ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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神は世界を愛さない 
日時: 2011/09/23 17:38
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: PUkG9IWJ)

何度も作品を投稿し、申し訳ございません……。書いて書いて書きまくってやります。
色々コメントとか、参照とか気にしていた所もあった自分ですが、今回もう関係無くやります。
その結果を出せるように、やってみます。
頑張ります。人並みに。



【目次】
順序の始まり(プロローグ)>>1

〜第一幕〜
第1節:神はそこにいる
♯1>>2 ♯2>>3 ♯3>>6 ♯4>>7 #5>>10
第2節:神嫌い、人間嫌い
♯1>>11 ♯2>>12 ♯3>>13 ♯4>>14 ♯5>>19
第3節:世界は暗転する
♯1>>20 ♯2>>21 ♯3>>22 ♯4>>30 ♯5>>31
第4節:異常と異能の交差
♯1>>32 ♯2>>33 ♯3>>36 ♯4>>37 ♯5>>38
第5節:新たな日常=非日常
♯1>>39 ♯2>>40



【お客さん】
水瀬 うららさん
紅蓮の流星さん
旬さん
トレモロさん


コメント・励ましの言葉をいただき、ありがとうございますっ。

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Re: 神は世界を愛さない  ( No.16 )
日時: 2011/08/22 22:45
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)

>>紅蓮の流星さん
むぁ、お久しぶりの紅蓮さんですかぬっ。
あぁ、描写……ですか。確かに、進化したかもしれませんが、全く納得いっていないという始末ですねー……。
こんなものじゃまだまだ及びません。抜けているところも多いです。精進すべき点はまだまだ沢山あるので、頑張っていきますー。
内容ですか……スランプ脱出ということで、少しばかり凝ったかもしれません。伏線は微妙に仕掛けてあるつもりですけどもwバレないのを祈るばかりですね……。
更新頑張りますーっ!ありがとうございます、励みになりますー。また雑談などでも話しでもしませうっ。コメントありがとうございましたっ

Re: 神は世界を愛さない  ( No.17 )
日時: 2011/08/23 10:50
名前: 旬 ◆Q6yanCao8s (ID: aza868x/)

しゃいぬお兄さん

ちょっとずつ読んでいましたー。
旬が参上ですよ。

なんとも文章が長いのなんのって
まだ3レスくらいしか読めていません旬乙←

文才がおありのようでていうかなんですかこの
高校生感めちゃでてるの。
うんぬ,やはり尊敬ですね。
一つ一つの文章が意味のある絵に思えてきた次第です,はい。
旬がまだ知らない高校生の世界が
なんとなくわかりますよぁ。
これからもこつこつ読ませていただきます。
そしてコメント……っと。

更新頑張ってくださいね!
指を痛めないくらいに。

Re: 神は世界を愛さない  ( No.18 )
日時: 2011/08/23 17:13
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)

>>旬さん
むあー、旬さんじゃないですかぬっ。
文章長くて申し訳ないですwこんな書き方ですwはい、土下座しまs(ぇ

文才はないですよー。真似て真似た結果こんなになってしまった、取り返しがつかないなぁ、あははは。っていう感じですw
尊敬だなんてー。自分には似合わない言葉ですー。
高校生の世界ですかー。ふむふむ……だんだんとそういうのも入れていけたらいいですねぇ。まだ片鱗程度ですし。
マジですかっ。ありがとうございますー。コメントぉぉっ。ktkrってな感じですn(黙

更新頑張りますーっ。ありがとうございます、その言葉が励みとなっちゃいますよ、今すぐにでも更新したくなる勢いですねっ!
指を痛めないくらいにwwそうですねw基本指痛まないぐらいに抑えてますので、大丈夫ですかねw
コメント、ありがとうございましたっ。

Re: 神は世界を愛さない  ( No.19 )
日時: 2011/08/24 18:36
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)

その後、俺の記憶は途切れた。
月夜を眺めていたと思いきや、気付いたら一人、神社の前を歩いていた。あの少女を探そうという気にもなれず、俺はそのまま叔父さんの家へと帰って行った。

今が何時なのかは分からないが、まだ明かりが点々と付いている。それは、勿論叔父さんの家にも。
叔父さんの家のインターホンも鳴らさず、ガラガラと引き戸を開いて中へと入る。和風の匂いが玄関からして漂ってきた。
中へ入り、居間へと向かうと、叔父さんは何か荷物の整理をしていた。
俺の存在を認めるや否や、叔父さんは「あぁ」と声を漏らして笑顔で俺の傍へと寄って来た。

「お帰りなさい。用事は、もう済んだのかな?」
「用事?」
「神社で、私と話した後、用事があるのでと言って、私は客人が来たから対応したように覚えているのだが……」

叔父さんの言っていることが、聞き始め分からなかったが、これが神隠しされていたということだろう。都合の良い様に記憶がすり返られていた。
あれは本当のことだったのだろうか、と。腹元に熱を帯びつつ、痛みを感じさせているだけでは、あんな非日常な出来事、信じられるはずもなかったが……叔父さんが、こうして記憶している。それは十分証拠だろう。
どこか叔父さんは抜けたようなキャラのようで、これでも記憶力は凄い。住職という仕事柄なのかは分からないが、どういった案件だったか、どういった客人が今日は訪れるのか、とかも把握しているし、家で二階に上がったり下りたりしているのは、どこに何が仕舞っているのか分かっているせいであり、決してただ意味もなく階段を上り下り繰り返しているわけでもない。
そんな叔父さんが、こうして言っていることは正しい記憶として判断されているのだろう。俺は渋々、普通にやり過ごして食卓に着いた。

「叔父さん、雪は?」
「ん? あぁ、雪は今日、友達の家に泊まるとか言ってたね」

初耳の情報だったが、叔父さんが俺の為に食事を食卓の上に置いてくれる姿を見ていると、どんどん興味が移っていく。
今日の料理は、カレーだった。具材は至ってシンプルで、じゃがいも、にんじん、牛肉、玉ねぎ、と。腹が減っていた俺は、このシンプルなカレーでもとてもご馳走に見えた。

「美味しそうですね」
「ん……? あぁ、そうかい? 男二人だけど、仲良く食べようか」

そうして叔父さんもテーブルに自分の分のカレーを置いた。
ふと、叔父さんの後ろに飾られている古びた時計を見ると、時刻は既に8:00となっていた。




居候だが、叔父さんが「何杯でもおかわりしていいよ」と言ってくれたので、その言葉に甘え、決してお世辞ではない美味さのカレーを3回食べた。

「よく食べるのは、いいことだよ。何でも、元気でいたほうが良い」

ニコニコと笑顔でカレーを食べ終わった皿を持ち上げつつ、叔父さんが俺に向けて言った。
俺も叔父さんの後に続いて、カレーのルーで汚れた自分の皿を台所へと返しにいった。
それが終わると、二階にある自分の部屋へと入り、既に畳の上へと寝転がった。
一息吐き、俺はぼんやりと天井を眺めた。
今日あったことがまるで嘘のようだった。非日常すぎる。突然、あんな出来事が——いや、前からだった。前から、何だか変な感じがしていた。こう、胸騒ぎが起こっている。ふつふつと、何かが込み上げてくる感じ。そんな錯覚に近いものを感じていたからこそ、俺はこの家に来た。理由は、他にもあるのだが。

「ふぅ……」

一息吐き、俺はゆっくりと目を瞑った。そうしていると、真っ暗な世界の中に一人だけポツンといる気分になり、時が止まっているような気さえした。
周りは虫の合唱で溢れかえっているはずなのに、今日は何故か全く聞こえない。変だと思い、再び目を薄っすらと開けると、

「あれ……?」

窓から、緩やかな風と共に、あの少女が突っ立っているように見えた。此処は二階で、窓から入ることが可能なんだろうか。その後、一瞬にして目の前がクラッと一回転したようになり、暗闇の中へと堕ちていった。

目の前に寝転んでいる先ほどの人間を見下しつつ、部屋の雰囲気を確かめた。特に何もおかしいところはなく、至って普通の人間が住む部屋。
人間独特の"匂い"がしないのは、自分自身も人間となってしまっているからだろうか。

「この男、何者だ……」

呟きつつ、男に近づいてみる。完全に眠りに入っているようだ。その分、この男が何者なのか調べることが出来る。
人間になっても、"人間の中身"を見ることは変わらず出来るようだ。
前から追っていた、あの黒猫が餌に選んだ男だ。それ相応の力か何かを持っているのではないか。その力のせいで、自身の"神の力"を失ってしまった。そう考えるのは、あの力を奪われた瞬間からしても明らかだった。
ゆっくりと顔を近づけてみる。腹元には、痣があるようだ。黒猫の奴から付けられたものなのだろう。そっと、手を男の胸辺りにかざす。
すると、ふわっとこの人間の持つべき力が見えてくる。だが、その中身は驚きしかなかった。

「な……!」

手を離し、体を遠ざける。後ずさり、男を見る。
この男は——




翌日。
いつものように目覚まし時計無しで起きる。時刻は——昨日と同じ? 
昨日の早起きだけで、このスタイルを身に付けてしまったのだろうか。となれば、こちらとしてはとても迷惑だ。
眠さがまだほんのりの脳内を刺激し、まだ寝てもいいという体の甘えもついでに付いて来る。
どうせ今日は雪がいない。今日しか雪はいないということを考えると、また次の日から同じように早起きを強制させられる可能性が十分考えられる。ということは……今日ぐらい、まだ寝てもいいだろ。
そうして、睡魔を受け入れ、また眠りの世界へと入ろうとした——その時、

「いつまで寝とんじゃーっ!!」

ガタンッ! という音と共に、どこか聞いたことのある女の声が聞こえてきた。
まさか、と思い、俺はドアの方へと視線を向けた。すると、有り得ない人物がそこに立っていた。

「いや、あの、え?」
「何だその顔は。たかだか人間風情で」
「いやいやいや。そうじゃなくて。え?」

俺の見た人物は——昨日、俺を殺そうとした少女だった。
変わらない、髪の艶といい、綺麗な黒髪にチリンッ、と音を立てている髪に結ばれた碑石のようなものに、横髪に添えられたようにしてある結びがとても可愛らしく揺れていた。
よく考えると、雪が此処にいるはずがないじゃないか。友達の家で一日を過ごしている雪が、わざわざ俺を起こしに此処まで戻ってくるはずがない。こうして女の声がしただけで、おかしいと思わなければならないのだ。
だが、それよりも、だ。どういう状況に陥っているのか、誰か説明をしてくれないと意味が分からない。

「あの、叔父さーんっ」

とりあえず、叔父さんを呼ぶことにした。だが、その反応を見て少女は「無駄だ」と一言呟いた。
何が無駄なのか、わけも分からない俺は、とにかく目覚め、ゆっくりと腰を上げる。

「あの坊主なら、出張で出かけた。つまり、この家は今、私とお前しかいない」
「……そんなこと、昨日言ってなかったぞ」
「あぁ、言ってないだろうな。朝、お前が見るように配置したようだ。一階に置手紙があった」

そう言って、少女はふさっと一枚の紙を俺の目の前に落とした。ふわり、ふわりと、虚空に揺れる紙を掴み、読む。

『すまないが、急な出張が入ってしまった。朝ご飯は作ってあるので、お食べなさい』

とだけ書いてあった。
急な出張なんて、住職さんにあるのだろうか。いや、人が死んでお経をあげに行くとか、そういうのがあるのかもしれない。けれど、早朝にそんなことをしに行くものなのだろうか。

「もしかしてだが、何かやったのか?」
「やれるはずがないだろう。坊主が勝手に出張したんだ。私は何もしておらん」

仁王立ちで、偉そうに俺を見下しているこの少女は、一体何者なのだろうか。第一、何故ここにいる? 昨日、あれからどうなったのだろう。
考えれば考えるほど、何もかも分からなくなってくる。

「まあいい。お前に話がある」
「話?」
「そうだ。下りて来い」

そう言って立ち去ろうとするが、俺は一言「待て」と呟いた。
すると、少女は俺の方へと怪訝な顔をして振り返った。

「此処で話せばいいだろう。何だ」

俺が言うと、少女は暫く黙り、ボソッと「人間ごときが、指図だと……?」と呟いた気がしたが、嘆息し、少女は俺を冷酷な目で見つめ、そして言い放った。


「——お前、私と契約を結べ」


何が契約なのだろうか。どうして結ぶ必要があるのか。どうして命令系なのかなんてものは、疑問が多すぎてわけが分からなくなっていた。
少女は、ただただ、俺を見下しながら冷酷に言ったのだ。それを見て、俺はよく分かった。

あぁ、こいつは本当に人間が大嫌いなんだ、と。

Re: 神は世界を愛さない  ( No.20 )
日時: 2011/08/25 15:25
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)

左右に広がるは田んぼの海。その真中に位置するどうにも無理矢理作ったような少し狭い一車線ある道路の片隅を歩く。この道を真っ直ぐ行き、段々と見えてくる住宅街を入って進んでいくと、少し都会の方へと出て行く。そこを少し行ったところぐらいに、学校がある。
つまり、この道はこれでも通学路という名目が付いているというわけだ。
その通学路を、律儀に歩く俺だが、今日は清清しいほどの天気が昨日と連続して続いたのもまたいいことなのだが、もう一つわけが分からないことがある。
それは勿論、あの少女との朝の出来事であった。




「——お前、私と契約を結べ」
「……あ?」

意味が分からず、俺は呟いたようにして言葉を口にした。
そんな冷徹な目で言うようなことではないし、何しろ意味が分からないのが最重要ポイントだった。

「契約? 何だそれ」

まず初めに思ったことから述べるとしよう。そうして、俺は尻餅をついたような状態から、少女に聞いた。
相変わらず仁王立ちのまま、俺を見下すようにして見ている冷徹な少女は、そのまましょうがない、という風にため息を吐いて、真っ直ぐに結ばれた口元を緩やかに解いて言葉を吐き出した。

「結論から言うと、お前がいないと私は力が発揮出来ないからだ」

いきなり結論から言われても、とは思ったが、単刀直入に契約を結ぶ目的を答えろというのならば、結論からこうして述べた方が早いと思ったのだろう。

「何で、俺がいないと力が発揮出来ない?」
「お前、見ただろう。昨日、私がお前を殺そうとした時、お前は私の力を止めて見せた。何故だか分かるか?」
「分かるわけないだろ」

正直のところ、それだった。
実際、話しが噛み合っているように見えるが、力だとか何だとか、俺的にはどうでもいい。というより、俺に関係ない。昨日見たことは夢として忘れたいぐらいだった。
すると、少女は冷徹な表情から、少し眉の角度を上げ、再度口を開いた。

「お前は、得体が知れないからだ」
「……どういうことだ?」

それだけで説明終わり、というのはあまりにも納得がいかない。
得体が知れないから、俺はこの少女の化け物染みた力をあの一瞬で止めたというのか? ——何の解釈にもなっていないじゃないか。

「つまり、お前は得体の知れない、そもそも人間に備わる神懸かり的力、通称神懸かりの力がどんな能力なのか、どんな特性を持ち、どんな強さなのかがまるで得体が知れないってことだ」
「……すまん、全く分からん。神懸かり的力と神懸かりの力って、通称にするほどのものじゃないほど似ている単語というところから突っ込めばいいのか?」
「ハッ、さすがただの人間だな。知能が低い。これぐらいのこと、考えたらいとも簡単に分かるだろう」
「分からん。お前みたいに化け物みたいな力は無い。それに、そもそも人間に備わる神懸かり的力って何だ。人間にそんな力があるなんて——」

呆れたようにして言いながら、ふと気がついた。
神懸かりの力。奇跡的な力。人間。そのキーワードから考えられるものと言えば、世間などでも超能力者とか、シャーマンだとか、他にも様々な人がいる。そんな常識外れな存在、俺は信じていなかった。だが、自分の身の回りに起こることや、この目の前にいる有り得ない力を持っていた少女からして、そういう力を持った者がいてもおかしくはないんじゃないか、と。
つまり、人間に対する神懸かり的力というのは——

「超能力者とか、それこそ漫画やアニメで出てきそうな人が、その神懸かり的力を持つということか?」
「ま、そういうことだろ。ただ、表現の仕方がそれぞれ人には違う。だから、人間が誰でも自身の神懸かりの力を発動できるわけじゃない。発生のトリガーが必要だ。例えば、死にそうになるほどの危険が襲ってきた、とかだな」

あっさり、そして淡々と少女は答えた。
死にそうになるほどの危険が襲ってきた。そんな時、人は自分の力以上の力を発揮出来るという。これを世間じゃ、火事場のバカ力、なんて言っていただろう。
つまり、神懸かり的力というのは、まさにそういった分類に入るというわけなのだろうか。
だとしても、俺にそんな力は無い。それは、今までも、これからもそんな力を発揮出来るはずがないからだ。発揮しようとまず思わないし、死にそうな時はその時で、運命に任せる。実際に、この少女に殺されそうになった時も、そうしていたのだから。

「お前は、確かに能力があるけど、全く分からん。だから、得体が知れない。お前だけ、人間のクセして中身が鍵だらけで何も分からない。気持ち悪い。人間のクセに」

どれだけ人間を罵倒すれば気が済むのだろう、と思いつつ、少女の顔を見上げると、少女は鬼のような顔をして俺を睨んでいた。
余程、俺の中身が分からなかったことが腹立たしいのだろうと思う。

「お前の中身も調べないといけない。その中に、私の力が隠されてるのかも……。もしかすると、お前は何か別のものがあるのかもしれない。鍵のかかっている中身を見るのは多いが、お前ほど頑丈で鍵の多い中身はなかなか無い。黒猫に喰われていなくて良かった……といっても、私の力を奪ったのだから、今すぐにでも殺してやりたいところだが」

何とも物騒なことを言いながら、少女は苛立っているようで、足を貧乏揺すりのようにしてトントン、と一定のリズムで床を叩いていた。

「問題はあることはある。お前が本当に力を取ったのか、その事実は分からん。お前の中に、私の力の反応は見れなかった。どういうわけか、お前は何か秘密でもあるんじゃないかと思ったわけだ」
「秘密……? そんなものはない。それより、そろそろ学校に行く準備をしなきゃならない。だから、そこをどけ」

俺は立ち上がり、少女を払い除けて、一階へ続く階段へと向かおうとする為に、少女の肩の方を触ろうとした。だが、その瞬間、「やめろっ!」という声と共に、少女が俺の右手にパァンッ! と軽い音を出して弾き飛ばそうとした。——その時だった。

「え?」「あ?」

俺と少女の声が重なり、何か電撃の走るような感覚が襲い、目の前がグラッと揺れたような気がした。その時、何かが心の奥底でふつふつと煮え滾って来る予感がした。
何かが……生まれてくる? 
そんな表現しか仕様の無い感覚だった。
そして、次に見た瞬間、少女は初めて会った時のように、あの機械仕掛けの剣を持ち、悠然とその場で立っていた。しかし、表情はどこか困惑したような感じがしている。
少女は、自分の両手を見つめてどういうことだという顔をした後に、俺の方へと向いた。ようやく、視界の上下運動が収まった頃、よろけながらも少女を見た。

「力が、戻った? いや、これ……どういうことだ?」

少女は呟き、そして有り得ないことに俺の頭上に剣を振り上げ、そして——勢いよく振り下ろした。
本来なら、俺は頭から一気に引き裂かれて、真っ二つになっていたことだろう。だが、違った。少女は再び、人間の姿に戻っていた。

「もしかして……お前が、私の力の発生キー、ということか……?」

神妙な顔付きで、少女はそう呟いた。


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