二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ヴィンテルドロップ
- 日時: 2012/08/04 20:31
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
さあおいで。
昔話をしてあげる。
だれも知らないお話だよ。
それは冬の終わりのお話だよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お母さんお話して!」
というと、ほとんどの親はこのお話しをする。
ヴィンテル王国の一番有名なお話にして、実話とされている不思議な話。
このヴィンテル王国を建国した女王様のお話である。
『冬の厳しい気候を持つヴィンテル王国。
建国したときからどの季節もふゆでした。
なので、冬と言う名をイリジウム女王はつけました。
そんなある日、イリジウム女王が谷を歩いていると、
真上で太陽と月が喧嘩した。
それまでは月と太陽は一つで、交互に夜と昼とを照らしていました。
けれど、このときからばらばらになりました。
そのとき、しずくが一つイリギウム女王めがけて落ちてきました。
うけとると、それは太陽と月の涙でした。
片面は静かに燃える月の、もう片面は激しく燃える太陽の涙。
女王がそれをなでると、たちまち虹色の宝石となり王国の雪は解けて
冬は消え去りました。
そして3つの季節が出来上がったのです。』
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- Re: ヴィンテルドロップ ( No.10 )
- 日時: 2012/08/06 15:09
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
公開謁見は、王族、貴族は必ず出席しなければならない。
国民は自由だ。
ただ、病人や医師、戦士や農家などは国や財産を守るために出席しなくともよい。
とくに宝石店や銀行などは出席などもってのほか。
墓守や、在任収容施設の守人も出席は禁じられている。
ただ、そのほかの人々は出席が認められている。
いかなくてもよいが、美しい神殿や王城を近くで見れるというので、ほとんど観光目的により出席している。
あとは、王族を見ることもできるからだ。
「イオーデス女王はその歳で白髪がないんだと」
「ほんとほんと。豪奢な金髪は顕在って聞くぜ!」
そんな会話が国民の列にざわめく。
「時期女王、14歳だもんな。毎年オブジェクトコンクールで優勝としてるけど、名前と研究内容とか発表されるだけで顔見れないもんな」
「そうそう、俺なんて時期女王に会えると思って化学部門猛勉強して出場資格得たのに、あえないってそりゃないよ」
女性達の間でも、玉の輿を狙おうと色めき立つ。
三兄弟で唯一結婚していないのは、三男のブランドだけ。
その姿を見ようと、わいわいしているのだ。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.11 )
- 日時: 2012/08/06 15:24
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
「これからイオーデス女王こと私が王と相談して決めたことを知らす」
その声で、国民や貴族は黙り込む。
一体何を決めたのか、税金のことだろうか?
そんなことを考えている。
王族4兄弟はそろって列に並ぶが、アメリアは貴族との中間に立っている。
むずかしい立ち居地にいる。
確かに長男の子だが、時期女王はクローロス。
して、孫であるために、イオーデスの子ではない。
よって王族の列に入れなかったのである。
アメリアはむっとしつつ、女王の話に耳を傾ける。
(一体何を決めたのかしら?)
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.12 )
- 日時: 2012/08/06 15:49
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
「時期女王はクローロスとす」
女王の声が響き渡るが、国民や貴族はそんなことは前々から知っているという顔をする。
アメリアも悔しいがそれを認めている。
「これより、第二継承権を与えるものを発表す」
ざわりと会場がゆれた。
こそこそと会話する。
アメリアは期待するまなざしで父ジャックルを見つめた。
ジャックルも、信じられない、まさか、と言う目で見返す。
母とつないだ手が、硬く握られて、緊張に震えているのがわかる。
ブランドは不安げにクローロスを見る。
クローロスは気にもしないように、見上げる。
女王はもったいぶるので、国民や貴族、アメリアや長男一家は女王を食い入るように見つめた。
目線で早く発表しろよ!と訴え続ける。
「それは—」
やっと女王の口が開く。
全員の視線が女王に注がれる。
「クローロスの妹とする」
あたりが静かになった。
皆理解が出来ない。
クローロス時期女王はたしか、4兄妹の末っ子。
長男、次男、三男、長女の順番で…。
その長女の妹と言うと—。
「以上だ」
身を翻すイオーデス女王。
その言葉に民衆が騒ぐ。
貴族も、王族も。
「次女出産なさったのですか?!」
貴族や国民が感激のように叫ぶ。
「お母様、いつ出産を?」
クローロスやブランドが言うが、ひときわ大きい声が響く。
「正気ですか!!うそに決まっている!!俺に妹が二人いるわけがない。母よ、あなたはご乱心か?!」
そのこえにしーんとなる。
視線が集まる方向には、ジャックル。
「口を慎みなさい、ジャックル。わたくしを罵倒する気か」
最高に厳しい声に、あたりはひるむ。
アメリアでさえ身を引いた。
「何故嘘など!」
「嘘?どういう根拠により嘘となるのです」
コレでは公開親子喧嘩だ。
そう判断した王は騎士達に国民を下がらせた。
ブランドは半狂乱で危険な兄から、クロ-ロスを遠ざけた。
「根拠?産まれてなんかないじゃないか!」
「これから産まれるのですよ、お前達の妹がね」
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.13 )
- 日時: 2012/08/06 19:41
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
「お母様ご妊娠を?」
次男ルクリスがイオーデスに聞く。
腹回りを見ながら、何か作戦を練るような顔をする。
「詳しい話は王城内でしますから。ついてきなさい」
4兄妹に有無を言わさないイオーデス。
会合室の扉は珍しく閉められており、その扉の前には大臣が立って見張りをしている。
室内には4兄妹と両親の6人。
ジャックルはアメリアも呼ぶべきだと主張したのだが、却下された。
「お前の娘は私の子ではないのですから、当たり前です」
そういわれてしまい、うなだれる兄。
「バジルと話し合って決めました」
イオーデスは夫バジルの横に座り、前のソファに座る4兄妹を見据えていった。
「さっき言ったとおり、時期女王はクローロス。おまえですよ」
クローロスは名を呼ばれてすこし頷いた。
「そして第二継承者はその妹とする」
そこでばっと長男ジャックルが顔を上げる。
もう37で中年期に入るというのに、その目は血走っている。
「妊娠したと言う確かな証拠は?それが女だと決まったわけじゃない!何故アメリアにやらない?一時期は時期女王の権利を持っていたのに!」
ジャックルが思いっきり叫ぶと、クローロスは身体に振るえが走るのを感じた。
隣に座るブランドがなだめるようにその頭をなでる。
「妊娠は確実です。それが女性かはまだわからないけれど」
イオーデスがいう。
「そして、ジャックル。お前は何か勘違いしていないか?」
強めの口調。
イオーデスのバラの目が怒りにきらめく。
「アメリアは私の子ではない。クローロスがいるのに何故、王位をもらえると思っているのです?」
ジャックルはぎゅっとこぶしをにぎる。
悪意に満ちた目が、その目をみ返す。
「たしかに一時期は認めましたよ。しかしクローロスがいるではありませんか。そして次女も産まれるかもしれないと言うのに、孫に継がせるわけがないのです」
ルクリスと視線がぶつかると、釘を刺すようにイオーデスがいう。
「たとえ私とお腹の子が死んで、クローロスが殺されたとしても、アメリアに継がせるわけにはいかないのですよ」
ルクリスがやだなぁ母さんというように引きつった笑みを見せる。
僕はそんなことしませんよぅという意味だろう。
ルクリスから視線をそらし、再びジャックルに目を向ける。
「あなたは私の子ですが、この国にふさわしくありません。人を憎む心が強大です。アメリアをみていてもわかります。あなたの人を恨み、憎み、嫉妬する心が、お前の娘の心を蝕んでしまった。そういう意味でも、あの子を継がせるわけには行かないのです」
そして立ち上がり、ジャックルに言い放つ。
「妹を愛せない人が、国民を愛せますか」
そして家族会合はお開きとなった。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.14 )
- 日時: 2012/08/06 19:55
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
その日のアメリアは父親の異変に気づいていた。
家族会合とやらから帰ってくると、すぐに自分の部屋へと引きこもった。
どういう話をしたのか、聞こうかと思っていたのでドアをノックする。
数回ノックは無視された。
けれどアメリアは諦めずに数分おきにノックしてみた。
「だれだ」
やっと声が聞こえたので、アメリアですという。
「はいれ」
単調な口調に怯えることなく入るアメリア。
クローロスであれば、ノックすることさえためらう声なのに。
「お父様、何を話されていたの?」
早速アメリアが聞く。
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