ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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大好きだった君へ無様に生きた私より【一応完結しました】
日時: 2011/09/21 11:28
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: lkF9UhzL)

 タイトル長い上にタイトルほいほいのような気がしてならないネオンです
 中断作の数が半端じゃないネオンです
 やる気の無い、グダグダです。 タイトルもしっくり来ていないので仮です

 時代としては中世くらい? からスタートして、行く先によって滅茶苦茶ですw 魔法とか悪魔とかバンバン出てきます
 惨酷追求しながらという、作者のドン引く様な趣味が大部分を占めている話です
 カキコ内トップクラスの駄小説です
 作者の頭は年内24時間365日常にレッツパーリィしてます((?
 『ヒアウィゴーォォォ』『オッケーェェェイ!』『レッツパーリィィィ!』脳内こんな感じです
 土方さんが新発売のマヨネーズに夢中でバズーカ撃たないので沈静化されません
 その輪の中にイイオトコが混じって銀さんがア゛ッー!されてたりと、いわゆるカオスの状態です
 それでもいい方はどぞ
 いつもより時間は有るので丁寧に書くことを心がけて見たいと思います
 コメントとか、特にアドバイス貰うと尻尾を振って喜びまs((

 何だか眠気が抜けない今日この頃



序章
>>1

Capitulo Ⅰ 『不死身は死人の町を歩む』
>>2-3§>>7-11

Capitulo Ⅱ 『残酷は人により誇張する』
>>12-13§>>17§>>20§>>25-26

Capitulo Ⅲ 『神として神の如く強大に』
>>27§>>31-33

Capitulo Ⅳ 『彼とはコインの裏表』
>>34§>>42§>>46-47§>>51

Capitulo Ⅴ 『機械仕掛けの騎士の塔』
>>52§>>56-58

Capitulo Ⅵ『落下する刃はその瞳に時を移し出す』
>>59-61§>>63

Capitulo Ⅶ『不死鳥は骸の島で一人鳴く』
>>64-65


キャラクタープロフィール >>24

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Re: 大好きだった君へ無様に生きた私より ( No.57 )
日時: 2011/09/01 15:37
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: lkF9UhzL)

 不死身といえど、無敵ではない。 死ぬことは無くとも、体力は削れる。
 息が上がってきた。 それに対し、相手は機械。 疲れを知らず、エネルギーを与えれば動き続ける化け物だ。
 強力な魔術で、吹き飛ばすか?
 いや、それは既に検討した結果、危険だという結論が出たはずだ。
 地下へと続く階段……そんなところで山を削り崩す威力の魔術を行使すれば、まず間違いなく私達は生き埋めだ。
 上級魔術が、使用不可能となれば……相手を削るか? 結界系統の魔術の応用で、触れた相手を削り崩す魔術があったはずだ。
 いや、それも問題外。 魔力の消費もさることながら、あの一瞬の展開の内にクレーターのような行使の跡が残る。 やはり、それでも生き埋め。
 上手くやったとしても、奴を形作るあの石の鎧は異様な硬さだ。 鋼より硬い。
 相当な密度の、超硬度の鎧。 恐らく、その硬さはダイアモンドを超える。 そのくせ、軟らかいのだ。
 刃を通さぬ硬さと、あの高速駆動を可能にする柔軟性。
 何で出来ているんだこいつは……!
 手が無いわけでもないが、使いたくない。 けれどこの状況では……止む終えないか。

 「頭を庇って、地面に伏せて!」

 今度はアリソンが、クローセルに指示を出す。
 もちろん、彼女はクローセルの使った特定の物体のみを吸い込むブラックホールを扱えるわけではない。
 が、ブラックホールは扱えなくとも、重力は魔術を使えば意のままだ。

 「汝、内なる重圧に潰れろ『ヘビィ・ウェイト』」

 彼女の指が、残りの一体に対し向けられる。
 照準を定めると同時。
 指差されたそれは、まるで周囲の空気に押しつぶされるかのごとく破片を撒き散らし、多少の爆発を伴い自壊した。
 プライドの高いどこぞの戦闘民族であれば、耐え切れたかもしれない。
 今の魔術は特定の物体に掛かる重力の増減。 相手が重ければ重いほど、その威力は増す。

 「重圧、1200%で自壊か。 中々、脆かったんだね」

 それだけ吐き捨てると、アリソンは動けなくなったクローセルを担ぎ、階段を下った。
 10分くらい経っただろうか?
 一向に終わりの見えない階段を折り続け、そこでようやくクローセルが動けるようになった。
 そこからしばらく階段を下り、ようやく二人の視界に、目的地らしき部屋の光がもれる、扉が現れた。
 取り敢えず、押してみる。
 駄目だ、開かない。
 引いてみるも、結果は同じ。
 疎これようやく、クローセルがそれの存在に気がついた。
 鍵穴があり、恐らくこの扉……鍵が掛かっているという事に。

 「どうすんだ? 城に戻って宝物庫漁ってみるか?」

 クローセルの問いに、アリソンは無言のまま扉の前に立つと、

 「離れて」

 問いに対する答えではない、答えを返した。
 離れて、という事だ。 恐らくは、扉を吹き飛ばす気だろう。 だが、知恵の神を封じた部屋の扉。
 そう易々と、開くとは思って居なかった。 が、彼の予想に反し、彼女の魔術は平和的だった。
 クローセルが数歩下がった事を確認すると、彼女は扉に手を押し当て、

 「我が道を閉ざす者よ、我に道を開けよ『テンペスト』」

 彼女の言葉に従うかのように、扉は砂と化し、崩れ落ちる。

 「さて、夜叉は何処かな?」

Re: 大好きだった君へ無様に生きた私より ( No.58 )
日時: 2011/09/05 13:18
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: lkF9UhzL)

 夜叉はどこか。 そんな言葉は、すぐさま無駄だという事に気付かされた。
 ただ、だだっ広い星空の下に、黒い棺が一つ。
 ポツンと安置され、そこには胸の位置に深く突き刺された黒い刃の刀が、ただあった。
 来た道には、空間に四角い孔がぽっかりと空き、風をこの空の下に送り込んでいた。
 不死鳥を殺すというのであれば、この刀は中々どうして威厳の無い刀だろう?
 正直、大神の手にしていた刀は、ボロボロとはいえ力を持った剣としての圧力はあった。 だが、この刀には一切それが無い。
 つまり、偽者だったという事か? いや、見掛けで判断してはいけないとよく言う。
 威厳が無いように見えるだけで、圧力が無いだけでこの刀は本物のはずだ。
 アリソンは、棺へと歩み寄る。
 刀を握り、引き抜こうと力を入れた。 途端、刀はまるでゼリーにでも突き刺さっていたかのような勢いで、彼女の手の中へと収まって見せた。
 確かに、切れ味は凄まじい。 だが、切れ味だけであれば、ただの刀でも腕の良い鍛冶職人であれば作ることが出来る。

 「ようやく、忌々しい楔が抜けたか……。 遅かったな、フェネクス」

 不意に、そんな台詞が彼女の耳に届く。
 その音波信号の発信本は、明らかに目の前の棺。 そして、クローセルとはまた違う、男の声。
 台詞の直後、棺は内側から蓋が押し上げられ、中に居た屍が彼女の目の前で起き上がって見せた。 屍は、腐敗した箇所など無い。
 見た感じ、普通の人間。
 黒いコートの、黒髪の、真紅の瞳の、優男。
 特にこれといって特徴的なところなど無かった。 だが、妙に懐かしいのだ。
 会った記憶もなければ、見かけた覚えすらない。 何故か、懐かしい。
 こういうのを……デジャヴと言うのだろうか?

 「記憶が無いのか? それとも、消したか……別人か? 瓜二つの他人……というのも否定できないが、どうした? これから何をするのか、覚えていないのか? 言い出したのは、君だろう?」

 私はどうやら、この男と会った事も、話をしたこともあるらしい。
 そして、何かを頼んだ……。 何を頼んだのかなど、覚えては居ないが、この男は少なくとも覚えている。

 「記憶がなくなっている……という予測は、どうやら正解だったな。 さて、始めよう」

 風が、彼を中心に取り巻き始める。 風は、芝刈り機の様に彼の足元に生えていた草を丸く抉った。
 何を始めるのか……。 私の手に握られた刀と、彼を取り巻くこの鋭利な風。
 既に、脳内では予測がついている。 だが、その理由が全く無いのだ。

 「目が覚めたら君を殺す気で殺れ……って、君から頼まれたんだ。 そうだな、2000年くらい先の時代でさ」

 風が、彼女の頬を切り裂く。 彼女の傷は、切り裂いた風の流れに沿って消えるが、痛みは引かなかった。
 何か、特殊な力を持っている。 それも、私の知らない力……。
 魔力以外、妖力ですらない。 だが、詳しい情報は知らないにしろ確かにこの力のことは知っている。

 「人間そのもの……生きとし生けるもの全てが持ちえる最高の力だ。 これも忘れたか? ……仕方ない、もう少し特徴的な姿がいいか?」

 彼の言葉の直後、彼の容姿は音を立てて激変した。
 黒髪の優男。 彼の髪は、白の混じった灰色に。 そして、身体は瞬時に肥大化し、爪が、牙が出現した。
 頭が複数無いあたり、ケルベロスではない。 一頭の、巨大な灰色の狼に、姿を変えたのだ。
 彼はその真紅の瞳で、彼女を見据える。

 「ハイイロオオカミ。 魔界種族名、大陸大神だ。 俺は、まだこの程度の大きさだが……数千年生きたものはそれこそ大陸差ながらのでかさになるんだと。 君が教えてくれたじゃないか。 さあ、思い出したか? 覚悟は……いいか?」

 彼の攻撃が、彼女を襲った。
 巨大な前足の爪が、大地を切り裂き揺るがしてみせる!
 この程度の大きさ? いや、『この程度』が、全長100メートル以上!
 大陸の名前は伊達ではないと痛感させられるその圧倒的な大きさ……そして、この破壊力。 ……バケモノだ。

Re: 大好きだった君へ無様に生きた私より ( No.59 )
日時: 2011/09/05 13:23
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: lkF9UhzL)

 私は、伝説の剣を持っているわけではない。
 神の加護を得ているわけではない。
 そして、少年誌の主人公のような都合の良い力を持っているわけでもない。
 この巨大なバケモノを、一体私はどうやって狩らなくてはならないのか。

 「……私がどうあがいたら、君に勝てるって言うのさ?」

 思わずそんな言葉が、彼女の口を吐いて出る。

 「クローセル……君は死ぬ可能性がある、離れて——」

 彼女が後ろを振り返ると、そこにクローセルの姿はなかった。
 それを見て、安堵すると同時。 彼に一体何があったのか? という不安感に襲われた。
 それを見てか、狼は口を開と、

 「君のほうが圧倒的に力が上だ。 むしろ、俺のほうが勝ち方を教えてもらいたい。 それと、君の後ろについてきた男は、何者かに呼ばれた。 瞬間移動で、この場にはもう居ない。 安心して……こっちに集中しろ!」

 前足の一振りが、大地を切り裂き彼女を襲う。
 避けようと足に力を入れた瞬間だった。 もう片方の前足が、地面を強く蹴り、大地を揺るがす!
 地震なんて、生ぬるいレベルではない。 立つのがやっとなど、生易しいものでもない。
 立ってなど居られない!
 揺れに伴い大事がパックリと割れる。 一般に、地割れという奴だ。 落ちたが最後、二度と地上に出ることは叶わないだろう。
 恐らく、ここは魔術によって作られた空間だ。 故に、どう暴れようとも問題ないだろう。
 つまり、相手は手加減してくれるわけがない。
 なんとか、狼の前足の蹴り(パンチ?)を避けるも、着地した地面の揺れは異常だった。
 体勢を立て直すのに、大きな隙が生じる。 その隙を突き、威力の高く、大振りであたりにくい一撃を、狼は繰り出してくる。
 一歩が、大きすぎる破壊力……?
 いや、相手は巨大な狼。 そして、駆動は狼とほぼ同等。
 もっと言えば、狼を巨大化しただけで、特にこれといって特化している部分は見受けられない。
 つまり、100倍スケールの狼を相手にしているのと同義。
 剣によるダメージの大きさに違いはあれど、普通の狼に大地を踏みしめ、揺るがす力など無い。
 離れてしまえば、揺れからは開放される!

 彼女は、狼に背を向けた。 走るしかない。 高飛びすれば、一瞬で殺される。
 その判断が、間違っていた。 狼に、背を向けるという判断が。

 瞬きするほどの一瞬。 そんな刹那の瞬間、彼女は自分の背から、胸にかけて走る激痛を感じ取った。 
 そして、その激痛は瞬く間に全身へと広がり、機動力を奪う。
 何が起きたのか。 その現状は、彼女の思考を飛び越して、既に出ていた。
 爪で、背を貫かれた……!

 「どうした? 殺すつもりで殺れって言ったのは、君だぞ?」


              Capitulo Ⅴ 『機械仕掛けの騎士の塔』END

                Capitulo Ⅵ『落下する刃はその瞳に時を移し出す』

Re: 大好きだった君へ無様に生きた私より ( No.60 )
日時: 2011/09/10 11:20
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: lkF9UhzL)

                Capitulo Ⅵ『落下する刃はその瞳に時を移し出す』




 「誰だ、テメエ」

 アリソンが狼と対峙している頃、クローセルは突如周囲の景色が変わるのを認識し、視界のボケが取れると同時に眼前の相手に刃を向けた。
 呼ばれた場所は、恐らく城の中。 そして、呼び出し主はクローセルの背後で震えているリーチェだろう。
 夜にこんなところにいる黒装束……賊が入り込んだか、面倒だな。
 とっさの時は、俺を呼べとリーチェには常日頃から聞かせておいたのが功を奏したのだろう。 右腕の切り傷を除けば、幸い大きな怪我は無い。

 「ま、取り敢えず死ね」

 一瞬。
 クローセルは目の前の敵に一瞥をくれてやり、勝敗は決したと錯覚した。
 腰のナイフで、相手の額を貫いたのだ。 死なないわけが無い。
 そんな、先入観の生み出した一瞬を、『敵』は見逃さなかった。
 ナイフが額を貫いたはずの黒装束は、そのナイフを引き抜くとクローセルの心臓に突き立てたのだ。
 そして、

 「取りに行く手間が省けて助かった、感謝するよ……クローセル」

 身の毛もよだつ様な、冷え切った声が彼を襲った。

 「何を……、何が狙いだ?」

 「何、君たちの持つ指輪さ。 君たちの持つ魔式騎士、ベルゼブブとセエレが目的さ。 それさえ明け渡してもらえれば、オレはこの場から今すぐにでも引き上げて構わない」

 甘い誘惑。 そして、それが裏切られるかもしれないという恐怖。
 その二つの感情が、己の腹の内で渦を巻いているのが手に取るようによく分かる。
 相手は第二撃を用意している。
 それに対し、クローセルの瞳孔は音を立てて居るのではないかと思えるほどの勢いで絞られ、その黒装束のナイフの動きを、微細な体のブレを、息により動く喉の動きを正確に把握すると同時。
 相手がその手に握っていたナイフの刃を引っ掴み、奪い取って見せた。
 まさか、刃を握るとは予想だにしなかったのだろう。 相手の一瞬の隙を突き、クローセルはその手に持ったナイフをもう一度振り降ろす!
 が、一瞬の出来事だった。 いや、時をすっ飛ばしたような現象が、目の前で展開された。
 目の前の相手は、避けようがなかった。 バランスを崩し、立て直す頃には既にナイフの切っ先が当たっていた。
 なのに、何故? 何故クローセルの真横に立ち、腰に指していたナイフを、その喉元に突き付けているのか。
 唖然とするほか無い現象が、目の前で起きたのだ。

 「貴様ら魔術師には、到底出来ない芸当だろう? もう、魔術の時代は終わり、新たな……異能者の時代が始まる。 その手始めに、騎士をオレは手に入れる。 力という名の絶対的な権力をな」

 「ざけんな……!」

 「貴様にはもう用はない」

 ナイフが、弧を描いてクローセルの首筋を通過した。
 ナイフの刃はクローセルの首を撫でるように、彼の首を切り裂く。 鮮血が噴出し、彼の顔から血の気が失せる様子がよく分かる。

 「が、貴様はまだ利用価値のある人間だ」 

 黒装束は、部屋の中を見回すと適当な砂時計を手に取った。
 それをまじまじと見つめ、逆さまに置く。

 「しばらくは生きていてもらおう」

 黒装束はその言葉の直後、何事も無かったかのようにその場の景色に解けるようにして消えた。
 

Re: 大好きだった君へ無様に生きた私より ( No.61 )
日時: 2011/09/12 20:02
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: lkF9UhzL)

 胸から流れる血が、止まらない。
 特殊な毒でもあるのだろうか? いつもなら、瞬時に回復してしまうところだが、突き刺されて数秒間。
 傷口から噴出す鮮血の勢いは、弱まる事を知らなかった。

 「どうした? 夜叉を完成させるに当たり、高次生物……特に、強力な魔力をその見に宿した生物を、切らねばならないのも、忘れたか?」

 魔力を大量に宿した……生物を切ることで夜叉が完成する。
 つまり、魔中などと言った魔法生物に一太刀浴びせなければ、この刀はただの刀。
 膨大な魔力を通じ、初めて力を発揮する代物と言うわけか。
 ただ、問題も大きい。 その辺の雑魚を斬った所で、刀は反応しないだろう。 それこそ、この大陸大神か、居るとしたら……?
 彼女は夜叉を強く握り締め、ニッと笑う。 不敵な笑みに、全長100メートルを超える大神は、恐れをなした。
 彼女の事が、危険に見えて仕方ないのだ。 胸を巨大な爪で貫かれてなお、不死身と言えど激痛の中笑う鋼と言うべき精神力。
 人間では……無い。

 「そう、そうなんだ。 道理で、迫力が無いわけだよ……ねッ!」

 言葉が終わると同時。 彼女は、狼から見て完全に、予想外の行動に出た。
 右手に刀を握り、自らの左腕にその刃を振り下ろす!
 一瞬。 音も無く、彼女の振り下ろした刃は、その通過点にあった左腕を、瞬く間に切り離した。
 腕は空を舞い、狼の足元に落ちた。

 「そうだよ、膨大な魔力が……この刀には必要だったら! うっ……グ……。 私を斬れば良い、私の魔力も、君に負けない多大な量。 私で不足じゃないかって、少しドキドキしたけどね」

 吐血しながら、自分を持ち上げていた爪を刀が切り裂く。
 ……よく斬れる、良い刀。

 「まさか……自分を!」

 「そうだよ、そのまさか。 爪を斬っても、魔力はなさそうだったかたらね。 取り敢えず、左腕を支払って即戦力を手に入れましたってところかな」

 彼女の手に握った刀が、空気を切り裂き唸りを上げる。
 それと同時。 狼の捕縛から逃れた彼女の身体に、異変が起こった。
 体中が熱を発し、魔力を失い銀白色になった髪の合間から、青白い炎が噴出す。
 異変はそれだけでは留まらず、とうとうその炎は彼女を包み込んだ。
 ……死んでからが、真骨頂。 人間として死んだ彼女は、もはや人間ではない。

 「そういうことか。 継承に……俺を使ったのか。 中々、粋なことをする……!」

 狼の巨大な爪が、音を立てて再生する!
 前よりも硬く、鋭く尖ったそれはもはや、刃と言うに差し支えなかった。
 それが彼女目掛けて振り下ろされるも、彼女を包み込んだ火球に触れるか否か。 寸前のところで灰と化す!
 炎が消えると同時。 彼女の背には、真紅の翼。
 長い真紅の髪と、金色の瞳が、好戦的に目の前を塞ぐ狼を見据えていた。


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