネクタイがちらついている。
更にベストより少し下辺りの長けの焦げ茶色のブレザーを着用。ブレザーと同じ色のズボンと、初対面の人間からしてみれば完全に男の子だろう。
フレデリークは重なり合っている人々の死骸を、避けるように歩いていく。実は大天使ウリエル——またの名を『神の炎』が天罰“神焔”を発動させて既に一日二日経っていたのだが、世界を破滅へと追い込む程の大魔術は未だに『魔力』としてこの地に残っていた。
ビリビリと感じる大天使『神の炎』の魔力に、フレデリークはほんの少し嫌な汗をかく。おそらく『神の炎』は、堕落したこの世界を残らず焼き払えと神に命令された筈だ。その中には堕落した“人”も含まれているだろう。もしこの世界にまだ人間がいると気づいたら——。
脳裏に一瞬、最悪の想像が浮かぶが自分には関係ないとその想像を振り払う。
「この世界は何もないみたいだし、違う世界に行くとしよう」
そう言って右手を真正面にかざす。すると様々な文字や記号が描かれた光の円——魔法陣が浮かび上がる。そこから始めに、円の弧のように大きく曲がった巨大な鈍色の刃が出てくる。続いて刃に繋がる鈍色の柄。それは死神が持つような、正真正銘大鎌だった。
フレデリークは大鎌を掴むと、何も無い空間を斜めに一閃。“何も無い”空間の筈なのに、何故かそこに人間一人くらいの長さの切れ目が入っていた。切れ目は徐々に大きくなり、その“先”には、この世界のどこでもない“異空間”が広がっていた。
「——次の世界は僕の心を満たしてくれるかな?」
ぽつりと呟くと、フレデリークは切れ目の中へと足を踏み入れた。ほんの少し、期待を抱きながら。
- Re: 禁忌現実-The Fantasy to Exist- ( No.4 )
- 日時: 2010/03/25 14:12
- 名前: 付喪 ◆29ayQzCLFo (ID: YpJH/4Jm)
第一章/とある日常への来訪者-Visitor to a Certain Daily Life-
01〆
「……っ、暑い……何なんですかこの猛暑は……」
我ながら情けない声だと思いつつ、泉井刀哉は校門を通る。茹だるような暑さと反比例して、刀哉のテンションは暑さにやられどんどん下がっていく。
七月二十日。
つまりいうと明日から夏休みなわけだ。そう、明日から夏休みの筈なのに、七月とは信じられない暑さにやられ喜ぶどころではない。この暑さに喜ぶセミ共の思考回路は、刀哉には到底理解出来ない領域であった。
親友(というよりは悪友)の桑原春樹は刀哉とは反して、明日から夏休みという事に尋常じゃないまでの高いテンションになっている。何故なら夏休みは宿題という呪縛がありながらも、代わりに学校という束縛から解放される。美少女(美女も可)なら三次元だろうが二次元だろうが大好物な悪友は、この自由な時間をフルに使ってナンパをするつもりなのだ。刀哉からしてみれば、この暑さの中ハイテンションとはセミと同類としか思えない。
だが一方で暑さにやられず元気な悪友を半分羨ましくも思う。しかし羨ましく思ったところで刀哉のテンションが上がるわけでもない。はあ、と溜め息を零しながらだらだらと通学路を歩く。
まあ落ち込んでいたところで仕方無い、何とか元気出すかと顔を上げた時のこと。
「……は?」
思わず声を漏らしてしまった。
中性的な格好で男の子か、女の子かは微妙なところだが多分女の子だろう。赤毛に近いショートカットに鳶色の目と、中々顔立ちの整っている子だ。そんな子が、刀哉の目線の先にいた。しかも刀哉のことをじっと見ている。そこはまんざらでもないのだが、格好が信じられない。
ベレー帽に似た形をした帽子にシャツ、それに赤茶色のネクタイ。その上にベストを着ているのだが、胸部の下辺りでカットされている為、ネクタイの先がちらつく。更にその上に焦げ茶色のブレザー、ズボン。半袖の刀哉でさえ茹だるような暑さだというのに、その子は平然とした顔で立っていた。刀哉の中ではセミが擬人化でもしないかぎりはありえないと思っている。
刀哉はとりあえず黙って過ぎ去っていこうと、何も見てはいなかったように少女(?)の横を通り過ぎる。が、少女(?)は刀哉の半袖をくいっと掴んだ。
「ねえ君」
「……えっと、何?」
「ちょっといいかな?」
声は少し男の子のようだったが、どちらかというと女の子のようだった。自分が何かしたのかとビクリとしながら少女(?)の方を向く。
「僕、此処初めて来たんだけど」
「あ、ああ」
「案内してくれないかな? お礼だったらするから」
え……と刀哉は言葉に詰まる。この猛暑の中知らない子の街案内になど付き合いたくはないが、自分を真っ直ぐ見つめるこの視線から逃れることは不可能に近い。
何故何人もの通行人から自分なのか、と内心がっくり項垂れる刀哉。
「……あ、うん。分かった」
「有難う、僕はフレデリーク=セルヴァン=シュレベール。フルネームはフレデリーク=べレンガリア=ラウル=セルヴァン=シュレベールなんだけど、覚えるの面倒臭いだろうしフレデリークでいいよ」
「俺は泉井刀哉……だけど。えっと、フレデリーク、君? ちゃん?」
「僕は女。あ、よく間違えられるから大丈夫」
知らない子のうえに、思いっきり外国人だった。しかも日本語ぺらぺらのボク少女という奴だ。
……外国人でもボク少女でも炎天下の中長袖長ズボンはないと思う。
- Re: 禁忌現実-The Fantasy to Exist- ( No.5 )
- 日時: 2010/03/01 21:03
- 名前: 瀬多 哉 ◆tdNM0cwS6s (ID: 0vH/svqy)
>>2
そだよ、哉れすどおおーv((
ん刀哉好き(ちょ←
わお、早速刀哉でたしw
魔力がらみか、妖怪も面白そうだったけど、やぱ魔術系いいすb
フレデリーク萌←
実は哉の僕少女だったりするね、
- Re: 禁忌現実-The Fantasy to Exist- ( No.6 )
- 日時: 2010/03/03 20:30
- 名前: 付喪 ◆29ayQzCLFo (ID: YpJH/4Jm)
>瀬多 哉
一応刀哉は主人公だからなw
一応妖怪も出す予定ではいたり、九尾の妖狐好きry
魔術とか大好きなつくもですと。ただ魔術やるとなると、妖怪とは比にならない程専門用語が出てくるわけだが……。
ちょwwフレデリーク萌ってww
そういや哉の一人称は「僕」か・ω・
- Re: 禁忌現実-The Fantasy to Exist- ( No.7 )
- 日時: 2010/03/29 16:09
- 名前: 付喪 ◆29ayQzCLFo (ID: YpJH/4Jm)
02〆
買い物にくたびれた客が、自動販売機のジュースを飲んだりなどしてそれぞれ一時的な休息を味わっている。そんなデパートの屋上に、場にそぐわない格好をした少女がいた。
下界を容赦なく照りつける太陽の光さえも糧とし、光り輝く銀髪は腰まで伸びている。全てを見透かされるような澄んだ赤い瞳は、ルビーのように美しい。肌はシルクのように白く、手や足はしなやか。服装はノースリーブの黒いワンピースで、スカートの部分はバルーンスカートのようになっている。靴はニーハイブーツ程ある黒の編み上げブーツと、そこまではどこか人を寄せ付けない雰囲気を持つ、恐ろしい程の美少女。
だがその服装に西洋の甲冑のパーツをばらつかせたように着用しており、纏っている白いマントは甲冑のパーツの一部を肩につけて固定している。両手の肘からは同じく甲冑を着用しており、左眼の目元の下には「Ⅳ」と刻まれている。
天使のように神秘的な美少女でも、格好は明らかに他の人間とは違い異様だ。
だが屋上で休憩しているどの人間も、少女の存在に気づいている様子はなかった。視界に映っていないとかそんな事ではなく、根本的にそこに“いない”という認識なのだ。
誰にも気づかれる事なく、少女は屋上の柵から地上を眺める。そんな少女に、また別の少女が忍び寄っていた。その少女もまた、銀髪の少女に劣らない美しさだった。美しさ、というよりは“可愛らしい”の方が合っているだろうか。太股まで伸びている、黄金に輝く金髪に虚ろなエメラルドグリーンの瞳。ノースリーブの黒服は足の付け根あたりまで繋がっており、バルーンパンツのようになっている。肩より少し下からは手まですっぽり覆う長さの黒い袖が、右腕左腕の両方に。黒のサイハイブーツを履いており、肌はミルクのように白く手足は華奢でしなやか。人形のような小柄な体格の少女だ。
銀髪の少女の桜色の唇が開かれる。
「一応礼は言った方がいいのか、“双翼の闇”」
「そのような無駄な行為は要りません、報酬は前もって言った通りので結構です」
金髪の少女——本名ではないだろうが“双翼の闇”が淡々と答えると、銀髪の少女はつまらなそうに「そう」と言った。
銀髪の少女と“双翼の闇”、暫く無言が続くとやがて銀髪の少女が口を開く。
「……貴方との会話はやはりつまらない」
「それは貴方も同じだと思うのですが。それ以前に私と会話をする必要などありますか?」
“双翼の闇”にそう指摘されると、銀髪の少女は何か考えるように黙り込んだ。一応彼女に反論する事も出来るのだが、“双翼の闇”には何を言っても無駄だと悟った。
“双翼の闇”は銀髪の少女がこれ以上何も言う気は無い事を察すると、静かに“双翼の闇”の周りを旋風が包み始める。
「それでは私はこれで」
“双翼の闇”はそう告げると、旋風に包まれ止む頃には彼女の姿は何処にもなかった。銀髪の少女はその一部始終を見届けると、呟く。
「……自分のやるべき事をやらなければ」
意志を固めるように、小さく。
***
「美味しいね。これ」
「……そして何故お前のパフェの代金まで俺が」
「いいよ、僕払うから」
「……いや、やっぱ俺が払う」
「有難う、刀哉」
フレデリークはチョコレートパフェを食べながら、可愛らしく微笑む。
とあるカフェのテーブル、向かい合わせで男女が座っていた。一人は夏仕様の学生服の男、もう一人は季節とまったくそぐわない格好をした男の子のようなボーイッシュ系の少女。
ボーイッシュな格好のせいか、フレデリークにどこかクールで男の子っぽい印象のあった刀哉だが、今目の前にいるフレデリークは周りから見ても心から美味しそうにパフェを食べる、一人の可愛い“女の子”であった。元々フレデリークの顔立ちが整っているのもあって、パフェを食べるその姿は絵に描いたような女の子。そんなフレデリークに、不覚にもドキリとやられる刀哉。
ふとフレデリークは顔を上げて刀哉を見る。クリームののったスプーンを眺めると、スプーンをひょいっと刀哉の目の前に差し出す。
「食べる?」
「え、な、ななななな!?」
戸惑う刀哉を見て、悪戯っぽく笑うフレデリーク。勿論スプーンはフレデリークの口付けである。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
この掲示板は過去ログ化されています。