ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

流れる涙は罪色で
日時: 2010/12/27 15:29
名前: ルリ (ID: yL5wamFf)

初めまして。ルリと言います。
別のサイトでも同じ題名の小説を書いていますが、たくさんの人の感想が聞きたいのでここにも書こうと思います。
宜しくお願いいたします。

Page:1 2 3 4 5 6 7



Re: 流れる涙は罪色で ( No.26 )
日時: 2011/01/02 16:42
名前: ルリ ◆qQ6wK6czCM (ID: yL5wamFf)

 それは何というか、一種の恐ろしさを感じさせる表情で、若奈を怯えさせるには十分すぎる位の効果があった。
「あ……えっと……」
 若奈が言葉に詰まる。
 それに畳みかけるように明音が勢いよく口を開く。
「ほら! 早く!」
「で、でも……」
「いいから、気にしない、気にしない!」
 完全に言い負かされ、内心泣いている若奈を押しのけ、由紀は腰に手をあてる。はあっと見せつけるようにため息をつき、そして。
「良いわけないでしょ」
「えー。何で?」
「何でじゃない」
 明音と由紀の口げんかが勃発しかけたその時。
のんきなテンポのチャイムが教室に響き渡り、そして。
「あー! 作文一行も書いてないっ!」
 明音の悲痛な叫びがクラスメイトの笑いとともに響いた。

Re: 流れる涙は罪色で ( No.27 )
日時: 2011/01/02 16:58
名前: 楓 ◆oAtfAdT0ro (ID: uWyu1tga)

明音って若奈を利用するだけ利用して、
最終的に捨てそう・・(勝手な妄想)

Re: 流れる涙は罪色で ( No.28 )
日時: 2011/01/03 17:58
名前: ルリ ◆qQ6wK6czCM (ID: yL5wamFf)

楓さん

さてさて、それはどうでしょうか。

Re: 流れる涙は罪色で ( No.29 )
日時: 2011/01/03 17:59
名前: ルリ ◆qQ6wK6czCM (ID: yL5wamFf)

 給食まで、後五十分。
 スピーカーの上に取り付けられた、いかにも安そうな黒色の時計を眺めながら、若奈はそんなことを考えていた。
 教室の前方、教壇の上に立っている大柄な担任で国語教師の男性が
「人権作文を出せー」
 教室を見まわしながらうるさすぎない大きさの声で叫んでいる。
 誰もが教壇の周りに集まり、作文を提出する中で明音を含めた三人の生徒が教師の視線から逃れるように俯き、横一列に立っている。
 何となく、体育の時の横隊を思い出す。
「一週間前からあれほど言っただろ?」
 呆れてしまったのか、怒るのを忘れ、苦笑い気味の教師。
 若奈も同感だった。
 どうして出せないんだろう?
 真面目な性格の若奈にとって、宿題を期日までに出すのは当然のことだった。それに今回の作文は一週間も提出まで時間があった。土曜日曜もはさんでおり、部活があることを差し引いても十分提出可能なはずなのに。
 確かに人権作文は話題を見つけ出すのに苦労するけれど、最悪去年の作文を手直しし、提出すると言う方法もある。
「ごめんなさい……」
 三人の声が見事に重なる。声が沈んでいるので、それはとても言葉では表現できない程しずんだ雰囲気を醸し出す。
 そんな風に謝っている明音の背中をぼんやり眺めながら、若奈は本当に自分達は性格が真逆だと思っていた。

Re: 流れる涙は罪色で ( No.30 )
日時: 2011/01/03 18:01
名前: ルリ ◆qQ6wK6czCM (ID: yL5wamFf)

 明音は元気で明るい、典型的な人気者で、後のことは考えない、今が楽しければ良いという考えを持っている。対する自分はこれまた典型的なおとなしく、目立たない存在。おまけに他者が呆れかえるほど真面目に後の事を考える。
 そんな自分は冷静に判断すれば、間違いなくいじめられキャラで、中学二年になるまでに一度くらい、いじめられていそうだ。けれど、若奈は今まで一度もいじめられた経験が無かった。
 それは他の誰でもない明音のおかげだった。
 小学五年で転校してきた明音は何を思ったのか、おとなしい若奈を気に入り、親友として自分の作ったグループに引き入れた。若奈は社交性ゼロという訳ではないため、グループに溶け込めた。そして明音がクラスの中心的人物だったため、一緒にクラスの中心人物となった。
 その点は、感謝しても、し足りない。
 本人にそんなことを言っても
「そんなこと気にしてたの? 若奈は可愛いなあ」
 とか何とか、そんな返事が返ってくることは百パーセント確実だ。
 けれど、若奈は同時に思うのだ。

 何故明音は自分のような人間に真っ先に話しかけてきたのだろうかと。


Page:1 2 3 4 5 6 7



この掲示板は過去ログ化されています。