ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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神は世界を愛さない 
日時: 2011/09/23 17:38
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: PUkG9IWJ)

何度も作品を投稿し、申し訳ございません……。書いて書いて書きまくってやります。
色々コメントとか、参照とか気にしていた所もあった自分ですが、今回もう関係無くやります。
その結果を出せるように、やってみます。
頑張ります。人並みに。



【目次】
順序の始まり(プロローグ)>>1

〜第一幕〜
第1節:神はそこにいる
♯1>>2 ♯2>>3 ♯3>>6 ♯4>>7 #5>>10
第2節:神嫌い、人間嫌い
♯1>>11 ♯2>>12 ♯3>>13 ♯4>>14 ♯5>>19
第3節:世界は暗転する
♯1>>20 ♯2>>21 ♯3>>22 ♯4>>30 ♯5>>31
第4節:異常と異能の交差
♯1>>32 ♯2>>33 ♯3>>36 ♯4>>37 ♯5>>38
第5節:新たな日常=非日常
♯1>>39 ♯2>>40



【お客さん】
水瀬 うららさん
紅蓮の流星さん
旬さん
トレモロさん


コメント・励ましの言葉をいただき、ありがとうございますっ。

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Re: 神は世界を愛さない ( No.1 )
日時: 2011/08/22 18:35
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)

この世に、得体の知れない能力を使う者がいたとして、どうしてその者が善のために力を活用すると言えよう。
もし、それが世界の為だとするなら、その力を使って世界を破滅させたい、だなんてキチガイな発言をしないだろう。
少なからず、俺は神様という存在自体が嫌いだった。




「ハァ……ハァ……ハァ……!」

暗闇の森の中を必死で汗水流して駆けている黒いパーカーを着た男。男の表情は、恐怖で歪んでおり、今にも死にそうなほど怯えながら逃げ回っていた。

「た、助けてくれぇ……!」

男はぶつぶつと声を漏らしながら、なおも森の中を走る。その森がどれだけ深く、暗く、恐ろしいところだとしても、男は関係無しに逃げ回る。
深い闇の中は、淀んでおり、勿論地面に何があるかも分からない。そのせいか、男は激しく何かに躓いて転んでしまった。

「ぐぁっ!!」

前方へ転がって行くと、木のようなものにぶち当たる。激しい痛みが全身を覆う中、その男はゆっくりと目を開けた。

「何で、逃げたの?」
「う、うわぁぁっ!!」

男の目の前には——暗闇でよくは分からないが、小さな背をした女の子の声がした。
男は、その目の前にいる小さな背をした女の子に対する恐怖心が強かったのか、腕を必死に伸ばし、己の中に眠る"能力"を発揮させた。

「喰らえぇっ!」

男の腕から、炎の弾が浮かびあがり、それは小さな背をした女の子に向けて放たれた。ボゥッ、と周りの木々が燃え、女の子を包み込んだ。
そう、この男は超能力者という世間では言われる特殊な力を持った人間だった。だが、その特殊な人間であるはずの男は、目の前の自分よりも遥かに小さい女の子を前に、怯えていたのである。それは勿論、自分に対して身の危険が迫っていることを意味する個人的な情報ゆえの症状であった。
木々が燃え、辺りが明るくなった瞬間、女の子の姿が見えたのだが——更にその男の絶望を誘った。

「貴方は、神隠しにあうべきよ」
「ぁ……ァ……!」

男はそれ以上、言葉が出なかった。その女の子は、ゆっくりと男の元へと近づいて、手を差し出した。


「貴方は、神に嫌われたんだわ」


そう呟いた瞬間、甲高い笑い声が樹海の中に響き、男の姿はそこには——既になかった。甲高い笑い声に共和するように、周りの火が一気に激しくなり、周りの木々はほとんど全てが焼き焦げた。
だが、不思議と火は伝染病のように次々と木々を犯しはせず、次第に火は無くなった。

「……ぁーあ。つまんない」

女の子は、口元を歪ませたまま、そう呟いた。
妖艶な感じさえも、ほのかに漂わせたが、それよりも先に怖気のようなものが感じられる表情であった。

「どんな能力を持ってても、所詮人間でしょ。神に逆らうなんて——ずっとずっと、早いの」

ゴキ、ゴキ、とその小柄な外見からは想像も出来ないようなおぞましい音が鳴り響き、少女は樹海の中へと消えて行く。

「ニャァー」

何も無い樹海の中、闇に紛れた猫の鳴き声が一声、響き渡った。




神は、そこにいる。
けれど、神は全てを決して愛さない。
それは、必然な世界の順序なのだ。

Re: 神は世界を愛さない ( No.2 )
日時: 2011/08/22 18:32
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)

「どうか、神様。私の息子を助けてください……!」

そんな台詞がドラマなどの世界にはよく溢れる。
人間というものは、常に誰かを慕わなくては現実を見れない。いつまでも逃避を続ける、臆病な生き物。それは人間だ。
だからいつまでも神というものを受け入れているのだろう。

「——おい。神嶋かみしま。聞いてるのか、神嶋」

俺のいつもの眠気を邪魔をする生き物、それも人間。というより、教師という役割を持つ人間。
机に突っ伏している俺は、ゆっくりと顔を上げて周りを見渡す。
今は学校に居て、なおかつ教室の中で授業をしている。高校生という身分を持った俺は、今周りの生徒と一人の教師からどこか呆れた風にも捉えられる表情で見られていた。

「……授業中だぞ?」
「あぁ、すみません。いつものことです」

俺がそう返すと、教師はどこか諦めたようにため息を吐き、国語の授業を再び再開し始めた。
皆の俺に向けた視線は、またか。という諦めの声と同様に、大体はまた同じく教師と共に授業を再開する為、教科書へと目を向き直した。
俺がこの学校というより、世間から言う呼ばれ方。それは——ダメ人間。
何故このようなあだ名がついたのか。理由は何事も無関心で、能天気で、なおかつ相手にすると疲れるだからだそうだ。
俺自身、そんなことには全く関心など持ってはいない。俺はただ、音楽と楽に生きることが出来たらそれでいいのだ。のんびりと過ごせれば、それだけで俺は幸せだ。

そうして、また机に突っ伏そうとしていると、紙屑を丸めたものがどこからか飛んで来た。その紙屑を広げると、女の子の書いた字で、

『ちゃんと授業受けろッ!』

という文章が綴られていた。
投げてきた犯人など、すぐに分かる。その予想に従ってその方へ向いてみると、髪は肩に少しかかるぐらいのショートで、前髪にヘアピンをつけ、黒い眼鏡をかけているこれも世間で言う、美少女だとか、可愛い女の子と呼ばれるだろう外見を持つ奴が俺へ投げてきた犯人だ。
そいつはどこか怒った様子で俺へと頬を膨らましている。そんな様子をされるのはこれで何回目だろうか。別に俺の暮らし生活に何ら関係はないことで、俺はそのまま居眠りを続行させようとした。

「——あっ!」
「ん? どうした、神海こうみ。いきなり声を出して」
「え!? あ、い、いえっ! あの、何でもないです」
「うん? そうか?」

神海、と呼ばれたのが俺に紙屑を投げてきた女子で、俺が再び居眠りを再開しようとしたことに対して、あの野郎と思ったのかは知らないが、それによって声を出してしまったのだろう。案の定、シンとしている授業中にはよく聞こえ、教師に声をかけられたというわけだった。
とは言っても、まるで俺と神海に対する教師の態度が違う。俺には皆諦めの声と同時になんだコイツは、という視線が送られていたのだが、神海に対しては気遣いと、大丈夫かという心配の声だった。
そんな一声だけで気遣いなどをかけてくるのも、神海の外見やら性格やらがあるせいとは思うが、別に俺的には何ら関係ないことだ。
さぁ、居眠りを再開するか。




この国語の授業が最後だったようで、終わりのチャイムが鳴ると、一斉にクラスメイト達は終わったという喜びの声を出していた。終わった、といっても俺からしたら睡眠時間と同等の価値なので、終わる終わらないなど、どっちでもよかったのだが。
それでも、俺はこのチャイムが目覚まし代わりとし、腰を上げて、よく寝たと言わんばかりに欠伸をした。

「じゃあここ、次の課題にするからなー。……それと、神嶋。ちょっと来い」

何だか今日はいつもと違って教師に呼ばれたので、少しの違和感があったが、席を立ち上がって着いて行った。
すると、教師は仁王立ちで俺を待っており、俺が来るとなると、「神嶋」と声をあげた。

「お前な。俺の授業の時は毎回毎回居眠りこきやがって。そんなに面白くないか? 俺の授業は」
「いや、そんなことないと思いますよ。寝ながらでも、生徒達の楽しそうな声が聞こえますから。夢の中からかもしれませんけどね」

正直のところ、この教師のやっている国語は、生徒達の中からすると不評だった。面白くさせようという気持ちは伝わるが、どうにも面白くないという残念な意見が多いようだった。

「はぁ……まぁ、いい。俺もまだまだ勉学不足だな」
「いえいえ、勉学はもう十分だと思いますよ。俺も先生には敵いませんから」
「……この学年、毎回トップ10には名を連ねているお前がか? 一時期、カンニングの疑いも出たが……」
「やだなぁ。俺がカンニングだなんて。まあ、居眠りばかりしてるからそう思われても仕方ないですかね。あれ、先生。顔色悪いんじゃないですか? 保健室とか、行って来たらどうです?」
「……もういい。行っていいぞ」
「失礼します」

ペコリと頭を下げて、教室の中へと戻って行く。
教師は、随分と顔を真っ赤にさせていた。顔色が悪いというか、カルシウムが足りないんじゃないかと言う方が良かったか。

ゆう!? また居眠りッ!」

教室に入るや否や、神海が、いや……神海 雪(こうみ ゆき)が俺に詰め寄ってきた。そうそう、雪の言葉を無視すると、その授業の後はみっちり怒られる。これは日常の出来事の一環だった。

「まだ眠かったから」
「理由になってないでしょっ!」

別にいいだろう、と思いながら自分の席へと向かう。憂とは、俺のことだ。俺の名前は神嶋 憂(かみしま ゆう)だからな。いや、もっと詳しく言えば——"今は、神海 憂か"。
ちなみに、雪が俺に話しかけてくると、周りの奴等が珍妙なものを見るかのような目で見てくる。なおかつ、コソコソと話し始める。

「雪も、よくあんな奴の面倒見るよね」
「顔はこの学校でも有数のイケメンだけど、あの性格はちょっとねぇ……」
「本当。女子の中であいつの面倒見れるの、雪ぐらいなんじゃない?」

という内容のものが多い。
確かに、俺が世間で見られる、言われる内容と、雪が世間で見られる、言われる内容は真逆に近い。
俺はクズ人間。雪は明るく、人気も高い、可愛い女の子。
まあ、そんなことは俺にとって何の関係もない。

「さぁ、HR始めるぞー」

担任が教室の中へ突然入ってきて、HRの合図を送った。
委員長……ていうか、雪が号令をする。ふぅ……まだ眠たいな。
そうして机に突っ伏そうとしたその瞬間、廊下の方に黒猫の姿を見た。
黒猫は、俺の目をずっと見ていた。黄色の瞳で俺を見て、その時、この黒猫は——。俺が瞬きをして、再び黒猫の方へと目を開けると——既に黒猫は姿を消していた。

「おい、神嶋! 聞いているのか、神嶋!」

そんな担任の声など、俺の耳には届きはしなかった。

Re: 神は全てを愛さない ( No.3 )
日時: 2011/08/16 20:30
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)

HRが終わると、俺は鞄を持って廊下へと出た。
だが、そこには既に黒猫の姿は無く、見渡してみてもどこにもいない。
あの黒猫が姿を現してから5分以上は優に経過してしまっているのだから、それも仕方ないことだと納得せざるを得なかった。

「憂さんやっ!」

その時、背中に衝撃が走った。後ろを振り返ってみると、そこには短髪でツンツンヘアーをしている男が笑顔で俺を見ていた。
この男は、俺の唯一の友達ともいえる、竹上 直輝(たけがみ なおき)。高校一年の頃からの付き合いで、今は二年になっているが、なおも交友は続いている。だが、クラスは違い、こうして休み時間か、昼飯時、それとも学校が終わってからしか会わないようになっていた。

「またそんなシケた面してよー。お前の笑った顔なんて見たことねぇよ」
「学校ではそういうキャラを通してんだ。テレビの前だとよく笑ってるんだけどな」
「よく言うぜ。この学校にいる生徒全員がお前の笑顔なんて見たことねぇって言うだろ。ほら、神海だって見たことないって言ってるじゃんか」

そうして竹上は顎で教室内にいる雪を示した。雪は、HRが終わった後、仲の良い友達と談笑を繰り広げていた。
凄く楽しそうに笑うその姿は、周りの男から見ると明るくて可憐で、とても素敵なんだそうだ。

「かっわいいよなぁ〜神海。あんな可愛い子に世話焼いてもらえるなんて、お前どんだけ幸せ者だよ。出来ることならお前になりてぇよ」
「やめとけ。お前と俺は違う」
「かぁ〜っ、臭い台詞だねぇ。どこで覚えた? その台詞」
「今頭に浮かんだだけだ。俺は別にお前になりたくないしな」

そうやって話している最中、突然竹上が途中まで帰ろうぜ、といって誘って来たが、俺は返事もせずにそのまま歩いて行った。

「お、おいっ! 待てって」

竹上は俺に向かって呼びかけ、俺の後を追って走って来た。




この学校は、都会の外れの方にあり、なかなかのどかな場所にあるのだが、現在の俺の家はそのまた外れにあった。
学校を出てから、竹上は俺について来て、それとなく話しを交した。音楽のことが大体を占めており、俺にも分かる話題を振ってくる辺りがこいつなりの優しさでもある。
例えそうだったとしても、俺的にはどっちでもいい。
暫く歩くと、竹上は「こっちだから、俺」と言って少し離れた。

「じゃあな、神嶋」
「気をつけて帰れよ」
「気をつけてって、俺の家、もう殆ど目の前じゃん」

竹上は指を差して自分の家を示しながら言うが、あまり聞こえない。それは俺の耳穴についているイヤホンから流れ出る音楽のせいだとは思うが、それを外そうという気もないし、竹上の話を聞こうという気にもなれない。そのまま歩いて帰宅することにした。

俺の"今日から住む家"は、遠く感じるかもしれないが、さほど遠くもない。歩いて通えるほどだ。徒歩で50分ほど。遠いとは俺は感じない。
竹上の家から少し先を進むと、そのまた外れへと出た。周りは田んぼなどがいっぱいで、日光の光が薄い水の上を反射しており、どの田んぼもキラキラと、日光で輝いていた。
部活動をしていない俺は、部活動に励んでいる生徒よりも早く帰宅するので、今の時刻は明るい天気と共に、空は青で埋め尽くしていた。
周りを見渡すと、そこには田んぼが辺りに見え、家は全く建っていない。少し遠くの方に家が住宅地のようにして建っているぐらいで、後は木々に覆われた丘の上にある神社しかない。
俺の現在の家は、まさしくその神社だった。

神社の前まで来ると、長い階段が出迎えた。段数は数え切れないほどで、ゆったりとした斜面にその階段は作られていた。
この階段を上らないと、神社には辿り着けない。

「ふぅ」

一息吐き、一歩ずつ階段を上り始めた。
どれぐらい経ったかは分からないが、汗が制服を濡らし、身体に張り付くベタつきが嫌になるほどだったが、目の前には既に数えるほどしか段数は無く、ようやく神社に着くことを予想させた。
その予想通り、登り切ると、まず大きな鳥居が出迎えてくれた。その次に、広々とした境内に、その奥には本堂が見える。
築何年になるのだろう、と考えながら、ふと本堂の少し前方辺りに、箒で落ち葉を掃いているお坊さんを見つけた。
そのお坊さんは、俺の姿に気付くと、ゆっくりとこっちに寄って来た。
ツルリとしたスキンヘアーは、まさに坊さんの証。そして何より、この坊さんらしい着物が印象的だった。

「お帰りなさい」
「あ、ただいま。あの、叔父さんはどこに?」
「本堂の方で休んでおられます」
「そうですか。分かりました、ありがとうございます」

お坊さんに頭を下げると、俺はそのまま本堂の方へと歩いて行った。
本堂の中は、大きな釈迦像があり、まるで俺を睨んでいるようだ。その様子を見て、何気無く手を合わせてお辞儀をした。
そうすると、奥の方から足音が微かに聞こえてきた。

「おぉ、来たか。荷物は全て届いてある。さぁ、入りなさい」

先ほどのお坊さんと同様に、髪型を丸坊主にしている男の人が奥から顔を見せると、笑顔で言った。
この人が"神海叔父さん"。叔父さんの後に続いて、俺は靴を脱いでから入り、ちゃんと靴を持ってくるのを忘れずに本堂へと入った。
中はさすがにこじんまりとしていたが、なかなか広い。
この裏側に、叔父さんが住む家が建っている。勿論、境内にあるわけではなく、少し平らになっている丘が続く奥の方に叔父さんの家はある。
ゆったりとしている階段なので、先ほどのどれぐらいあるのか分からない段数を誇る階段ではない。何故こちらから行かなかったのかと聞かれると、この階段は直接叔父さんの家に通じるからだ。わざわざ神社にいる叔父さんを訪ねるのに、無断で叔父さんの家から通って神社まで行くわけにも行かなかった。
緩い階段を楽々下りていくと、叔父さんの家へと着く。そうして居間へと連れられ、座らされた。

「遠かっただろう?」
「いえ、大丈夫です。こういう、のんびりした所は好きなので」
「ほぅ、最近の若者にしてはいいね。お茶でも飲みなさい」

ゆっくりとした口調で、俺の目の前に茶飲みを置いてきた。一度頭を下げると、俺はそのお茶をゆっくりと啜った。

「こういう仕事をしているが、家の食事などはお腹いっぱい食べてもいいから、固くならなくていいよ」
「あぁ、はい。ありがとうございます」

そんな感じで、言われた通りに座って、片方の耳にイヤホンを付け、音楽でも聴きながらお茶を飲んでいると、「ただいまー」という声が聞こえてきた。
そして、その帰って来た人物は、俺がいる居間へとやって来て——

「……」

固まっていた。
俺の目の前にいるのは、何を隠そう、神海 雪だ。
そう、俺は今日から雪の家に住ませてもらうことになっていた。

「よぅ」
「……よぅ、って……! お父さーんっ!?」

俺を直視して、固まった後、顔を真っ赤にして叔父さんを呼ぶ雪。
それに応じて叔父さんがはいはい、と住職の姿をしたまま二階から下りて来た。

「何で!? 何で憂がいんのっ!?」
「あれ? 言ってなかったかな? 今日から神嶋君は、神海家の一員になるんだよ」
「言ってないよっ! 有り得ないッ! 何で年頃の若い娘がいるのに同年代の男を同じ屋根の下で住まわすわけっ!?」
「それには色々わけはあるんだよ。仲良くするんだよ?」
「ちょ、ちょっと! お父さんッ!?」

雪の言葉も虚しく、叔父さんはそのまま、また二階へと上がって行った。俺はその間も茶を啜ってその様子を見ていた。雪は、壊れたロボットのような動きで頭を動かし、俺を見た後、

「あ、有り得ない……!」

そう呟いて猛ダッシュで家を飛び出して行った。
ダメ人間が居候するから、それに嫌気が差したのかもしれないな。
ふぅ、とため息を吐いて、俺はその場に寝転んだ。天井は木製で出来ている。今日から此処が俺の寝床となる。

まあ、それならそれで、面倒臭くなくていいか。

Re: 神は世界を愛さない ( No.4 )
日時: 2011/08/16 09:20
名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)

こんにちは。私、水瀬うららと申します。

タイトルに惹かれて参った次第です。
とても特徴的で、良いです!

読んでいて、一番最初に思ったことは、

『描写が……、凄い』

です。
細かく、尚且つ分りやすい文章。私も見習います!

また、各登場人物の個性もはっきりしていて……!
人物設定などに、感動しました。

個人的に、憂さんが好きです。
私と似たり寄ったりの人物なので。(笑)
※成績は除きます。

特に印象的なリアクションは、雪さんが、お父さんから、

『神嶋君は今日から神海家の一員』

となることを聞いた時の驚きです。

現実味に溢れたリアクションでした!


執筆、頑張ってください!応援しております!
では、失礼します!

Re: 神は世界を愛さない ( No.5 )
日時: 2011/08/16 20:50
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)

>>水瀬 うららさん
こんにちはー。
タイトルはもう切羽詰まりました(ぇ
目次にもありますが、スランプなもので……。特徴的、というのは気前がいいかもしれませんが、当たり障りのないぐらいのタイトルでいこうということで、こういうタイトルに……。

描写ですかー。一人称なので、他キャラの印象が薄くならないようにしたいとは考えていますが、どうにも上手くいかずに惜敗の思いで書いていますw
個人的にまだまだ目指せる到達点はあると思うので、スランプから必死に逃れるように頑張りつつ、高みを目指していきたいと考えております

前から主人公をクズ人間と呼ばれる部類の性格にしたかったので、今回挑戦できてどうかなぁという感じでしたが……。
成績を敢えてああしたのは、ただのクズ人間ではないという印象ですかねー。段々と印象付けるようにしていきたいと思ってますー。

年頃の女の子は絶対こういうリアクションはするだろうと考えて書きましたが……上手く出来ていますでしょうか?

スランプながらも、更新頑張っていきます。
応援ありがとうございますっ。何よりの元気となりますので;
コメント、ありがとうございましたっ。


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