ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
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自殺サイト『ゲートキーパー』
日時: 2014/03/01 11:32
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: Km711df.)
参照: http://blog.goo.ne.jp/lily-wingmoon

申し訳ないですが、このスレはロックさせてもらいます。
多分、このスレを更新させることはもうありません。
続きを楽しみにしていてくれた方、中途半端は形で終わらせることとなって、本当にごめんなさい。
それでは。


        ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



                       ようこそ  

                   自殺サイト『ゲートキーパー』へ  

             このサイトでは、あなたの『自殺』の手伝いをします   



              自殺希望者は下のenterをクリックしてください      

                        enter                 



        ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



   ーーーあいさつーーー

どうも、こんにちは。羽月リリです。

羽月さんはただいまこの小説に飽きてます←
なので複ファで小説書き始めました。
でも、この小説も更新しないといけないな、と思っています。なので、だいぶ更新速度は遅いと思いますが、必ず更新させますので!ご安心ください!

参照URLは羽月のブログです。
この小説の裏話や番外編、その他もろもろを書いてるかもしれません。
興味がある方のみどうぞ。

あとTwitterしてます。
IDはlilywingmoon。フォローしてくれたら嬉s←



   !!!注意!!!

・更新遅いよ!
 一ヶ月に一回するかしないかだよ!

・シリアス・ダークですが、そんなにシリアスでもダークでもないです((おい
・荒らしと中傷、お断り
・その他、最低限のルールは守ってください



ーーー提供していただいたオリキャラーーー

・黒樹 小枝     [璃夢様]  >>004     ・菅凪 桜      [アリス様] >>113 >>129
・涙湖 麗      [朱薇様]  >>030     ・野宮 絵梨佳    [絵梨佳様] >>117
・博麗 憂夢     [生卵。様] >>036     ・野宮 絵璃凪    [絵梨佳様] >>119
・与那嶺 陸     [柴犬様]  >>035     ・楠 白亜      [白樺様]  >>130
・橘 由香里     [りぃ★様] >>060     ・雪乃 撫子     [ラピス様] >>131
・岩清水 絆     [カルメン様]>>084     ・曽根崎 快[へっぱっぱへーーぱぱへっぱ様]>>146
・三森 ほのか    [ジル様]  >>086     ・花園 泉      [恋花火様] >>157
・久野 優・今井 芳野[生卵。様] >>092     ・金沢 空      [恋花火様] >>167
・月世 瑠奈     [瑠奈様]  >>099     ・逢田 蓮華     [黄葉様]  >>184
・黒樹 草汰     [璃夢様]  >>109     ・天風 悠馬     [アヤメ様] >>229

※オリキャラ募集は終了しました。
 皆さん、ありがとうございました!



   ーーーお客様ーーー

・璃夢様            タメで話す仲の良い友達です。大好きだよ(*´∇`*)
・ケイト様           続きが早く読みたいと言ってくださった方です。
・香月様            キャラの名前がかっこいいと言ってくださった方です。
・柴犬様            何度もコメントをくださる優しい方です。
・朱薇様            文章が上手だと言ってくださった方です。
・生卵。様           三人もオリキャラをくださいました!
・甘味 みずの様        とても素敵な小説だと言ってくださった方です。
・りぃ★様           オリキャラをくださいました!
・ジル様            メッチャ面白いと言ってくださいました。
・カルメン様          オリキャラをくださいました!
・瑠奈様            オリキャラをくださいました!
・アリス様           オリキャラをくださいました!
・絵梨佳様           こんな小説を応援してくださっている方です。
・白樺様            ものすごく面白いと言ってくださった方です。
・ラピス様           オリキャラをくださいました!
・へっぱっぱへーーぱぱへっぱ様 オリキャラをくださいました!
・恋花火様           2人もオリキャラをくださいました!
・黄葉様            オリキャラをくださいました!
・蒼聖様            読み易い文章だと言っていただきました。
・一茶様            嬉しすぎて狂ってしまいそうなコメントをくださった、私の尊敬する方です。
・琉璃様            面白そうな小説だと言ってくださった方です。
・れお様            面白いと言ってくださいました。璃夢のリア友さんらしいです。
・はるく様           尊敬すると言ってくださいました。
・音羽様            二次小説書いてる時からコメくれた方です。タメで話す仲だ!
・アヤメ様           オリキャラをくださいました!
・裕也様            璃夢に勧められて読んで下さったようです。ありがとうございます!



   ーーー記録ーーー

・2012/06/17 スレ建て
・2012/06/22 参照100突破
・2012/06/27 参照200突破
・2012/07/02 参照300突破
・2012/07/09 参照400突破
・2012/07/13 参照500突破
・2012/07/17 参照600突破
・2012/07/21 参照700突破
・2012/07/26 参照800突破
            第一章完結
・2012/07/29 参照900突破
・2012/07/31 参照1000突破
・2012/08/02 参照1100突破
・2012/08/03 参照1200突破
・2012/08/04 参照1300突破
・2012/08/06 参照1400突破
・2012/08/09 参照1500突破
・2012/08/11 参照1600突破
・2012/08/14 参照1700突破
・2012/08/16 参照1800突破
・2012/08/19 参照1900突破
・2012/08/22 参照2000突破
・2012/08/25 参照2100突破
・2012/08/27 第二章完結
・2012/08/28 参照2200突破
・2012/08/30 参照2300突破
            小説大会結果発表→この小説がまさかの金賞受賞。ありがとうございます!
・2012/08/31 参照2400突破
・2012/09/02 参照2500突破
・2012/09/05 参照2600突破
・2012/09/06 参照2700突破
・2012/09/10 参照2800突破
・2012/09/14 参照2900突破
・日付けわかんねぇよ  参照3000突破
・日付けわかんねぇよ  参照3100突破
・2012/10/07 参照3200突破
・2012/10/?? 参照3300突破
・2012/10/?? 参照3400突破
・2012/11/06 参照3500突破



   ーーー目次ーーー

ー第一章ー

No.01>>001   No.11>>024   No.21>>045   No.31>>063
No.02>>007   No.12>>028   No.22>>046   No.32>>067
No.03>>008   No.13>>029   No.23>>047   No.33>>068
No.04>>009   No.14>>032   No.24>>053   No.34>>071
No.05>>010   No.15>>038   No.25>>054   No.35>>073
No.06>>012   No.16>>039   No.26>>055   No.36>>075
No.07>>016   No.17>>041   No.27>>056   No.37>>076
No.08>>017   No.18>>042   No.28>>058   No.38>>077
No.09>>020   No.19>>043   No.29>>059   No.39>>078
No.10>>023   No.20>>044   No.30>>062   No.40>>079   あとがき>>080


ー第二章ー

No.01>>082   No.11>>138   No.21>>170   No.31>>195
No.02>>093   No.12>>142   No.22>>172   No.32>>196
No.03>>095   No.13>>143   No.23>>173
No.04>>104   No.14>>148   No.24>>174
No.05>>105   No.15>>150   No.25>>182
No.06>>111   No.16>>156   No.26>>183
No.07>>123   No.17>>159   No.27>>190
No.08>>124   No.18>>160   No.28>>191
No.09>>128   No.19>>164   No.29>>192
No.10>>134   No.20>>169   No.30>>194   あとがき>>197


ー第三章ー

No.01>>201   
No.02>>207   
No.03>>208   
No.04>>213   
No.05>>220   
No.06>>221   
No.07>>
No.08>>
No.09>>
No.10>>



キャラ紹介 >>011
キャラ紹介②>>072
キャラ紹介③>>198



参照 100突破記念フリートーク             >>013
参照 200突破記念小説『これがいつもの朝』       >>027
参照 300突破記念フリートーク             >>040
参照 400突破記念フリートーク             >>050
参照 500突破記念フリートーク             >>057
参照 600突破記念小説『ある夏の日のこと』       >>066
参照 700突破記念フリートーク             >>074
参照 800突破記念フリートーク             >>081
参照 900突破記念小説『漆さんと海の因果関係』     >>094
参照1000突破記念フリートーク             >>106
参照1100突破記念小説『夢か現か』           >>122
参照1200突破記念小説『怖くもない真夏の怪談』     >>125
参照1300突破記念小説『上下関係』           >>133
参照1400突破記念小説『大家さんと女子大生とヒキニート』>>141
参照1500突破記念キャラに質問(上弓玄)        >>149
参照1600突破記念キャラに質問(十六夜黎)       >>155
参照1700突破記念フリートーク             >>161
参照1800突破記念小説『生徒vs担任』          >>171
参照1900突破記念小説『夏祭り〈前編〉』        >>175
参照2000突破記念フリートーク             >>187
参照2100突破記念小説『夏祭り〈後編〉』        >>193
参照2200突破記念イラスト               >>202

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.120 )
日時: 2012/08/02 16:47
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: bOX/HSBq)

>>119 絵梨佳様

こちらこそ面倒をおかけしてすいません。

自殺理由はこの世にいる価値がない、で、飛び降り自殺、ですね。
了解しました。

妹、野宮絵璃凪ちゃんのプロフィールの方もありがとうございます。
不思議の国のアリスのような服を着ているとは可愛い子ですね。

あと最後に一つだけ質問が(><)
何度も何度もごめんなさい。
両親がいないということですが、この姉妹は二人暮らしをしているのでしょうか?
年齢的に幼いので、おじいちゃんやおばあちゃんと一緒に暮らしていたりしますか?
それとも、孤児院で暮らしていますか?

本当に何度もごめんなさい!
他は大丈夫なので。

ではでは。

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.121 )
日時: 2012/08/02 17:35
名前: 絵梨佳 (ID: pHBCaraS)

孤児院で暮らしてます!
こちらも気がつかなくてすみません;;;

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.122 )
日時: 2012/08/02 18:58
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: WIx7UXCq)
参照: 黎「今回は璃夢さんのリクエスト短編小説だよ」

「やっぱりクーラー直しましょうって」
 少々不機嫌な声を聞いた漆は渋面を作った。

「無理。直すのに金かかる」
「…だったら、おれが直します!」

 黎は事務椅子を、壊れて動かないクーラーの下まで転がし、それの上に立った。

「…あー、おい、気を付けろよ」
 ソファに座った漆はあまり興味が無さそうに声をかける。

「大丈夫ですって!」
 黎がそう言ったとき、足下から鈴の音が聞こえた。
 下を見ると、黒猫が事務椅子を引っ掻いていた。

「…あー、こら、ムーン。椅子を壊すな」
 漆がソファから立ち上がり、黒猫を抱き抱えようとした。
 しかし、黒猫はそれに抵抗し、事務椅子にしがみついた。

「…って、うわっ——」

 事務椅子はぐらりと傾き、その上に立っていた黎もバランスを崩す。

「危ない——っ!!」





     参照1100突破記念小説『夢か現か』





「ぁいっ…た!!」

 黎は強かぶつけた頭を押さえて悶絶する。

「痛い痛い痛い」
 しかし、聞こえる声は女性のものだ。

「……おい、大丈夫か?」
 違和感を感じたが、その少年の声に思考を遮られた。
 それは、聞き慣れた自分の声。

「………はれ?」

 黎は半身を起こした。
 すぐ横には、少年が横になっている。
 黒髪で不機嫌そうな表情をした少年。
 それは黎がいつも鏡で見ている自分の姿だ。

 黎がその状況を理解する前に、その少年がこちらを指差して叫んだ。
「私が居る————っ!!」
「………はぁっ!?」

 黎は自分の頬を触った。
 いつもとは違い、少し柔らかい。

「えっ、えっ、えっ」
 変な声を出しながら黎は自分の身体のあちこちを触る。

「おっ…おれ、む…胸が——っ!!」
「変態かっ!!」
 目の前に居る少年がバシッと黎の頭を叩いた。

「…黎、お前、鏡、見てみろ」
 いつの間にかその少年は鏡を持っていて、それをこちらへ手渡してきた。

「…何…が———!!」
 鏡には、大きく目を見開いた漆が映っていた。

 鏡から視線を外し、少年を見る。

「これ、どういうことですか!?」
 しかし、訊かなくても何となくは理解していた。

 目の前に居る黎の姿形をした少年——否、漆はいつものような渋い表情で言った。
「私たち、入れ替わってるんだ…!」
「…え———」

 黎は目を見開いた。

「そんな、マンガかアニメみたいなこと——」

 その時、勢い良くドアが開いた。

「漆さん、黎! ただいま——って、あれ?」
 床に座り込んでお互いを見詰め合っている漆と黎を見て、上弓は唖然とした。

「………あ、もしかして、邪魔しちゃった?」
 遠慮がちにそう言って、部屋を出ていこうとした上弓を漆——の姿をした黎が引き留めた。
「玄! ちょっと待て!」

 上弓はその言葉通り動きを止め、黎を睨んだ。

「…黎、お前、オレのこといつから『玄』って呼び捨てするようになった?」
「………え、いや、違う、これは——!」
 黎はばたばたと否定するように手を振った。

「大体、二人で何やってんだよ」

 上弓は黎に近寄った。
 その距離、僅か三十センチほど。

「………近いんだよ!」

 黎は上弓の右頬を殴った。

「…って、漆さん、何やってんすか!」
 それまでずっと黙っていた漆が驚いたように目を見開いた。

「——ちょ、『漆さん』…て、漆さんが漆さんでしょ?」
 殴られた右頬に手を当てながら上弓は目を白黒させる。

「……玄」
 黎は低い声を出した。

「大切な話がある」



「えぇっ!? 二人が入れ替わった!?」

 上弓はこれ以上無いほどに目を見張った。

「もう、冗談キツイねー…」
 「ははは」と苦笑いする上弓に、黎の姿形をした漆が言った。

「嘘を言っているように見えるか?」
「………いえ」

 それから上弓は目の前のソファに座った漆と黎を見比べた。
 漆は先程から不機嫌そうな表情をしていて、黎はなんとも形容しがたい表情をしている。

「まぁ、オレ、戻り方知ってるから、大丈夫!」
 ニッコリと笑う上弓を見て、漆と黎は目を輝かせた。

「本当っすか!?」
「もちろんもちろん」
「速く教えてくれ!」

 上弓はこくりと頷いて言った。
「もう一回頭をぶつけたら良いんですよ」



「………本当にこれで大丈夫なんですか?」
 クーラーの下の事務椅子の上に立った漆の姿形をした黎は不安そうに訊いた。

「もっちろん! オレに任せて!」
 上弓は自信満々に言う。

「あー、不安………」
 黎の姿形をした漆は事務椅子の横に立ったまま小さく呟いた。

「はい、じゃー、落ちて!」
 上弓のその声を合図に黎は事務椅子から飛び降りた。



   ーーー



「いって———って、あれ?」

 黎はぼんやりと目を開けた。
 目に映る物は、見慣れた天井と蛍光灯。

「むむ?」

 黎は半身を起こした。
 そして、辺りを見回す。
 小さな和室の部屋。どうやら自分の部屋のようだ。
 そして、自分は布団で寝ている。

 ぼんやりと自分の手を見詰める。少し日に焼けた、男の手。
 その手で自分の身体を触る。

「胸が無い」

 呆然と呟いて、のろのろと立ち上がり洗面所へ向かう。
 大きな鏡には、黒髪の少し寝惚けたような表情をした少年が映っている。

「おれだ…」

 自分の頬を触る。
 そして、軽くつねってみた。

「痛い」
 ということは、これは夢ではないということだ。そして、先程までのものが夢。

 それにしてはやけにリアルだった気がする。

「うーん?」

 釈然としないまま、黎は部屋を出て、一回の漆の部屋兼事務室へ訪れる。

「漆さーん、起きてます?」

 思えば今が何時なのか分からない。まぁ、日が差しているから、朝だ。

 中へ入ると、漆が渋面を作ってソファに座っていた。

「漆さん、おれ、さっき変な夢見ました」

 彼女の正面のソファに腰掛けて黎は言った。
「おれと漆さんが入れ替わるんです」

 すると、漆は目を見開いて言った。
「私も同じ夢を見た」

 漆の言葉に黎も目を見開いた。

「……………え?」



 それは夢か現か。


Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.123 )
日時: 2012/08/02 19:46
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: nOUiEPDW)
参照: 苦しい。お腹が痛い。

No.7

「調べ終わりましたよー」
 口を尖らせたまま、上弓が言った。

「うん、偉い偉い。で?」
 軽く誉めたあと、漆はチラリと上弓を見る。

「黒樹小枝、十四歳、中学三年生。弟が一人。両親は…死亡。現在、祖母と弟と、三人で暮らしています」
 上弓はパソコンに映し出された情報をたんたんと読み上げた。
 それを聴いた漆は考えるように腕組みをした。

「…両親はいないのか。自殺する動機は何だ?」
 最後の問いは、誰に向けられたものでもない。

「取り敢えず、もっと探りが必要だな」
 漆は「うん、そうだ」と一人で頷き、そして上弓を見て、言った。
「玄、ちょっと行ってこい」

 その上弓はというと、漆を見てポカンと口を開けたが、すぐに反論をした。
「何でオレなんすか!? こういうのは黎の仕事でしょ!!」
「煩い、黙れ。お前がデート行ったせいで情報少なかったんだ。だからお前が行ってこい」
 漆は早口にそう言うと、しっしっと手を払った。

「………漆さんも、酷いなぁ」
 不満げな表情をしながら、上弓は部屋を出た。

「…あ、情報掴めるまで帰ってこなくて良いから」
「………はーい」
 漆の付けたしに、上弓は実に不満ありげな声で返事をした。

 ガチャリ、とドアの閉まる音がして、上弓の足音が聞こえたが、それも遠ざかって軈て聞こえなくなった。
 部屋にセミの音だけが響きわたる。

「——黎」
 暫くの沈黙を漆が破った。

「何ですか?」
 黎はぼんやりと目の前にある机を見詰めたまま訊いた。

「……まだ、引きずってんのか?」
 漆の静かな問いに、黎は僅かに目を見張り、そして目を伏せた。

「漆さん。おれじゃなくて上弓さんを行かせた理由は、それですか?」
 自分の問いに答えなかった黎を横目でチラリと見て、それから漆は小さく笑った。

「上弓がデート行ったから、罰だよ」
「そうですか」

 セミが鳴いている。

 黎は「じゃ、帰ります」と言うとその場に立ち上がり、ドアの前まで行った。
 ドアを開けたところで、黎は不意に動きを止めた。

「さっきの質問の答えですけど——」

 顔だけを漆の方へ向けた。

「おれはもう、あのことは引きずってませんよ」

 それだけ言うと、黎は部屋を出ていった。

「…———」

 漆は上半身をソファの背もたれに預けた。

「……嘘だ」

 お前はまだ、あのことを引きずっている。

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.124 )
日時: 2012/08/03 11:47
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: WIx7UXCq)
参照: 第二章に入ってから話が思い付かない。うへぇ。

No.8

 大通りから少し離れた公園は、車のエンジン音も一切聞こえない。
 聞こえる音は、風が木を、葉を、揺らす音。その木に止まったセミの大合唱。
 そして、澄んだ鈴の音。

「…鈴?」
 木が木を遮り、影になっていたブランコに腰掛けていた少女は、違和感を覚えて呟いた。

 キョロキョロと辺りを見回すと、公園の塀の上を一匹の黒猫が歩いていた。
 その黒猫の首輪に付けられた鈴が、歩く度にチリンチリンと可愛らしい音を鳴らす。

「…おいで」
 しばらく黒猫を見詰めていた少女は黒猫がこちらを見たので小さく声をかけた。

 ニャアと答えるように小さく鳴いた黒猫は、塀から飛び降り、見事に着地し、少女の元へと駆け寄った。

「よしよし、可愛いわね」

 黒猫を膝に乗せ、ゆっくりと頭を撫でてやる。すると、黒猫は気持ち良さそうに目を細めた。

「セミが、鳴いてるね」
 少女は黒猫を撫でながら呟いた。
「セミがたくさん鳴いてることを蝉時雨って言うんだよ。知ってた?」
 黒猫に訊くと、ニャアと鳴いた。

「…君は、賢いんだね」
 ゆっくりと頭を撫でる。

「猫、好きなの?」
「ひゃあ!?」

 突然の問いに、少女はびくりと肩を震わせた。

「あー、ごめん。そんなに驚かすつもりはなかった…」
 苦笑いしたその声の主は、髪を明るい茶色に染めた男性だった。
 その姿を認めた瞬間、少女はさっと表情を変えた。

「……誰ですか?」
 低い声で訊くと、その男性はニコリと笑った。

「オレ、その猫の飼い主の知り合い」
 男性はついと少女の膝に乗った黒猫を指差した。

「……あ」

 少女は黒猫を見詰め、そして膝から下ろした。地面へ下ろされた黒猫はニャアと鳴き、男性の足元へ寄っていった。
 男性はしゃがみこむと黒猫を撫で回し、それから少女を見た。

「…猫、好きなの?」
「…、は…い」

 少女は僅かに身体を強張らせた。

「この猫ね、ムーンって名前なの。月って意味」

 男性は黒猫を両手で持ち、立ち上がった。

「オレは上弓玄。君は?」
 ニコリと笑って訊いてくる男性。

「——黒樹…小枝、です…」
 遠慮がちに少女——黒樹小枝は言った。

「そっか、小枝ちゃん。可愛い名前だ」

 上弓と名乗った男性はヘラリと笑う。

「じゃ、オレはそろそろ帰るから。またね」

 ひらひらと手を振って去っていく上弓を黒樹小枝は無言で見詰めていた。


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