ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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消失病 Disappearance【人気投票】
日時: 2011/11/11 22:02
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: TtH9.zpr)
参照: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%82%AA%E3%83%B3

URL……自己紹介((

 改めて考えると、親子が出てくる話ははじめて書きます
コーヒーやミルクティーが手放せない今日この頃
カフェインに激しく依存している……
暮来月 夜道に改名しました
12月の夜道はネオンの明かりだらけということで
リア充のお祭りは好きではありませんが(苦笑)
読みは、くらづき よみち・やどう どちらでも
判別はトリップでお願いします

毎度の事ですが、引くほどグロテスクな表現が多いです

11/11:しばらく、更新を停止して読む側に回りたいと思います

>>32  人気投票用紙

 序章
>>1

 第一章『不死鳥の雛』
>>4§>>6§>>8-10§>>14-22

 第二章『嘘吐きな道化の肖像』
>>24-31

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Re: 消失病 Disappearance  ( No.13 )
日時: 2011/10/20 20:26
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: QwdVpVQe)

消失病です
はい、私はぜんまいが時々切れます
前々から考えていた魔力の許容オーバーのペナルティーなのですが、今回はそれを誇張してみました
あ、私に才能なんてあるわけないじゃないですかw
文章に規則性を持たせると、案外上手く見えるものです((


話は変わるのですが、最近ダブルアーツと言う漫画を見つけまして
読んで見たら消失病とソックリなトロイなる病気がw
また何かと被ってしまった……orz

一応、この話は出来れば今月中に完結させるつもりです^^
今これとは別に『ゼンマイ仕掛けの彼女』と言う話を思いついて早く書きたいと言う状態なので
これもこれで、前書いていた古式騎士のコメディ多目のシリアス小説なんですけどもw
執筆、がんばります。 カフェイン切れないようにしながら((

Re: 消失病 Disappearance  ( No.14 )
日時: 2011/10/20 20:39
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: QwdVpVQe)

 何があった? その質問ほど、今のアリスが答えに困る質問は無い。
 何故なら、アリス自身。 何があったのかわからないのだ。
 クロアの元に来たシグマという男の事も。 あの場所がクロアを閉じ込めている空間だの、何だのと。 今までに知らなかった事を一辺に聞いた上で何があったかの質問以上に答えに困る質問は無かったのだ。

 「クロアさんのところに、シグマって言う男の人が来た」

 必然、この答えに行き着く。 だが、それだけで十分だったらしい。
 フィオは驚いたような顔をし、ファウストは「やはりな」とでも言いたげに頭を掻いた。
 どうやら、二人ともそのシグマという男のことを知っているらしく、シグマという男に関しては大して驚きもしていない。 そこにシグマが“居た”という事に驚いているように取れる。

 「シグマって、何者なの?」

 「……悪者だ。 それも、筋金入りの悪Loveな奴。 レベルゼロ事件のときは能力者以外の一般人を皆殺しにして能力者だけの帝国を作ろうとした、気違いだけどな。 世界征服とか、至極真面目に企てて、それを実行に移す力を持っていただけ性質が悪い」

 ファウストが呆れたように説明する。
 どうやら、危険思想人物であるという事はよく分かった。
 それに、ファウストは言葉を続ける。

 「一応、アリソンが事件終結直後に事件中に殺されたが、能力の自動発動で蘇生していたのを見つけて封印した。 レベルゼロ事件のときにクロアの部下についていた男だ。 正直、人間の能力者だと思ってたんだがな……。 まさか、悪魔の仕掛けた封印を自力で解くとは思わなかったな」

 ファウストは呆れるとも感心しているとも取れる表情を浮かべている。 が、彼の敵ではないのだろう。
 不敵な笑みと、爪を出し入れする動作はまるで目の前の獲物を遊ぶ猫のようにも見える。

 「アリス、君の力は未だ発現前の状態だけど……発現すればそれこそ危険なんだ。 消失病の性質を操る事もできれば、消得るのではない死に方をさせる事だって出来る。 シグマ好みに自爆させたりだって、可能なんだ。 何せ君は……人間に魔力を与えた不死鳥の雛なんだから」

 不死鳥の雛……初めて聞く単語だ。 まさか、私が不死鳥だって?

 「そんな馬鹿なことあるわけ無いよ」

 「いや、事実だ受け入れろ」

 ファウストが間髪を入れずアリスに言い放つ。
 そして、戸口に寄りかかるのを止め、アリスに歩み寄った。

 「俺やフィオがまだ生きているのも、不死鳥の力の成した事だ。 不死鳥が死ねば、俺たちも死ぬ。 つまりだ、アリス。 お前が他殺されればその瞬間に、俺たちは全く同じ傷の痛みを訴え死ぬんだ。 お前を守るのは、そんだけの理由だ」

 ファウストが呆れたように言うが、その横でフィオは更に呆れたような顔でファウストを注視している。
 ファウストの言葉が終わると、

 「何を言うかね、ファウスト。 私は船長に内心最も敬服していたのは君だと思ったが? ヴァン以上に、君は彼女を慕っていたし、それを悟られないよう反抗もしていたし。 アリスのことも、実際は相当大切に思っていると思うけど? それともあれか、ツンデレ?」

 「ちげえよ! ま、それ以前にやるべき事があるだろ? 【天才】と【魔王】に連絡を入れて、【騎士】をアリスの護衛に付かせてはどうだ?」

 ファウストの提案に、フィオは黙って首を横に振る。
 呆れたような目で、フィオはファウストを見ると、ファウストは気に入らなさそうにそっぽを向いた。

 「君は何を考えているの? 【天才】はともかく【魔王】がアリスの見方に回るわけが無いでしょ? むしろ、アリスを殺そうとするよ。 【騎士】のアイデアは確かに良いかもしれないけれど、【騎士】は戦う事を目的としている。 つまり、危険でも逃げない。 それに、今のシグマの力は未知数。 【騎士】は私達よりも弱いし、下手をすれば今の力が開花しかけのアリスのほうが強いかもしれない。 だから、【騎士】の護衛も当然却下。 私は【道化】をもう一度アリスに付かせた方が良いと思う。 敵にしろ、信用できる。 それに、今まで結界に隠れてたとはいえアリスを13年間守ってきたのは事実。 彼の封印を解くべきじゃない?」

 フィオの提案に、ファウストはあからさまに『却下』と言いたげな顔を向け、

 「お前がそういうのであれば、俺の考えは撤回しよう。 だが、これだけは採用しろ。 【道化】をアリスの護衛につけるのは何と言おうと反対する。 奴は……アリソンを殺した張本人だからな!」

 ファウストが、怒りを露にしてフィオに対して怒鳴り散らす。
 気になるが、この二人の会話に踏み込んではいけない。 
 私の勘が、そう告げていた。

Re: 消失病 Disappearance  ( No.15 )
日時: 2011/10/20 20:59
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: QwdVpVQe)

 「うろたえすぎだよ、ファウスト。 彼はこちらの味方だし、現にアリスを13年も守った。 私なら、13年間の内に殺してるよ」

 フィオの答えにファウストは黙るが、まだ何か言いたげな顔をしている。 彼は息を吸い込み、頭に上った血が失せ、冷静に。
 口を開いた。

 「俺は、【道化】だけは信用できない」

 「そうかい、ならいい。 私が全てを手配する」

 ペンを握ったフィオの手を、戸に寄りかかっていたはずのファウストが。 風とともにその黒い手袋をはめた手で制する。

 「邪魔をするの?」

 「いや、まだ俺の意見はある。 取り敢えず、全部聞いてからにしろ」

 ファウストの言葉に、フィオは呆れ混じりにため息をついた。

 「何か、私を唸らせる素晴らしいアイデアでも?」

 「いや、素晴らしいとは言いがたいが……ものとしては納得するはずだ」

 間髪を入れず、ファウストが話し始めた。

 「俺としては、【道化】だけはアリスに近づけたくない。 そこで、それ以上の実力者がいれば問題ないんだろう?」

 「ああ、そうだね」

 「だと言うのなら、俺か、お前が護衛をすればいい」

 ファウストの提案に、フィオは言葉を失った。 フィオからすれば、自分のやるべき事ではない。 
 違う部分に、似た形の歯車を代用して時計を動かそうとしているようなものだ。 無理しかない。

 「無茶言わないでよ、私にも君にもやるべき仕事がある。 それに、アリスは急に襲い掛かってきた君を信用してない。 私は勿論御免だよ。 で、それが君の案かい?」

 「いいや、これに対してはそう来るだろう。 で、後残った人員は誰だ? この船で、戦闘能力のありそうな奴は?」

 ファウストの言葉に、フィオはまるで巨大ゴキブリでも見るかのようにファウストに顔を向けた。
 恐らく、ファウストの提案がフィオに勝ったのだろう。

 「まさか……」

 「ああ、そのまさかだ。 ミゲルをアリスに付ければいい。 そうすれば、【道化】をアリスに付ける必要も無くなる。 それに、元はと言えばミゲルは不死鳥の……侯爵の部下に当たる階級を持ってる。 確かにむかつくガキだが、これ以上の適任は居ないだろ?」

 ファウストは得意げに鼻を鳴らした。

Re: 消失病 Disappearance  ( No.16 )
日時: 2011/10/22 13:26
名前: 暮来月 夜道 ◆kaIJiHXrg2 (ID: I69Bg0jY)

 『昔も戦争、また……戦争。 どうやらボクは、つくづく戦争とは切っても切れない関係にあるらしいね』

 川のせせらぎを感じながら、道化は静かに呟いた。
 その手には、銀白色に輝く鎖が握られていた。


 「さて、アリス。 私のできるのはここまでだ、君はあの教会に行って扉を解放すればいい。 あの教会は、不死鳥の聖地だから君が許可しない限り敵は追ってこられない」

 フィオが浅瀬に乗り上げた船の甲板の上で説明を続けた。
 入り江の中の、小さな漁港。 アーレインと呼ばれる町の、丘にある教会。 そこを指差している。

 「見た目は半壊した廃墟だけど、内装は大丈夫だよ。 無傷で残ってる。 君はその教会に祭られている扉を開放すればいい。 魔力を人間界から全て回収できる。 それが終われば君が狙われる理由もなくなるんだ」

 何だろう、簡単に事が運べ過ぎている気がする。
 前不死鳥が物事の対策で準備をしたとはいえ……順調すぎて気味が悪い。 どこか、欠落しているのではないかと言うそんな胸騒ぎ。

 「それだけで、大丈夫なの?」

 「ああ、問題ない。 扉の開放は不死鳥にしか出来ない事だ、俺たちが行っても扉は重すぎてびくともしない」


 ファウストは深刻な目つきで、アリスを。 そして、その横に居た『不安要素』に目をやった。
 そこには、アリスより小さな髪の逆立った赤毛の少年が、アリスと手を繋いでいるのである。
 そう、ミゲルとは、何を隠そう彼のことだ。 こんな子供に護衛などできるはずも無いが、彼はファウストたち並の力を有した化け物の一人。
 人間の能力者がおいそれと手を出して無事に済む相手でもない。
 手早くそれだけを済ましたい。 そんな理由で、フィオの説明を遮り、

 「能力者と遭遇したらどうすればいいの?」

 最も大切で、危険に対峙した場合の対処法。
 それだけを耳に挟むとミゲルの手を引き陸へ足をつける。

 「アリスちゃん、お顔怖いよ?」

 ミゲルがアリスに話しかける。 ミゲルの外見年齢は5歳程度。 中身もその程度なのだろうか?
 二人によればミゲルは今年で480歳になると言うのに。

 「怖くないよ。 大丈夫、君が私を守ってくれるんでしょ?」

 ミゲルに対して。 精神年齢5歳児に対して、最も喜ぶであろう言葉を返す。
 基本的に、小さな子供と言うのは大人のできない事ができるとうれしいのだ。 

 「そうだね、大丈夫! 僕、強いから!」

Re: 消失病 Disappearance  ( No.17 )
日時: 2011/10/23 19:47
名前: 暮来月 夜道 ◆kaIJiHXrg2 (ID: I69Bg0jY)

 戦慄が走る。
 言葉が、出てこない。 汗が噴出し、鼓動が早まる。
 目の前に居るのは、紛れも無くあの男。 シグマだった。

 遡る事3分前。 二人は教会の入り口にいた。 アリスが取っ手を掴み、ひねるとともに、その扉は力なく崩れ、内部を開放する。
 だが、その先に一人。 居るはずのない、居てはいけない人間が居たのだ。
 そう、シグマだ。 だが、それ以前にアリスの目に映ったのは破壊された“何か”。
 そして、その何かは恐らくフィオの言っていた開放すべき魔界への扉。

 「ふむ、魔界と言うのも悪くは無い。 だが、我が崇高なる計画の障害となるのであれば仕方ないか……」

 シグマは静かに呟くと、振り返りアリスとミゲルをその瞳に映す。

 「中々早かったな、雛よ。 だが、遅かったな。 たった今、俺がこの扉を叩き壊したところだ」

 シグマの言葉に、アリスは唖然とする。
 それに反して、見毛の瞳には憤怒が浮き彫りになって、ミゲルはシグマに襲い掛かる!
 が、シグマはミゲルをいとも易々と蹴り飛ばすと、アリスのほうに視線を向けた。

 「まさか、今ので俺を殺せるとでも思ったか? ……笑わせるな」

 アリスは、何も言えない。 いや、喋ればその隙に殺される。
 それほどまでに圧倒的な、相手の威圧。

 「少しは質問に答えたらどうだ?」

 彼の言葉と同時、アリスの身体を無数の針が突き抜ける。
 傷は無い、そう感じただけだ。 ……凄まれただけで?

 「……何がしたいの?」

 ようやくそこで、アリスは口を利いた。
 若干の恐怖と、わけも分からずこみ上げてきた怒りを押さえつけながら。

 「その事なら、既に述べただろう。 地獄を人間界に造る」

 「そんなの、無理だよ」

 アリスはシグマの言葉を、真っ向から。 挑発するように否定する。
 シグマの背後には、真紅の体毛を纏った長い尾が構えている。 ミゲルが、龍と化した。

 「何故そう言い切れる?」

 「地獄は地獄になるべくして生まれた。 だとすれば、ここは人間界としてなるべく生まれた世界だよ。 無理に地獄に似せても、本物の地獄にはなりはしない」

 アリスの言葉に反応するように。 シグマの背後に、その長い角を携えた巨体が迫る。
 シグマは、気付いた様子は無い。
 シグマの背後で、その巨大な前足で。 鋭く尖った爪を構える。
 そして——

 「何だ、ネズミか」

 振り下ろされたそれを、シグマはモロにその身に受ける!
 砂埃が舞い、廃墟同然の教会内が騒然とする。

 「やった……?」

 「何かしたか?」
 
 砂煙が晴れると、そこに、シグマは静かに佇んでいた。


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