ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ふたりぼっち
- 日時: 2011/03/01 20:56
- 名前: ようこ (ID: qDIY9VCZ)
- 参照: http://bj2336@za2.
悲しい小説をかいてます。
小説は初心者なので良く分からない表現があると思いますが、寛容な心で読んでくれるとありがたいです<(_ _)>
≪悲しみを悲しみぬいて、そこから何かを学ぶ事ができなければ、その悲しみは何の役にも立ちません。
あなたがどれだけ泣きわめこうが、自分を犠牲にして何かを訴えようが、私の心を掴むことはできません。
ただ、この悲しみを悲しみ抜いて日々をやり過ごし、そこから何かを学び取り、次に悲しんでいる人と同苦し、時にはその人を慰めてあげる事が、あなたがこの悲しみを最大限に生かせる方法なのです。≫
あの人からの手紙だ。小さく几帳面な字があの人の人間性を表している。僕はその手紙をびりびりに破いて、昨日の雨で増水してる河に流した。いびつな形をした白い蝶々たちは、薄茶色の泥水の流れに乗って、やがて沈んでいった。
「嘘つきだ。さようなら。」
- Re: ふたりぼっち ( No.22 )
- 日時: 2011/03/22 23:20
- 名前: ようこ (ID: /jbXLzGv)
「上野菜々子」
あの変な女の名前だとすぐ気付いた。名前だけはまともなんだなと心の中で呟く。
「誰?」と聞いたら、
「普通科の変な女の子。」と答えが返ってきた。僕は確信した。
うちの学校は、進学クラス、特別進学クラスの二つに分かれている。
特別進学クラスは「特進」と呼ばれ、進学クラスは「普通科」と呼ばれる。
特進と普通科の間には、暗黙の了解なのかわからないけど、ほとんど交流がない。普通科は特進に妬みのようなものを抱いているし、特進は特進で、普通科の事を『遊びほうけてる』みたいな差別的な目をむけている。
だから、特進と普通科の男女が仲良くしていると、奇異な目で見られる。
「知らないな。何か噂とか立ってるの?」
「最近ね。言いづらいんだけど、渡り廊下で手を握りあっていたとか、一緒に相合い傘しながら登校しているとか…ごめんね。でも、そういうネタが好きな子もいるのよ」
強い頭痛がした。体中に鳥肌が立つのがわかる。
「誰がそんな出鱈目を言ってるのかわかったら教えて」口角をヒクヒクいわせながら、最大限、憤りを押さえて言った。
上野菜々子、厄介なヤツに出会ってしまった。
- Re: ふたりぼっち ( No.23 )
- 日時: 2011/03/31 21:29
- 名前: ようこ (ID: IZhvYfzu)
僕と上野菜々子との噂は、思いの外、広範囲に渡っているようだ。
化学室から教室に向かう途中で、
「おい天野!」
と、いきなり後ろから頭を小突かれた。振り向くと体育の大久保先生がいた。先生の授業を受けた事はないが、社交的な性格なのか、用もないのにいつも僕に絡んでくる。
「上野菜々子の具合は大丈夫か?腹が痛いって言ってたが、あれか?便秘か?」
ピチピチのTシャツの上から腹をかきながら、訳のわからない質問をしてきた。意味がわからないという顔を露骨に見せた。ら、
「なんだ?彼女の事なのにわからないのか?」
彼女。
頭の中がスパークした。体中の血管を導火線のように、熱い炎が走る。
「…先生、冗談が過ぎますよ。何の事ですか?」
必死に理性を保った。拳をこれ以上にない位強く握り、この屈辱に耐えた。
「えーい。水くせぇぞ!天野、上野と付き合ってんだってな!勉強ばっかだと思ったがやる事やってんじゃねぇか」
先生は洗面器よりデカい口を大きく開き、ガハハハと大きな声で笑った。
僕の自尊心がずたぼろの雑巾になっている事にも気付かない様子で。
横を通る女子が、僕の事をジロジロ見て、嘲るかのように(少し被害妄想)くすりと笑っている。
冗談じゃない。
通り過ぎる生徒を一人ずつ捕まえて、『これは誤解だ!』と言いたいが、そういう訳にもいかない。
- Re: ふたりぼっち ( No.24 )
- 日時: 2011/04/04 18:40
- 名前: ようこ (ID: 54tbEeFI)
- 参照: http://bj2336@za2.
古賀先生は良く笑う人だった。
浅黒い顔で笑うと、白くきれいな歯が見えた。
「うつってあのうつ?なんで?」
- Re: ふたりぼっち ( No.25 )
- 日時: 2011/05/31 16:14
- 名前: ようこ (ID: 70oEIa82)
- 参照: http://bj2336@za2.
「知らないよ。先生も色々あったんじゃん?」
櫻井はありありとわかるうざったそうな顔で言った。
色々。
先生の浅黒い手にキラリと光るシルバーの指輪を思い出した。
恋人と仲良くいってなかったのかな?
それとも職場の人間関係の問題?
色々。
私たちには、わからない悩みを先生は一人抱えていなくなったのか。
自分の手の平を青空にかざしてみる。
「真っ赤に流れるー僕の血潮ー」
なんとなく僕らは『皆生きている』の歌を歌いたくなった。
鬱は死にたくなる病らしい。憂鬱病。
という簡単な予備知識が頭の中に入っている。
先生は生きたくなかったのか。これ以上。恋人もいるのに。
悶々と先生の事を考えながら、教室に戻ったら私の席に女野獣が鎮座していた。かなり怒っている顔だ。眉間には深くしわが刻みこまれている。
「遅かったな」
低く響く声で背筋に汗が伝うのを覚えた。
- Re: ふたりぼっち ( No.26 )
- 日時: 2011/06/01 10:59
- 名前: ようこ (ID: 70oEIa82)
- 参照: http://bj2336@za2.
女野獣はつかつかと私の前まで大きな胴体を振るわせ歩いていき、私の背後にあるドアを『ドンッ』と叩いた。
「お前に話しがある」
女野獣のいかめしい顔が私の顔をじっと見ている。
「話って…何すか?」
恐る恐る聞く私。
「食堂で話したい」
『ぐう』という女野獣の腹の音が聞こえる。
「何の話しすか?概要だけでも言ってくれると助かるんだけど」
「面倒臭い。それより腹が減った。飯だ飯」
女野獣の話しというのは何となく想像がついた。私に用があるという事ならこの事しかない。
「天野宗一郎?」
声をひそめてその名前を言った。
女野獣は、額にしわを刻んだまま、頷き、
「そうだ」
あぁやっぱり。
ふと、周りのクラスの皆が私達の方を異様そうな顔で眺めているのに気づいた。
ひそひそと、私達にわかるように内緒話しをしている。
あれが上野奈々子をパシっているデカ女?こえー。隣のクラスの〇〇にみぞおち食らわして救急車送りにさせたってほんと?
上野奈々子もついてねぇなぁ。
そうです。運はついてない。
そのかわり私の周りには嫌な奴がついてくる。
とりあえず、女野獣のためにも、私のどうでもいい世間体のためにも、食堂に入って話しをする事にした。
無言でしかめっ面の女野獣を食堂まで連れて行く。自販機を前にした時、女野獣はいつになく真面目に一番高いメニューを選んだ。
当然私のおごりだ。
野口英世がまた一人、消えていった。
私の赤い財布が小さく萎んでいく。
女野獣は、日本昔話に出てくるような盛りの良いご飯を上手そうにかきこみながら言った。
「お前と天野宗一郎の話しが出回っている」
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