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モノクロ  =完結しました
日時: 2010/05/31 16:46
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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未熟者ですが  よろしくお願いします\(^o^)/





お客様
  
   ユエ様  月光様  白兎様
   ゼリー様  神無月様

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Re: モノクロ ( No.27 )
日時: 2010/05/30 11:28
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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息さえできない突風が巻き起こった。

「これは……っ」 「魔法!? 」

監査官が王を結界で守りながら、驚きの表情でクーを見た。
クー自身、どうして自分が魔法を使えるのか分からなかった。

不思議な魔術の宿るハーデル王国では、もとより魔術の使える人間が多く存在する。
でもまさか。 

「……シロはどこにいる」
「シロ?」
「あいつの名前だよ」

ミリアムは叫ぶ。

「あの子は神への捧げものだ! お前なぞに渡すものかっ」
「…………この暴君が」

クーは怒りさえ感じていた。
もう二度と。 愛する人を失いたくない。

力ずくで聞き出してやろうか。

そう思い、クーがミリアムに近づく。
監査官がクーを抑えようとするが、何か結界のようなもので跳ね返ってしまう。

「この、囚人如きがっ」

ミリアムは腰から剣を抜き、

「今から、囚人304番の死刑を、俺が直々に行ってやる!」
「お、王!」
「こやつ、何やら強力な魔術を使う。 生かしておけんッ」

クーはどこまでも無表情に。

「俺はただ、シロを助けたいだけだ」

それだけ。
それだけが、こんなに大変。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

ミリアムがクーに斬りかかる。
どちらかの命が、消えるかもしれない。

王が死ぬか、死刑囚が死ぬか。



 

          ⅴ




閉ざされた闇。 漆黒の世界。

シロは、夢の中にいた。
いつもの真っ白な部屋ではなく、なんだか暗くて、寒い。

「………クー?」

たまらずにそう呼んでみる。
けれど、返事はない。

「ここはどこ? これが、クーの言っていた外の世界なのかしら」

進もうにも、方向が分からない。
やがて、誰かのすすり泣く声が聴こえた。

「……誰か、泣いているのかしら」

その声の方へ歩いて行くと、一筋の光が見えた。
そこには、パープルの髪をし、同じ色のドレスを着た女性がいた。

「あなた、誰?」

シロが声をかけると、女性は振り返る。
驚いた音に、シロとよく似ていた。

「……お嬢ちゃんこそ、誰?」
「私はシロ。 大好きなクーがつけてくれた名前なの」

シロは堂々とそう言い、女性をまじまじと見た。
初めて見る、 “女性” だった。

「どうして泣いているのかしら」
「我が子を……捧げてしまったの」

そこでシロは、この女性が、いつも自分の夢に出てくる女性だと気付いた。

(ここは、夢なのね)

「あなたの子供は?」 「分からないわ。 取り上げられてしまったの」 「……守れなかったの? 大切な人を」

誰かと重ねながら、シロは問うた。
女性は深く頷き、

「ええ、そうよ。 守れなかったの」
「あなたは、後悔しているのかしら?」
「しているわ。 どうしてあの時、必死で抵抗しなかったのか」

女性は目を真っ赤にさせて、涙を流す。

「神様なんて、居ないのに……。 どうしてあんなバカな事……っ」
「あら、神様はいるわよ」

シロは当然のようにそう言った。 女性が少し驚いた顔をする。

「あなたは、勘違いしているわ。 あなたが生まれてきた時点で、もうそれは神様が与えてくれた奇跡よ。 サンタさんだって、天使だって、悪魔だっているわ。 本で読んだもの」

皮肉な事だった。

彼女を助けようとする人が神を否定し、その神に殺されようとしている彼女が、神を肯定した。

「だから、ね? 泣かないで、あなたの名前を聞かせて?」

諭すような口調。

女性は微笑んで、答えた。

「トナイシア・トルバート」

消えて行く。 光が。 
繋いだ手を離し、シロは手をふった。

「夢が終わるみたいだわ。 トナイシアさん、あなたの事は忘れないわっ」
「私もよ………シロ」



幻だったのかも知れない。
お互い、気付く事はなかったけれど。

Re: モノクロ ( No.28 )
日時: 2010/05/30 15:49
名前: ユエ (ID: jCCh2JPd)

本当に面白いです!!
まさかの展開になっていって……。
目がはなせない〜(>_<)

Re: モノクロ ( No.29 )
日時: 2010/05/31 10:48
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

まさかまさかのそのまさかな展開です

Re: モノクロ ( No.30 )
日時: 2010/05/31 11:05
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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「シロはどこにいる」
「………………」

そこには、魔力をおさめたクーと、辺りに倒れている監査官、そして、かろうじて立っているミリアムの姿があった。

「……何だ、お前。 どこから……こんな力が」
「俺が聞いてんだ。 ──あいつはどこだ」

クーは真剣だった。
もう二度と、愛する人を見失わないために。 必死だった。

「……死刑囚、お前はどうしてそこまで神の生贄を邪魔する」
「俺は、カミサマなんて信じちゃいない」

神が居てくれたなら──、
どうしてコリアは死んでしまったんだろう。

「そんなの、嘘っぱちだ」

死んだような目で、クーがミリアムを睨む。

「カミサマなんて居るわけないだろ!! そんな者の為にシロは死ぬのか? 自分がどうして存在しているのかも分からないままッ!」

久しぶりに、感情が高ぶってくる。
人間らしい。

「お前に……、何がわかる……」

胸倉を掴んで引き寄せたミリアムの表情は、歪んでいた。

「トルバートの家に生まれ、ちょうどソレが儀式の100年目に値しただけで……っ、妹は……」
「アンタも苦しいんだろ。 だったら、シロを助けてやれよっ! バカじゃねーのかっ」

ミリアムはクーを突き飛ばし、

「心は……捨てたんだ」

そう呟いた。

「今でも覚えてる。 母さんの、声。 叫び声。 返して返してと、父さんに訴えているんだ」

──返して! 私の子を! 返してっ。

心に残った、母親の姿。
赤子を奪われ、狂ったように泣き叫ぶ、居た堪れない様子。

──神様なんて……っ、残酷すぎるわっ。

悲痛に、残酷に。
引き裂かれた、親子の愛。

目の当たりにするには早すぎた。

「病みながら母さんは死んでいった……。 父さんも病気で死に、俺は若き王として、神への磔刑を成し遂げる」

ミリアムはそう言ったが、すぐに顔はクシャリと歪んだ。

「だけど……もう、疲れた……」

クーの胸倉を掴んでいた手が緩み、涙が流れる。

「──一度、彼女に会った事があるんだ。 秘密で、塔の白い部屋に行った事がある。 彼女には、兄だとは教えてないけど……、愛らしい子だった」

きっと、同じように生意気な事を言っていたんだろう。
クーに言ったように。

「なあ……お前に会ったシロは、優しい子だったか?」
「────生意気で、うるさくて、ワガママで…。 とても優しい奴だった」

だから。

クーは囁いた。

「あいつは……今どこにいる」

ミリアムは微笑みながら、

「地下だ」

Re: モノクロ ( No.31 )
日時: 2010/05/31 11:18
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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        †第4章†
        愛してる




「私、何か悪い事したかしら? 多分してないと思うわ。 なのに何よ、この仕打ち。 今まで文句一つ言わず、あの部屋に居てあげたのに……あんまりだわ。 あなた達、ちゃんと弁えているの?」
「黙れ」

ピシャリと言われ、シロはムッとする。

「冗談じゃないわ。 何この汚い部屋。 ワンピースが汚れるわ。 シャワーを貸しなさい」
「黙れと言っている」

監査官にそう言われ、シロは呟いた。

「クーに会いたいわ」

監査官にはそれが聞こえ、 「お前はもう囚人304番とは会えない」 と言った。

「え……、どうしてよ」
「お前は神の生贄として滅するのだ。 トルバートの子」

シロは首を傾げて、

「……あっはははははははははははははははは」

何故か笑い飛ばした。
監査官数人がギョッとした顔でシロを見る。

数十秒は笑った。 

「ひひひひひ。 ──それはまるで、お伽噺のような話ね」

他人事のようにそう言い、シロは長い髪を指で透きながら、

「本で読んだわ。 キレイなお姫様が、神様への生贄として磔にされるの。 それを、格好いいハンサムな王子様が助けてくれるのよ」

ロマンチックな展開。
メルヘンな想像をしながら、シロは幼い表情で微笑む。

「私がお姫様だとしたのなら……王子様はやっぱり」

轟音。
シロの言葉を途中で遮り、地響きがする。
土煙もし、そこから現れたのは、

「──王子様はやっぱり、クーね」
「……誰が王子様だ」

キレイな顔立ちのクーが居た。


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