ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

心壊アラカルト 完結
日時: 2010/10/09 09:42
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

.



なんだかんだ、未熟者ですね。

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18



Re: 心壊アラカルト ( No.73 )
日時: 2010/10/07 03:35
名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: .RPx9Kok)

改めて『心壊アラカルト』というタイトルが心にしみる。

Re: 心壊アラカルト ( No.74 )
日時: 2010/10/07 16:00
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

なんてこったですよ、ええ本当に。
>アムロさん


好きじゃないんですけど、大切なんです
>時雨さん


お魚さんですよ、お魚さん^^♪
>スペシャルさん


おこり過ぎて……どうしよう笑
>ユエさん


心にしみてきますか? ありがとうございます
>紅蓮の流星さん

Re: 心壊アラカルト ( No.75 )
日時: 2010/10/07 17:34
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

.


          第4章
        殺人プリズム



目をあけて、小さく冷たい息をする。
夜、だった。
隣で弘夢が寝息をたてているのが分かる。 この人は、いつも僕の隣で寝たがる。
こどもらしい印象を受ける。

「………行ってきます」

行くって……どこに行くんだろう。 
どこに向かって僕は行くんだ。
母親の処か? ミエの処か? せなの処か?

「まあ、とりあえずはさ」

3年前の殺人狂を、殺しに行こうか。







たとえば。
好きな子がいて、その好きな子の全てを独占したいと思ったら。
それはある意味、依存と執着心と嫉妬に変わると思う。

誰よりも、その対象を独占したいと、思うんなら。


「今度は、ミエじゃなくて、弘夢を殺すの?」


それは、愛とは思えないかも知れない。

「そうやって僕の周りの人間を殺して、満足?」
「……意味、わかんない」
「なんでそうやってふてくされるんだよ」

腕を締め上げ、誰が埋まってるか分からない墓標に体を押しつけ、そいつは。

琴羽せなは。

抵抗もなく、ましてや観念したわけでもないらしい。
反抗期?

「なんでユエがここにいるの。 今深夜だよ」
「それは、僕がせなに持つ疑問と同じかな」

せながこちらを見て、ペケーと笑う。
またあの笑い方だ。 脱力感が沸く。

「腕、痛い 「キミが、ミエを殺したんだろう」

交差させた彼女の腕を、更にきつく締め上げる。

「なんのことかな」
「3年前の、ここで起きた殺人事件だよ。 殺されたのは近所の中学生4人。 犯人は色影いろは」

犯人である色影が、過去に2件の事件の被害者だと分かり、ニュースで大きく取り上げられた。

「被害者の中には、僕の弟もいたんだ。 お前だって知ってるだろ? 会った事あるだろう?」

離婚していたとは言え、僕と弟の仲は良かった。
素行の悪い、学校の問題児だったけど。 それでも、ミエは弟だったのだ。

「なんでせなが殺したって言えるの? 証拠はあるの?」
「無いよ」

証拠があったら、キミがきっともう逮捕されてるだろう。
だけど、証拠が無いために、キミは疑われることも、その罪を背負わなくても、今まで生きてこれた。
だけど。

「あの日、僕がミエが殺されるのを、見ていたとしたら?」

停止。

停止、だ。
琴羽せなが停止して、逆再生されて、2倍速していく。
ほうっておいて、僕は説明を試みた。

「夏休みの最終日前日、ミエと母親は僕に会いにきていた。 その夜に、ミエは友達とこの墓地に肝試しに出かけた」


──気をつけて行けよ。

──ダイジョブだって。 兄ちゃんは心配しすぎ。


「10時になっても、ミエは帰ってこなかった。 捜したよ、そりゃ必死に」

どこかで怪我をしているかも知れない。 
暗いから、迷ってるのかも知れない。

肝試しをしている墓場に来て、その不安は、

「………っ」

完全に恐怖に、変わった。

Re: 心壊アラカルト ( No.76 )
日時: 2010/10/08 10:32
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

.



3年前、この墓地で僕が見たのは、その時付き合っていたせなが、ミエをただの肉にしている所だった。
暗くて、目が慣れるまでそこにいた。

肉が砕かれる音、骨の軋む音、髪の毛をむしり取る音、笑い声。

数人の肉の塊を踏みつけながら、黒髪の女の人もいた。
せなを見て、笑ってる。
せなが人を殺しているのを見て、笑ってる。


「せなは、ミエを殺して逃げたんだ。 色影いろはがミエを殺したって事になって、事件解決だ」
「……いつから、知ってたの?」
「3年前から。 だから、別れたんだ」

人に言わないと、決めた。
せなが大切だったから。

「キミはその後学校に来なくなった。 受験はしたみたいだけど、僕とは会わなかった」

再会するまで。
3年間、僕はせなを忘れた事がなかった。

「……せなも、知ってるよ」
「なにを?」
「ユエさぁ、せなのこと、殺そうとしてたでしょ」

あ。
やばい、バレてる。

「この前も。 今も」

せなが思い切り足で腹部を蹴ってきた。 息か声か分からないものを吐いて、反射的に彼女の腕を掴む。

「せなが突き飛ばされて怪我したの……あれ、ユエがやったんでしょ? ユエがせなのこと押したんでしょう」
「あれれ、なんでわかったの」
「ユエの匂いが、したから」

汗が噴き出る。
うーん、ちょっとこれは予想外。

「せな、ユエのこと愛してる。 大好き。 だから、ユエが殺意をせなだけに向けてくれて、凄く嬉しい」

琴羽せなは、異常だ。

「ユエの怒りも、嬉しさも、哀しみも、ぜんぶぜーんぶせなだけのもの。 せなはユエを愛してるし、ユエがせなを嫌いでも、いつかきっと好きになる。 ……なのに」

僕は馬鹿だ。 せながナイフを持っている事に、気付けなかった。

「なのになんで? なんで弟にだけ笑うの? せなには笑ってくれなかった! 弟だから? ねえ、せなより大切なの?」

ああ、嫉妬してたのか。
ミエにだけ笑顔を向ける僕を見て、彼女は。

「……せなより大切な人なんていないよ」

いるわけない。
だって、せなは、

「大切な、復讐相手だから」

僕が、殺す。
それだけを考えてきた。 頭の中は、せなでいっぱいだ。

「嬉しい。 ずっとせなを殺したいって、せなのことばかり考えてくれてたんだ」
「肯定するよ。 3年前はあまりの怒りで気が狂いそうになった。 今殺しちゃダメだって思ったよ。 だから別れた」
「せなは、ユエがいつか戻ってくれるって信じてたよ」

戻ってきた、僕は。 せなの元へ。
復讐心を滾らせて。

だから、今。

「キミを、殺そうと思う」

Re: 心壊アラカルト ( No.77 )
日時: 2010/10/08 15:10
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

.


刃が、散った。

僕の頬をかすって、軽く皮膚を爆ぜる。 痛みはない。
せなの振り上げた腕を掴み、一気に引き寄せる。 反対方向に捻って、ナイフを落としたのを確認した、その後は。

「ミエと同じように、殺してやろうか」

想像する。
ただの肉となった、せなの体。 こんな美人さんでも、腐敗すれば気味悪いだけ。

「ユエに殺されるのは……マジ本望♪」
「死ぬのが、怖くないの?」

せなは笑って、 「怖いのは、ユエの方じゃん」

彼女の指が、僕の腕に伸びる。 
僕の死をも独占したくて、彼女から要求された自傷行為の跡。

「せなが、殺してあげよっか」
「ふざけるな。 僕はお前を殺すためだけに生きて来たんだよ」
「せなのために生きてくれたんだ……。 せなが死んだら、ユエは死ぬの?」

笑ってやる。 ニヤリと、笑ってやる。

「お前の死体を見て、笑ってやるよ。 せな」

だから、
色影いろははもう殺せないから、
琴羽せなを、僕の手で。


「でも、せなは死にたくないなー」


小さく、呟くのが分かった。
迂闊、だった。

知らぬ間に僕は、自分のトラウマの現地に居たんだ。
墓場だ。
昼だと平気だけど、今は夜。 夜、まっくら。
心が悲鳴を上げる。 だって、ここはさ。

「 ")&('%$##")$%""(')&(&%%%$##()#"!!)(%$%& 」

どうして。
せな、セナ、瀬奈。

消去しろ、消去。 消きょぎぃぃぃいいぃぃっ。
グルグルグルグルグルと頭が廻る。
痛い、イタイ、あああっ ああああああ ああああっ

「……………だいじょうぶ」

せなが、抱きしめる。
僕を。
気づいてしまったのは、僕だ。

僕には、せながいないとダメらしい。
殺したいほど、憎くて、大切なのに。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18