ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 消失病 Disappearance【人気投票】
- 日時: 2011/11/11 22:02
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: TtH9.zpr)
- 参照: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%82%AA%E3%83%B3
URL……自己紹介((
改めて考えると、親子が出てくる話ははじめて書きます
コーヒーやミルクティーが手放せない今日この頃
カフェインに激しく依存している……
暮来月 夜道に改名しました
12月の夜道はネオンの明かりだらけということで
リア充のお祭りは好きではありませんが(苦笑)
読みは、くらづき よみち・やどう どちらでも
判別はトリップでお願いします
毎度の事ですが、引くほどグロテスクな表現が多いです
11/11:しばらく、更新を停止して読む側に回りたいと思います
>>32 人気投票用紙
序章
〆>>1〆
第一章『不死鳥の雛』
〆>>4§>>6§>>8-10§>>14-22〆
第二章『嘘吐きな道化の肖像』
〆>>24-31〆
- Re: 消失病 Disappearance ( No.18 )
- 日時: 2011/10/24 20:24
- 名前: 暮来月 夜道 ◆kaIJiHXrg2 (ID: I69Bg0jY)
「あー……」
シグマは咳払いをすると、呆れたような目で、アリスに向かった。
「まさかとは思うが、まさか……俺をこの程度の事で殺せたと思ったか?」
はい、思いました。
もう、余裕でペチャンコになったと思いました。
そう、言いたかった。
自分に対して害を及ぼしては居ないとはいえ、あの威圧は凄まじい。 危険人物であることに変わりは無く、地上を地獄にすると豪語する人間なのだが。 今一、実感がわかないのだ。
「いや、無理じゃない? 世界征服企むような人が、まさかその程度で殺されるわけ無いじゃん」
「そうか、そうだな。 ハハッ……」
シグマは高笑いと途中で止めると、次の瞬間。 液体窒素の中に放り込まれたような感覚に、アリスは襲われた。
……寒い。 日が出ているのに、不思議なほど。
「それは俺に、喧嘩を売ったと言う事か? ……いい度胸だ」
シグマは、その手にナイフを握る。
対するアリスは、武器など一切持っていない。 丸腰で、少なくともあの二人の言葉からはシグマの実力の高さが窺える。
そして、アリスの決定的弱点。 悪魔にして、魔術を扱えないと言う事も相まって、この上ない窮地に立たされたことは言わずとも本人は感じ取っている。
殺さなければ、殺される。 逃げるなど、通用しない相手だ。
だから殺せるかと言えば、無謀もいいところだ。 どの道私は、ここで殺される。
「死すがいい、雛よ」
シグマが動く。 一瞬の内に空間を飛び越え、アリスへと迫る。
鼓動が早まり、瞳孔が開く。 眼球のピントが、眼前のシグマへと合わせられる。
避けようと思えば、避けられるかもしれない。
そんな安易な考えで動いたのが、逆にアリスに深い傷を負わせた。
ナイフが左肩に突き刺さり、鮮血とともに黒い靄のようなものが噴出したと同時。 視界が乱れ、足の力が抜ける。
身体はその身にかかる重力に逆らえず、地面に膝を突く。
「ったーく、少し遅かったようだ。 シグマ君、君は恥ずかしくないのかい? そんな丸腰の女の子をナイフで突き刺すなんてさ」
それが、やって来た。
アルトの音域の声に、友人に話しかけるようなふざけた感じ。
そして、アリスの視界に“彼”が映る。 白い上着に、黒いジーンズ。 そして、見れば見るほど、それはピエロと言うピエロ。
言われずとも、理解した。 彼が話しにあった【道化】なのだろう。
- Re: 消失病 Disappearance ( No.19 )
- 日時: 2011/10/24 20:52
- 名前: 暮来月 夜道 ◆kaIJiHXrg2 (ID: I69Bg0jY)
「貴様……。 俺に、今更噛み付くか!」
シグマが、【道化】に吼えた。
だが、【道化】は気おされることなくその仮面の向こうから。 シグマを見据えている。
【道化】はまるで相手の反応を楽しむように。 手を叩くその仕草に、シグマは警戒する。
手を叩いた中からは、白い鳩が数羽飛び出すだけで何事も無い。
「君が、ボクをボクにしたんだろう? 早速使わせてもらうよ」
【道化】が、動く。
ゆっくりと地面を蹴ると、まるで重力を感じていないかのように宙を舞い、何処からともなく取り出したナイフでシグマを目掛ける。
が、シグマは右手を前に突き出すと同時。 時を戻して【道化】の接近を許そうとはしない。
だが、時を戻したその直後。 シグマは自らの腕の異変に気付いた。
「大分、牙を研いで居ないとお見受けするよ」
【道化】はシグマの真後ろから。 ダガーをその肩に突き刺していた。
それを見て、シグマは怒りの表情を見せるがそれは2秒後。 何事も無かったかのように収まった。
再び時を巻き戻し、傷を受けた時を消去したのだ。
「ソルテュール・ピエロか、成程な。 油断していた」
「君が油断しているのはいつものことだろ?」
【道化】はシグマを警戒しつつも、アリスに近寄ると空を掴むように手を握ると、煙とともにシルクハットを被ったピエロとも取れる飴細工を、アリスに手渡した。
どう反応すればいいのやら、【道化】はアリスの反応を楽しんだ後、再びシグマに視線を戻す。
「君の能力は、有効範囲が30メートルと狭い。 ボクもクリアシックの再発のリスクが無ければトドメを刺すところだけどさ」
「クリアシック?」
「消失病のことさ。 ボクたちは、そう呼んでる。 この辺でお開きにしない?」
アリスの問いに、道化が答えた。
【道化】の提案は、シグマを挑発しているのがよく分かる。
だが、実際。 シグマ以上の高見から【道化】はシグマを見下ろしている。 ダガーで突き刺すのは肩ではなく心臓を狙っていたとしたら?
能力者の能力は、死後は発動しない。
つまり、そこで終わりなのだ。 それを知ってか知らずか、【道化】はシグマを殺すことを躊躇っている。
「君も分かっているはずだ。 ボクほどではないにしろ、魔力を受け入れたその肉体もそろそろ限界が近い。 寿命で死ぬか、消失するか。 いつだったか教えてくれた人が居てさ。 命を張っても、命を張った相手が一人残るなら、一緒に死んでやりなさいって。 一人ほど、辛いものは無いってね」
アリスには【道化】が、仮面の下で冷笑した気がした。
彼から漂うこのえも言えぬ悪寒は、何だろう?
「どうする? 君一人今死ぬのも嫌だろう? ボクだって、今ここで一人死ぬのはごめんだよ」
- Re: 消失病 Disappearance ( No.20 )
- 日時: 2011/10/25 19:38
- 名前: 暮来月 夜道 ◆kaIJiHXrg2 (ID: I69Bg0jY)
「……俺が、貴様ごときに殺される。 だと?」
シグマが、口を開く。 その問いに、
「ああ、そうだ」
間髪居れず、【道化】は答える。
確かに、道化の方が、実力は上。 真っ向からシグマの殺せるような相手ではない。
「別に、好意を踏みにじられたりするのは慣れてるし。 意見を無視されるのも慣れてるから良いんだけどさ。 今回は、君のためを思ってだ。 さて、どうする?」
【道化】は、その手にダガーを構える。
シグマはそれを見て、大きくため息をついた。
「ああ、そうだな。 クソッ、まさか貴様が来るとは思わなかったよソルテュールピエロ。 今は、どうやら孤独ではないようだが……」
「いいや、ボクはいつでも孤独さ。 ボクには、“同じ”が居ないからね」
【道化】はダガーを手の中に消し去ると、シグマに向かう。
「まあ、良いだろう。 次はもう少し、まともな戦力を手に入れてから挑むとしよう」
シグマは、その言葉と同時。 その場から、霧を書くようにして消え去った。
【道化】はそれを確認し、アリスに視線を戻す。
アリスも、今時分が生きている事をようやくここで理解した。
二人の戦闘を眺めるばかりで、自分の存在を忘れる。 それ程、異常な二人の存在感。
一体、この男は何者……?
「さーて、アリス。 多分、見た目から分かると思うがボクはあの二人が言っていた【道化】だよ。 コードネームだからね、本名は教えるわけには行かないな。 ま、それも偽名で……ボクには本当の名前が無かったりするんだけどさ」
彼の言葉のトーンが、下がったような気がした。
「そんな事より、見事にしてやられたね。 扉が……粉々だ」
【道化】は扉の破片を拾い上げると、それを物珍しそうにまじまじと見つめ、ポケットへと押し込んだ。
再びそこで、アリスへと視線を戻す。
「どうしたんだい? 何か喋ってくれないと、寂しいじゃないか。 兎は、寂しいと死んじゃうんだぜ?」
【道化】はその場で、手を頭に持ってくると兎の耳のようにヒョコヒョコと動かしてみせる。
だが、アリスにはそれも恐怖の対象でしかない。 足がすくんで、立ち上がれない。 立ち上がれば、今すぐにでもこの場から逃げてしまいたい。
冷や汗をかくことも、一切無いこの悪寒は、殆ど彼が発しているのだ。 今は友好的だが、気まぐれなようだし……。
「ま、いいや。 船へ戻ろう。 話はその後だ」
【道化】はアリスの手を握ると、まるで重さを感じていないかのようにアリスをもあち挙げた。
アリスが一人で立てることを確認すると、扉の瓦礫の中に倒れていた小さな赤い体毛のモルモットのような生き物を頭に乗せ、アリスの手を掴み、教会を後にした。
- Re: 消失病 Disappearance ( No.21 )
- 日時: 2011/10/28 22:32
- 名前: 暮来月 夜道 ◆kaIJiHXrg2 (ID: I69Bg0jY)
港につけた船の船室を、誰かがノックしている。 時間的に、アリスが扉を開放して戻ってきたのだろう。
キャンパスに筆を走らせるのを、彼女は止めた。
筆とパレットナイフを座っていた椅子の脇に立てかけ、との方へと向かう。
「何でだ! 何でお前がここに居る!」
だが、彼女の先にその訪問者に顔を合わせた彼が、吼える。
戸口には、アリスを抱えている【道化】が。 そして、ファウストは今にも体中の血管が切れるのではないかと言う勢いで怒鳴り散らしていた。
「まー、ボクにも喋らせてよ。 ファウストくん、君はどうも毎回会う度に血の気が多いなぁ……」
「五月蝿い! お前が、お前さえ居なければ! お前が、殺したんだ! 俺の……恩人を……!」
ファウストはその場で、拳を握るが、それを制する。
まさかとは思うが、何故?
「何で、君がここに?」
フィオがようやく、その口を開いた。
「いや、シグマが教会に居てね。 流石に、アリス一人じゃマズイからボクが無理して駆けつけたって訳さ。 さて、医務室へ運んでやってくれよ。 アリスは肩をやられてる」
【道化】が肩からアリスを降ろし、ファウストへと引き渡した。
重傷のアリスに対し、【道化】は不思議なほどピンピンしている。 ファウストがアリスを抱きかかえ、医務室へ連れて行ったことを確認すると、【道化】はポケットから扉の破片を取り出し、フィオに手渡した。
これが、何を意味するのかなど、聞かずとも分かる。
「まさか……あの男が教会に?」
「そう、そのまさかさ。 あ、それとコイツはどうすればよかったかな? アリスと同じで、医務室へ連れて行ったほうがよかったかい?」
【道化】は破片を取り出したのとは反対のポケットから、紅い体毛の尻尾の長いネズミ染みた生物をフィオに手渡した。
これは……、
「……ミゲルがやられたの?」
「ああ、そうだよ。 あの男、人間を辞めた様だったよ。 多分、今のボクより強い。 ま、今回は余裕見せてハッタリでどうにかできたけど。 次は、多分殺されるよ? アリスも、ボクも」
【道化】の言葉に、フィオは自信を失ったかのようにうつむいた。
* * *
突然、目が覚めた。
見慣れない部屋の中、まるで彼女は危険なものが目の前に居るかのような勢いで上半身を起こすが、それはそこには居ない。 安堵とともに、彼女の方が痛みを訴えた。 彼女は顔をしかめ、その痛みが通り過ぎるのを待った。
見回した限り、壁を覆い隠すように並んだ薬棚と、アリスのほかに人の寝られそうなベッドが2つ。 そして、煙を吐き出す葉巻をくわえた人体骨格が、白衣を身にまとい椅子に座っていた。
部屋が揺れている。 どうやら、あの船の中らしい。
右手で頬杖をつき、丁度『考える人』の図と言えばいいのだろうか?
くわえた葉巻から立ち上る煙が、骨の隙間を縫って目から噴出すその様は、奇妙この上ない。
一体、何だ? この骸骨は……。
アリスは立ち上がると、後ろからその骸骨へと歩み寄った。
動きはない。 ただの人体骨格を、そこにおいているだけなのか……?
横から、アリスは骸骨のくわえている葉巻を口から引き抜く。
動きは……
「オイ、何するんだよ?」
骸骨は、突如こちらを向いた。
思わず、アリスは手に持っていた葉巻を投げ飛ばすが、
「俺の……葉巻ィィィ!」
骸骨は俊敏な動きで葉巻が船室の床に触れる直前。 その掌にそれを握った。
直後、骸骨は慌ててその葉巻を上に放り投げる。
「あちィ!」
言葉が、出てこない。
ゾンビであれば、脳天を銃で打ち抜けばいいかもしれない。 だが、突如動き出した骨に対応する方法は、何かあったっけ?
- Re: 消失病 Disappearance ( No.22 )
- 日時: 2011/10/29 15:19
- 名前: 暮来月 夜道 ◆kaIJiHXrg2 (ID: I69Bg0jY)
動き出した骸骨に対する反応。
動く骸骨イコール、お化け? いや、西方の人間は死神だといっていたっけ? けれど、死神ってアレだよね?
白衣じゃなくてフードの付いたマントで、大鎌持ってるってやつ。
そのイメージから行くと、またずいぶん困る姿。 白衣の死神?
何だ、それ……。
そういえば、そもそも人と話したことはあまり無かったっけ?
クロアさんとは喋っていたけど、他の人があそこに来るのは稀だったし、フィオさんとは面識もあった。 ファウストに関しては、私も呼び捨てで言いと思える。 フィオさんの下僕みたいな勢いだし。
だけど、これは一体? 誰が紹介したわけでもなく、名前も分からなければ、突如動き出すとも思わなかったそれが動いている。
どうすればいい?
* * *
「で、結局アリソンに頼るのかい? 君達も、いい加減自分で行動を起こせよ」
【道化】は仏頂面のファウストに面と向かって言い放つ。 それも、ミルクティーを飲み干しながら。 両手を背で繋ぐという奇妙な格好で。
明らかに、ふざけているか挑発している。 そう取られても、不思議ではない姿勢。
確かに、この男の行動は奇妙な【道化】だ。
「君に勝てない相手なら、なお更アリソンに頼らないと駄目だよ? シグマは危険だし、シグマを殺さないと収拾は付かない」
フィオが最もな意見を述べる。
実際、シグマと言う人間は危険人物であり、実害を及ぼしている。
早く対処しなければ、また奇妙な能力を身に着けかねない。
「んー……フィオちゃん。 君もやっぱり、アリスを過小評価しすぎてるよ。 アリスは、後数時間で15歳になる。 アリソンは、アリスが15歳になるまで呪術を掛けてる。 もう直ぐそれが解けて、アリスは唯一無二の絶対的な力を手に入れるからね。 鬼とフェネクスのハーフなんて、聞いたことがない」
【道化】の言葉に、フィオは驚いたような顔をするが、道化はそれを無視した。
「まさか、嘘だろ? アリスには、大した魔力がないって……」
「君の主が言ってたのかい? そんなわけないだろう、龍を喰らった鬼と、不死の鳥の子供が。 まさか、魔力を持たないはずがないだろう?」
【道化】の言葉に、ファウストも黙った。
確かに、そうだ。 アリスは、今まで一度も魔術を扱った事がない。 魔力が少なく、魔術に転用できないのだ。
だが、実際のところを言えば親の力を、受け継がない方が奇妙だと言える。
龍を喰った鬼と、不死鳥。 両者ともに、莫大な魔力を有した化け物。 魔力が枯渇する理由など何処にもない。
もっと、早くに気付いてもいいはずだったのだ。 アリスは、魔力を押さえ込んでいると。
「そうだな、それを聞いたのはボクだけだったし。 何より、アリスが15歳になるまで周囲には伏せておくように、念を押されててね」
【道化】は、仮面に手を掛けると、それを顔から引き剥がした。
癖のある、赤毛を掻き毟り、真紅の瞳が、周囲を見回した。
仮面をとる前と雰囲気に変わりは無く、そこに立っていた人物。 それは紛れもなく、クロア・ディナイアルだった。
「何せ、ボクはアリスの守護者だからね。 君たちとは、別任務を彼女から命じられてたのさ」
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