ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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それはきっと愛情じゃない。
日時: 2014/05/10 22:03
名前: 柚々 ◆jfGy6sj5PE (ID: lMBNWpUb)

多くの方ははじめまして。
ごきげんよう、です


「それはきっと愛情じゃない。」は、
が受験勉強の最中にちまちまと描いていくであろう道筋のひん曲がった青春物語です。
テーマは、シリアスというよりはライトよりなのかもしれませんが、もしかするとただの恋愛物語だったりするかもしれません。
だからって複雑・ファジー板に行けって言うような目で見ないでくだ以下略。


・「自分の名前の大切さを知る物語」になる予定。きっとみんな幸せになれる。
・コメントはのメンタルを殺傷しない程度でお願いします。
・読みやすいようにある程度の改行は施してあります。
・ネチケットは守ってね。
・少なからずグロ描写がらあります。苦手な方は気をつけてください。


*


登場人物紹介 >>1(9月29日 編成・更新)

0 冒頭は悪に占拠され >>2 >>3 >>6 >>12 >>13 >>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>23 * >>24
1 そしていつもの月曜日? >>27 >>28 >>29 >>30 >>33 >>34 >>37 >>38 >>39(8月10日 更新)


*

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Re: それはきっと愛情じゃない。 ( No.30 )
日時: 2011/10/15 00:34
名前: 柚々 ◆jfGy6sj5PE (ID: SAsWfDzl)

*


 トーマのうしろに並んで、前の扉から二年B組の教室に入る。そこには体操服を着、テニスラケットやグローブ、スパイクを手にして部活の開始時間に間に合わせる為、忙しそうに教科書などを机の中にしまいこんでいるクラスメイトが数人いる。そのうちの一人の男子が、僕とトーマを見て、手にしていた数学の教科書を床に落とした。

「まさか伊南と藤間をこんな朝早くに見かけるなんて……」
「ちっす、司馬。明日は槍でも振るって言いたいのか?」
「槍どころじゃ済まないかもしれないな」

 トーマに司馬と呼ばれた男子生徒は一人で大笑いし、テニスラケットを背にかけると、いそいそと教室から出て行く。
 そして彼と入れ違いになり、これまた、見たことも無いような女の子が教室に入ってきた。

 ちなみにこれは比喩である。

 確かに見たことがあるのだ。覚えているに決まっている。
 先週の金曜日、僕を変えてくれたとある女生徒。
 水野さんこと水野早湯さん。
 僕が人違いとしてしまうほど、彼女の容姿は明らかに変わり果てていた。

 水野さんの自慢でもある、ふわふわの天然ウェーブのかかった髪が、まるで男子のもののように短く切られていたのだ。
 
 ベリーショートと言えばいいのだろうか。今や後ろ髪がうなじに届くか届かないかの短さで、前髪も相当短く整えられている。
 まるで生まれたての赤子を思い出させるような髪形だが、決して似合っていないわけではない。むしろ顔の小さい水野さんにはぴったりと言っても過言ではないだろう。けれど新鮮味が強すぎて、転入生だと勘違いしてしまいそうだ。
 土日中にアイロンされたであろう夏服が新品に見え、更に勘違いの度合いを深めていっている気がする。
 そんな水野さんと目が合った。水野さんはほんのりと顔を赤くしながら、自分の席へ移動する。

「……おはよ」
「おはよう」
「うおー、どうしたんだよ水野。陸上部の連中みたいな頭になっちゃって——って痛い痛い痛い!」

 空気の読めない親友のむこうずねを全力で蹴った。
 そうすることによって、今現在強烈な痛みが蓄積しているである自分のすねを庇う体制に入るトーマ。それを見てくすくすと笑いを零す水野さんは、同時にトーマの言葉にも答えた。

「気分転換の一種だよ。まぁ気にするな、すぐ元の長さに戻るさ」
「気分転換ってことは……そうか、水野、おまえフラれ——ッッッ!」

 床にしゃがみ込んでいるトーマの晒された背中にかかとを落とす。
 すると言葉では表せないような雑音が返ってきた。そんなトーマに「日本語で喋れ」と更に返すと、泣き真似をされてしまった。
 さすがにけなし過ぎたかもしれないけれど謝る気は全くと言っていいほどない。トーマは空気の読めないバカだから仕方ないことだけれど、勘だけは良いから困る。暴力を与えることによってトーマの発言を強制終了させたら、水野さんはトーマが何を言いたかったのか完全に分かっているはず。どうしよう、フォローになってない。
 しかし水野さんは、極当たり前のように、笑い事の如く、


「そうよ。フラれたの」


 と言い放った。

「だから、恋心もろとも髪を切り刻んだのですっ。似合う?」
「スポーツが万能そう」

 僕は何も言うことができなかった。しかし変わりにトーマが発言してくれたので、その場の空気は固まらずに済んだけれど。
 けれど。
 僕は何も言うことができなかった。そして、まともに水野さんを見ることができなくなった。
 視線を水野さんの脚部まで落として、一度息をつく。これは気分を入れ替えたというサインでもある。僕はこのように、一回一回自分に言い聞かせるようにしないと行動ができないタイプの人間なのだ。……自分で言っておいてなんだが、どんなタイプの人間だって話だ。そんなこんなで気分を入れ替えた僕は、視線を落としたまま、教科書等を机にしまって、筆箱だけ手に持ったままでトーマに声をかけた。

「トーマ、そろそろ——」
「伊南くんってば無視しないでよー」

 返ってきたのは水野さんの言葉だった。
 無視しないでよ、だなんて、そんなの、自分をフった相手に言うような言葉じゃないだろ、水野さん。
 彼女が僕の言葉を望んでいるのなら問題ないけれど、彼女が髪を切る理由を作ったのは僕みたいなもんだし。というか僕だし。話しかけ辛いったらありゃしない。

 僕はこれでも気を使ってるんだから——ちゃんと察してくれないと困るんだけどなぁ。

「伊南くーん。意見プリーズ」

 どういう思考回路を持ってすれば、そんなことが言えるんだか僕には想像もできない。
 でも、当の本人がそこまで言うのなら……。

「伊南くん伊南くん。聞こえてますー?」
「聞こえてますよ」
「やっと反応してくれたね。ねぇどう? この髪型?」
「……あー、えっと、僕的には長い方が好きだったなーなんて、思ったり……」
「伊南くんが切らせたようなもんなのに!」
「こっちは、絶対そう言われると思ってたからシカトしてたんだよ」

 僕の気遣いも涙目だ。水野さんっていうか、女性っていうか、人間ってやつは本当に複雑なつくりをしていると思う。その人が考えている事が一切目に見えないのが最大の難点。頭の上に噴出しでも作って、その人が考えていることを映し出してくれればいいのに。そうしたらきっと人間はより深い絆を育むことが——できる訳がない。ああ、時間の無駄だった。
 頬を膨らませて僕を睨む水野さんを横目に、トーマに再び声をかける。

「よしトーマ。そろそろ行こう」
「そうだな」
「……そういえば、伊南くんとトーマが朝練に出てるのって珍しいよね。どしたの、二人揃って頭でもぶつけたの?」

 瞬間的に機嫌を直した水野さんが問いかける。本当に、何なんだこの人は……。唖然とする僕に代わり、水野さんの直球な質問にはトーマが答えてくれるようだ。


「あぁそれはな。コイツ今から、桃瀬先生に告白しに行くんだよ」
「お、お前なッ!!」


 トーマの言葉は二年B組の教室中に響き渡った訳で。
 つまりは当然水野さんの耳にも入ってしまった訳で。
 僕の叫び声はトーマの言葉をさえぎるには遅すぎて。
 つまりは当然水野さんの耳にも入ってしまった訳で。

 このとき水野さんは何を思ったのだろうか。
 僕が見た限り、彼女はその顔から表情を削除して、虚空を見つめ始めた気がする。力の抜かれた手は開かれ、肩は下がり、最後には視線さえも外された。完全に僕を拒否しているような彼女の態度に、恨めしい気持ちを持つことはなかった。今の彼女の態度は良い例だ。きっと誰もがそう思う。だってついぞ最近の話、自分をフった相手がその三日後に誰かに告白をしに行くのだ。
 悔しい気持ちを忘れて、失望するのが普通なんだ。


「へぇ、そうなんだ。伊南くん、頑張ってね」


 脱力しきった彼女の瞳は、わずかに潤んでいた。


*

Re: それはきっと愛情じゃない。 ( No.31 )
日時: 2011/10/16 10:43
名前: 朝倉疾風 (ID: QHlX.g1E)
参照: http://ameblo.jp/ix3x-luv/


絶賛テスト期間中の腐女子・朝倉です。
長らくコメントができずに、
申し訳ありません。
その分、コメントが長くなると
思われます。 申し訳ないです。


相手が恋愛対象として自分を見てくれない
辛さは、実に、実に!←
よくわかります。 ええ、わかります!
もどかしいし、何よりヤキモキしてしまうのです。

「初めてを取っちゃってスミマセンネ」
のセリフに悶えたのは、朝倉だけではないと
おもわれますな(*´∀`*)ノ
おお……はじめての顔文字!笑

失恋したから髪を切るというのは昔から
聞きますけれど、実現した人いるのかな〜と
朝倉はずっと思っていました。
いました、水野さんです!←

桃瀬先生に告白しにいくと聞いたときの
水野さんの心境を思うと、胸が潰れそうに
なります。 わかるよ、その気持ち。
好きな人が告白しに行くとか、もうものすごく
泣きたいはずです。

でも、女性のほうが精神的には強いと思うので、
我慢して、笑って見送るのです。
朝倉は基本的に、肉体的には男性、精神的には女性が
強いと思っております。 偏見かもしれないけれど。

女性の方が、お産だとか、いろいろ辛いじゃないですか。
お産のときの痛みに耐え切れる精神力を持つのは、
女性なのだと、母に聞いたことがあります。
だからでしょうか。

話が脱線しましたが、申し訳ないのです。

Re: それはきっと愛情じゃない。 ( No.32 )
日時: 2011/10/22 21:40
名前: 柚々 ◆jfGy6sj5PE (ID: SAsWfDzl)

>>朝倉疾風さん
テストお疲れ様です*^ω^)
申し訳なくないですよ! わざわざありがとうございます! 元気の源ですっ

悶えましたか笑
主人公とトーマくんの関係が濃すぎるのが問題なのかしら
これ以上彼らの関係が進行してしまわないように、がんばりますっ`・ω・)笑
おお…! 朝倉さんの顔文字、なんだかすごくかわいいく思えます…! 見れて嬉しいですー

そうですね。実際に髪を切った人っているのでしょうか
自分は恋愛している最中に限らず、邪魔だと思ったらすぐに切ってしまいます

つまり水野さんはまだ、主人公への思いを諦めていないことになります
笑って見送ろうと努力しているなのですが、やはり無意識に涙は出てしまうもの
自分にもそのような経験があった気がします。
水野さんの視点で物語を書くとすれば、スムーズに手が動きそうです笑

朝倉さんの意見には自分も同意できますよ^ω^)というかそうであってほしいです
女性の方が精神的に強いからこそ、お産をするのは女性なのでしょうね(無理のある話ですが笑)

いえいえ、コメントありがとうございました!
あまり良い文章が書けずに、少々放置気味だったのですが、朝倉さんのコメントで頑張ろうと思えました
さて、更新がんばりますぞー!!

Re: それはきっと愛情じゃない。 ( No.33 )
日時: 2011/10/22 22:36
名前: 柚々 ◆jfGy6sj5PE (ID: SAsWfDzl)

*


 別にトーマを攻める気はない。別に彼は口を滑らせた訳ではない、むしろ彼は真実を言ったのだから、その時点で彼にかけられるのは罪ではない。しかし当の本人は自分の発言がいけなかったのだと思い込み、気分を落としているようだった。滅多に目撃することのないトーマの落ち込んだ表情は、僕に罪悪感を抱かせている。
 全てが空回りしてしまった。
 トーマとは距離を作ってしまうし、水野さんには僕の存在を拒否されてしまったし。誰かに告白をするというのは、同時に何かを失わなければならないものなのだろうか。考えても答えはどうせ見つからないのだろうが、思えば、答えというものはいつでもそう簡単に姿を見せてくれないものだ。つまりは自分で考えろと言うことなのだろうか。しかし——理解しかねる。答えがないだけにね。

「そんな落ち込むなよ、トーマ。隣にいて面倒くさい」

 うつむき加減で廊下を歩くトーマに励ましの声をかけてやる。

「落ち込んでいる人に対してその毒舌はないだろ……」
「いいから元気出せっつってんだよ」
「お前の励まし方は完全に間違ってる」

 水野さんとは教室で別れ、僕はトーマと美術室へ向かっている最中だ。
 朝部活が始まってから十分が経過しているところだが、優しい優しい桃瀬先生ならば許してくれることだろう——というのはただの推測だが、毎回朝部活をサボり続けている僕とトーマが美術室に顔を出せば、まずは喜んでくれるに違いない。
 階段を降りるともうそこは校舎の一階で、そこからすぐに左を向くと美術室は姿を現す。美術室の扉は閉まってはいるが、多くの人気が感じられた。筆を洗っているであろう水の音がわずかながら聞こえるからだ。
 そして美術室の扉の前で立ち止まる。気分の入れ替えとして、小さく深呼吸をしようとしたが、

「わっ……」

 扉が急に開いた。
 それによって、美術室から出ようとしていた人と目があった。

「あ……」

 目の前に佇んでいるのは世にも美しい女性。
 白い肌に赤い唇。
 大きな瞳に長いまつげ。
 ふんわりとした膝までの黒いスカートに、淡いピンク色のカッターシャツ。
 左の耳の下で纏め上げている長い艶やかな黒髪が微かに揺れ、それによって甘い香りが鼻をくすぐった。
 彼女の顔と僕の顔にある距離は、せいぜい三センチくらいだろう。

「あれ、誠くんだ」
「そ、そうです。伊南です」
「やっと部活に参加してくれる気になったのかな? 良かった、卒業するまでずっと来ないのかと思ってたから」
「それはないですよ。今日からまたお願いします」
「もちろんっ。さて、好きな席に着いてて。すぐにデッサンの準備を持ってくるから」
「はい、分かりました」
「今日の誠くんは聞き分けがいいなぁ。どうしたの?」

 彼女は微笑む。すると瞬間的に、僕の鼓動は加速を始めた。
 彼女の名前は桃瀬璃央。
 僕の好きな人。
 僕は今日、彼女に自分の熱い思いを伝える。


*

Re: それはきっと愛情じゃない。 ( No.34 )
日時: 2011/10/24 17:19
名前: 朝倉疾風 (ID: QHlX.g1E)
参照: http://ameblo.jp/ix3x-luv/ 絶賛熱なう


え……トーマさんたちの関係は
進行しないのですか?
……しょぼん(´・ω・`)

このpcは、変換するとすぐに顔文字が
出るので使いやすいですっ!

やっぱり女性のほうが精神的に強いですよねっ



決して悪気はなかったのだけれど、やっぱり
責任というものは背負ってしまうものです。
それをひどく気にして、距離を作ってしまう
ことも日常ではよくあること。

告白は勇気を生み出すけれど、時には友達が
ライバルになることもあるし、その勇気が
成就しないこともある。 そう考えれば、失う
ものも多々ありますよね…。

「面倒くさい」が励ましの言葉だなんて、
よっぽどツンデrの要素が混じっているのですね!!←
トーマくんからすれば、毒舌すぎるでしょうが…。

そして桃瀬先生キタ━━━(゜∀゜)━━━!!

口調からして無自覚に生徒を虜にさせる小悪魔系
だと朝倉は判断しました!!←
漫画とかにはいるけれど、あまり日常では見ない
タイプですよね……。
桃瀬先生みたいな人が保健室の先生だったら、
男子がわざとケガをして保健室にいきそうです!!
朝倉もいきます!!←

伊南くんの告白シーンに期待大ですねえ…。
でも朝倉としては水野さんのこともあるし……。
悩みます('_')

……長いコメントですが、いつものことです。
読むのが面倒でしょうが、いつものことです←


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