ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 流れる涙は罪色で
- 日時: 2010/12/27 15:29
- 名前: ルリ (ID: yL5wamFf)
初めまして。ルリと言います。
別のサイトでも同じ題名の小説を書いていますが、たくさんの人の感想が聞きたいのでここにも書こうと思います。
宜しくお願いいたします。
- Re: 流れる涙は罪色で ( No.11 )
- 日時: 2010/12/31 21:57
- 名前: ルリ ◆qQ6wK6czCM (ID: yL5wamFf)
肩の上で切りそろえられた黒髪の、意志の強い目を持ついかにも活発そうな少女だ。
その明るさから低血圧などとは無縁な人物なのだろうと想像がついてしまうほど明るい声。その声だけで、周囲の雰囲気が変わる。まばらだったあいさつが明るいものに変わる。そんな雰囲気を変えてしまうほど底抜けに明るい声の主を若奈は憧れ、同時にそんな人物と友人であるということを誇りに思っていた。
そして、それらの感情と同時に——。
「ちょ、ちょっと若奈? 若奈、おはよっ。おはようってば!」
返事が無いことに本当に驚いたらしい友人が、若奈の目の前で大げさに手をブンブン振っている。
それが少しおかしくて。若奈は思考を中断し、笑いをこらえようと必死になりながらゆったり口を開く。
「おはよう、明音ちゃん」
友人——吉川明音はそれを聞いたとたんにホッとした様に頬をゆるめ、そして思い出したような顔をした後に腰に手をあてて。
「おはようはいいけど。ぼーっとしてちゃダメ! 絶対ね!」
「えっと……何で?」
「何ででもいいの! ぼーっとしてちゃダメ。分かった?」
理屈が全く通っていない明音の言葉。そんな言葉に若奈はいつものように困惑の意を含めながら言葉を返す。こういった展開になったら返すいつもの答えを返す。
微かに、でも確かに微笑みながら。
「うん。分かったよ」
「そっか。分かったならいいよ」
何とも表現しがたいほど何故か満足気な明音。それから自分の足元を見て、思い出したようにあっと声をあげた。
- Re: 流れる涙は罪色で ( No.12 )
- 日時: 2010/12/31 22:01
- 名前: 楓 ◆oAtfAdT0ro (ID: uWyu1tga)
そういえば、セミロングってどのくらいですか?
あと、もうすぐ年明けですね。ハッピーニューイヤー。
- Re: 流れる涙は罪色で ( No.13 )
- 日時: 2010/12/31 22:02
- 名前: ルリ ◆qQ6wK6czCM (ID: yL5wamFf)
「やばっ。わたしまだ靴履いてるじゃん。若奈の天然がうつったかも」
「えっと、ごめんね?」
反射的に謝ってしまう。これは、若奈の性格上の問題で親しい人にもそんなに親しくない人にも同じように謝ってしまう。
何度か友人に指摘されて直そうと努力はしたものの、結局直っていない。
明音も謝ってきた若奈に面食らったような顔をして。
「若奈は謝らなくていいって」
「ごめん……」
「うーん……謝らなくていいんだよ?」
「ごめんね」
「謝ってるし。しかもこれってこのままいくとエンドレスの可能性大だよね?」
それから顔をゆるめ、明音は若奈の髪を手でグシャグシャかき回した。親しくなった当初から全く変わらない明音の癖。
ちなみに直そうとする意識がかなり低いため、若奈の性格よりタチが悪い。
「あ、明音ちゃん……」
髪を手で押さえたものの、全く効果はない。
困り、慌てた様子の若奈を見ながら。いつものように明音は笑う。楽しそうに笑う。
「あはは。若奈は可愛いなあ。困ってるところが特に」
「えと、止めて?」
若奈の反応をひとしきり楽しんだらしい明音は若奈の言葉通り髪をかき回すのを止め、今の今まで履きっぱなしだった靴を脱ぐ。学校指定の黒の皮靴を脱ぎ、乱れた髪を直そうと悪戦苦闘している若奈の横で放り投げるようにしまう。
「よし。んじゃ、教室に行こっか」
- Re: 流れる涙は罪色で ( No.14 )
- 日時: 2010/12/31 22:06
- 名前: ルリ ◆qQ6wK6czCM (ID: yL5wamFf)
楓さん
セミロングは肩にかかるくらいの長さの髪のことらしいです。
あけましておめでとうです。来年も頑張りましょう!
- Re: 流れる涙は罪色で ( No.15 )
- 日時: 2010/12/31 22:07
- 名前: ルリ ◆qQ6wK6czCM (ID: yL5wamFf)
若奈が答える時間も与えずに明音は若奈の手をしっかり、そして同時に強く握る。性格的に若奈は明音よりも遥かにのんびりしている。それに加えてスプーン一杯分程のどんくささも併せ持っている。故に答える時間が与えられずに引っ張られるのはある意味当然の結果だった。
けれど、それだけでは無い。
「あ、明音ちゃん、早いよ」
子供っぽい泣きごとを明音の背中に向けて言いながら、若奈は殆ど毎日のように考えていることを、変わらず今日も思考する。
明音が自分をある意味問答無用に引っ張っていくその状態は、仲がいいとお互い信じて疑っていない現実の、もう一つの面だった。そして、それも間違いなく現実だった。
たとえ、明音にその気が無いのだとしても。
「あ、ごめーん」
振り返った明音の顔には、心配と同時に隠し切れていない悪戯心がうかがえる。明音の良くも悪くも子供っぽい、そんな性格がうかがえる。
「若奈、平気?」
「平気じゃないよ……」
そんな非難を慣れっこだと言うように肩をすくめながら聞き流す明音。
そんな明音を見上げ、軽く上がりかけていた息を整える。
「ごめんねー。でももうそこが教室だよ、頑張れ!」
そしていつものように明るく無邪気でそれでいて子供っぽい明音を見、少しだけ、本当に少しだけ胸が——過去の記憶が痛んだ。
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