ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- とおりゃんせ -恨みの童歌-
- 日時: 2011/03/21 11:16
- 名前: 京香 (ID: WVvT30No)
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とおりゃんせの歌声が
何処からか聞こえてきた
とても悲しい歌声だ
だけど次第に大きくなった。
次第に恐ろしさが伝わり、
逃げたいが、体が動かない。
ふと気付けば目の前に
着物を着た少女がいた。
—— 誰なの?
〝この恨み、未来永劫許さじ〟
目の前が真っ暗になった気がした。
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- Re: とおりゃんせ -恨みの童歌- ( No.28 )
- 日時: 2011/03/25 16:16
- 名前: 京香 (ID: fS3ho1RJ)
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姉妹が部屋を出た後に
父親と思しき男性が
姉妹の母親にこう言った。
「近年の飢饉でワシ等はこのままだと飢え死になる」
「だからあの子たちを殺すのですね?」
「ああ、あの子たちのどちらかを殺そう」
「まずは百合はもうすぐ7歳、椿は5歳になります」
「七五三の時に天神さまに生贄として捧げる儀式は今年だそうだ」
「その時に銭が手に入れられる」
「あの子たちには悪いが、生き延びるためだ」
「どちらになさいます?」
「百合だ。百合は見目麗しいが教養は全く教えるのが無意味なくらい無能だ」
「だけど椿は見目麗しく教養も素晴しいですから生贄に捧げるのは勿体無いわ」
淡々と残酷な会話をする人たち。
あたしは吐き気を覚えた、
と同時に外から視線を感じた。
バレないように静かに動き窓を覗く。
玄関の外近くに姉妹がいた。
姉の百合だ。
妹は無邪気に近所の子供たちと遊んでいた。
姉の百合だけは顔を青ざめさせ震えていた。
「もう伝えてある、すぐに仕度するぞ」
「分かったわ」
あたしは止めようとするけど
体がすり抜けていく。
と同時に悟った。
過去は変えてはいけないの、
もう変えられないのだ、と……
残念だけど百合という子は助けられない。
あたしは仕度し終えた親子を追い、
神社まで追った。
親子は歌を歌っていた。
とおりゃんせ とおりゃんせ
ここはどこの 細道じゃ
天神さまの 細道じゃ
ちっと通して くだしゃんせ
御用のないもの 通しゃせぬ
歌い終えた時には神社の境内に
親子は消えていた——
と同時に鋭い悲鳴が響き渡った。
ザシュッ——!!
刃物で斬られた音がした。
それからしばらくして、
返り血を浴びた親子が階段を急いで降りてくる。
そこには妹の椿はいたけど、
姉の百合は何処にもいなかった……
——
気が付くとあたしはコンクリートの段に座っていた。
空を見ればもう真っ暗で夜になっていた。
目の前に気配を感じた。
見上げればニヤニヤ笑うカナと
妙に冷静で無表情の、
百合がいた。
「あたしの過去が分かったでしょ?」
冷たい感情の無い声で言う。
あたしは負けじと言い返した。
「あたしと何の関係があるの?」
「椿の生まれ変わりよ」
生まれ変わりという言葉に
あたしは言葉を失った。
あたしが椿の生まれ変わり?
ということは百合は妹の生まれ変わり—あたし—を
殺そうとしていることになる。
「実の妹の生まれ変わりを殺せば、あたしは地獄逝き決定よ」
「ちなみにアタシは百合の生まれ変わりらしーよ」
明らかにふざけたように言うカナに
百合は睨んだ後、あたしを見る。
「という訳であなたが憎くて恨めしく仕方ないの…死んでね」
百合は右手に、
鋏を握っていた——。
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- Re: とおりゃんせ -恨みの童歌- ( No.29 )
- 日時: 2011/03/25 16:37
- 名前: 京香 (ID: fS3ho1RJ)
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百合があたしを殺す理由が分かった。
だけど他の人たちは何でなの?
その疑問を読み取ったのか、
百合は答えた。
「七五三の時に居合わせた巫女の生まれ変わりなのよ」
連続殺人事件の被害者は、
百合の生贄に関係を持った
関係者なんだ。
そう直感させる一言だった。
「アタシね、早く沙奈を殺したいっ!」
カナは場違いな発言をする。
と同時に
ザシュッ—!
目の前に血飛沫が舞った。
カナは胸に鋏が、
突きつけられていた。
「アンタはもういらないわ、さよなら……ただの操り人形さん」
「………なっ!?」
カナは大きく目を見開き、
胸を手に当て大いに苦しんだ。
あたしはカナの傍に寄り、
抱き抱えた。
まだ暖かかった。
「カナっ!……カナっ!」
あたしの頬を伝った涙は
カナの頬に落ちる。
「………………ゴメンね」
カナが謝った。
カナも涙を目に溜め頬に伝っている、
お母さんを殺した殺人鬼なのに、
何であたしは
カナを赦せているの??
分かった…。
あたしは〝友情〟というものにカナを赦しているんだ。
完全には赦さないけど、
あたしとカナが
一緒に遊んだ日々を思い出した。
ねぇ…。
「あのね……あたしね、」
「……て、……生まれ、……変わり………沙奈、だよ………」
「えっ?」
カナは言い終えるとガクンッと首を横にしたまま、
それから少しも動かなくなった。
「い……いやああああああああああああああっ!!」
抱き抱えたままカナに揺さ振るけど動かない。
カナは死んだ。
カナは百合に殺された。
頭のなかがグルグルと思考を巡らす。
あたしは何が生まれ変わり?
カナはあたしに何を伝えたかった?
疑問が疑問を呼び分からない。
あたしは考え続けた……
百合はそんなあたしを面白そうに
見物人として見物していた。
あたしは気にせず、考え続ける。
カナは何が伝えたかったの?
何の生まれ変わり?
狂ったように考え続け、
あたしはある事実に
気付いた。
カナが伝えたかったこと、
それはあたしは椿じゃなくて
百合の生まれ変わりなんだと。
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- Re: とおりゃんせ -恨みの童歌- ( No.30 )
- 日時: 2011/03/25 19:30
- 名前: かりん ◆SVvO/z.cC. (ID: ueXHoJNS)
えーーー!
うそーーー!
・・・ごめんなさい初コメそうそう人格崩壊しました。
全部読みましたけど、怖すぎて半分涙目・・・
今度からお地蔵様にはお辞儀を忘れずにしようっと。
- Re: とおりゃんせ -恨みの童歌- ( No.31 )
- 日時: 2011/03/25 19:48
- 名前: 京香 (ID: fS3ho1RJ)
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「本当にあなたは鈍い奴なのね」
百合の言葉にあたしは百合の方を見た。
腕を組み呆れたような態度。
全てが哀れに思えた。
何で哀れむのか分かる気がする。
それは〝百合自身〟だからだ。
あたしは百合の生まれ変わり。
という事は少なからず、
カナも百合に見出されたから
江戸時代の生贄の〝関係者〟だ…。
まさか——。
「ねぇ……椿の生まれ変わりはカナ?」
「———っ!」
明らかに動揺する素振りを見せた、
気付いた百合は怯むかのように後ずさりをした。
やっぱり。
本当の目的はカナだったんだ。
あたしはただの巻き込まれたにすぎない。
百合は最初からあたしに劣等感を抱いていた
椿の生まれ変わりの〝カナ〟に目を付けていた。
その為には自身の生まれ変わりの〝あたし〟が
あたかも〝椿の生まれ変わり〟として、
恨まれたという設定を作り上げた。
と同時にカナには、
あたしに劣等感を抱かせるようにさせた。
だけど誤算が生まれた。
あたしは歴史や伝説などが好きになったのだ
それを教えるお祖母ちゃんが邪魔になった。
と同時に忌まわしい〝過去〟の伝説を、
お祖母ちゃんがいずれ教える。
そう予想したのだろう。
お祖母ちゃんを殺した。
全ては復讐に悟らせないために。
だけど誤算は誤算を生んだ。
お祖母ちゃんの仇を打つと決めたのだ。
普通は恐れるかなのに。
最初から百合の復讐劇は矛盾だらけだったんだ。
だから始めから成功するはずがない。
百合の負けだ——。
そして百合は復讐に捕らわれているらしく
何故お地蔵様があたしを守ったのか分かってないんだね。
「——また忌まわしい〝あの女〟に
生まれ変わったあたしが
不幸にならないようにしてやったのよっ!?
沙奈っ!!」
お母さんは百合の〝母親〟の生まれ変わりだったんだ……
運命とは不思議だね、
百合の運命も摩訶不思議だ。
自身が生まれ変わってるのに、
怨念から魂の一部が
現世にいるんだから——。
「百合。復讐は止めてよ」
もうこれ以上あたしが不幸にならないように。
もうこれ以上〝百合〟が罪を犯さないように。
「煩いっ!!煩いっ!……うわああああああああああああっ!!」
百合は髪を振り乱し、
目は血走っていた。
母親似の可愛い容姿は
見る影もなくなっていた。
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- Re: とおりゃんせ -恨みの童歌- ( No.32 )
- 日時: 2011/03/25 19:51
- 名前: 京香 (ID: fS3ho1RJ)
かりんsama
あなたも怖いと言ってくださいました!
怖くて涙目とは……
自信が付きましたっ!!
これからも頑張りますね★
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