二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- オリバト2
- 日時: 2010/07/13 03:47
- 名前: sasa (ID: q6B8cvef)
オリバト2を書きたいと思います。
前作と同じで残酷な描写がありますので注意してください。
- Re: オリバト2 ( No.15 )
- 日時: 2010/07/19 09:18
- 名前: sasa (ID: q6B8cvef)
教室からそっと首だけを出し、きょろきょろと周囲の様子を伺って誰も居ないことが確認できると廊下を走り、次の教室に身を隠す。
これを幾度となく繰り返して、安西詩織(11番)は少しずつ移動していた。
目的地はなかったけれど、一つのところにとどまるのも怖かった。
18時の放送で、クラスメイトがここ一時間半の間に3人も死んだことを知ったときにも、その放送の数分後にどこか遠くで銃声のようなものが
聞こえたときにも詩織はさほど驚かなかった。
むしろ、やっぱりと、納得したのだった。
市川真弓(17番)とはまた違った意味で詩織には友達がいなかった。
詩織は地味ないじめられっこだった。
いつも、綾瀬晴美(10番)を筆頭とする、相葉有香(3番)、相本幸恵(4番)、池田真央(14番)の不良グループに何かしら陰湿ないじめを受けていた(でも、池田はもう死んだ。ザマアミロ!)。
金品を巻き上げられるのはもちろんのこと、休み時間には禁止されている校外への買い物に走らされることが日常だった。
ただ、詩織にとってはいじめを行う不良グループも、直接いじめはしないものの何も助けてはくれない傍観者達も大差ない存在として認識されている。
だから、この殺し合いにおいても詩織は誰の力も借りずに一人でやっていく、そういうつもりだ。容赦なく。
誰も信用なんてできないのだ。
詩織はまた、ドアの端から突き出した首を、ゆっくり右左に向け(二つのおさげがぶんぶん揺れた)、安全を確認すると、廊下に身を躍らせた。
隣の教室にそっと滑り込む…。
人の気配がして詩織は上着の下に隠し持った武器をそっと握った。
「詩織!」
相葉有香の声がしたと同時に教室に電気が灯った。
そのおかげで、教室には他に相本幸恵と綾瀬晴美がいることがわかった。
立ち位置から想像すると、電気をつけたのは、相本であるらしかった。
相葉は入り口近くに立っており、綾瀬は教室の椅子に腰掛け、高らかに足を組んでいた。
——ああ、なんてこと!電気なんかつけたら、教室から漏れた明かりで、ここに人が居ることがバレちゃうじゃないの!馬鹿!
天敵に近い不良グループに出くわして、しかし、詩織が考えたのはそんなことだった。
そんな余裕しゃくしゃくの詩織の態度が気に入らないのか大柄な(というか中学生にしてはどう見たって恰幅が良すぎる)相本が、一歩、歩み寄って言った。
「これは、没収」
手始めに、詩織のデイパックを奪い取った。
まだ、詩織の隠し持った武器には気付いていない…。
相本は、デイパックを綾瀬に手渡した。
綾瀬が、一見真面目そうに見える鼈甲淵のメガネを意地悪く光らせて、それを受け取った。
綾瀬の手には小型拳銃が、相葉の手には大ぶりのナイフが、それぞれ握られている。
恐らく相本のものであろう斧は、電灯のスイッチのある壁際に立てかけられてある。
「武器は?詩織、武器も貸しなさいよ」
言ったのは綾瀬だったが、ナイフをちらつかせ、脅して見せたのは相葉だった。
正直、頭に一杯白いリボンを付けて、ロリロリチックにキメている相葉がナイフを持ってすごんだところで、詩織は特に怖いとは思わなかった。
いや、綾瀬の拳銃だって、素人が単発で撃ったところで当たりはしないと思うと、恐怖に値しなかった。
なにしろ、詩織の武器は——。
「何、ぐずぐずしてンのよ!ほら!貸しなさいったら!」
睨みを利かせる三人に、詩織は入学以来初めて、反抗してみようと思った。
ぐっと両足で、地面を踏みしめ、ありったけの力を目に込めて、睨み返す。
「嫌よ」
三人は顔を見合わせてけたたましく笑った。
声が廊下にまで響いたが、三人とも気にする風ではなかった。
——詩織が、あの、弱っちい詩織が、反抗ですって?
ひとしきり腹を抱えて笑うと、拳銃を持ったのとは反対の手で眼鏡のつるをつまんで持ち上げながら、綾瀬が言った。
「別に、取り上げようっていうんじゃないのよ?いつも、喧嘩のとき、私たちが守ってあげてるでしょ? それと同じよ、あんたの武器で、あんたを守ってあげるって言ってんのよ。さ、武器を、貸しなさい!」
——違う!喧嘩だって、頭数合わせのために、無理矢理連れていかれたんだ!それに、
「貸したお金、返してくれたことなんて、一度もなかったじゃない!」
低い声で一言一言区切りながら、吐き捨てるように言い終え、詩織は、腰を落とし、隠し持っていた武器を構えた。
三人が息を飲み身構えたが、その瞬間には詩織のサブマシンガンがたかたかと軽快な音を奏でていた。
「晴美! 有香!」
穴だらけの綾瀬が椅子からずり落ち、近くに倒れていた相葉に折り重なった。
比較的軽傷の相本は、既に二人が絶命しているとは思い至らず、弾丸が貫通した足を引きずって、駆け寄ろうとした。
——そうだ、晴美は拳銃を……
相本に向かって、詩織が至極冷静に引き金を引いたので、その思考はそこで中断せざるを得なかった。
【残り 14人】
死亡者:相葉有香(3番)、相本幸恵(4番)、綾瀬晴美(10番)
序盤戦終了
- Re: オリバト2 ( No.16 )
- 日時: 2010/07/17 16:21
- 名前: sasa (ID: q6B8cvef)
序盤戦終了時点でのネタばれ名簿
01番阿会裕菜
02番逢坂雫
03番 死亡
04番 死亡
05番赤石渚
06番赤本涼子
07番 死亡
08番秋元蘭
09番秋山里奈
10番 死亡
11番安西詩織
12番 死亡
13番井内光子
14番 死亡
15番石井佳織
16番石川亜美
17番市川真弓
18番市木早苗
19番 死亡
20番稲川直美
21番犬飼絵美
22番 死亡
- Re: オリバト2 ( No.17 )
- 日時: 2010/07/19 09:20
- 名前: sasa (ID: q6B8cvef)
血の臭いが猛烈に立ち込める中、安西詩織(11番)はぼんやりと立ち尽くしていた。
相葉有香(3番)、相本幸恵(4番)、綾瀬晴美(10番)を詩織が殺害してから15分少々が過ぎていた。
あの、憎い不良達はもういないのだ。
そう思うと心が晴れ晴れしそうなものだったが、何故だか詩織の心は重いままだった。
再びさなえは、焦点の定まらない目を、三人の死骸にやった。
椅子からずり落ちるようにして転がった晴美の眼鏡のレンズは片方が割れている。
もう片方のレンズにも、蜘蛛の巣状にひびが入っていた。
詩織が幸恵に向けて二度目の銃撃を行った際に流れ弾にあたったのか、晴美の左腕は丁度制服の肩のところの縫い目あたりから、
千切れかけていた。
晴美の体の下からは、有香の頭部が見えていて、その頭部を飾り立てている白いリボンが、どれも今は赤と白の斑模様になっている。
もうしばらくすれば、赤いリボンへと変貌を遂げるだろう。
灯りが灯っているせいで人がいるのがバレバレだとか、銃声を聞いた誰かが様子を伺いにくるだとか、三人の武器を持って逃走するだとか、そういう考えは詩織には起こらなかった。
突然、背後から誰かに突き飛ばされて、詩織は三人分の血の海に向かって転倒した。
制服が一瞬で血まみれになり、まるで新たに死体の仲間入りを果たしたかのようないでたちになった。
詩織を見下ろしているのは、市川真弓(17番)だった。
右手に持った拳銃が詩織を狙っている。
マシンガンで応戦しようとして、それが真弓の足元に転がっていることにようやく気付いた。
晴美の支給武器も拳銃だったが、詩織が手を伸ばして拾い上げるには少し遠い位置に落ちている。
真弓は無言のまま(ただ、満面の笑みを浮かべてはいた)、そして銃口を詩織にむけたまま、マシンガンを拾い上げるやいなや、拳銃を捨てマシンガンに構えなおした。
銃口はもちろん、詩織に向いている。
「やめて!」
戸口の方に向かおうとしたが、血溜りに足が滑り、立ち上がるまでもなく再び詩織は転倒した。
真弓は、ふっと勝ち誇ったように唇だけで笑うと、引き金を引いた。
詩織だけでなく、死んでいる三人にも念のため弾丸の雨を降らせ、そうしてようやく真弓は銃撃を停止した。
脅しに使用したモデルガンを軽く投げ捨てると、晴美の拳銃と有香のナイフをまず拾い上げ(斧には目もくれなかった)、
四人の荷物を暫らく漁って拳銃とマシンガンそれぞれの弾薬と少しの食料を自分のデイパックに移した。そしてすぐ立ち去った。
電気を消すことはしなかった。
【残り 13人】
死亡者:安西詩織(11番)
- Re: オリバト2 ( No.18 )
- 日時: 2010/07/19 08:05
- 名前: sasa (ID: q6B8cvef)
三時間ほど前に断続的に派手な銃声がした(大きく分けてニ度に渡ったように思えた)。
それから今までの間、銃声も大きな物音も特に聞こえない。
殺し合いは暫らく停滞しているのだろうか。
それとも静かに、しかし確実に、ゲームは進行しているのだろうか。
赤本涼子(6番)は、足を止めて、自分のやや後方を歩く赤石渚(5番)を振り返った。
現在二人は、B402という、B棟四階の東の端にある大教室に向かっている。
というのも、10分ほど前、渚の「コックリさん」が、「仲間と合流したいならB402に向かえ」との指示を出したからである。
(ちなみに呼び出した霊魂は、出発前に死亡した飯田愛美(12番)だった。)
涼子は渚ほど真剣にオカルトの類を信じていなかったが、18時少し前に渚はこう言ったのだ。
「今、加奈が、井内さんに気を付けてね、って、言ってた」
そしてその直後の放送で、伊藤加奈(19番)の死亡が告げられた。
渚を信じない理由はなくなったも同然だった。
仲間と合流。当座、二人の行動目的は、その一点のみであった。
なんとかして、逢坂雫(2番)、秋元蘭(8番)、石井佳織(15番)の誰かと合流したかった。
五人揃えば、実にクラスの四分の一は、味方だということになるし、頭の切れる蘭がいれば、何らかの脱出方法を考案できそうな気がする。
それは、根拠のない、不思議な自信だったのだけれど。
教室にたどりつき、相変わらず涼子が前、渚が後ろという順のまま、涼子がそっと薄っぺらい木製のドアに手をかけた。
涼子の右手には支給武器の拳銃が握られている(渚の武器はどういうわけか、髪飾りだった。涼子の武器は「ベレッタ」で、渚の武器は「バレッタ」。まるきり悪い冗談のようだった。)
教室に足を踏み入れたとたん、がたがたっと物音がして、人が物陰に隠れる気配がした。
涼子はとっさに平手で壁を叩いた。
一般的な教室であれば、電灯のスイッチがあるであろう位置を狙って。
それはまさにビンゴで、教室がぱっと明るくなり、人影が一瞬浮かんで、机の影に消えた。
——しまった、二人組だ!!!
二人組は、まずい。自分達のように、出席番号が隣り合ってたりして、合流して手を組んでいる者の可能性が、高い。
そして、雫、蘭、佳織の三人は、ものの見事に出席番号が離れていたのだ。
一瞬の判断だった。
手近な机の影に滑り込み、身を低くして、涼子はがむしゃらに五発、立て続けに引き金を引いた。
弾切れの心配はない。
予備マガジンにはあらかじめ弾丸を入れてあったし、それに切り替えたあとは、今使っているマガジンに、渚が新たに弾丸を込めなおしてくれる、そういう手はずになっているのだ。
ただ、涼子のそれはやはり素人の射撃でしかなく、銃口は衝撃で大きく跳ね上がり、弾は全て狙いを逸れて天井に穴を開けただけだった。
舌打ちをして、涼子は銃を構えなおし、もう一度、一発撃った。
今度は天井直撃ではなかったが、窓ガラスの上部に放射状のひびが入った。
背後で渚が手早くデイパックから、弾丸の箱と予備マガジンを取り出す気配がした。
「待って、渚。——撤退しましょう」
出入り口のドアへはほんの十歩ほどの距離だし、そのドアは開け放ったままだった。
それに、二人組が打ち返してこないことから、拳銃を持っていない可能性が高いと考えられ、容易に逃げ切れそうだった。
こくり、と渚は頷いた。
渚にも涼子の考えていることは理解できた。
涼子の今の技量では、物陰に潜む相手を射撃するのは無理だし、撤退するのが賢明だろう。
「じゃあ、私がもう一発撃つから。それが合図よ」
ニ、三秒の間を置いて、涼子は再び拳銃を撃った。
当てるつもりは毛頭なかった。単なる撤退の合図だったのだから。
けれど突然、何故か、机の影から、一人が立ち上がったのだ。
蛍光灯の下、立ち上がったのは、逢坂雫(2番)だった。
全てがスローモーションのように、涼子には見えた。
机からは逸れて、まっすぐ吸い込まれるように、弾丸は雫の胸元へ…!
ぱん、ぱん、ぱん、という三発の銃声と一発の腹部への鈍い衝撃に、半ば放心状態だった涼子の精神は、現実に引き戻された。
雫の隣に、硝煙を上げる拳銃を手にして、黒縁の眼鏡がお馴染みの秋元蘭(8番)が、無言で立っているのが見える。
蘭の手に、もう一度、ぐっと力がこもった。——撃たれる!
「涼子!!早く!」
ドアのところで雅代が叫んでいる。そうだ、逃げなければ。
涼子は立ち上がり、渚の元へ走り寄った。
そのまま二人は駆け出したので、蘭の撃った弾丸が、ついさっきまで涼子が居た位置に正確に着弾したことは、知る由もなかった。
【残り 13人】
- Re: オリバト2 ( No.19 )
- 日時: 2010/07/19 08:17
- 名前: sasa (ID: q6B8cvef)
秋元蘭(8番)と、逢坂雫(2番)はプログラム開始当初から、B棟4階の東端にあたるB402教室に潜伏していた。
蘭には10歳年の離れた姉がおり、その姉はここ桃花女子大学の卒業生だったので、蘭は学園祭を見物しに、仲良しの雫とこの大学を訪れたことが何度かあった。
だから、皆がバスを降りてすぐ、A棟、B棟、もしくはC棟の出入り口を目指したのとは全く逆方向に、もう一つ、図面にも載っていないような裏口がD棟にあることを、二人は知っていた。
もっとも、あのバスの中で、何か合図を送りあったというわけではない。
けれど、蘭の期待通り、D棟の裏口で雫は待っていた。
こうして二人はめでたく合流できたのだった。
すぐに二人は、とりあえずB402教室に移動して、それから、ずっと今まで動きを取らずにいたのだ。
下手に動き回るよりは、じっとしている方が得策だ。
何故なら歩き回るよりずっと誰かと遭遇する確率は低かったし、何よりこの教室に何者かが侵入してきても、うろうろしていて偶然出くわした場合より、断然、心の余裕が違う。
もちろんこれは、蘭の提案で、この状況でもいつもと変わらず冷静な蘭に雫はとても感心したものであった。
第一回の放送が終わり、廊下に電気が灯いた後も、月明かりが僅かに差し込むこの教室から暫らく移動することはしなかった。
ただ、二十三時からの禁止エリアに、丁度隣接するB402教室の前廊下が指定されていて、廊下が通れなくなる前には、場所を移ったほうが良いだろうという判断はしていた。
「ネット、繋げられないかな。この首輪の仕組みさえ解ればどうにかなりそうなんだけど…」
蘭の移動教室用鞄には、愛用のノートパソコンが押し込まれている。
が、残念ながら、携帯電話の方は電池が残り僅かとなっていた。
そもそも、このプログラム中に普通に電話が使用できるとは考えられない。
「ねえねえ、会長。オフィスコンピュータ教室っていうのがあるよ。」
「うーん、回線が生きてるかどうかは疑問だけど、一応行ってみる価値はあるかもね」
「じゃ、行こ」
当座、次の目的地をコンピュータ教室に決め、雫が差し出した図面で位置を確認すると、二人はデイパックに一まとめにした荷物を手に取った。
「…このまま誰にも会えないままなのかなあ、私達」
俯いて、ぽつりと雫が呟いた。
つい数時間前まで、教室でじゃれあっていた友達と、今は敵対しているだなんて、志乃にはとても考えられなかった。
飯田愛美(12番)の死は勿論、雫も見た。
だが、それは新担任の相沢リカの仕業だったし、その後の池田真央(14番)や井本彩(22番)、伊藤加奈(19番)に関しては、目撃していない。
甘い考えではあったが、その三人は争うことを嫌って自殺でもしたのではないだろうか、本当は誰も殺しあうつもりはないのではないだろうか、とさえ、雫は思っていた。
「そんなことないかも知れないよ。あくまでも、可能性は低いんだけどねどうにかこの首輪に関する情報を集めて、外すことが出来たら、皆で脱出する事だってできると思う」
ぱっと雫の表情が明るくなった。
「でも、雫。誰彼なしに集めて脱出するわけにはいかないでしょ。やる気になっている子だって、きっといる。出来るだけ、私達二人で行動した方がいい」
「里奈はどうかな、委員長だし、頭いいし、里奈が居たほうがきっと情報収集もやりやすいよ。それに、渚とか、涼子、佳織なんかも絶対協力してくれるよ」
「そうね」
もはや、お互いどんなに説得しあっても、無駄だ。
少なくとも蘭はそう思った。
どれだけ説得しても、雫は自分の考えをきっと変えることはないだろう。
…他人を信じるということは、本来とても、素晴らしいことなのだけれど。
蘭の短い返答と沈黙を、肯定と取り、雫は満足そうに頷いた。
雫の首には、彼女の武器であるお守り(家内安全)が掛けられていた。
もちろんそれは、単なる気休めでしかなかったのだが。
蘭の武器はなんとかいう拳銃で、今は移動時の万一に備えて、蘭の右手に握られている。
突然、ぎぎっと教室前方の木製のドアが軋み音を立てて開けられた。
咄嗟に机の影に隠れようとして、慌てた雫が、近くにあった椅子を派手に倒してしまった。
ここに人がいまーす、見つけてくださーい!と言わんばかりに、音が響き渡る。
ドアを開けた誰かは、教室の電灯をつけ、すぐさま、乾いた何かが弾けるような音が続けざまに五度鳴り響き、天井に穴が幾つか開いた。
さらにもう一発。今度は自分達が背にしている窓に放射状のひびが入った。
こちらと同様机の影に身を潜めつつ、銃口を向けているのは…、
「ウソ! ……涼子と渚じゃない!?」
蘭が一瞬早く雫の口を手で塞いだが、どちらにしろ相手には聞こえていない風だった。
——だから、言わんこっちゃない!!
蘭もまた、拳銃を相手に向けようとしたが、その銃身を握って雫が言った。
「何するの? 撃つの? 涼子を? 会長が?」
「だって、撃ってきたのよ?やる気なのよ、あの二人」
「私達が居たことにびっくりしただけかもしれないじゃない!撃つのはやめてよ!」
雫は蘭が止める間もなく立ち上がった。
運悪く、次の銃声と、ほぼ同時だった。
——私達、あなた達と戦う気なんてないのよ、だから——
立ち上がり、両腕を広げてそう言おうとしていたのだが、それは出来なかった。
偶然にも銃弾は雫の胸元へ、綺麗にまっすぐ飛んできたので。
自分の隣に倒れこむ雫には目もくれず、蘭は引き金を三度引いた。
こっそりガンマニアだった秋山里奈(9番)が、以前ふざけて教えてくれたとおり、両手でしっかりとグリップを維持し、発射時の銃口の跳ね上がりには充分に気をつけた。
あのときは冗談だったのに、まさか役に立つ日が来るとは思ってもみなかった。
三発の銃弾のうち、一つは確実に赤本涼子(6番)の腹部を捕らえたように見えた。
さらに引き金を立て続けに引いた。
後方に居た赤石渚(5番)は既に、入ってきたドアの方へ逃走を開始し、赤本もまた、そちらへ、負傷したとは思えない素早さで走り出していた。
蘭はさらに撃とうとしたが、弾丸が尽き、がちん、がちんと鈍い音がしただけだった。
赤本と赤石は、振り返ることもなく、脱兎の如く撤退していったが、蘭は走って追うことはしなかった。
ただゆっくりと、倒れた雫を振り返った。
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