ダーク・ファンタジー小説
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- 暗闇を黒く塗り潰せ【短編集】
- 日時: 2017/01/30 14:07
- 名前: & ◆p1kEDHfk2I (ID: Zodo8Gk0)
&という者です。
短編集書きたいな…なんて思ったらスレ建ててました←
題名からして物凄い暗そうですが、暗いです((何の捻りも無い
ハッピーエンドもバッドエンドもループエンドもオチなしも何でもアリです。多分。
そんなものに付き合っていただけるなら、暇潰しにでもご覧ください。
ちょっとした宣伝です。
SS大会で作品を投稿させていただきました。「すきー!」を押してくださった方、ありがとうございました!作品名は「あおいろ」で、3部構成なので全3スレです。ちょっとリメイクとかしてから、このスレにも載せようと思っています。
それでは。
目次
縛 >>1-5
柱の陰に >>6-10
cigarette >>11-16
おもちゃばこをあけてみて >>17-22
華やかな世に結末を。>>23-28
オチが無さ過ぎて困るこの頃です((
- Re: 暗闇を黒く塗り潰せ【短編集】 ( No.24 )
- 日時: 2016/11/22 21:04
- 名前: & (ID: bUOIFFcu)
華やかな世に結末を。-2
楢葉 華世。
この学校で彼女の名を知らない人は居ない。
容姿端麗、成績優秀、頭脳明晰、品行方正…褒め言葉を挙げればキリがなく、逆に欠点を挙げようとすると中々言葉が出てこない。学年のみならず、この学校全体にその名を知らしめており、「彼女を見ただけでその日1日は幸せでいられる」とか言われている。特に1、2年生たち後輩はそうだ。生徒会長という肩書きも手伝って、一般人とは掛け離れた感じがする。
だから、彼女の名前を知らない人間なんて、この学校にはひとりも居ない。
…そう、私を除いては。
***
「えと…」
ならばさん、と呼んでみたが、いまいち確信が持てなくてキョドってしまった。いけない、いけない。当の「ならば」さんも、何て言われたかわかってないのか、「えっ?」と言ったまま固まってしまっている。
ああ、何でこんなことに。
クラスで何故かこの「ならば」さんの名前が出てきて、「ならば」さんが如何に凄いかという褒め合い合戦みたいなのを聞いてて、でも私は「ならば」さんを知らなくて。「ならばさんって…誰?」って聞いたら、こいつ信じらんねえみたいな目を一斉に向けられて、お前一回見て来いって言われて、今に至る…って自分で言ってみたけどもう意味わかんない。
…私が固まってても意味ない。
それじゃあ何の為にここ、A組に訪れているのか。わざわざ放課後に。ああ、もう。
「楢葉…さん?」
今度はネームプレートを確認して声を掛ける。へぇ、楢葉って書くんだ、変わってんなぁ…。
とか何とか考えてると、その楢葉さんがハッとしたように言う。
「あの、ど、どちら様?」
「へっ…あ、す、すみません。あの、私、泉です。泉、華世」
「いずみ…?かせ…?」
***
「いずみ…?かせ…?」
誰だこの子。
第一印象はそんな感じ。
かなりの猫背で俯きがちで、黒く長い髪の毛をもさぁぁ…と垂らして、若干上目遣いでこちらを見てくる。背は結構低くて、椅子に座っている私との視線の高低差があんまり無い。自分の記憶をまさぐってこの子の顔を見つけ出そうするが、どうやっても出てこない。つまり、初対面だ。
まあ、ぶっちゃけ初対面の子が話し掛けてくるだけならおかしくはない。ていうか今までもあった。主に私が目立ちすぎているせいだと思う。生徒会長という役職や学年トップの成績も手伝って、おそらく学年で私の名を知らない人はいないだろう。
なんてことを考えていると、その子はあわあわとしながらも、何とか喋り出した。…典型的コミュ障らしい。
「あの…わ、私、泉 華世って、言います。それで、その、楢葉さん?を、見て来いって言われて、その」
「え、ちょ、ちょっと待って?どゆこと?」
突如として意味のわからない説明を受け、困惑してしまう。正直、ちょっと何言ってるかわかんない。
しかしなおも続けてくる。
- Re: 暗闇を黒く塗り潰せ【短編集】 ( No.25 )
- 日時: 2016/12/16 17:23
- 名前: & (ID: Zodo8Gk0)
華やかな世に結末を。-3
「あの、あの、つまり、クラスメイトに、楢葉さんを見て来いって言われて、あの」
「見て来いって、それどういう…」
「えと、わた、私が、クラスの子に、楢葉さんのこと、知らないって言ったら、信じられない、その目で見て来い、って…」
そこまで話されてようやく事の顛末を悟る。私が何となく内容を察しても、えーと…泉さん?は、まだわたわたとおぼつかない説明をしていた。
だが、ぶっちゃけ、そんなのどうでもいい。
『楢葉さんのこと、知らない』?
…私の事を知らない?
この学校の生徒でありながら、私のことを、知らない?
そこに引っ掛かって、その後の泉さんの言葉が入ってこない。何かごちゃごちゃと言っているけど、何言ってるかはわからない。…わかろうとしない。
だってそんなの…ありえない。
私は、楢葉 華世。
この学校の、生徒会長。
それだけじゃない、私はこの学年のトップの成績で、見た目だって凄く可愛くて、下手な事は何もないし、顔は広いし、だから、だって、私の事知らないなんて、そんなの普通にありえない。
…ああ、あれかな?転校生かな。最近転校して来て、私の事知らなくて、でも私の事知らないなんて勿体ないから、クラスメイトが私の事見て来なよって言ってくれたのかな。…そうかな、そうだよ。そうだよね。
そんな思考に埋没していると、泉さんの説明がぱたりと止んでいることに気付いた。代わりに泉さんは、不思議そうに私の顔を伺っていた。はっとして顔を上げ、泉さんに対しにっこり笑った。
「えと…どうしたんですか?」
「あ…いや、何でもないよ。えっと、泉さんだよね?」
「そ、そうです。泉 華世です」
ご丁寧に名前まで言ってくれる泉さん。…じゃあ、かせちゃんって読んだ方がいいのかな、とか思うけど、さすがにそれはないか。それにしても「かせ」って変わった名前だ。漢字どうやって書くんだろう。
いや、今はその話じゃない。思考を戻して、泉さんに質問。
「泉さんは…転校生?」
「て、転校生、ですか?」
「え、うん…ていうか、同じ学年だよね?タメでいいよ」
「あ、はい…じゃなくて、う、うん。あの、それで、転校生じゃ、ないでs…ないよ」
「…そ、そう」
転校生じゃない?嘘、じゃあどうして私の事知らない?
タメでいいと言ったせいか、泉さんは少し緊張を和らげた様子で続ける。
「えと…何で?」
「っ………」
言えるわけないでしょ。まさか、この学年で私の事知らないなんてありえないとか。そんなの、言えないに決まってる。…て、適当に誤魔化そう、うん。
「いや…同じ学年なのに、敬語だったし。ちょ、ちょっと気になって」
「あ、そっか…そうだよね」
「う…うん」
なんか惨めだ、これ。なんだこれ。ああ、嘘なんてつくもんじゃない。
ダメダメ、そんな惨めな気持ちになるのなんて、だめ。
「それで、泉さんは、私の事見て来いって言われたんだよね?」
「あ、そ、そうなんで…。…そう」
「…じゃあ、どう?」
「へ?」
私の、いまいち的を得ない文に、泉さんはぽけっとして、頭の上にハテナを浮かべた。なんか本当にハテナが見えそう。
私は今度はしっかり説明を入れて、改めて訊いた。
「私のこと見て、どう思う?」
「…あ……」
どうだ。どう思う。私のこと振る舞いを見て、どう思った。
いつも私は自分に自信を持つことを心掛けている。もちろん、外見にもそれは滲み出ているだろう。これを見て来いと言われて、あなたは何を思う?
泉さんは少し考えたあと、ゆっくり口を開いた。
「楢葉さんは…」
「………」
「…すごく…空っぽに、見える」
「……………は?」
………………は?
- Re: 暗闇を黒く塗り潰せ【短編集】 ( No.26 )
- 日時: 2016/12/16 17:19
- 名前: & (ID: Zodo8Gk0)
華やかな世に結末を。-4
空っぽ。
「あの、えと…何て言うかその、自分の能力に自信を持ってはいても、自分のことには自信が持ててないというか…その、えと」
やめればいいのに、勝手に動く口。下手くそなくせに、勝手に並べ立てていく言葉。相手の目も見れないくせに、勝手に相手の表情を憶測して怖がる心。言ったところで何も変わらないとわかってるくせに、勝手にペラペラ喋る私。
あぁ、またやっちゃった。
実に、これで4回目?
驕り昂った自分をわかっていながらどうすることも出来ずにいる。
そういうような人を、いつもいつもすぐそばで見てきて。
だからどうしてもやめてほしくて。
どこかで自分に歯止めをかけて、自分で自分を止めてほしくて。
自分の手で、自分を救ってほしくて。
何も変わらない、また私が嫌な思いをするだけ、と…わかっているくせに、どうしても止められない、この、言葉。
「その。ええと…だから、自分が何もかも出来る完璧人間なのは、わかってるんだよ、楢葉さん。けど、その、本当に本当の自分がどういう人なのかもわかってて。本当は完璧なように振舞ってるけど、実際は自分に自信なんかなくて、自分の性格や人格が心底嫌いで、けど、自分の能力がどれほど高いかっていうのには自信持ってて…だから、そんな、『表面だけ完璧な自分』が、本当は嫌いで仕方なーーー」
「黙ってよ」
…あぁ、ほら。
「黙れよ…!」
やっぱりそうだ。
やっぱりダメだ。
やっぱり、私の声など届かないのだ。
どうやったら、どうやって言ったら届くのか知らないのだから。
「さっきから聞いてれば何なの!?私のこと全部知ったような顔して、上から目線で説教してきて!あんたが私の何を知ってるの!?あんたが、私の何を知ってるの!何も知らないくせに!知らないくせに、ペラペラペラペラ、勝手に私の事語りやがって、何様よ!何よりっ…」
ごめんなさい、私。
また私は、誰かに言葉を届けるのを失敗しました。
誰かを救いたいと思うばかりで、結局誰ひとりとして救えてないです。
「…何より…」
ああほら、怒ってる。
顔を真っ赤にして俯いてる。ああ、次の瞬間には、特大の雷が落ちて、私はひとり残されたまま、この子はすたすた歩き去っていってしまうのだーーー
「何より、それが全部正解なのが、ウザくて仕方が、ないっ…!」
…顔を振り上げた楢葉さんは、泣いていた。
真っ赤な顔をくしゃくしゃにして、ぼろぼろ、涙を溢してた。
あれ。
おかしい。
思ってたのと…違う?
「そうだよ、私は空っぽ。本当のところ、私には何もないわ。それを、完全無欠のステータスで覆って、見えないようにしてるだけ。外ヅラだけ無駄に良くなって、自分の能力値だけがずっと上がってって、本当の私は最悪な性格のまま、何も変わらない」
こんなに素直に認める人は…初めて見た。
こんなに素直に、自分を認める人。
自分がどういう人間かわかってて、それを変えたいともがいて足掻いて頑張っていた、そういう人…なの、か。
それって。
それって既に、凄く良い性格してるってことーーー
「だから…私、変わりたいと、思ってた。それだけだと思ってた。それだけなんとかなれば、私はまた、完璧に近付ける。完璧なれる。人から褒められて讃えられて奉り上げられて崇められる」
…ん?
- Re: 暗闇を黒く塗り潰せ【短編集】 ( No.27 )
- 日時: 2016/12/21 18:17
- 名前: & (ID: Zodo8Gk0)
華やかな世に結末を。-5
「そこだけ。本当、そこだけ。この性格のせいで、たまにボロ出すから、『ん?』みたいな顔される。だからやっぱ、私はもっとちゃんとした性格にならなきゃいけないの。そうならなきゃ、完璧になれない。なれないよ、そうじゃなきゃ、完璧になれないんだよ」
やめればいいのに、勝手に動く口。すらすらと完璧に、勝手に並べ立てていく言葉。相手の目をしっかり見据えながら、本当はどこを見ていいかわからないだけで、勝手にそっち見てる、臆病な心。言ったところで何になるわけでもないとわかってるくせに、勝手にペラペラ喋る私。
初めは泉さんに対する苛立ちだったのに、すっかり私自身に対する怒りになってきてしまった。勢いそのままぶちまけ続けて、もう何も言うことがない。
完璧になりたい。あと少し。あと少しだ。性格だけだ。自分の内側だけだ。それか、自分の内側を隠し切るほどの仮面をつけて、振る舞い続けて、いつかそれを自分の人格にしてしまうのだ。そうすれば私は完璧になる。
そうすれば私は完璧になる!
…そういえば、結局何の話だったっけ?
ああ、泉さんが私を見て来いって言われて…そんで、空っぽ…って言われて…今に至る、か。じゃあ別にもう用は無いわけか。
泉さんに別れを告げて去ろうと向き直るとーーー
「…完璧になんか、なれないよ」
ーーー今までのおどおどした態度とは打って変わり、何の光も映さない目で、泉さんはそう言った。
目が、見れない。見たらいけない。目を合わせたら、その目の奥に引きずり込まれる。…そんな風に思わせられる。そこにあるのは…何だろう、何なんだろう。それとも、何もない?
泉さんは続ける。
「完璧になりたいなら、生まれ変わるしかない。生まれつきの完璧人間になるしかない。つまりどれだけ頑張ったところで、あんた如きが完璧人間になんてなれない」
それを聞いてーーー私は、烈火の如く、怒った。
「はぁ!?ふざけないでくれる!?アンタ知ってる、私って学年1位なんだよ!?運動神経だって抜群だし、成績はオール5だし、容姿だってほら抜群に可愛いでしょ!?完璧人間になれない?生まれつきじゃなきゃダメ?生まれつきよ!私は生まれつきのステータスに努力をしてこうなったの!完璧に決まってるでしょ!?アンタどの目線から言ってんのよ!!」
「幻の天才児」
「………………は?」
怒涛の言葉責めに答える形で、しかし的を得ない単語を返す泉さん。思わず呆けた声を出してしまう。泉さんは続けた。
「あんた知ってる?」
「…何を」
「この学年、1人だけあらゆる順位にカウントされないこと」
「は?」
「それが私、幻の天才児、泉 華世」
「…は、はぁ?」
どういうこと?という感情を全面に出した顔をし、話の続きを促す。泉さんはそれを見て、明らかに「ハッ」とバカにした顔をして、続けた。
「中間テストの点数。私は、500点満点だった」
「………え」
「それだけじゃない。体育の、1000m走も。私は2分ちょうどで走り切った」
「は?」
「歌を歌えば人の心を突き動かし、絵を描けば芸術性も写実性も抜群で、容姿は…今はこんなもっさい感じだけど…」
泉さんは、ぱさっと長い髪を取った。…ウィッグ?
下から現れた本来の彼女は…
「…ね、見惚れてるでしょ、今」
「っ!」
言葉を失うほどに、自分が横に並んでいて恥ずかしくなるほどに、というかこんな人間がいるなら私などが存在してていいのかなんて考えてしまうほどに…美しかった。
「つまりこういうこと。私は、何をやっても、初めから出来てしまう。完璧に出来てしまう。本気を出そうが出さまいが、常に完璧な結果を出す。ねえ、もうわかった?」
そこで泉さんは、私に事実を突きつけた。
「私は、幻の天才児。私は、生まれつきの、完璧人間」
- Re: 暗闇を黒く塗り潰せ【短編集】 ( No.28 )
- 日時: 2017/01/08 21:15
- 名前: & (ID: Zodo8Gk0)
華やかな世に結末を。-6
「だから…だから、嫌だった。完璧になんてなれないくせに、完璧になろうとして、そのせいで悩んでる人を見るのが、もう、吐き気がするくらい嫌。そういう風に考えちゃう自分も嫌。だから、…だから、そのせいで悩んでる人は、その人なりに、努力して頑張ってるんだから、いい人だって思い込むようにしてた。実際そうだって今は思ってる。けど、あんた…あなたは、違う。違う、努力もしてるけど、完璧になりたいんじゃない。完璧になって、自分を褒め称えさせたいだけ。私の存在も知らずに、自分が完璧だ、トップだって勝手に思い込んで、自惚れたいだけ。…それを見下さればいいんだけど、それを、ちょっと悔しく思う私も、大概子供だよね。でもやっぱり人間だから、悔しいんだよ。だからさ、あんたみたいな人見てると…見てると、
吐き気がするほど、憎くなる」
…それは、楢葉さんが憎いんじゃなかった。
こんな自分がいつも嫌いで、大嫌いで、憎くて仕方がなくて。自分には関係ないって放っときゃいいのに、どうしても嫌気の差すこの感じが本当に嫌だ。だから自分が憎い。こんな自分を生み出した世界も憎いけど、世界にそんな憎しみを向けたって馬鹿らしいと思ってしまうこの冷めた頭が嫌いだし、そういうとこは冷めているのにやたら人には悔しさを感じるとこも嫌い。まあ全部引っくるめて自分が嫌い。
「…ごめんね」
「えっ?」
「楢葉さん、初対面なのにこんな話して。迷惑だったね、忘れて…じゃあ帰るから」
「ちょっ…ちょっと」
スクバを持ってその場を去ろうとする。もう忘れてくれって感じだ。こんな衝撃的なことされて、楢葉さんは今日を忘れられないんだろうな、なんてわかっていながら、それでも忘れて欲しい。
ああ、もう、本当構わないで…
「ちょっと待ってよ!」
…引き留められた。しかも、がっちり腕掴まれた。
***
「ちょっ…だって…まだ何もアンタのこと…ねえこんなの、腑に落ちないっていうか、すっきりしないっていうか!」
そうだ。
泉さんが天才少女なのはわかった。でもわかったのはそれだけ。それしかわからない。まだ話してない。まだ何もしてない。
だったら話さなければ!
私は完璧になるためにいつもそうしてきた。わからないことがあれば徹底的に調べるし、未知に逢ったら既知になるまで知り尽くそうとする。まして、今目の前にいるこの少女は、未知そのものだ。単純な興味と、それから…ちょっと、この子なら、私の何かを変えてくれるんじゃないか、という期待が、私にどうしても泉さんを引き留めさせた。
「まだ何も終わってないし始まってない。こんなのわざわざ言うのっておかしいけど、泉さん…じゃなくて、カセ!」
「ひぇぃっ!?」
私は彼女の肩をがっちり掴んで言う!
「友達になろう!?」
「………はっ、ぁ、?」
カセ…か、漢字がわからないから、とりあえず華世にしちゃって。華世にすっとぼけた顔をされたけど私は止まらない。ていうか止めれない!
「ほら、お互いを知るにはまず友達になろう。そこからだよ。そこからもしかしたら親友とかになるかもしれないし、まあ、どうしてもソリが合わないってことはあるかもだけど…と、とにかく、友達!私はまだまだ華世のこといっぱい知りたいから!華世が私のことを憎んでるからって、もし私が華世のことを知ろうとしなかったら、私はそんな私を憎むよ」
我ながら何言ってるんだろう。…まあいいか。
そういえば華世の肩を掴んだままだった、と自分の手をそっと離す。華世は若干ふらついたけど、転びはしなかった。
…けど、なんか、華世に睨まれた。
「まったく…何も知らないで…私のこと…」
「か、かせ?」
「…初めてだ」
「えっ?」
「そんな反応されるとは思ってなかった…」
華世は私を睨み据えたまま続けた。
「いいよ。友達でしょ、なるよ。…ぶっちゃけ友達いないし、私。ただ」
「うん?」
「私が天才児っての、バラしたら社会的に殺すから。あと私をダシにして自分が完璧になろうとしてもダメ。…あと私は…多分憎み続けるから、そこは変えられないから」
「は、はぁい…」
おお、怖い怖い…。けどなんかちょっと柔らかくなった気がする。けど打ち解けるのは難しそうだ。何だろう、相容れない感じがするというか。でも仲良くなれそうにないわけじゃないし…。
「…そ、そういうわけで」
「へ?」
なぜか華世が仕切り直すように手を差し出してきた。え?
「友達、でしょ。…ぁ…握手」
「あっ、握手、握手ね。…はい」
妙にぎこちない握手が、なんか嬉しかった。
***
「おはよう、華世」
「あ、おはよう、りっちゃん」
「…どうしたの?」
「へ?」
「なんか妙に…こう…リラックスしてる気がするんだけど。悩み事が解決したっぽい感じ?」
「あー…そうかも」
「どうしたの、ほんと」
「私は完璧になれないんだなぁって、気付いたっていうか…」
「え、ど、どうしたのほんと」
「新しい友達ができたんだよ」