ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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神は世界を愛さない 
日時: 2011/09/23 17:38
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: PUkG9IWJ)

何度も作品を投稿し、申し訳ございません……。書いて書いて書きまくってやります。
色々コメントとか、参照とか気にしていた所もあった自分ですが、今回もう関係無くやります。
その結果を出せるように、やってみます。
頑張ります。人並みに。



【目次】
順序の始まり(プロローグ)>>1

〜第一幕〜
第1節:神はそこにいる
♯1>>2 ♯2>>3 ♯3>>6 ♯4>>7 #5>>10
第2節:神嫌い、人間嫌い
♯1>>11 ♯2>>12 ♯3>>13 ♯4>>14 ♯5>>19
第3節:世界は暗転する
♯1>>20 ♯2>>21 ♯3>>22 ♯4>>30 ♯5>>31
第4節:異常と異能の交差
♯1>>32 ♯2>>33 ♯3>>36 ♯4>>37 ♯5>>38
第5節:新たな日常=非日常
♯1>>39 ♯2>>40



【お客さん】
水瀬 うららさん
紅蓮の流星さん
旬さん
トレモロさん


コメント・励ましの言葉をいただき、ありがとうございますっ。

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Re: 神は世界を愛さない ( No.6 )
日時: 2011/08/17 00:11
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)

そのまま夕食時まで雪は帰って来なかった。年頃の子だから、と叔父さんから言われたが、特に俺は気にもしなかった。
夕食は一つのテーブルを囲んで食べる、どこの家でも常識的な食べ方だった。俺の目の前に叔父さん。そして左側に雪がいるといった感じだ。元々この家には叔父さん、叔母さん、お姉さん、そして雪といった4人家族だったのだが、お姉さんは上京し、叔母さんは何年か前に他界。現在では叔父さんと雪の二人暮らしだったところを俺が居候として加わったという形だ。
今日の夕食は、テーブルの真中に肉じゃがが盛られた大きな皿。そしてアジの焼き魚に、煮物が人数分。十分おかずにはなる料理だった。

「おや? 雪、食べないのかい?」

叔父さんの言葉に合わせて雪を見ると、雪は箸を持ったまま微動だにせず、おかずである肉じゃがを見つめていた。その表情は、どこか強張っている。叔父さんに声をかけられても、心が奪われたかのような放心した面つき座っていた。

「そんなの……」
「え?」

叔父さんは煮物をパクリと食べ、コリコリ言わせながら雪を見る。俺は肉じゃがをご飯に盛るところだった。

「色々ダメでしょぉっ!?」
「……コリコリ……」

雪が突然テーブルを叩いて凄い剣幕で俺と叔父さんを睨むが、その食卓には叔父さんの煮物、恐らく音的にたけのこだろうか。その食感を伝える音しか、この食卓には無かった。
それから数秒後、叔父さんはたけのこを食べ終えたのか、コリコリするのを止めて、依然として立ちっぱなしの雪へと口を開いた。

「皆で一緒に食べるのは、美味しいだろう?」
「いや、だから! お父さん、根本的に間違ってるから! そろそろ、何で憂が私の家に居候することになったのか話してよっ!」
「まぁ、落ち着きなさい。憂君は、今日引っ越してきたばかりだというのに、具合が悪いだろう?」

叔父さんに言われて、渋々と雪は着席した。座った後、俺を見ていたようだったが、肉じゃがを白ご飯の上に乗せて食べ、気付かないフリをした。
ま、凄く睨んでたってのは見えたけどね。

俺は食器を片付けに台所へと行き、叔父さんが置いてくれた熱い緑茶を手にして、椅子に座り、一服することにした。
あの後、雪は自分の取り分だけを皿に分けて食べた。とはいっても、すぐに「いらない」と呟いてその場を去って行こうとする。

「もういらないのか?」
「いらない」

叔父さんが聞いても、この様子で二階へと上がって行ってしまった。
叔父さんは両肩を竦めて俺を見ると、

「あの子、いつもならもっと食べるのに」

と言って残った煮物を食べて、またコリコリと食感を楽しんでいた。
叔父さんの指摘が少しズレているとは思ったが、叔父さんのこの性格だと、非常に鈍感なように見えたので、黙って緑茶を啜ることにした。
この部屋にテレビは無いのかと聞かれれば、勿論ある。だが、叔父さんがこういう職のせいか、食事中はテレビを見ないのだそうだ。
そのことについて、叔父さんから「ごめんね」と何故か申し訳なさそうに謝られたが、別にテレビをそれほどまでに見たいとは思わないので、そんなことはないですよと言っておいた。

「あ、テレビ、付けても構わないからね」
「はい。ありがとうございます」

食事が終わって、まもなくした頃に叔父さんからテレビを付けて良いとの許可が出た。とは言っても、あまりテレビは見ない俺にとってはその許可は本当にどうでもよかった。
だが、この無音の場から叔父さんの話し相手をするというのもしんどい話だったので、テレビをやむなく付けることにした。
ブゥン、と今時なブラウン管テレビが付く。チューナーがテレビの上部に設置されており、デジタル対応にはなっているようだ。
少し経つと、映像がゆっくりと流れ出てくるようにして見えてきた。どうやら番組はニュースのようで、昨日起こった事件をアナウンサーが読み上げている。

『昨日、○○の樹海の方で、火で木々が燃えているとの通報を受け、消防隊が駆けつけたところ、火は消え去っており、木々は確かに焼け焦げてはいるが、あまりに不自然な焼け方だということです。謎の多い、不可解な事件として、詳しく調査を進める方針です……——』

「謎の多い、不可解な事件ねぇ……」

俺は茶を啜り、まだ若い新人アナウンサーが次のニュースを読み上げている顔を見つめながら、呟いた。

「最近多いからね。こういう、謎の多い事件は……南無南無……」

テレビに手を合わせている叔父さんだが、この事件は死者というものがそもそもいないので、手を合わせる意味もないとは思うのだが、敢えて触れないでおいた。

「あぁ、そうそう。憂君、風呂が沸いてるから、良かったら先に——」

叔父さんが俺に風呂を勧めている途中、突然二階から激しく下りて来る音と共に、雪が必死になって俺達の目の前に現れた。

「わ、私から入るッ!」

雪はそう言った後、俺を何故かキッと睨むと、風呂場の隣にある部屋に入り、1分もかからずにその部屋から出てくると、もう一度俺を睨んだ後、風呂場へと直行していった。
叔父さんは俺の方へと向き、菩薩のような柔らかい笑みを浮かべた後、

「お腹、まだ空いてるのかもしれないね」

俺は叔父さんの頭の構造を疑ったが、これもまた敢えて気にしない方向でいくことにした。




その後、風呂に入った俺は、二階の今日から自室となる、雪の隣の和室の真中に敷いてある布団の上で、大の字となって寝転がっていた。
畳みの匂いが鼻腔をくすぐり、和風だなぁと感じながらも無心になって天井を見つめていた。
雪は自分が風呂からあがると、栓を抜いてお湯を全て流し切り、換気扇を付けて部屋の中に自分の匂いを一切削除したようだ。そこまでしなくても、全然気にしないから良いのに、と思ったのだが、雪からするとそこらへんは死活問題に相当するのだろう、と特に気にしないようにした。

「はぁ……」

ため息を吐き、目を閉じた。
もう梅雨の時期に入る頃を知らせるように、コオロギが外で合唱しているのがよく聞こえた。蛙なんかもその中に混じっていたりもする。
ここは田舎にある家だから、周りがそんな感じなのは仕方がない。むしろ、今までにないものだったので、新鮮味があった。
ゆっくりと天井に手を伸ばし、握り締める。けれど、そこには何も無い。

「——くだらない」

いつの間にか、夢という闇の中へと、のめり込んでいった。

暗闇の中、一匹の猫が闇に紛れていた。
その猫は、黄色い目をして、毛は黒い。闇に紛れるのにピッタリな姿と言えた。
じっとその黒猫は、一点を見つめる。その先にあるのは、一軒の家。その後ろ側には、神社がある。
神社。それは人間達が神という存在を忘れないように崇められしものだとして存在している、のではないのか?
憎い。この世界が。この全てが。神を忘れた人間共が——憎い。

黒猫は、ふっと口元を歪ませ、そして——

嗤った。

Re: 神は世界を愛さない ( No.7 )
日時: 2011/08/17 13:09
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)

翌朝。
ドンドンと、扉が叩かれる音で目覚めることとなった。目覚まし時計などという、無粋なものは用意せずに、有りのままの睡眠が取りたい俺は、ただひたすら寝ていた。だが、その睡眠の朝を強制的にシャットダウンさせたのは、

「ちょっと……いつまで寝てんのよっ」

ドアを開けると、そこには雪が立っていた。既に制服姿に着替えており、学校で見るいつもの雪の姿だった。
対して俺は、先ほど起きたばかりの格好。といってもジャージを着ているから特に問題はないのだが、寝癖がなかなか酷い時もある俺は、髪を掻いたフリをして少しだけ寝相を治めた。

「寝れるところまで寝るのがモットーなんだ」
「そんな変なモットーいらないわよっ! ご飯、出来てるから」

何故かイライラした口調で雪は言っているのだが、よく見ると雪の手にはお玉が握られていた。

「もしかして、朝ご飯は雪が作ったのか?」
「ッ——!」

俺が言うと、雪は意味も分からず、顔を真っ赤にして一階へと下りて行った。
きっとあれは、恥ずかしいとかいう年頃のアレだろうか。




朝ご飯は、白ご飯にお味噌汁、漬物に昨日の残りの煮物だった。
どうやら叔父さんは煮物が好きで、特にたけのこが絶品なんだそうだ。朝ご飯も、決まってたけのこをコリコリと食べていた。
寝相などを直し、ちゃんと制服姿に着替える。正直、まだ眠い。こんなに早起きをしたのは1年生の初め頃以来な気がする。
丁度その時ぐらいかもしれない。雪と初めに出会ったのは。

「行って来まーす」
「おや? 憂君と一緒に行かないのかい?」
「行くわけないでしょっ!」

雪は叔父さんの言葉に煽られるが如く、家から飛び出して行った。
ちなみに、俺はその時まだ歯磨きをしていたところで、一緒に行くといっても、俺を大分待たなくてはいけない。
何より、年頃の娘に昨日居候したばかりの男と一緒に行けというのは、親としても少しおかしいのではないだろうかという気がしないでもなかったが、別に、俺にとってはどうでもいい。

「行って来ます」
「あぁ、憂君。今日、神社に寄ってもらえるかな? 少し、話したいことがあってね」
「はぁ、大丈夫ですが……」
「ん、なら大丈夫。あ、今日はこの家から神社に行っていいからね?」
「分かりました。それでは」

淡々とした口調で俺は言葉を交すと、靴を履き、早速外へと出た。
清清しい朝の感じが、この田舎の感じとマッチして、凄く気持ちがよかった。だが、眠いのは相変わらずで、俺はどうしてこんな早起きしているのだろう、という可笑しな疑問に辿り着いたが、特に気にしても既に後の祭りだと、学校へと向かって行った。




学校へ着くと、家を出てから40分ほど経っていた。これでも早めなのかと思いつつ、時刻は普段よりも40分は優に早かった。
前の家はちなみに、40分よりもっと速く辿り着いていたので、実際は1時間以上早起きしているという計算になる。
だからこんなにも眠いのかと、欠伸をしながら校舎へと入っていくと、そこには雪が既に友達と明るく喋りながら行く姿を見た。
俺は特に気にもした様子もなく、ただ悠然と靴を履き替えていると、

「え! あれって、神嶋君じゃない!? 何でこんな早起きなのっ!?」
「私、あの人がこんな早起きして来たの初めて見たー」

という声が雪のグループから聞こえてきた。
朝っぱらから五月蝿い連中だな、と思いながら靴を履き替えるのを終え、ふとそのグループを見ると——雪が凄く睨んでいた。

「行こう?」
「え? あ、うん。って、雪はビックリしな——」
「いいから! 行こう!」

雪はそのグループと共に、早く俺から離れたいようだった。
まあ、こうして早起きをしたのは雪のせいだから、俺にそのグループの人間が何故早起きをしたのかと聞いてくれば、俺は正直に雪のせいで、と答えただろう。
その俺の人格を予想して、雪は一刻も早く離れたのであろうと安易に予想が出来た。
ま、そこの辺りは聞かれても、後が面倒臭いので嘘を吐いた可能性が断然高いわけだが。

教室へと向かい途中、同級生から次々に驚きの声があがっていた。
この時間帯だし、全然人がいないんじゃないのかと思ったが、そんなことはない。自習したりする奴等もおり、少々は生徒がいた。
まさかこの時間に生徒がこれだけいるとは思わなかった俺は、内心驚いていた。何せ、この時間帯に来ることが今までに全然無かったから、気付かないのも分からないことはない。
教室に入った後、雪は既にいて、グループと話していたが、グループの人が再び俺の方へ向いて何か喋ろうとするのを慌てて話を切り替えて止めていた。
大変だな、あいつも。と、他人事のように見て、俺は自分の席へと着席した。
その間も、俺に対する奇妙な視線は変わらず向けられていたが、別に対して気にすることはない。

「神嶋、君」

机に突っ伏して、寝れなかった分を此処で寝ようとした俺へと突然声がかかった。
その声は、恐らく男子声。何故恐らくなのかというと、トーンが女の子ほど高いからだ。
顔を上げると、そこには美男子という中に入るぐらいの女の子みたいな顔をした男がそこに突っ立っていた。
オドオドした様子で、俺の返事を待っているようだ。確か、こいつは……

「藤瀬 旋律(ふじせ かなで)、だったな」
「あ、は、はいっ! 覚えていてくれて、光栄です……」

可愛らしく笑うその顔は、本当に女なのではないかと思うほどだった。
旋律と書いて「かなで」と呼ぶ意味の分からない名前の付け方をされている奴としても有名なのだが、その噂でからかいに来た男共がほとんど藤瀬に惚れたという事実がこの1年の間でもの凄く広まった。
確かに、そこらの女子顔負けの顔を持っている。髪はショートだが、横髪やらが長めで、髪質もサラサラの女子ヘアー。ショートにした女の子みたいになっている。
身長も女の子の標準ぐらいを取ったのかは知らないが、158cmと、高校2年生の男子としてはかなり低い身長だった。
目も大きく、睫毛もほどほどに長いし、顔もかなり整っているので、女の子だと見られがちだ。よく私服で街を歩くとナンパされるらしい。最近は男だと分かっても付け回る奴もいるので、大変困っているという。

「で、何か用?」
「あ、は、はいっ。あの、もうすぐある文化祭のことなんですけど……結局、神嶋君は何をやりたいですか?」

そこまで聞いたところで、そういえば藤瀬はこれでも委員長だったな。なら、雪は委員長じゃなくて、副委員長だったか。
最初の挨拶は藤瀬がやって、雪は後の挨拶を担当していたというわけだ。まあ、どっちでもいいんだが。
文化祭、か。俺はずっと寝ていたため、何の意見も出さず、入らずだったので困っていたようだった。

「どこでもいい。やりたいというのは無いからな」
「え、そ、それじゃあ、お化け屋敷をやるということなので、その中の……吸血男爵をやって欲しいという声があがってるんですが……」
「吸血男爵?」

まず第一にお化け屋敷をやるということすら聞いていない。聞かなかった俺が悪いのだが、勝手に吸血男爵とやらのポジションに入れようとした奴が恨めしい。

「吸血男爵は、その、か、格好良くて、その……椅子に座って、足を組んでればいいそうです」
「……お化け屋敷って、確か怖がらせるんじゃなかったか?」
「そ、そうなんですが……。その……」
「あぁ、言わなくて良いよ。大体分かるから」

多分だが、というか確実に。俺は特に人を怖がらせるということはやってくれないだろうし、協力的でもないので、俺にはただ座ってそこにいるだけの吸血男爵とやらの役割をやれという声が沢山なようだ。
格好良くて、というのはこいつなりのお世辞なのだろう。まあ、どうでもいいが、早く寝たかった俺は、早々とこの話を終わらせたかった。

「す、すみません……あの、怖がらせる役、やりたいですか?」
「いや、これでいいよ。ただ座って足組んでればいいんだろ?」
「あ、ありがとうございますっ」

その瞬間、藤瀬はにぱぁっと笑顔を見せた。とても自然で、可愛らしい女の子の笑い顔だった。
こいつが女なら、もっとモテていただろうに、と思いながら、胸にメモ帳とペンを大事そうに両手で抱えて、ペタペタと小走りで去っていく藤瀬の後ろ姿を見つめていた。

Re: 神は世界を愛さない ( No.8 )
日時: 2011/08/17 16:22
名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=10771

こんにちは。私、水瀬うららと申します。

只今、私の中で、猛烈に雪さんのお父さんの好感度が上がっております。
たけのこの『コリコリ』の件から。(笑)

たけのこ、美味しいですよね!私も好きです!

特に、
『「そんなの……」
「え?」

叔父さんは煮物をパクリと食べ、コリコリ言わせながら雪を見る。俺は肉じゃがをご飯に盛るところだった。

「色々ダメでしょぉっ!?」
「……コリコリ……」

雪が突然テーブルを叩いて凄い剣幕で俺と叔父さんを睨むが、その食卓には叔父さんの煮物、恐らく音的にたけのこだろうか。その食感を伝える音しか、この食卓には無かった。
それから数秒後、叔父さんはたけのこを食べ終えたのか、コリコリするのを止めて、依然として立ちっぱなしの雪へと口を開いた。』

この辺りが!雪さんのお父さん、マイペースですね!


新たに藤瀬さんが、登場しました!可愛い人ですね!

そして憂さんの演じる……吸血男爵。
非常に見てみたいです。

続きが、気になります!

執筆、頑張ってください!応援しております!
では、失礼します!


追記
良ければ、私の小説、『Quiet Down!!』を読んでいただきたいです!諸事情により、目次はNo.7に載せてあります!
どうぞ、よろしくお願い致します!

Re: 神は世界を愛さない ( No.9 )
日時: 2011/08/17 20:45
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)

>>水瀬 うららさん
雪のお父さんのキャラは僕も気に入っていますー。
たけのこ……というより、煮物をあまり食べないクセしてここまでたけのこを使ってしまったことをお許しくださいw
雪のお父さんは何かと物語にも関係したりするので、出てくることも多々あるとは思いますー。マイペースキャラな住職ですがすみませんw

藤瀬さんのキャラは、元から好きなキャラでしたので、今回使えて本当、嬉しいですw可愛いキャラな反面、本人自身は自分のことをどう思っているか……。そこに注目してもらえるとなお嬉しいですー。
吸血男爵って、自分でも書いててあまり想像は出来ないんですけど(ぇ
何となく格好良い感じがしたので、憂のポジションとして置いておきました。設定的に、一応イケメンの部類みたいなのでb

一応、この作品はバトルあったりするんですねー。プロローグからしてその匂いを出していたつもりですが。
題名も結構関係します。そんな風にこの作品を作れていけたらいいなぁと思っておりますっ。
応援、ありがとうございますっ!頑張らせていただきますw

PS:Quiet Down!!なら、既に読んだりしておりますw日常のお話が大好きな自分にとって、好物の作品でしたっ。影読者ながら、こそこそと読ませてもらっているので、また感想等をぶら下げてコメントしたいと思います!ありがとうございましたっ。

Re: 神は世界を愛さない ( No.10 )
日時: 2011/09/01 21:19
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: PUkG9IWJ)

「ふぁぁ……」
「お前、すっげー眠そうな」

竹上が俺の顔を覗きこんで、呆れ顔で言う。
その返事には返さず、ただ俺は頭上に広がる青空を見上げた。とても清清しいと思えるほどの気持ち良さ。そして何より、この心地よさが俺の心をなおさら癒してくれる気がして良かった。

「なぁ、竹上」
「ん……お前から話しかけてくれるなんて、珍しいな。どうした?」

竹上は凄く嬉しそうな顔をして俺を見つめてきた。屋上で食ってるからあまり人気がないって言っても、顔が少々近くて鬱陶しいな。
それにしても、何でこんなに屋上は気持ちが良いのに俺達以外には誰も人がいないのだろう。全員、家の中とかが好きなのだろうか。いや、そんなはずはないか。それなら外で野球やサッカーをやる必要など、毛頭ない。

「俺は、青空になりてぇ」
「……ぶふっ」
「何で笑うんだよ」

真剣に青空になりたいと言ったつもりなんだが、こいつの胸には響かなかったようだ。

「いや、だって! お前、高校2年生の言う台詞じゃねぇって!」
「そうか? 俺は、何せ凄く楽に過ごしたいからな。青空みたいに、清清しい気持ちでいたい」
「何も青空が清清しい気持ちでいるわけじゃないだろ。ってか、いきなりどうしたの?」
「何でもねぇ」

購買で買ったパンを一齧りして、寝転がった。
ほのかな温い風が当たり、このまま寝てしまいそうな気もする。
それから何気無い話を竹上と交わし、俺は竹上が先に戻るのを見届けた後、屋上から廊下へと出てすぐのところに自動販売機があるので、その自動販売機でコーヒーを一人、買っていた。
ガコンッ、と音が鳴り、何もない静けさの中でコーヒーを手に取る。冷たいコーヒーが手にじんわりと冷たさを伝えているのを感じ取りながら、コーヒーを開けようとしたその時、

「ニャー」

猫の鳴き声がした。校舎の中で猫が紛れ込むということ自体が聞いたこともない。大抵、こんな人の集まる場所に猫が来るかと考えつつ、俺はゆっくりと周りを見渡した。
いた。俺の目線の先には、不気味にまで黒い猫が、黄色い目で俺を見つめていた。ジーっと見つめているその瞳は、揺ぎ無く俺しか見ていない。いや、俺しか眼中にないような感じさえした。

「——何者だ、お前」

目を疑った。
猫が——喋った。
目を細め、何回か瞬きをしてもう一度猫の方へと向くと、そこに猫の姿がなかった。
俺は夢でも見たのだろうか。いや、そんなはずはない。猫の鳴き声に、さっきの声……あれは、確かに人間のような声だった。
猫が話すはずもないだろう。そんなことは分かっている。だが、確実にあの黒猫の口は動いていた。
昨日から嫌な予感がどこか蠢いていた。それは、あの廊下を見た時の出来事。黒猫はあそこにいた。
そして、俺に向けて——

「何してんの?」
「ッ!?」

声のした方へ振り向くと、そこには雪の姿があった。
訝しげな様子で俺を見つめ、「何でそんな怖い顔してるの?」と聞いてきた。
俺がもし、ここでさっき黒猫を見て、喋ってきたといっても、誰も信じないだろう。それは、この雪も例外じゃない。

「……何でもない」

ポツリ、と呟いてその場を去ろうとしたその時、

「あ、ちょっと待ってって」
「何だ?」

雪が俺の腕を握り、この場から去ることを止めさせた。
今は正直、嫌な気分だった。変なものを見たせいで、先ほどの屋上での清清しい気分が台無しだ。そのせいか、いつもの俺とは違うことが分かったのか、少し心配してそうな顔をしていた。
だが、次に雪が口を開き、言葉を話した瞬間——心臓が止まるかと思った。


「私、さっき猫の鳴き声聞いたんだけど、見なかった?」


絶句した。あの鳴き声は、雪にも聞こえていたのだ。
いや、でも此処の近くにいたのならば、聞こえなくもない。それは勿論、分かっている。だが、直感的に変な感じがしてならない。
この階の下は、食堂だ。とはいっても、何階か上ってこなくてはここまで来れない。そして、毎日といっていいほど、雪は食堂で友達と食事を取る。

「お前……どこにいた?」
「え?」
「さっきまで、どこにいたんだよ」

俺の様子がどこかおかしいと思ったのか、雪の焦った様子が手に取るようにして分かる。

「え、えっと……食堂に、いた。食堂で、ご飯食べてたら、何か分からないけど、どこからか猫の鳴き声がして、それで、直感的にこの階まで来たら……」

俺がいたわけか。
でも、猫の鳴き声はそんなに響くものなのだろうか?
校舎内で猫の鳴き声を聞いたことがないにしても、食堂なんて人が大勢いて、ガヤガヤとした雰囲気の中だ。その中で、たった一匹の猫の鳴き声が聞こえるのか。

「どういう風に聞こえた?」
「え? え、えっと……何だろう、どうしてか、分かんないけど……」

雪はわけが分からないという感じに挙動不審となっていた。それもそうか。猫の鳴き声——いや、猫と違う何かに呼び出されたと思えば、それは必然的なことになる。
実際、俺はこのような奇妙なことが前に起きたことがあった。そのことが、俺の引越しなどとも関係があるが……。

「分かった」

そう呟いて、雪には何も分からないように、とどこか願いながら言った。だが、雪の性格上、何が何だか分からないことは追求したくなるのか、

「一体、何かあったの? それに、猫は? もしかして、猫の鳴き声、憂も見たの?」

そんな感じに聞かれた。だが、俺はこの不吉な出来事がどうしても俺に関係があるような気がしてならない。
もしかすると、雪にも関係があるかもしれない。俺らしくもない不安に似た気持ちが、

「猫なんて、いなかった」

顔を背けて、そんなどうしようもない嘘を呟いてしまっていた。




その後、普通に授業があったのだが、雪はどうしても浮かない様子だった。よほどあの猫の一件が気になるのかは分からなかったが、何にしても、もし俺に関係があるとしたら……叔父さんとのことを思い返してみた。
そもそも、叔父さんから神海家に来ないかと言ってきた。雪とは、何故か隠しても無いのだが、あまり知られていない幼馴染であるため、叔父さんと俺の両親はよく仲が良かった"のだそうだ"。
一度は断ったが、叔父さんは俺の身の回りに起こることを何かと知っていた。そのことが、俺の居候をする決断を下したのだった。

学校が終わると、俺はすぐに校舎を後にしようとした。

「お、おいっ! 神嶋さん!?」
「すまん。また明日な」

竹上が俺を見つけ、途中一緒に帰りたかったのかは知らないが、声をかけてきた。だが、俺にはそんなことよりも、叔父さんと話したかった。
もしかすると、叔父さんはこのことについて、今日俺と話したかったのかもしれない。
神社で、ということは、何かあるのだろうとは思っていた。普通、話しをするということなら、家でも構わないだろう。わざわざ神社に行くというのは、職業の柄でもそれはないと思う。実際に昨日、住職の姿で家へと案内されたので、あの格好でどこにでも行けることは可能なのだろう。
つまり、神社で為すべきことがあったのではないだろうか。
全く、厄介だ。




叔父さんの家へと帰り、荷物を整え、服をとりあえず着替えてから神社へと向かった。
最初に行ったあの何段もある階段とは違い、こちらは斜面もゆったりとしていて難なく上ることが出来た。
上って行くと、裏側から叔父さんの姿が見えたので、声をかけた。

「おぉ、来たかな。さぁ、靴を脱いであがっておいで」

叔父さんに言われるがままに、俺は靴を脱いで神社の中へと入った。
前に入った雰囲気とは違い、どこか線香の匂いが漂っていた。この寺は、代々伝わる寺らしく、この地域で代々伝わる由緒正しい寺なんだそうだ。だからこんなに広いとか何とかは聞いたが、そんなことより、本題に移って欲しかったので、自分から切り出した。

「あの、叔父さん。俺に話しって、何ですか?」
「あぁ、そうだね。その為に呼び出したんだったね」

叔父さんは、ゆっくりと正座をし、「楽にしていいよ」と言われたが、胡坐をかくわけにもいかないので、叔父さん同様に正座をすることにした。
古い和室の中へと連れられ、中にはタンスなどが置いてあるぐらいで、特に何もない。一応は応接の間なんだそうだが、随分と個室だと思いつつ、俺は叔父さんの顔を見つめた。

「そうだね。まず、君を神海家に呼んだ理由は、何だったかな」
「それは……俺の身の回りに起こる出来事に対して、叔父さんが知っていたから。それに、両親がいなかったから」

今更そんなことを聞いてどうするのかと思ったが、ゆっくりと思い返していくうちに、次第に記憶が鮮明になってきた。
両親は、俺の記憶に"あまり"いない。

「君には、両親の記憶はなかったね」

そう、俺の記憶に両親は、幼い頃しかいない。いたという記憶があり、また一緒に遊んだり、幼い頃可愛がってもらったという記憶がある"のみ"だ。
その理由は、話してしまえば実に簡単だった。それは、俺が——

「両親が死んだという記憶を、失ってしまったから」

俺は、両親が死んだ記憶が喪失してしまっている。
つまり、どうして両親がこの世にいないかが、その理由が、そもそも何故いないのかが、分からない。


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