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OBR
日時: 2010/11/20 05:39
名前: sasa (ID: LSK2TtjA)

これから小説を書きます。

グロありですので注意してください。

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Re: OBR ( No.1 )
日時: 2010/11/20 06:37
名前: sasa (ID: LSK2TtjA)

−東京都立東中学校3年2組クラス名簿−

男子
01 秋山悠斗(あきやまゆうと)
02 綾野浩治(あやのこうじ)
03 有田豊太(ありたほうた)
04 石黒煉 (いしぐろれん)
05 越後琉馬(えちごりゅうま)
06 大川光 (おおかわひかる)
07 大月恭樹(おおつききょうじゅ)
08 落合章二(おちあいしょうじ)
09 鬼塚清吉(おにづかせいきち)
10 北山武 (きたやまたけし)
11 木村琢 (きむらたく)
12 草上剛 (くさかみごう)
13 黒塚洋介(くろづかようすけ)
14 白沢博士(しらさわひろし)
15 高梨信雄(たかなしのぶお)
16 田中義一(たなかよしかず)
17 津川楓 (つがわかえで)
18 徳永光明(とくながみつあき
19 中井雅樹(なかいまさき)
20 仲田明 (なかたあきら)
21 波間黒男(はまくろお)
22 元木隆弘(もときたかひろ)
23 森本零生(もりもとれいお)
24 矢田陽介(やだようすけ)
女子
01 相川勝美 (あいかわかつみ)
02 青村サキ (あおむらさき)
03 赤井霧子 (あかいきりこ)
04 明石貞子 (あかしさだこ)
05 阿久津舞 (あくつまい)
06 曙式部  (あけぼのしきぶ)
07 浅井千佳 (あさいちか)
08 朝倉美穂 (あさくらみほ)
09 麻生愛子 (あそうあいこ)
10 足立真由美(あだちまゆみ)
11 熱海良子 (あたみりょうこ)
12 穴山奈美恵(あなやまなみえ)
13 姉崎修子 (あねざきしゅうこ)
14 天野麻耶 (あまのまや)
15 網本貴子 (あみもとたかこ)
16 吾室玉子 (あむろたまこ)
17 雨宮小夜 (あめみやさよ)
18 綾瀬紀子 (あやせまきこ)
19 鮎川麻美 (あゆかわあさみ)
20 淡路底美 (あわじそこみ)
21 安西亜夜 (あんざいあや)
22 安藤陽子 (あんどうようこ)


Re: OBR ( No.2 )
日時: 2010/11/20 06:28
名前: sasa (ID: LSK2TtjA)

元木隆弘(男子22番)は眠い目を擦り、まだ出発しないかと待ちくたびれていた。 朝の気だるい空気に包まれた、狭い空間。長方形の空間で、いたるところにシートつきの椅子が規則的に並べられていて、ほとんどの椅子を学生服が埋め尽くしている。

そう、バスだ。
元木隆弘という東中学校3年2組の男子生徒は、今バスの中にいた。いや、もちろん彼だけではない。3年2組ほとんどすべての生徒が、狭苦しくこのバスにぎゅうぎゅう詰めにされていた。

今このバスに来ていない生徒は、恐らく寝坊している生徒だろう。

元木は軽くあくびをして、朝の陽射しに包まれた窓の向こうを意味もなく眺める。

──今日は夏休み明けの校外学習。
まあ、「学習」なんてのは後からとってつけたようなもんで、俺達にとっちゃあタダの道楽のために行くようなものだ。適当に博物館みたいなのを見学して、適当にそれをレポートに書き写すだけの作業。

しかし、どっちにしろ俺は乗り気じゃない。
元々一人で行動するのが好きな為か、どうもこういう団体行動は苦手だ。
……俺の数少ない友達もそんなヤツばっかりなんだよな。俺が影響受けてるのか、それとも与えてるのかはわからないけど。


元木はバスの窓から見える朝もやの風景から目を引き剥がし、隣で元木と同じく眠たそうな顔をしている石黒煉(男子4番)を横目で見やった。

石黒もまた、元木と同じく冷めていて、そして単独行動が好きな男だった。
二人は小学時代からの親友なのだが……今思えば何故親友になったか元木は理由が思い浮かばなかった。

それでも石黒は元木にとって大切な友達だった。
二人ともどこか冷めてて、ここまで似たような性格のコンビは珍しいとか言われるが、二人は全く気にしていなかった。特に大の仲良しというわけではないが、なにか、やはり「親友」みたいな絆のようなものが二人にはあったから。

ただ、どちらかと言えば石黒のほうが元木よりも優れているかもしれない。
石黒も元木も運動神経は抜群だが、元木は決して頭は良い方ではなかった。かといって別段悪くもなく、まあ平均的なわけだが。

それに比べ、石黒は成績優秀、素行良し、容姿端麗と来ていた。

まあ、その程度の優劣を気にする二人ではないのだけれど。

「煉、起きてる?」
「……寝てる」

石黒はたまにこんな冗談も言う男だった。

「このバスいつ出発すんだ? いい加減エンジン温め過ぎだろ」

元木の言う通り、バスはエンジンが掛かったまま中々出発しようとはしなかった。
もうバスガイドも来ているというのに、エンジンはブルルルと唸ったままその車輪を回転させようとはしない。ただ、排気ガスを朝の空気に吐き出しているだけで。

他の生徒も元気が有り余っているようで、阿久津舞(女子5番)、足立真由美(女子10番)、穴山奈美恵(女子12番)らがお菓子を頬張りながらきゃいきゃいはしゃいでいた。

──おいおい、今お菓子食ってどうする。
セーラー服に屑が毀れてますよ。

阿久津ら3人は元木らとは反対側の席ではしゃぎまくっていた。
この3人はアイドルのように可愛く、歌手のように歌が巧いことで学校中の注目の的になっていた。
特に足立と穴山の歌声は元木も素晴らしいな、と感じていた。(阿久津は下手かもしれない、とも感じていた)

阿久津舞らの前では、大月恭樹(男子7番)、白沢博士(男子14番)の二人が熱い論議を交わしていた。

大月は科学論者。科学一筋。科学で照明できないものは何一つないと言い張る堅物だ。
一方白沢は非科学論者。超常現象、幽霊などを信じている夢見がちな男だ。

この二人は親友でもあり、ライバルでもあった。
暇さえあれば宇宙人がどうとかプラズマがどうとか議論している。

「タカちゃん」

ふと、後ろから声を掛けられ、元木隆弘は首だけ動かして後ろに振り向いた。

元木の数少ない友達の一人、矢田陽介(男子24番)だった。
いつも曖昧な微笑みを浮かべている温和な少年である。

矢田の隣では越後琉馬(男子5番)が目深に帽子を被って一心にマンガを読んでいた。

元々矢田と越後はそんなに仲良くない。そもそも越後と仲が良い生徒などいない。
ちょっとしたくじ引きでこんな結果になってしまったのだ。

矢田は元木の背もたれに顎をつけ、

「ねぇ、あよよ来てなくない?」
「あ、そういやいないな、あいつ」

『あよよ』というのは安西亜夜(女子21番)の愛称である。(先生が名前を呼ぶときに「あんざいあよ」って読んでしまったことから由来しているらしい)
例のアイドル3人組に負けないほどのアイドルらしい可愛らしい顔つきで、性格も良いため、矢田のように憧れている生徒も何人もいるのだ。

どこかカリスマ性がある少女。そんな感じだった。
皆から愛されていたし、無愛想な元木も決して安西のことは嫌いではなかった。嫌いにさせない何かが、彼女にはあるのだ。

──あ、もしかして安西が来てないから出発しねーのかな?
遅刻は置いていくぞって担任の塚原先生も言ってたのに。

「遅刻じゃないか? あいつ、置いてかれるかもな」
「えー!? あよよがいない校外学習なんてマジ勘弁だよ!」

と、矢田陽介がバカらしく頭を抱えたとき、一人の生徒が息を切らしながらバスに飛び乗ってきた。まるでウサギのように、可愛らしく。そして図っていたかのようにわざとらしく。


安西亜夜だった。
後ろで矢田の顔が見る見るうちに明るくなっていくのが見なくてもわかった。

安西は少し茶に染めた細い肩までの髪を手櫛でさっと整えると、


「あよよ、到着でーす!」

と、ぴょんと飛び跳ねながらバスの皆にVサインした。(バスがちょこっと揺れた)
もちろん安西を嫌っている生徒などいないので、男子も女子も大半が松浦に向って大拍手していた。ヒーローは遅れてやってくる、とでも言いたげに、彼女は皆に太陽のような笑顔をちらつかせている。

元木や石黒のように溜息を吐きながら静かに座っている者ももちろんいたが。


──おいおい、矢田。お前、ちょっと前まで曙式部(女子6番)と付き合ってたんじゃないのか?
全くお前は乗り換えが早いな──





それが、東京都立東中学校3年2組の「最期の平和」の一時となった。
平和だった日常を吸い込むような白いガスがバスの内部を襲ったのは、それからすぐだった。

Re: OBR ( No.3 )
日時: 2010/11/20 06:36
名前: sasa (ID: LSK2TtjA)

秋山悠斗(男子1番)は、数分前に隣に座る相川勝美(女子1番)に起こされた。

頭がどこか別のところに浮いてるかのように、ふわふわしている。
気分が虚ろで、体の半分はまだ夢の世界にいるみたいだった。目をこすり、頭を振って、なんとか意識を覚醒させることができたが。

一瞬、いや、今でも秋山には何が起こっているかわからなかった。
3年間同じクラスでいつも出席番号が1番同士のため、比較的仲の良い相川勝美も何が起きているかわからないようだった。

秋山ら、東中3年2組は円形の薄暗い一室に閉じ込められていた。
石壁で覆われていて、洋館にあるようなオレンジ色のシャンデリアが天井に吊らされていた。
それ以外はなにもなく、ただクラスメイトはその場に固まるしかない。なにかに脅えるように、身をくっつけあいながら。


誰もが最初に感じたことは1つ。
ここは大東亜共和国っぽくないということだ。そう、まるでこの暗い室内はどこかの外国のようだった。


しかし、秋山にはこの場所に見覚えがあった。
──もしかして……ココ、シンデレロ城じゃないか? ディズミーランドには何度か行った事あるし。
ってかディズミーランドに行った事あるヤツは俺だけじゃないだろ。7割ぐらいは一度くらい行った事あるんじゃないか?


暗闇の中、室内はざわついていたが、やはり時たま「ディズミーランド」という単語が秋山の耳に入った。

「相川さん、ココ、シンデレロ城じゃない?」

とりあえず秋山は、隣で不安そうに身を縮めて震えている相川に尋ねてみた。

「シンデレロって……ディズミーランドの?」
「そう、行ったことない?」
「ウチ、貧乏だからさ」
「あ、ごめん……」

秋山はしまった、と思った同時に激しく自分を叱咤した。
そう、相川勝美の家はこのクラスでも有名になるほどの貧乏な家庭だったのだ。
水道代もままならないようで、相川のセーラー服や髪の毛はいつも薄汚れていた。(それでも元々美人の方だから全然見劣りしないのだが)

しかし、貧乏だからっていじめるクラスではない。この3年2組は。
相川には安西亜夜(女子21番)という無二の親友がいたし、今会話している秋山悠斗ともいい感じであった。

「なあアキ、ここシンデレロ城だよな?」

相川に対して失言してしまったことを激しく後悔していた秋山に話しかけたのは、秋山の無二の親友である黒塚洋介(男子13番)だ。

黒塚はある理由から一般的に少々狂信的なイメージがあったが、秋山にとっては優しくて心の広い大親友だ。どんなことがあっても、親友は親友。
長い前髪と、人を安心させるような不思議な声と童顔が黒塚の特徴だ。

「多分」
「だけどさ……俺達科学館に校外学習しにいくんじゃなかったっけ? それが何故にディズミーランド?」
「うーん、もしかしたら路線変更したとか?」
「それなら事前に連絡があるってもんだろ」

秋山は顎を擦りながら、

「先生達のドッキリじゃないかな?」
「ははあ。そりゃあいきなりディズミーランドだからな。ドッキリとしてはサイコーだ」
「俺達にバレちゃったけどな」

秋山は、我ながら自分の推論は的を得ているな、と思った。
──そうだ。そうだよ。ドッキリならば合点がいくじゃないか。
大方先生達が俺たちを喜ばせようとしたんだろうな。ははっ、意外と先生達もオコサマなんだな。


「プログラムよ」


今までの二人の平和な推論を破壊するように、斜め前に星座している明石貞子(女子4番)が、幽霊のような細すぎる声で呟いた。

明石貞子。
まさに「幽霊のような」という描写がピッタリの女子生徒だ。
さらさらの黒髪は腰ほどまでもあり、前髪もすっかり目を覆ってしまっている。(覆わなければある程度美人なのかもしれない)

なんでも明石の両親は既に本当の幽霊となっており、それ以来心を閉ざしているとか。秋山や黒塚が聞くウワサはそんな断片的なものだった。

明石は滅多に会話せず、唯一の友達の淡路底美(女子20番)としか喋ったところを見たことがなかった。
淡路のほうもおかっぱ頭で、かなり幽霊っぽい女の子だ。だから二人は心が通じ合うのだろうか?

「プログラムよ」

さらに明石は繰り返した。
明石の姿は闇に溶け込んでおり、傍から見るともはや幽霊以外の何者でもなかった。
一瞬秋山、黒塚、会い相川も明石の姿を見て驚いてしまったほどだ。

「え? 聞こえないよー、明石さん」

黒塚は明石が話しかけてくれたことに興味を持ったのか、あえて追求した。

しかし、もう明石はその口を開こうとはしなかった。ただ髪をすだれ柳のように垂らして床に星座したままだった。

だが、明石が答える代わりに後方の扉から現れた一人の人物が答えることになる。


突然カギの掛かっていた避難用扉が開き、一人の少年と5人ほどの兵士がドカドカと現れた。乱雑に靴音を響かせながら、ドカドカと。
兵士の一人が大量のデイパックを乗せた台車を引いていた。兵士に混じって背広を着た男もいた。

室内が騒然となる。
一層と騒がしくなり、大東亜専守防衛軍の姿を見たからか、女子の中には小さく悲鳴をあげているものもいた。

もうこの時点で、半分の生徒はこれが何なのか気づいていた。
そう、秋山悠斗も例外ではなく───


上下ブルーのジャージに身を包み、青いキャップを被った少年が大声でこう言った。


「今日は皆さんに、殺し合いをしてもらうわけで」


その少年──黒岩純のその声は、当然声変わりなどしていなかった。


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