二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ヴィンテルドロップ
- 日時: 2012/08/04 20:31
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
さあおいで。
昔話をしてあげる。
だれも知らないお話だよ。
それは冬の終わりのお話だよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お母さんお話して!」
というと、ほとんどの親はこのお話しをする。
ヴィンテル王国の一番有名なお話にして、実話とされている不思議な話。
このヴィンテル王国を建国した女王様のお話である。
『冬の厳しい気候を持つヴィンテル王国。
建国したときからどの季節もふゆでした。
なので、冬と言う名をイリジウム女王はつけました。
そんなある日、イリジウム女王が谷を歩いていると、
真上で太陽と月が喧嘩した。
それまでは月と太陽は一つで、交互に夜と昼とを照らしていました。
けれど、このときからばらばらになりました。
そのとき、しずくが一つイリギウム女王めがけて落ちてきました。
うけとると、それは太陽と月の涙でした。
片面は静かに燃える月の、もう片面は激しく燃える太陽の涙。
女王がそれをなでると、たちまち虹色の宝石となり王国の雪は解けて
冬は消え去りました。
そして3つの季節が出来上がったのです。』
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- Re: ヴィンテルドロップ ( No.65 )
- 日時: 2012/09/11 20:55
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
そういうわけで、その日からウウィントの手下となった。
「いいか?おまえの話をしてみろ。まず、宝石について知っていることをすべて—」
クローロスはとりあえず、聞き出されたことに素直に答える。
「宝石は、本当の御伽噺で語られています。それを今から話します」
クローロスはヴィンテル王国の女王でしか知れない真実の御伽噺をし始めた。
始祖、イオーデスがヴィンテルという泥棒より授かった宝石のお話だ。
その宝石のお話と、それが真実であると言う話。
それが存在して、触れれば光り輝くこと。
そして先日盗み出されたことをこと細かく話す。
誰にもいえなかった、あのことも。
「そうか、おまえの言うとおり、依頼人がいることは確かだぞ」
『赤の盗賊団は調べたところ依頼により盗むことがあると聞きました。もしかして今回も依頼人がいるのでしょうか』という質問にウウィントは頷く。
「しかも内部でな。城にいる内通者だろうな」
クローロスが震えるのを見て、ウウィントは視線を合わせる。
丸テーブルにすわっているクローロスは困ったようにため息をつく。
手下となった今、隠し事は許されない。
「じ、じつは…心当たりがあります、その…」
か細い声で言うクローロス。
「犯人を、か?」
わかっていたと言うようにウウィントが後を引き取る。
「それは、だれ?」
真向かいに腰を下ろしてウウィントは、クローロスにゆっくり言った。
クローロスの黄緑の瞳は不安に揺らぐ。
震えがひどくなって、顔が青ざめていく。
「に」
「に?」
口を開いたクローロスは、口ごもった。
けれど、決心したように視線を合わせてくる。
「兄さんです。兄の…一番上の兄の、ジャックル・ヴィンテルです…」
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.66 )
- 日時: 2012/09/11 21:09
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
「…どうしてそう思う?」
聞いてくるウウィントに、クローロスはため息と共に身の上話を再会する。
自分が生まれたので、兄の長女が女王になれなかったこと、そして二人からひどく恨まれていること。
「…そうか。それならまぁ、考えられるけど」
言ったウウィントは、ん?と首をひねる。
「?」
首をかしげるクローロスに、ウウィントは首を振った。
「いや、なんでもない。それが本当なら、もうすぐ知らせが来るさ」
優しげな雰囲気でそういったウウィントは、途端に表情を変える。
「よし、じゃあ、おまえは手下としてまずハトの餌をもらって来い!」
「は、ハトのえさ…ですか」
もっと厳しいことを言われるかと思いきや、ハトの餌とは。
だが、見くびっていた。
餌をとりにいった彼女を待ち受けていたのは、たるのように巨大なバスケットに山積みにされた穀物。
しかもみっつもあったのだ。
途方にくれながらも、仕方なく籠に歩み寄っていった。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.67 )
- 日時: 2012/09/15 19:59
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
籠を三階まで運ぶクローロス。
それを尻目に、ウウィントは書物庫に一人はいる。
べつに赤の盗賊団の資料を見に来たわけじゃない。
ただ、クローロス・ヴィンテルのご先祖に宝石を授けたヴィンテルという名前の泥棒に危機覚えがあった。
我が旅団は名高き怪盗を崇拝している。
ファントムという怪盗をとんでもなく崇拝しているのだ。
その人ははるか昔の人であり、生きていない。
けれど、調べていくうちに子孫がいるとわかった。
そしてヴィンテルその人がその直系に当たるのだ。
しかも赤の盗賊団から世界最高の宝石を盗んだというではないか。
しかも、美しくかっとした宝石をどこかの国の女王に与えたのだ。
そしてその名は王国に今も刻まれている。
「ヴィンテル…」
やっぱり、凄い人だこの人は。
そして、自慢のご先祖様だ。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.68 )
- 日時: 2012/10/08 17:31
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
ウウィントは資料室の窓から外をのぞいた。
本当は開けてはいけない窓なのだがウウィントはかまわずに開けた。
そして悲鳴を聞きつける。
クローロスという一国の女王様になる少女の声。
その声と重なるようにはとの興奮した羽音と鳴き声がする。
そしてぱらぱらとハト用のえさが降ってきて、きゃああっと言う悲鳴と共に今度は餌の籠丸ごとがふってきた。
「うわっ?!」
上向きにのぞいていたウウィントの頭めがけて降って来た籠を、彼は慌ててキャッチする。
「ふう・・・あぶなかっ—」
もう一つ目の籠がもろに顔面にぶち当たり餌がざーっと服の中にすべりこむ。
「・・・・・」
頭をまどから引っ込めて籠を資料部屋に置き頭に取り付いた籠を無言ではずす。
いくら女の子が不注意にもやってしまたとしてもこれは・・・・。
一歩歩くたびに服からざらざらと餌が散らばっていく。
「あぁ・・・また余計な仕事が・・・」
頭を抱えた瞬間、またしても声。
今度は開いた扉からはとに群がられて逃げてくるクローロスが見えた。
ウウィントの姿を見るなり涙目で逃げていく。
その後をハトは追跡し、新しいえさ出せよ!とでも言うように追い回していく。
「まったくもう」
クローロスがはとにつつかれてぼろぼろになる前にウウィントは助けてやろうと後を追った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
久しぶりの更新・・・
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.69 )
- 日時: 2012/11/10 15:19
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
クローロスは旅団本部の外に出ていた。
そして必死に暴動と化しているハトの群れを本部に閉じ込め、開いている窓は無いだろうなと目を走らせている。
「とんでもない目にあった・・・」
あちらこちらをハトにつつかれていたい。
その傷をさすりながらクローロスは珍しく文句を言う。
「ハトは平和の象徴じゃなかったっけ?」
すると、目の前のドアが開こうとしているではないか!
「!!」
そのドアが開けばまた鳩の総攻撃に襲われる。
それは避けたいと、必死の形相で扉を懇親の力で押さえつける。
鳩め、なんと言う力だっ
彼女にしては珍しく心の中で悪態をつく。
背中で扉を押し続ける彼女は、けれどその力が鳩に負けているので驚愕する。
扉を内側より開けようとするものは一体どんな力量を持っている鳩なのだ?!
クローロスは興味がわいて仕方が無い。
彼女の研究癖が、好奇心がその招待を見たくて仕方が無いと悲鳴を上げる。
だがつつかれたくない本人はそれをこぞって無視し扉を押す手に力を込めた。
「あーけーろー」
すると扉の内側より声が聞こえてきた。
その声によりピタリとクローロスは動きを止める。
振り返れば半開きのドアより手が見えている。
おそらくウウィントだろう。
何故この人がここに。
いぶかしげに眉を寄せるクローロスだったが、ウウィントが動くたびに鳩の羽と鳩の餌が撒き散らされるので、この扉を開けてはいけないと察した。
「すみません できません!鳩をどこかへやってください」
早口で応答する彼女だったが、かつんっと音がして横を向く。
頭のすぐ横に、釘が突き刺さっている。
「・・・え?」
今までこんなものはなかった。
五寸釘ほどの釘が刺さっているのでクローロスはビックリする。
コレはいったいどこから?
「あーあ、動かないでよ お譲ちゃん」
すると声が聞こえてくる。そちらの方向を見上げると数件先の屋根に一人の男がいた。
黒い装束をみにまとう若年性の男。
「よけないで・・・?」
つまりはコイツが投げたのか。とすぐに解析したクローロス。
でも一体なんでこいつは投げたのだろう。
「悪い悪い、お譲ちゃんなんて呼んだら失礼だよね」
その男はもう一本目の釘を構えて言う。
「だって一国の次期女王様だものね」
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