二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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オリバト2
日時: 2010/07/13 03:47
名前: sasa (ID: q6B8cvef)

オリバト2を書きたいと思います。
前作と同じで残酷な描写がありますので注意してください。

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Re: オリバト2 ( No.1 )
日時: 2010/07/13 03:59
名前: sasa (ID: q6B8cvef)

住吉女学院 3年特進(T)組 生徒名簿
01番阿会裕菜
02番逢坂雫
03番相葉有香
04番相本幸恵
05番赤石渚
06番赤本涼子
07番秋葉優子
08番秋元蘭
09番秋山里奈
10番綾瀬晴美
11番安西詩織
12番飯田愛美
13番井内光子
14番池田真央
15番石井佳織
16番石川亜美
17番市川真弓
18番市木早苗
19番伊藤加奈
20番稲川直美
21番犬飼絵美
22番井本彩

Re: オリバト2 ( No.2 )
日時: 2010/07/13 04:15
名前: sasa (ID: q6B8cvef)

九月の第二週の、二学期のメインイベント学園祭が終了した頃からか、それまでの肌を刺すような太陽光も随分と柔らかくなり、朝晩は冷え込むようになってきた。
現在、十月一日からの衣替えに先立っての調整期間ではあるが、教室内の殆どの生徒が長袖のブラウスを着用している。
特に今日は朝から肌寒く、上着まで着ている者は少ないものの、ベストを着ている生徒が目立つ。

私立住吉女学院の制服は、中等部は桃色、高等部は淡い水色を基調としていて、冬服は、上着、ベスト、スカートから成る。
上着もベストも、いずれも至って清楚なデザインであり、大きめの三つボタンと、上着の左胸に濃い同系色の糸で校章が縫いこまれたポケットが目を引く。
プリーツがたっぷりついたスカートは、丈をいじくれないようにするためか、裾に別布でフリルをあしらってある。
そのスカートに合わせてデザインされた純白のブラウスの袖にも、豪華にフリル加工がなされている。
もちろんブラウスの胸ポケットにも、上着のものと同様の糸で校章が刺繍されていて、また、長い襟は、顎の下で交差させ、大きなボタンで留めて、リボンのようにするようになっている。
他校の生徒からも可愛いと評判の制服である。

 ——こんなにみんなベストを着てるんだったら、私も着てくれば良かった。

秋葉優子(7番)は、三年特進組(通称T組)の教室を見回して、少し後悔した。
優子は先日まで日当たりのいい窓際の席だったのだが、昨日の席替えで、教室後方廊下側に移動したのだった。
優子はさらに教室を見回した。

丁度昼休みが半分過ぎた時間だったが、食堂が改装で閉まっているために、また、普段なら天気の良い日であれば中庭で弁当を広げる者もいたが、今日はこの昼休みの後には体育の授業があって時間的に余裕が無いために、ほぼみんな教室で昼食を摂っていた。

教室の前の方で何か(多分今日発売された漫画雑誌だ)を囲んでキャアキャアと騒いでいるのは、逢坂雫(2番)、赤石渚(5番)、赤本涼子(6番)、秋元蘭(8番)、石井佳織(15番)の五人だ。
少し離れた所から彼女達の様子を微笑ましそうに見ているのは飯田愛美(12番)で、大人びた様子の彼女はこのグループの保護者のような存在である。

それとは正反対の教室後方に目をやると、相葉有香(3番)、相本幸恵(4番)、綾瀬晴美(10番)、池田真央(14番)、それに安西詩織(11番)が机を向かい合わせにくっつけて、まだ弁当を食べていた。
髪を派手な色に染めたり目立つピアスを付けたり、少し不良じみた風体の有香、幸恵、晴美、真央と一緒にいると、普段から地味な詩織が妙に目立って見える。
ときおり下品な笑い声を交えながら食事を続ける彼女達の中で、詩織は一人黙々と箸を弁当箱と口に往復させていた。

さらに視線を動かすと、教室中央付近の机のところで、ブラスバンド部員の稲川直美(20番)と犬飼絵美(21番)が楽譜を広げてなにやら相談している様子が見える。
先日の学園祭では、優子もブラスバンド部の演奏を聞きに行ったのだが、お嬢様然とした絵美にはフルートがとてもよく似合っていた。
直美はパーカッションであるが、クラス一の小柄の優子よりは幾分体格が良いものの、それでも充分小柄で、大きなティンパニを叩く姿には少し感動させられた。

「寒いの?」

いつの間にか郁美の席の横に、秋山里奈(9番)が立っていた。
優子とは幼稚園の頃からの、かれこれ十年近い腐れ縁である。

「良かったら着なよ」
「えっ、いいよ、いらないよ」
「いいから」

里奈は自分の上着を脱ぐと、優子に羽織らせた。
上着は里奈の体温で変に温かかった。

「優子は寒がりだからな」

それで、昨日の帰り道で里奈に、昨日の席替えで窓際の席を追われたことを、ぼやいたのを思い出した。

「じゃあ、ありがたく借りておくね」

そう言って少し笑ったときに、教室の前側のドアが開いて、どやどやと数人が入ってきた。

阿会裕菜(1番)、井本彩(22番)のバレー部員達を筆頭に、井内光子(13番)、石川亜美(16番)、市早苗(18番)、犬飼絵美(21番)、運動場でバレーボールのパスをして遊んでいた面々だ。
全員次の授業に備えてジャージ(制服と同じ桃色だが、保母さんのようで、こちらの評判はイマイチだ)に着替えてある。
いや、予鈴が鳴るまで遊んでいるつもりだったに違いない。
しかし彼女達は教室に戻ってきた。

体育委員の光子が、教室を見回して大きな声で言った。
「ええと、次の体育は保健の授業になりましたー。予鈴が鳴ったら筆記用具を持って視聴覚室に集合してくださーい」

そう言うと、適当な席に腰掛けて、6人で声高に雑談を始めた。
相変わらず雑誌を囲んで騒ぐ岡本達に、体育会系6人組、小声で話していたかと思うときおり下品に笑う不良組5人(実質4人だったが)の騒々しさに、窓際の席で一人読書をしていた市川真弓(17番)は顔をしかめた。

予鈴まで間があったが、優子は机から筆記用具を取り出し、移動教室時用の鞄(筆記用具をはじめ、財布など貴重品をこの鞄に入れて持ち歩くのが校則だった)に放り込んで立ち上がった。

「市川さーん。私たちと一緒に視聴覚室に行かない?」

正直放っておいて欲しかったのだが、優子の気持ちは嬉しかったし、里奈とは家も近くて比較的親しかったので、真弓は頷くと本をぱたんと閉じた。


【残り 22人】
 

Re: オリバト2 ( No.3 )
日時: 2010/07/13 04:18
名前: sasa (ID: q6B8cvef)

「先生遅いねー」

阿会裕菜(1番)が、体育委員の井内光子(13番)に小声で言った。
三十分ほど前に始業のチャイムが鳴ったにも関わらず、体育教師はなかなか姿を現さない。

昼休みと違って、そこは受験を控えた特進組の生徒達らしく、私語も無く、それぞれが移動教室用鞄(学校指定のピンクのチェック布の小さなナップザックだ)に入れて持参してきていた単語帳や参考書を開いて自習している。
視聴覚室の上は空き教室で、近くの音楽室では授業をやっていないのか、自習をするには絶好の環境だ。
いや、ノートに絵を描き付けている者や、教科書に載っている人物にヒゲを生やしてみたりしている者なんかもいるが、それでも
大方の生徒は、エスカレーター式に系列高校に入学するのではなく、有名高校合格を目指して今日も真面目に、勉強に励んでいた。

そう、10月、11月には推薦入試だってあるのだ、うかうかしてはいられない。

「先生、呼んでこようか」

光子が席から腰を浮かしかけ、皆の抗議の視線を感じて、座りなおした。
皆、できれば保健の授業なんかを受けるよりも、むしろ主要五科目の自習がしたいと思っているのだ。
先生が教室に来ないのなら、それはそれでいいじゃないか?

「窓、開けていい?なんか空気がよどんでる気がするのよねぇ」

そう言って、赤石渚(5番)が席を立った。
いや、立とうとしたのだが、足に力が入らなかったのか、膝がかくんと折れ、床に転がった。

「渚!どうしたの!大丈夫?」

すぐそばの席に座っていた赤本涼子(6番)が駆け寄ろうとしたが、彼女もまた、立ち上がることはならなかった。
足に、力が、入らない……。

それで、教室中の者が異変に気付いた。
しかしもはや誰一人立ち上がることのできるものは居なかった。

薄れゆく意識の中、涼子は、教室の天井に穴があいており、何かホースのようなものがその先端を覗かせているのを見た。
恐らくそこから、催眠効果のあるガスか何かが教室内に放出されているのだろう。
そしてそれはきっと昼休みが済んで、皆がここに集まったときからそうなのに違いない。


だが、いずれにせよ、もう、遅かった。


【残り 22人】

Re: オリバト2 ( No.4 )
日時: 2010/07/15 18:19
名前: sasa (ID: q6B8cvef)

何か大声が聞こえたような気がして、秋葉優子(7番)は目を覚ました。

——ええと、何があったんだっけ。保健体育の授業。視聴覚室。赤石渚。ああ、視聴覚室で渚が倒れて。それから…、それからどうなった? 他の人たちは?

まるで、どこか水中を漂っているような、ぼんやりした意識の中、ようやく視聴覚室で何か異変があったという記憶を引きずり出し、重く、閉じそうになる目を気合でがっと開いて、ゆっくりと身を起こした。

自分が、何やら赤いシートの座席に座っていることがわかった。
左手の方には窓があり、かわいい熊さん模様の厚手のカーテンが閉められている。
そのカーテンに写る影で、窓には鉄格子のような物がはめられているようであることがわかる。
内装は観光バスのようだが、鉄格子とは、……まるで護送車のようだ。
ぶぶぶぶ、とシートから僅かに振動が伝わる、どうやらこの車はまだどこかへ向かっている途中のようだ。

ふっと右手の方を見ると、秋元蘭(8番)がシートに身を埋ずめて眠っている。

優子は体を捻って後方を振り返った。
どうやら座席の席順は出席番号順であるらしかった。
ほぼ半数の生徒は蘭と同様に眠っていて、残りの生徒もたった今目が醒めたばかりのようで、眠そうに目をこすっていた。
まるっきり、修学旅行に向かう夜行バスのような雰囲気である。


「皆さぁん!!オハヨウゴザイマ〜ス!!!」

今度は間違いなく、マイクを通した若い女性の声がした。
前に向き直ると、声のとおり若い、ギャルのような女性が立っていた。
ほっそりした体つきで、年齢は自分達と大差ないか、少しだけ年上のように見えた。
ショートカットの髪に、Tシャツ、ジーンズといったラフな格好をしている。
その彼女は、次の瞬間信じられないような言葉を吐いた。

「はいはいはい! 起きてくださいね〜! いいですかぁ、今日から三年T組の担任になりました〜、相沢リカでぇす! よろしくネ! キャハ!」

その声で大半の者が目をさました。

それでも何人かは眠っていて、隣の者に揺り起こされた。
「えっと、皆さんはぁ、今年度のプログラム対象クラスに選ばれましたぁ! オメデトー!あ。プログラム。プログラム分らない人、いますかぁ〜?分らない人は手を挙げてくださ〜い!」

相沢はざわついた車内の全員の顔をゆっくりと見回した。
それから、ぱん、と手を叩いてにっこり微笑んだ。

「さっすが特進組! みんな、よぉぉくわかってるみたいですね! 先生嬉しい!」

相沢は手にしたリモコンを運転手席の後ろに設置されたテレビに向けると電源を入れた。
既にデッキに入れられていたのか、ビデオテープが小さく音を立てて回り出し、画面いっぱいに大きく

『住吉女学院中等部 三年T組のみなさん おめでとう!』

の文字が表示された。
なんともどぎつい赤い色の文字だった。


【残り 22人】
 


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