ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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Ebony girls dual Fencer 参照400
日時: 2011/09/09 01:23
名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)
参照: http://www.kakiko.cc/bbs2/index.cgi?mode=view&no=5640

こんばんは、そして、初めてのお方は始めまして、無名の作者でございます、だいこん大魔法というものです^^;ほかの掲示板では完成させていない作品が何個かあると思いますが(おいw  それはおいといて・・・今回は初めて(シリアス全般のファンタジー)を書くという事で、作風を大きく変えて、一人称物語を変更いたしました。まぁ変えたところで結局駄作には変わりないのですが、温かい目でお見守りいただけると不肖だいこん大魔法、嬉し涙があふれんばかりです^^

というわけで、まず最初に注意書きをおいておきたいと思います^^

1、更新速度がとてつもなく遅いかもしれませんが、そのあたりは作者の気まぐれなので暖かいめで見守っておいてください^^;

2、中傷やわいせつな発言、荒らしなどは作者やお客様にも迷惑になってしまうと思われますので、控えるどころか絶対にしないでいただけるとありがたいです、もしもやりたいおかたは直ぐに戻るのボタンをおしてお帰りください^^

3、コメント、アドバイス(ここをどうしたらよく見えるか)などはいつでもまっておりますので、やっていただけると作者が喜びます^^


とまぁこんな感じになります。

細々とした設定などは、追々と追加させていく所存ですので、よろしくお願いいたします^^

なお、キャラクターたち【企画参加者さまも】を勝手に作者が絵に描いてしまいますがあしからず・・・



タイトルの意味  Ebony girls dual Fencer 【デュアルフェンサー 漆黒の少女】 





     †・・・First story(シャルル・S・リーネ ルート)・・・†


First Chapter Zero・・・【Variant】 >>1

First chapter・・・【Storage】>>2 >>3 >>4

Chapter II・・・【Dual Fencer】>>5 >>9 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15 >>21 >>23 >>25 >>26 >>30 >>31 >>32


————————————————————————


      †・・・Character・・・†


Hero  夜峰 黎迩 (やみね れいじ)

Heroine  シャルル・S・リーネ(シャルル・シャドウ・リーネ)【漆黒の少女】>>24

Classmate  幸凪 遥 (こうなぎ はるか)  舟木 力也(ふなき りきや) ・・・Coming Soon

Enemy   【異形】(Variant)

Mad god   【企画進行度零パーセント】

Organization name  【デュアルフェンサー】

Organization   【企画進行度十二パーセント】
第一企画出演者 野宮詩織さま 
(キャラクターネーム【暁寧々】ヒロインの同僚。十六歳にして女。能力は異次元の扉を開くことができ、そこからさまざまなものをだすことができ、いろいろと応用を利かせることができるという。二つ名は【次元の鍵守】)出演開始>>15

第二企画出演者 れおいさま
(キャラクターネーム【由詩】ヒロインの同僚。十七歳にして女。能力は自身の血を固めて刃に変える能力。その形はどこかトンファーにも似ているが、一言で表すのなら魚の胸鰭。二つ名は【深紅の剣士】)出演開始>>26

特別企画参加者募集中(敵キャラ【Mad god】・味方キャラ【Organization】)・・・URL参照


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物語をつかむためのあらすじ↓

これは・・・とある普通の少年が、仮初の空間を通して現実を知る・・・不可解かつ残酷な物語———


いったいなにがどうなってんだよ・・・その言葉は、自身が見慣れていたはずの街をなにかから逃げるかのごとく疾走する少年の口から放たれた。
夕闇に染まっていたはずの街は、また違う、別の色によって染め上げられてしまっていて、さきほどまで騒がしいぐらいにまでいたはずの人々は全員動かなくなってしまい、自分自身だけが動けるという状況に恐怖しながら・・・後ろから迫る、さらなる恐怖から必死に逃げ続けていた。
その少年の後ろからは、ケタケタと不快に笑う———人間の倍以上の体躯をもった、顔の位置にはピエロの仮面、服は道化のような格好をしていて・・・左右に三本ずつぶらさがる腕のさきからはひとつの手に五本ずつの巨大なナイフという・・・ごく普通の生活をおくっていて、ごく普通の人生をおくっていた少年から見たら・・・【化け物】としかいいようがない姿をしたその・・・【異形】が、近づいてきていた。
少年と【異形】の歩幅はぜんぜん違う。そのためか、少年が全力で走っても一向に距離は離れない。それ以前に、少年が少しでも失速してしまったらすぐにでも追いつかれてしまうような、そんな勢いだった・・・まるで、見ている側からだと【逃げる獲物とそれを狩りにかかるハンター】のような光景だった。
やがて少年は時間をむかえる。
全力で、限界を超えるほどの力で走り続けていた少年は、足を攣る。それは、運動をしているものでもかならずなる現象で、少年がそれにさからえるはずもなく———少年は地面に無様に転がった。
それをみた【異形】は———少年のことをあざ笑うかのようにケタケタと笑う。耳障りな声で・・・不快な声で———恐怖を煽るかのような、声で。
少年はそこで絶望する。自分が助かるのがもう絶望てきだとわかったから、少年は顔を青ざめさせて【異形】のほうをにらむ。そしてその瞬間・・・少年の顔に、疑問の色が浮かぶ。



そう・・・少年は見たのだ。【異形】の後ろのビルから———小柄な人影が落ちていくのを———


———なにも知らない、なにも記憶しない、ただの人間であるはずの少年と、【異形】の存在の意味を追うヒロインたちが繰り広げる・・・過去に囚われ続ける哀れな物語———



参照100突破、あらすじ文公開


参照200突破、企画参加者の作中設定の公開(新情報)

第一企画参加者 れおいさま

小説内名前 由詩ゆた
年齢 十七歳
性別 女
小説内設定【自らの血を使い刃とかえて敵を殲滅する【デュアルフェンサー極東支部】のエリート。シャルルとは同僚で、よくともに【異形】を狩るために仲もよい。シャルルが心を許している数少ない人の一人。だが基本的内弁慶というか、仲間内弁慶なため、人見知りが激しい。自身では強くないというが、その実力は【デュアルフェンサー本部】にも認められているほどで、【化け物ぞろいの極東支部】に移されるという経緯をへてシャルルと出会う】

第二企画参加者 野宮詩織さま

小説内名前 暁 寧々(あかつき ねね)
年齢 16
性別 女
小説内設定【異世界の扉を開き、そこから銃弾や弾幕、光の剣などを生み出すことができ、【異形】をも圧倒する力を振るう美女。【デュアルフェンサー極東支部】のエリートでもありシャルルが心を許す友人の一人。基本的に楽観的なのかどうかはわからないが、いつも軽く物事を見ているような言動をする。悪戯好きでちょっと困りものだが、その実力は誰もが認めるものであり、【化け物ぞろいの極東支部】でも一際目立つ存在である】



参照300突破・・・自作絵(シャルルと寧々)>>29


参照400突破・・・企画参加者の名前と代表作(複数ある場合は作者が読んで一番心に残っている作品、小説を書いていない方は作者がその人に抱いている印象)


れおいさま(複雑・ファジーの 不定期更新で短編やら書いてみる)

野宮詩織さま(誰もが知っている小説大会優勝作品、おいでませ、助太刀部!!)

翡翠さま(コメディ・ライトの *。・二人の秘密・。*〜)

ヴィオラさま(シリアス・ダークの Redmoon night)

神様の懺悔さま(合作をやる予定でございます^^合作の話の進め方もうまく、頼れる方でございます^^)

焔錠さま(その物言い、その態度、なにもかもが魔王にふさわしい存在・・・かっけええっす、あこがれるっす←)

生死騎士さま(シリアス・ダークの 極彩色硝子【ステンドグラス】)

Neonさま(シリアス・ダークの 大好きだった君へ無様に生きた私より)

グレイさま(シリアス・ダークの 冥界の主は———)

菫さま(シリアス・ダークの 生徒会の秘密)

甘木さま(シリアス・ダークの 六道サイコパス)

秀元さま(二次小説(紙)の ぬらりひょんの孫〜短編集〜か〜も〜)

スフィアさま(シリアス・ダークの バスターワールド)

丸転さま(コメディ・ライトの 妹の小説にトリップした会社員23才。高校生やってきますっ!)

大王タコさま(・・・すべてが謎につつまれている。自分ではどんな印象をもっているのかもわからない・・・)

No315さま(前の小説でもいろいろとアンケートに答えてくださったりとお世話になったお方です、なんというかその温かい心は画面越しにも伝わってくるのですぜ・・・)

世渡さま(企画に参加してくださった神様の一人、その存在は明らかとなっていない・・・)

篠崎紅架さま(企画に参加してくださった神様の一人、名前からなんか美人さんな雰囲気が・・・)

IANAさま(二次小説(映像)の VOCALOIDで小説!)

風猫さま(シリアス・ダークの パラノイア)

美月さま(・・・うーん、なんていうんだろうか、名前から感じるにロリてきなイメージが・・・うへへww←)

ネズミさま(シリアス・ダークの 戦慄ユートピア かなり前の作品だ・・・)

jyuriさま(コメディ・ライトの バトルとお米と少しの勇気)

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Re: Ebony girls dual Fencer ( No.10 )
日時: 2011/08/17 02:31
名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)

>>8

よ・・・よくわからないお名前のかた、お、応援ありがとうございます!!というわけで更新更新・・・

Re: Ebony girls dual Fencer ( No.11 )
日時: 2011/08/19 09:35
名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)

だから黎迩は・・・そっとリビングの扉をとじて、廊下に適当にほうに捨て置いた鞄を拾ってそのまま二階に行くために階段の一段目に足をかけたとき———

「ちょ・・・ちょっとまつのです!!どうして何事もなかったかのように終わらせようとしているんですか!?」

さっきしめたはずのドアが勢いよくバンッと開き、中から可愛らしい女の子の声が聞こえてくる。だがそれは幻聴だ、と黎迩は自分に言い聞かせてそれを無視するかのようにもう一歩階段をあがったところで———

「ほ・・・本当に待つのです!!せ・・・説明しますから、私がお前の家にいる理由もさっきの出来事も全部説明しますから無視しないでほしいのです!!」

人にせがむ態度としてはいささか尊大な口調だったのだが、黎迩はその必死な声音にハァ・・・と一度だけため息をついて、しょうがなく鞄を階段において、シャルルのほうをあきれ返ったかのような目で見つめる。
シャルルはなみだ目になりながらもきつい目で黎迩のことをにらみつけていた。どうして無視するのですかといわんばかりのその視線に黎迩はなぜか申し訳なくなってしまい・・・言い訳を始めた。

「いや・・・せっかくさっきまでの出来事すべて夢物語で終わらせようとしてたのにお前の登場だぞ?もう逃避してくもなるわ・・・」

「それはお前の事情なのです!!それよりも、お前みたいな貧弱で、売られた恩も忘れるような駄犬であるお前が、私のことを無視するというのはどういう了見なのですかと私はいいたいのです!!」

「・・・一応俺もお前を助けたつもりではいるんだけどな」

「う・・・あ、あれは着地に失敗しそうになっただけなのです!!自惚れるなこのハゲ!!」

「誰もハゲてねぇよ・・・ハァ」

だがその申し訳ない気持ちはすぐに消え去ってしまい、あきれた表情に黎迩は戻る。すると、やはりどこか不安そうに表情をゆがめたシャルルの姿が目に入り・・・

「わかったから・・・とりあえず話しだけは聞いてやるからさ」

そう黎迩があきらめたかのようにいうと、パァッと無邪気に顔を輝かせて、シャルルは一度だけガッツポーズをとると

「ならば早くくるのです」

そういってリビングに消えてしまう。
まるでこの家の中を我が物のようにして振舞うシャルルを見て・・・黎迩はどこか不安を覚えたりしていたのだが、シャルルがリビングに消えたことで再びよみがえるさきほどの出来事・・・夢だってことで終わらせようとしていたあの出来事が頭の中に思い浮かんできて、恐怖に黎迩の顔が歪む。
・・・あきらかに人間ではない【化け物】の姿。まるで時間が止まってしまったかのように動かなくなってしまった人々・・・そしてなぜか自分だけ動けるという事実。そこで目にしたもの・・・記憶してもの———すべてが黎迩の体を凍りつかせて、恐怖の底へと落としていく。
だけども・・・そこで黎迩は一度笑い。バカバカしと口にして歩き始める。万一にもあの出来事が夢じゃなかったとして、それがどうなるというんだ。あんな出来事はもう二度とおこらないかもしれないじゃないか、と自分に言い聞かせるようにして頷き、そこで疑問に思う。
ならばなぜシャルルは自分を【デュアルフェンサー】という組織につれて帰ろうとしたのか・・・そしてなぜ、今現在シャルルはこの家の中に・・・そんでもって、自分になんの用事があるのだろうか————自分で考えてもいっこうに答えが見つからないその疑問を解消するべく、黎迩はリビングのドアをあける。すると最初の時とまったく変わらずに、まるで我が物のように黎迩の椅子に座り、妹に出されたのであろう、ちょっぴり中身がなくなりかけているコーヒーを飲みながら、ジト目をこちらにむけて・・・

「ほら、早く座るのです」

その尊大な口調に黎迩はふたたびため息をはきすてながら、本来は妹の席である場所の椅子に座り、シャルルのことを正面から見つめる。
・・・やはり、シャルルはあの【世界】の中ででてきたシャルルとまったく同じで、そのことから、さきほどの出来事はやはり現実であったということが、今その瞬間で証明されたような気がした。

「じゃぁまず聞かせてもらうぞ・・・」

その事実にショックをうけながらも、重々しく黎迩は口を開く。それにシャルルはフン、と鼻をならして

「おおかた、私がどうしてここにいるのか不思議に思っているのでしょうから、私から教えてやるのです」

「・・・よろしくたのむよ」

若干そのことにたいして怒りを覚えているような黎迩の声にビクビクしながらも、尊大な口調を崩さないシャルル。シャルルはだいぶ強気な性格をしているが臆病者でもあるらしかった。そんな一面を見れて、黎迩はちょっとうれしい気持ちになったりもするのだが、それとこれとは別で、シャルルのその言葉を待つ。
シャルルは一度のどを鳴らした後、妙に強気な表情で黎迩のことをみつめてきて・・・口を開いた。

「まずはさっきお前が体感した【現実】の説明から始めさせてもらうのです」

それに今度は黎迩がのどを鳴らす番だった。そう、そのシャルルの言葉は、やはりそのさっきの出来事が本物でありまぎれもない【現実】であったということを証明させてしまっているわけで———黎迩は再び、恐怖に打ち震えそうになるがしかし、それを何とか抑えながらこくりと頷く。

「あの場所の中でも説明したとおり、あの【世界】の名前は【異空間時計】・・・因果を捻じ曲げた先に存在する架空の空間。そこでは本来、ただの人間は【背景】でしかないのです。その証明として、そこにいた人間、因果を捻じ曲げられたその場所にいた人間はすべて動かなくなって、それを創る存在・・・【異形】によって、やる気や精気・・・悪いものでは命を喰われてしまうのです」

「い・・・命って———じゃぁ、喰われた人間はどうなるんだよ?」

「そうですね・・・因果を捻じ曲げられて作られた空間で命を喰われた人間の体は、【異空間時計】の中に永遠と彷徨うことになるのです。
いってしまえば・・・現実の世界、私たちが呼ぶ名前でいうところの【現世】での存在ができなくなり、すべての人間の記憶から抹消される・・・といったところですか」

「ちょっ・・・ちょっとまてよ!!命を喰われた人間の記憶が抹消される?そんなバカなことがあるわけ———」

「いえ、これは紛れもない事実なのです———ですが、それを起こさないために、【異形】により命を奪われないように活動する組織・・・【デュアルフェンサー】が、そこででてくるのです」

「つまり・・・その【デュアルフェンサー】が、【異形】?だっけか、そいつらを駆逐してくれているおかげで俺たちは普通に生活できているっていうわけなのか?」

「それもまた違うのです・・・残念なことに、【異形】の数は一向に増えるばかりで、近年ではものすごい量の増殖をしてしまっています。
【異形】の存在意義、意味、そのすべてがまだ謎に包まれている今現在ではどうしようもないのです・・・だから、私たちがそれを少しでもいいから抑えよう・・・そういった主旨で、私たち【デュアルフェンサー】は動いているのです」

「ということは、お前らだけじゃ【異形】の・・・なんだ、人間喰らいは止められないって言うわけか?」

「そう・・・ですね、今現在ではそうとしかいえません・・・ですが、必ず・・・必ず私が【異形】を・・・【異形】による脅威を消し去って見せます———そのためにはまず【狂い神】をさがさなければ———」

「・・・どうした?シャルル」

「・・・っ、な、なんでもないのです」

あまりにも壮大な話で、あまりにも残酷な話で・・・あまりにも、奇妙な話に、ついていけなくなってしまった黎迩をよそに、シャルルの表情に影がおちる。それを見た黎迩は心配になって声をかけるが、やはりシャルルはなんでもないかのように表情を元に戻し、説明を続ける。

「話を戻すのです。今現在【異形】はあるチームのようなものを組んで【異空間時計】を作り出していると【デュアルフェンサー】は推測しているのです。たとえば・・・今日でてきた【異形】も、この地区の【異形】のチームに一人で、その【異空間時計】の中の情報を共有していると推測ができるのです」

Re: Ebony girls dual Fencer 企画進行中 ( No.12 )
日時: 2011/08/19 12:47
名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)

「ってことは・・・今日のあれも、共存しているっていうことなのか?」

「はい・・・そうです。つまり、そういうことなのです」

自分の無様な姿を、まだ見たことも無いやつらに見られていた、という真実に黎迩は若干いやな気分になったが、シャルルの平然とした態度を見て・・・ああ、あっちの世界ではそれが普通なんだなと思いなおしてから、すぐに平気そうな顔に戻った。
だけども、そのすぐあとに発せられたシャルルの言葉のせいで・・・黎迩のその平然としたような態度は、すぐに崩されることとなった。

「そう・・・つまりは、お前のその【異空間時計の中で動けるただの人間】という変な現象のことも知られた・・・つまり、お前は記憶してしまった。あの中のできごとを———だから喰いにくるのです。【異形】が・・・人間を餌としている、消して動いている、生身の人間を食べることのできない【異形】が・・・快感を求めて、お前を喰らいにくるのです」

その言葉はあまりにも・・・冷酷に、冷淡に、冷徹に・・・黎迩の耳に届いた。
黎迩は絶句する。そのシャルルの言葉の意味を理解したとき、恐怖に震える。不快感に襲われ、逃げ出したくなる。今までのシャルルの話しを聞いている限り、【異形】というのは人間を好んで食べる。というよりも、人間を餌としている【化け物】なのだ。だから・・・自分がそんなやつらに積極的に狙われているとしって・・・黎迩は絶句する。
もとより、シャルルの話だと【ただの人間】は、その【異空間時計】という世界の中では背景でしかなく、いってしまえば気絶しているのと同じような状況だという。だからこそ、なにをされても気がつかないわけで、死んでいることすらもわからないという。なのに、黎迩はわかってしまう。その世界で動けるからこそ・・・【捕食者】による恐怖を味わい、殺されるという絶望を味わい・・・後悔をしながら死んでいくということを———
その黎迩の、今にでも逃げ出して、早くどこかに消えてしまいたいという絶望の表情を見たシャルルは、どこか自分を懐かしむような表情で黎迩のことを見つめる。見つめられているということに気がついた黎迩は、それどころではないはずなのに・・・シャルルに無理やり作ったような、ぎこちない笑顔をむける。それにシャルルはちょっとだけ頬を赤くしたが・・・黎迩の精神のほうはかなり限界に近そうだったために、救いの言葉をかけることにした。

「———ですが、安心するのです。お前を絶対に【異形】には喰わせたりしないのです。そのために・・・私はここにきたといっても過言ではないのですから」

「・・・は?」

一瞬だけ、黎迩の表情から影が消えて、明るい表情になりかけるが、最後の言葉を聴いて、再び、というか、また違った色の絶望に染められたかのような表情になる。・・・それって、つまり?

「そう・・・そのために私はお前の『家』に来たのです!!次の【異形】がでてお前が私に助けを請って【デュアルフェンサー】に保護されたいというまで———お前の『家』で生活するためにきてやったのです!!」

その自信満々で語るシャルルを黎迩は冷淡な瞳で見つめる。なにをいっているんだこいつは、そんなことできるわけないだろう、だいいちお前、自分の仕事とかどうするんだよ、俺を守るとか俺の家に居座ることとかが本業じゃないだろ、【異形】を倒すことが本業だろうが。
とかいろいろつっこみたいという衝動をなんとか黎迩は抑えながら・・・こめかみをひくつかせながら、引きつった笑顔をシャルルにむけて、必要最低限の質問だけさせてもらうことにした。

「・・・俺の家族の許可はとってあるんだろうな?いや、許可なんてしてくれるわけないよな———」

「そのへんは心配無用なのです。お前の親の職場に出向いて、数日間家に滞在させてもらうっていったらあっさりオーケーはもらえたのです」

・・・ニコニコと、不自然な笑顔をむけるシャルルを見た黎迩は、あの両親たちがそんなあっさりオーケーしてくれるわけないだろうと思っていたが、そのあたりはどうでもいい・・・たぶんこいつ、自分の用件だけ言ってさっさと帰ってきたくちだな、と頭の中で考えて、ハァ、と一度だけため息をついたあと・・・それでも自分を守ってくれるというシャルルのことを頼もしげにみつめて・・・最後にひとつだけ、質問をさせてもらうことにする。
そう・・・それは、【デュアルフェンサー】のことについて———いや、正確にいえば、【デュアルフェンサー】の、【異形】に対抗している【人間ではないなにか】について———質問をさせてもらうことにしたのだ

「まぁいい・・・じゃぁ最後に聞く。お前ら【デュアルフェンサー】のやつらは・・・人間、なのか?」

その質問にシャルルは・・・儚げに瞳を揺らして・・・こう、答えるのだった。

「いえ・・・私たち【デュアルフェンサー】は———【人間】を捨てた【人間】なのです」

シャルルの瞳には、一筋の後悔の色が宿っているような気がした—————————————————




「いったい・・・なにがどうなってやがるんだ」

シャルルからある程度の事情と、自分が命を狙われているということを知ってからまだ二時間ちょっとしかたっていない今の時間に、黎迩はちょっとした危惧に見舞われていた。
そう、それは【異形】とかに襲われるとかそういった類の危惧ではない。人間の本能としての危惧というか・・・そう、もっと根本的な危惧に黎迩は見舞われてしまっていたのだ。
両親はまだ帰ってきていない。どうも今日からその会社の大きな企画の大詰めに入るらしく、帰ってこれない日が続くかもしれないからと、食事代だけさきほど届けにきたきり、両親は再び仕事にでてしまっている。そして。その食事代の中にはなぜか三人分・・・無理やり押し入ってきたシャルルのぶんもふくまれており、黎迩はあとでちゃんと金は返せよとシャルルにいって、わかってるのです、と尊大な口調でいわれてから、ちょっとした時間つぶしをしたあとに———その危惧は訪れたのだ。

「・・・お前は、なにをしているんだ?」

その声は、黎迩のもとからでたとは思えないぐらいに低かった。その声を聞いた主は、ビクッと肩を震わせて、後ろを振り返り黎迩の表情を伺う。黎迩は、こめかみをひくつかせながら、口だけを笑顔にして、できるだけ穏やかな口調になって

「お前は、なにをしているんだ?」

と、もう一度いう。
そう、その黎迩の視線のさきには、幼いながらも美しい、流れる澄み切った金髪を片方で結んでいる、小柄な少女の姿・・・シャルルの姿があった。その手にはなぜかどこからともなく現れた漆黒の、神仏な剣が握られていて———今この場所、黎迩の自室であるこの部屋のある一方だけが、どれだけあばれたらこうなるんだよといいたいぐらいに荒れているという状況で———

「れ・・・れいじぃ〜」

だがしかし、シャルルのほうにはそれが見えていないようだった。シャルルは漆黒の剣をほっぽりなげて、黎迩にむかっていきおいよくだきつく。正面からだきつかれた黎迩は、びっくりしてバランスをくずし、それでもシャルルを受け止めながら、

「ど・・・どうしたんだ?」

かわいそうなぐらいに怯えきってしまっているシャルルを見て、黎迩はそう聞かざるをえなかった。うけとめたシャルルの体は震えていて、目じりには涙が浮かんでいる。ふるふると震えているシャルルはその手を黎迩の部屋の中央にもっていき・・・そしてようやく、黎迩はシャルルが怯えるほどの相手の姿を捕らえる。
それは黒光りする小さな物体だった。その物体は黎迩は目があうやいなや突然俊敏な動きで走り出し、シャルルによっていろいろと散乱してしまっている家具に隠れてしまい、そいつは消えてしまう。だがしかし、その正体がわかった黎迩は、シャルルと同じように体をブルッと震わせて・・・キュッと服のすそをにぎってるシャルルの手をとって

「よ・・・よよよよし、シャ、シャルル、とりあえず体勢を立て直すんだ・・・あいつは強すぎる」

「う・・・うん」

そういって黎迩はシャルルをひきつれながら、震える体をなんとか動かして一階におりていく。
リビングにでた黎迩は、自分の椅子にシャルルを座らせて、自分は妹の席に座る。その後すぐに黎迩は目だけであるものを探しながら、シャルルに問いかける。

「シャルル・・・だ、大丈夫か?」

若干震えてしまっているがそんなことは関係はない。あれを目にしてしまった以上、ほうっておくわけにはいかないのだ。ましてや、自分よりあれが苦手なのであろう女の子を目の前にして、ほうっておくわけにはいかない。だからこそ黎迩は毅然とした態度になり、シャルルの手をギュッとにぎりながら、真摯な瞳でシャルルのことをみつめる。
シャルルはその黎迩の真摯な瞳に・・・なぜか頬を赤らめさせて、ボーっとしたような表情になるが、すぐにあわてて顔をブンブンと横にふって

「だ・・・大丈夫じゃないのです・・・は・・・早くあいつをどうにかしなければ———」

黎迩は、さっき初めて名前を呼ばれたって言う真実にも気がつかずに、たださきほどの物体を頭の中で思い浮かべる。とある特殊なノズルからはなたれる、ガスでしか倒せないのだという。だとしたら・・・やはりあれを使うしかないようだ・・・と、黎迩はようやく見つけた、戸棚の一番上に置かれているその筒状のなにかを手に取り・・・気丈とした態度で歩きはじめる。その後ろを、ビクビクと体を震わせながら、黎迩の服のすそを後ろから握っているシャルルがついてくる。










Re: Ebony girls dual Fencer 企画進行中 ( No.13 )
日時: 2011/09/03 12:42
名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)

階段を上り、再び戦場へと舞い戻った黎迩とシャルル。二人はおそるおそるといったふうな感じで部屋のなかをのぞくと・・・そこにはいかにもその物体が得意とする地形が広がっていて、それに黎迩が顔をしかめる。だがしかし、恐れを知らぬ足取りでその戦場に入っていった黎迩は誰にも止められなかった。シャルルが黎迩のすそをはなすと同時に、黎迩が暴れ始める。山のような形をするそれを蹴り上げ、川のごとき広がるそれを素手で掴んでグシャグシャに丸める。そして———見つける。嫌悪感、不快感を覚えるぐらいに黒光りするその物体を。
光にさらされたその物体は一直線に黎迩にむかって突進してくる。だがしかし、黎迩は今度は逃げない。不屈な魂で、あるいは手にもっているその筒上のなにかに勇気付けられるように、黎迩はその黒光りするその物体に真っ向から勝負を仕掛ける。
以外にも早いその動きで黎迩は手を前につきだして、それにむかってその筒状のなにかの中身を噴射する。それによって黒光りする物体は動きを封じられる・・・がしかし、その生命力はなみではなかった。その一撃必殺であるはずの攻撃をくらったはずなのに、そいつは突然さっきよりも俊敏な動きで暴れ周り、やがては黎迩を通り越してシャルルのほうにむかって一直線に走っていく。シャルルはその姿にヒクッと怯えきった子猫のような反応をして、一目散に駆け出す。だがしかし、その黒光りするなにかはシャルルにも負けず劣らない速度で走り、やがて———妹の、裕香の部屋の前で———その瞬間に開かれた扉に押しつぶされるように———その命を絶やした。

「ん?なんかいまぐしゃっていったけど・・・うげぇ〜・・・ゴキブリぃ?最近見ないと思ってのになぁ」

そしてその黒光りする物体は———裕香がもってきたティッシュに適当につつまれて———トイレに流されるのだった。
かくして、黎迩たちの壮大な戦いの幕は・・・ここで閉じたのだった。

「・・・ってそんなんじゃ終わらせねぇぞ。おいシャルル・・・お前はまず俺の部屋をどうにかしろ」

そういいながら黎迩はシャルルのマントをむんずと掴んでひっぱりながら———シャルルからしたらある意味の戦場に、再び戻っていくのだった。





「・・・【デュアルフェンサー】からの増援?」

「はい。さっきの説明では私がお前のことを守る、ということになっているのですが・・・今回の件はいろんなところがイレギュラーなのです。ですから。もしも【異形】が【異空間時計】を作り出して、出現した場合は・・・私の同僚の何人かが増援に入ると思うので、一応でいいので覚えておいてください」

「・・・イレギュラー。ハッ。俺にとってはお前らのこととかが一番イレギュラーだよ」

「安心するがいいのです。お前はこれまでどおり、【異空間時計】のことなんか知らないかのように生活していただければそれでけっこうなのです。だからなんの支障もないのですよ」

「・・・いや、夜寝るときとかもう怖くて眠れそうに無いんだけど・・・」

そういいつつ、黎迩はコップにはいったお茶をグイッと飲み干す。時刻は夜の十時で、いろいろありすぎて疲れていて、眠りたいけど怖くてというか、自分がいつ【異空間時計】につれこまれて殺されるか分からない今、簡単に眠れないという恐怖のもとから、黎迩は重たいまぶたを無理やりこじあけながらシャルルと話す。シャルルのほうはもとより寝るつもりは無いのだろうか、まだまだ元気いっぱいなご様子で尊大な口調をくずすことなく

「別に寝てもいいのですよ。お前が間抜け面で寝ている間に【異形】がおそってきたら私がつぶしておきますから」

「いや・・・そういわれてもねぇ?」

寝てもいい・・・といわれても、といいながら、黎迩は暇そうに髪の毛をいじっているシャルルを見る。その姿は美しい。とはいっても、まだまだ幼くて、黎迩よりも年下であることはたしかだった。自分のことをあんまりしゃべらないというか、過去を話さないシャルルがいったい何歳なのかはわからないが、それはお互い様なのでどうでもいいとする。だけども、シャルルの外見だけで年齢を判断するに・・・そんな夜更かしができるような年齢とは思えなかった。だから、ついそんな言葉が口からもれてしまったのだ。

「お前みたいな子供が夜更かしなんて・・・無理だろ」

「なっ・・・」

その言葉を聞いたシャルルが固まる。暇そうに髪の毛をいじっていた手が止まり、目が点になってうごかなくなる。それを見た黎迩は、しまった・・・と思う。もしかしたらそういった類のことを気にしている可能性があったのに、つい口にしてしまったことに後悔し、すぐに弁解の言葉を口にする

「な・・・ち、違うぞ。こ、子供は子供でもお前は可愛いし肌なんかぜんぜん荒れているように見えないし夜更かしなんかしたらその美貌に支障がでちまうかもしれないから夜更かしなんかしないほうがいいといっているだけで———」

「こ・・・こども・・・可愛い・・・美貌・・・う・・・うううぅぅぅ!!」

「おわっ!?」

唐突にうねり声をあげたシャルルは、近くにあったプラスチックでできたコップを手にとって黎迩にむかって投げつける。この表情は怒りに震えているようにも見えてちょっと恥ずかしがっているようにも見える不思議な表情だったが、そんなことは関係ない。黎迩は必死の形相でその飛んでくるコップをかわし、シャルルのほうを見る。
シャルルのめじりには屈辱と恥ずかしさからか涙がうかんでいた。それを見た黎迩は再び申し訳ないような気持ちになり

「あ・・・あの、よろしければでいいんだけど・・・年はおいくつでしょうか?」

素直に聞くことにした。


Re: Ebony girls dual Fencer 企画進行中 ( No.14 )
日時: 2011/08/20 14:17
名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)

「わ・・・わたしはっ・・・」

「・・・はい」

「私はっ!!十五歳なのです!!」

「へ・・・へぇ、そうなのですか」

「お前のことももう調べてあるのです・・・!!水無月高等学校に通う一年生で、私と同い年のはずなのです!!それなのにこ・・・子供?ふ・・・ふざけるんじゃないのです!!」

「ちょ・・・ちょっとまて、俺のことを調べたってどこまで———」

「別にそこまで詳しくはしらべてないのです【デュアルフェンサー】自体そこまで力のある組織ではないので今のお前の肩書きと年ぐらいしかしらないのです。・・・そんなことよりっ」

「わ・・・わかった、訂正する!!訂正します!!子供っていってごめんなさいっ!!」

自分のことを調べた・・・と言われて、黎迩は一瞬からだを凍りつかせかけたが、だがしかし、過去のことは別になにもしらないようなので、すぐに安心するがしかし、シャルルが首にかけられている十字架に手をふれそうになっていたので、あわててそれを止める。シャルルのほうはわかればいいのです。といって憤りをおさめてくれたが、黎迩はここで心に刻み付けておくことにする。シャルルに子供とかいったらやばい・・・ということを。

「第一ですね、私たち【デュアルフェンサー】の活動時間というのはだいたいが夜なのですよ?ですから夜更かしすることなんて楽々なのです」

シャルルがそう自慢げにいって黎迩は気がつく。さきほどシャルルがいっていたイレギュラーというのは・・・その言葉にも当てはまるのではないか、ということに。だから確認をするために、黎迩はシャルルに問いかける。

「あー・・・つまり、今日の夕方に【異形】がでてきたっていうのもイレギュラーってことなのか?」

その質問に、シャルルはいいことを聞いたといわんばかりに頷く。さきほどの怒りはもう収まっている、というか、シャルルのほうは子供っていわれて今の流れになることになれてしまっているのだろうか、元の状態に戻り、尊大な口調でこう告げる。

「別に・・・イレギュラーってわけでもないのです。夕方の時間たいに現れることは別に今日から始まったわけではないのです・・・問題のイレギュラーは、今日でてきた【異形】が、お前だけに狙いをつけて・・・一切摘み食いをしなかったということなのです」

「そ・・・それは俺がその【異空間時計】の中で動いてたから、俺だけを狙ったんじゃないのか?」

「それは無いはずなのです。その【異形】はおそらくその街に人が、餌がいっぱいあったから【異空間時計】を生み出し、食事をしようとしたのです。なのに、どうして動いているお前を食そうと考えたのですか?明らかに効率の悪い、動く獲物を狙ったりしたのですか?」

「だからそれこそ、動いているやつの感触を味わいたかったんじゃないのか?」

自分でいってておぞましく感じるが、そうとしか考えられないため黎迩はそう告げる。だけども、シャルルは納得いかないといったふうに言葉をつなげる。

「ですが、あの【異形】はおそろしく弱かったのです。腹が減っているとき、何日か食事をしていない【異形】の力は弱く、あの【異形】と似たような状態の【異形】を私は討伐したことがあるのです。ですから、お前を食べるにしても、少しばかりつまみぐいをした後でもぜんぜん間に合うはずなのです。なにせ【異空間時計】をつくりだすその【異形】本体が消滅するか自分の意思で消すまで・・・その【世界】は消えないのですから、メインディッシュは一番最後にとっておくはずなのです」

「・・・なら、なんのために俺だけを追ってたんだ?」

「それがわからないから・・・今回のことはイレギュラーが多すぎる、と言っているのです———」

その瞬間、シャルルの目つきが鋭くなる。それは、今回の出来事がシャルルにとって負担になっているということをあらわしているようで・・・黎迩は申し訳ない気持ちになる。だけども、自分ではなにもできないことを知っている、というよりも、シャルルのいうその弱っている【異形】にすら怯えて、逃げ回ってしまった自分がどうにかできるわけないので・・・黙ってシャルルの言葉を聞くことにした。

「だからこそ・・・お前には【デュアルフェンサー】の支部にきてほしかったのですが、それも無理な話なのですよね・・・これもある意味ではイレギュラーなのです」

そういったあと、シャルルはため息をつくが、黎迩はそれだけはどうしても賛同できないのだ。第一、両親には本当にこれ以上の迷惑をかけられないし妹のこともある。だから、自身がピンチに陥ろうがなんだろうが、それだけは絶対に譲れないのだ。
それを知っているからこそ・・・シャルルはもう一度ため息をついて、黎迩のことをどこか昔の自分を見ているような懐かしむような瞳でみつめて———その手をいきなり首元の十字架にもっていく。
その瞬間に、十字架をにぎっていないほうの手に漆黒の剣が出現する。その形はシンプルな西洋の剣で、シャルルの身長からだとちょっと大きめなサイズに見えたが、その突然のシャルルの行動に驚いた黎迩は、そういった細かいところを気にする余裕はない。
シャルルは剣を手にもつと、椅子をひっくりかえしながら立ち上がり、黎迩のもとにかけより———

「家をでるのです———」

「・・・は?」

一瞬、呆気にとられる。
しかし、すぐにその違和感に気がつく。さきほどまで電球で明るく光っていたリビングは、濁ったかのような灰色に染まっていた。当然、時計のほうを見ても針は動いていない。その時計が止まっているだけという可能性も考えて、近くにおいておいた携帯を確認して見るが、その携帯の時計も動いていない。なにもかもがとまってしまっている・・・なにもかもが背景となってしまう、因果の調律を狂わせた空間———【異空間時計】が発生したのだ。それがあらわすもの・・・それが意味するのは———【異形】の出現、自分の命の危機———

「わ・・・わかった」

「安心するのです———どうやらこの【異空間時計】には、私の仲間も入り込んでいるようなのです」

そういわれるやいなや、黎迩は立ち上がる。ちょっと外にでるにはいささか常識外な、上だけシンプルなTシャツに、下は黒いジャージというラフな格好。髪は暇な時間にごろごろしていたりしたからちょっとだけボサボサになってしまっている。だけども、別に近所の人とかに会うわけでもなければ、誰にも咎められはしないだろう。
黎迩のほうは、命を狙っている相手が近くまで来ている、という状況のはずなのにどうしてか緊迫感はぜんぜんなかった。それはシャルルという最強の守り手がいるから、という理由なのかもしれないが、そのシャルルのほうはそうではない。妙に真剣なまなざしで外をにらみつけたシャルルは、そこらへんにほうり捨ててあった漆黒のマントを肩にはおる。そしてそのままダッシュでリビング、廊下を駆け抜けて、家を出る前に膝元まで覆い隠すレギンスをすばやく足に装着して、こいこい、と黎迩を促す。
黎迩はとりあえずといったふうに玄関まででて、靴をはく。あんましはく必要はないんじゃないかとか考えていたりもしたが、一応は一応だ、といったふうな思いで靴をはく。シンプルなスニーカーだったが、走る分には申し分のない靴だった。

「いそぐのです。家の中では流石に分が悪い・・・というよりも、こちらの行動は完全に制御されてしまいますから」

そういってシャルルは玄関の扉を開いて黎迩を外にだす。その後をシャルルがついてくるかのような形で二人は外にでる。
そしてそこには・・・【異常】な光景が、漆黒の闇で覆われているはずの街が、街灯が———すべてが赤色に染まり、家からもれる光がすべて塊、赤に熔けていて———近くのコンビニでなにかを買ってきたのであろう、こんな時間でも外にでている住民が・・・動かなくなってしまっていた。
それは夕方のあれと同じだった。それを意識したとたん、黎迩に恐怖が生まれる。自分は死ぬんじゃないのか?本当に大丈夫なのか?こんな気味の悪いところで・・・俺は、生きていけるのか?といったふうに、まるで意識を乗っ取られたかのように恐怖が黎迩の体を支配していく。黎迩はそれに抗うことができない。自分の内側から芽生えてくるその感情を———おさえることが、できない

「・・・れいじ!!危ないのです!!」

そして、来たるべくして現れたその存在に———気がつくことができなかった。
突然立ち止まってしまった黎迩を不審に思ったシャルルは見る。自分たちの前方から———犬の形をした。それでもけして犬とは形容できない形をした———【化け物】の姿を。
その大きさがまず異常だったのだ。百獣の王ともいわれているライオンなんかよりもはるかに大きい体躯。どちらかというとバッファローとか、牛に近い大きさをもっているその犬のような形をしたものは、顔に・・・中心から裂けて二つに分かれている、気色の悪い顔があり、その内側からは、大量の、目で追うのはむずかしいぐらいにしわが刻まれている・・・脳のような形をしたものや、血管の断面、骨の断面や突起などが見て伺える。一言でいうのならば、それは人間が見たら一瞬で吐いてしまいそうなほどにグロかったのだ。
血がお供なく流れ落ちているその姿は・・・まさしく【異形】だった。
その【異形】はシャルルが反応するよりも早く、黎迩のことを喰らいにかかる。黎迩はそれに反応することができずに、あっさりとその巨大な体におしたおされて、身動きが取れない状況になる。

「ガァッ・・・!!くそっ・・・なんだよこいつ・・・!!」

「今助けるのです!!」

そういいながらシャルルが剣を構える・・・だがしかし、その犬のような形をした【異形】は、シャルルの行動を読んでいたかのように黎迩の体を———突然背中から突き出してきた、赤黒くそまった人間の手のようなものでもちあげて———盾にする。

「くっ・・・な、なかなか頭がいいようなのですね、ほめてやるのです」

そういうシャルルの口調には、もう余裕なんてものはなかった。
シャルルは剣を構えなおし、【異形】を警戒する。だが、黎迩が人質にとられてしまった以上、簡単に動くことはできなかったのだ。それを見て黎迩は———自分が不注意、ほんの気の迷いでおこしてしまったこの現状をどうするのか思考を展開する。
もとより頭のいいほうではない。だけども、守ってくれるといったはずのシャルルを信じないで、勝手に恐怖に震えていた自分が巻き起こしてしまったこの状況なのだ・・・どうにかしなければならなかった。そうするしか———助かる方法なんて、ないんだからな———

「うううぅぅああぁぁぁっ!!」

突然黎迩が咆哮をあげる。そしてなんの意味もなさないであろうその拳を———犬の片方の顔面にむかって叩きつける。それにビクッと反応したのは【異形】だった。【異形】は黎迩が抵抗するなんて思っていなかったのか、びっくりして黎迩のことを落としてしまう。黎迩はそのまま地面を無様に転がるが———その黎迩がつくった隙は、決定的となった。
シャルルが黎迩がはなれたとみるやいなや、黎迩の目では追うことのできないスピードで走り出し、【異形】の目の前でとまる。【異形】はそれを、背中から何本も突き出してきた、今度はちころどころで肉がはがれて気色の悪い腕で、それをシャルルにむかって伸ばす。シャルルはそれをことごとくかわしてから一度助走をつけて宙を舞う。犬はそれに反応することができずに———シャルルは空中から、剣を思い切り【異形】の中心・・・つまり、胴体にむかって投げつけたのだ。
一直線に落ちるその剣の速度は異常だった。絶対にかわせるはずのないそのスピードで、剣はふかぶかと突き刺さる。激しく血飛沫を飛び散らせ、剣が肉をえぐる嫌悪感を誘うその音を聞かないといわんばかりに目をふさぎ、耳を黎迩はふさぐ。
だがシャルルのほうは止まらない。たった一撃でしとめられる【異形】は、本当に弱い【異形】にのみかぎることだからだ。だからシャルルは宙で再び十字架にふれて漆黒の剣を生み出し、そのまま落下とともに【異形】にむかって突き刺し、一度反動でジャンプして地面に着地してから、もう一度十字架をにぎる。
そこで———シャルルは剣をもたなかった。
十字架をにぎったままのシャルル。その周りには漆黒の、シンプルな西洋の剣のような形をした剣が何十本も出現する。その剣の切っ先はすべて【異形】にむけられていて———それをみた【異形】は、怒りに体を振るわせ、狂ったかのようにシャルルにむかって走り出す。だが———

「放つ」

そのシャルルの冷徹に放たれた言葉によって、剣が重力を無視して動き始める。一直線につっこんでくる【異形】にむかって、漆黒の剣たちは同じように一直線に飛んでいく。【異形】はそんな単純なことに気がつくことなく———すべての剣を、体に受け入れた。
激しく血飛沫が舞う。腕が飛ぶ、首がもげる。大量の血があたりいったいにふきつけられる。骨が砕ける。血にそまった骨の断片が舞い散る。もはや原型がとどまっていないその【異形】は———前の【異形】と同じように———その姿を薄れさせていって、後にのこったのは返り血をあびたシャルルの姿に———当たり一帯にまきちられた【異形】の断片。そして・・・怯える黎迩の姿だった。




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