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モノクロ  =完結しました
日時: 2010/05/31 16:46
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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未熟者ですが  よろしくお願いします\(^o^)/





お客様
  
   ユエ様  月光様  白兎様
   ゼリー様  神無月様

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Re: モノクロ ( No.17 )
日時: 2010/05/27 17:28
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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「……………なんだって?」
「聞こえなかったかしら。 羨ましいと言ったの」

シロの言葉に、あからさまにクーが不快な表情になる。
それに気づいてはいたが、シロは特に気にせずに、

「あなたにとって、それは恐ろしい体験だったでしょうね。 ──でも、私には羨ましいとさえ思うわ」

あんな事があっても。
人が目の前でバラバラにされて、その血肉で芸を仕込まれ、大人たちに狂わされる。

そんな体験が羨ましいなんて、普通の人間は思わないだろう。

シロだからこその考えだった。

「あら、気に障ったかしら」
「………別に」

クーはそれ以上は何も言わず、そっぽを向いて黙りこくる。

「そろそろ夕食の時間ね。 私は白い部屋に帰るわ。 また明日、クー」

シロが去っても、クーはぼんやりとどこかを見つめていた。
やがて、監査官が訪れ、夕食を持ってきた。

「304番。 夕食だ」

ミルクリゾットを、慎重に牢屋の中に入れる。
別に、逃げる気はない。 

「……なぁ、アンタ」 「なんだ」

クーに初めて声をかけられ、監査官が少し驚いた表情をした。

「ここに、白い、小さい女は居るか?」
「…………何故、ソレを知っている」
「いや、少し聞いてみただけだ」

クーがそう言うと、カチャンッとミルクリゾットを落とした。
白い液体が床に散らばる。

「ま、まさか! ここに来たのか!? そうなんだな」

必死にそう言い、クーはポカンとして監査官を見据えた。
何か、悪い事を言ってしまったのだろうか。

「た、大変だ……っ。 “生贄” があの部屋から出ているっ」

(生贄?)

血相を変えて、ミルクリゾットをそのままにして去って行った監査官を不審に思いながらも、クーは察していた。

シロが、生贄だという事を。

「……まさか……あいつは……」

Re: モノクロ ( No.18 )
日時: 2010/05/27 18:14
名前: 白兎 (ID: BtjLrvhc)

こんにちゎ(^U^)
すごく気になるお話です。続き頑張って下さい♪
クーの過去は、とても壮絶でしたね…。見てて、こっちまで辛くなってきた;
シロは生贄だったのですか…?

Re: モノクロ ( No.19 )
日時: 2010/05/28 22:03
名前: ユエ (ID: bcCpS5uI)

生贄?!
続きが楽しみです(><)
相当大変なことのようですね・・・!!

Re: モノクロ ( No.20 )
日時: 2010/05/29 16:25
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)



クーのはね、俺もうぅって泣きそうになった(>_<)
シロの事は、これから明らかになって行きます。
>白兎さん


生贄が何なのか、シロの存在意味は何なのか。
それをこれから更新していきます(^^ゞ
>ユエさん

Re: モノクロ ( No.21 )
日時: 2010/05/29 17:17
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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神への信仰が高いハーデル王国では、300年前、大飢饉がおこった。

人々は飢え、死んでいき、共食いまで始め、革命が起こり王家が死滅したという凄まじい有様だった。
その大飢饉は、現王家のトルバート家の祖先のおかげで収まった。

トルバート家は、王家一族の、まだ幼い少女を、『神への生贄』 として磔刑にした。

それから嘘のように大飢饉はおさまり、100年に一度、二度とあんな災害が起こらないよう、少女を一人生贄にする事が決められた。

「…………」

国の人々が身守る中、無残に神の生贄として殺される。

「シロ……っ」

牢屋の鍵は、監査官が慌てて行ってしまった為、まだ開いている。
シロは、シロが、シロに、シロを。

シロ。


──クー。 いいわね、クー。

──名前よっ、あなたの名前。 とてもいい名前じゃないかしら。


無邪気に、ワガママに、生意気に、可愛らしく。
白い少女のドレスが舞う。

「………シロ」

鎖を必死でジャラジャラ鳴らしながら、牢屋から出ようとする。
だけど、鎖はきれない。

人間のクーの力じゃ、鎖は空しく手首に擦り切れるだけだった。

「くそっ」

牢屋は開いてるのに、鎖がきれない。
悔しさのあまり、唇を噛みしめた。 

「くそ……っ、放せよっ!」

そう怒鳴ると、火花が散って、鎖がゴトリと落ちた。
それは魔法が発動したという事だが、それに気付かずに、クーは牢屋から出た。

「………?」

手首を擦りながら、薄暗い塔の中を移動する。





           †





「返して! 私の子を! 返してっ」

いつも、私の夢に出てくる女の人は、とても悲しそうに泣いている。

「嫌よっ、神様なんて……っ、残酷すぎるわっ」

必死に赤子を抱きしめて、ノドが裂けるほど。
そんなに叫んで、痛くないのかしら。

今日も私は夢を見る。 クーと別れてその後に。

「私の子を返してッ!」

だけど、眠れないの。
この人の声があまりにも悲しくて。




心に、響いてくるから。


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