二次創作小説(紙ほか)
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- 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜
- 日時: 2013/12/17 22:25
- 名前: ノヴァ (ID: 6.Nua64i)
初めまして!黒魔女さんが大好きな「ノヴァ」と申しますm(__)m
今回書くのは、以前投稿した作品のリメイク版の黒魔女さんです。
あまり見てもらえないくらいつまらない物だと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
注!
・荒らしはできるだけやめてください。
さて、主要人物の紹介です。
「黒鳥 雷夢」(くろとり らいむ)
・とある事情で未来から来たチョコと大形京の息子。主人公。
「ギューリット」
・雷夢と同じく未来から来たギュービッドの娘。雷夢の護衛兼インストラクター。
「アテナ・アルタイル」
・雷夢の家に居候している白魔女。(途中からの登場です。)
すみません、前置きが長くなってしまいましたm(__)m
では、どうぞご覧になってください!
一覧表
第1話>>1-19第2話前編>>20-57
第2話後編>>58-77第3話>>78-102
第4話>>103-112第5話>>115-135
第6話>>138-176第7話>>178-218
第8話
その1>>242-276その2>>293-
番外編>>237>>285>>289>>292
キャラ更新>>21>>34>>66>>136>>231
★オリキャラ募集中! 詳しくは↓を御覧ください!★
5年1組座席表&キャラ募集用紙>>279
読者様投稿のオリキャラ
あかり様「白鷺一子」>>220、Dr.クロ様「月闇クロ」>>222「リリス・メアリーナ」>>283
ゆきだるま様「鈴木大輝」>>223「尾周 大歩」>>280、モンブラン博士様「クレープ」>>226、「星野 天使」>>301
くもくも様「秋冬春夏」>>233、塩月夏子様「皐月 ジュン」>>282
陽和様「花舞 雅」>>305
プロローグ
心地よいそよ風で目が覚めた。目の前には青空が広がっていた。
「どこだ・・・ここ?」
体を起こし辺りを見回すと、雷夢がいたのは草原だった。それもとてつもなく広い。
雷夢には見覚えのない場所だった。
「おーい!誰かいないですかーー!」
力の限り叫ぶが、それに答える者は誰一人いなかった。ただ風が吹き去っていくだけだった。
「まいったな・・・。これからどうしよう・・ん?」
見ると遠くから何かが雨雲と共に近づいてきていた。
その巨大な体を大きくくねらせながら。
「そこの貴様!我が草原に入るとは許しがたし!!」
いきなり巨大な声が響いた、と同時に大粒の雨が雷夢に降り注いだ。
顔を滴る雨粒を拭いながら再び空を見る。
そこには、とてつもない威厳を放つ巨大な龍が怒りを持った目でこちらを睨み付けていた。
「我が怒りの雷に裁かれるがよい!!はぁぁぁぁっ!!」
龍が叫ぶと同時に一つの落雷が雷夢を狙っていた。当たれば即死は確実だろう。
「う、うわぁぁぁぁ!!・・・・・」
落雷は雷夢に逃げる暇も与えずその身体を電気で焦がし、焼きつくした。
跡には一片の炭も一塵の灰も残されていなかった。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照7千突破!】 ( No.261 )
- 日時: 2013/10/29 20:47
- 名前: ノヴァ (ID: 6.Nua64i)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode
「で、お前が黒魔女ってことアテナとテトには話したのか?」
「……二人にはここに着く直前に飛行機の中でカミングアウト済み。二人とも驚いていたけど納得してくれた」
「なるほど、ならよかった」
溜め息を一つ吐くと、雷夢はリモコンを手に取りテレビの電源を入れた。左上の時刻表示は8時30分。土曜のこの時間帯のアニメは教育テレビ以外に放送されていないので、仕方なくチャンネルをニュースをやっているものに切り替えた。
「うーん…………。あまり面白そうなニュースはやってないか」
チャンネルを幾度変えれど、やっているニュースは政事や経済、株の値動き等、雷夢にはほとんど得のないものばかり。つまらない、面白くない。
テレビでの暇潰しを諦め、今度はス魔ホを手に取ってみる。画面を待機状態から復活させ、ホーム画面右下に配置した竜の顔をしたアプリをタップする。何でも少し前にユーザーが800万を越したとかで話題になっているソーシャルカードゲームで、雷夢もス魔ホをもらってすぐやってみたのだ。
レベル上げの発展途上なので、これならいい暇潰しになるかもとそこそこの期待を持っていた。
『ただいま、メンテナンス中でございます』
ゲーム内のアドバイザーキャラの無慈悲な声が期待を打ち砕いた。
何故にこのタイミングでメンテナンスが入るのだ。普通なら明け方や昼過ぎだろう。
思いっきり床にス魔ホを叩きつけようとする衝動を抑え込み、雷夢は鞄の中から水着を引っ張り出した。こうなれば時間をかけて水着に着替えるまでだ。
そう決心した雷夢は、着替えの為シャワー室の扉を開いた。
素っ裸のテトがいた。
「ひぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? 雷夢殿の変態っ!!」
がす。
「がでっさっ!?」
テトの放り投げたドライヤーが雷夢の顔面にクリーンヒットした。
「雷夢殿! 我の着替えを覗くなど言語道断、コンゴ横断、畜生の極み!!」
「着替えてるなら一言言えよ! てかお前は早く身体隠せ!」
羞恥心の欠片も無く仁王立ちでこちらを睨み付けるテトに、雷夢は目をあさっての方に逸らしつつ健全な青少年の為に忠告した。幸いにもシャワー室の窓から入る風で靡いたカーテンでテトの身体の大部分がシークレットだけで済んだ。カーテンフィルター万歳。
「雷夢殿の女装強要拒否権なーし」
「ちょい待ておい!」
雷夢にとって悪魔のような言葉を発したテトは、側のボックスに入っていたタオルで身体を隠した。まずい、これは今回の旅行で雷夢が女装させられるイベントが起きるフラグでは無いだろうか。
「ああもうっ! 僕も水着に着替えたいから、早く着替え……。あっ、トイレ使えばいいか」
「トイレは麗奈殿が着替えに使っておるから使えぬぞ」
危なかった。テトの忠告がなければ、麗奈に何を仕出かされていたか分からない。こうなると着替えに使えるのは、リビング及び雷夢達がいるベッドルームしか無くなる。
「……黒鳥くん。残念だけど私はここで着替える」
雷夢の着替え場所はリビングに決まった。
本日二度目となる溜め息を吐きながら、雷夢はリビングに通じるドアを潜り抜けていった。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照8千突破!】 ( No.262 )
- 日時: 2013/10/28 21:37
- 名前: ノヴァ (ID: .1vW5oTT)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode
******
「よし、着替え完了っと」
水着への着替えを済ませた雷夢は、大きめのパーカーを羽織りタオル等の荷支度を始めた。羽織ったパーカーは勿論日焼け防止の物であり、色も日光を吸収しにくい白を基調としているため、陽射しに対し絶大な防御力を展開可能だ。日焼けで満足に遊べないなんて事がないように、念を入れて日焼け止めも塗っておいた。結局は泳げば海水で洗い流されてしまうのだが。
『ぐ…………っ! まさかあんたがそんな水着を着るなんて……。正直見くびっていたわ』
と、ドア越しにベッドルームから麗奈達の声が聞こえてきた。
『ふっふっふ…………。これで我が雷夢殿を悩殺するのはほぼ確定のようじゃな』
『まだよ、まだ終わらないわ! あんたのそんな貧相な水着より、私の水着の方が雷夢くんを悩殺するに決まってる!』
『洞窟の件では雷夢殿の足を引っ張る事しか出来なかった麗奈殿に何が出来たか! 常に雷夢殿を動かしてきたのは、一握りの恋人の我じゃ!』
『自分勝手な解釈をするんじゃないわよ!』
ここまでの会話を聞く限り、やはり雷夢の悩殺の件で揉めているようだ。これでもかというほど悩殺されないように気を引きしめておいた。
「おーいテト。お前ら着替え終わったなら早く行くぞ」
『あっ、雷夢殿は先に行っててほしいのじゃ』
意外な返事が返ってきた。てっきり水着姿を見せつけるため出てくるかと思ったのだが。いや、別に二人の水着を見たいとかそういう訳ではない。
『水着を部屋で見せてどうすんのよ! 水着が一番輝くのは海! これは鉄則でしょ!』
「知らんわそんな鉄則」
だがしかし、麗奈の言うことも一理ある。水着を着るのはプールや海なわけであって、部屋の中で過ごす為に着るものでは決してない。つまりは部屋の中で自分達の水着姿を見せるよりも、海で見せた方が魅せられるという事らしい。今上手いこと言った。
「じゃあ、僕は先に行ってるから。ちゃんと日焼け対策しとけよ」
そう言い残して、雷夢は自分達の部屋を後にした。
******
「…………あっ、アテナちゃん? 千代子だけど……」
今あたしはギュービッドに魔界携帯電話を借りてアテナちゃんと電話中。初めて掛けて見たけど繋がってよかったよ。連絡用にってわざわざ家まで来て電話番号とメアドを教えてくれるなんて、アテナちゃんどんだけ優しいんだろう。
まぁ、せっかく教えてくれた電話番号で話すのはギュービッドの修行に対する愚痴なんですが。
『あれ、千代子さんどうしたんですか?』
「うん。せっかく電話番号教えてもらったから、ちょっと話して見たいなって」
『あー……。すいません、せっかく掛けてもらったのに申し訳ないんですけど、私達、今から海に泳ぎにいく予定なので……』
えっ、海? 今は11月半ばの冬。なのに海で泳ぐって、寒中水泳大会でもやってるの?
『違いますよ。鳳さんがクラスの都合のついた人達を自分の家のプライベートアイランドに連れてきてくれてるんですよ。もう、そちらとは季節が正反対で。南の島ですし、皆で泳ごうって事になったんです』
へぇ、南の島かぁ…………。アテナちゃんが羨ましいよ。
『あっ、みんなが呼んでますので失礼しますね! お電話嬉しかったです!』
「うん、それじゃあね!」
私がそう言うと、アテナちゃんとの通話は切れた。
「いいこと聞いたねぇ」
「南の島なんて贅沢だねぇ」
むっ、そのアニメ声……。
やっぱり大形くん! てか、いつの間に私の部屋に!?
「黒鳥さんは電話に夢中だったから気づかないのも無理はないねぇ」
「それよりも雷夢くんも南の島にいるなら、是非会っておかなきゃねぇ」
えっ、大形くんどうやって南の島に行くつもり? まさかぬいぐるみ取って瞬間移動魔法使う気!?
「大丈夫だねぇ。ちょっと行ってすぐ帰ってくるだけだからねぇ」
「帰ってきたらすぐぬいぐるみは着けるねぇ」
そんな事言っても駄目! 大形くんの事は桃花ちゃんにしっかり見てもらって……。ってあれ、大形くんがいない!?
ちょっ、大変! 桃花ちゃーんっ!!
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照8千突破!】 ( No.263 )
- 日時: 2013/11/03 19:00
- 名前: ノヴァ (ID: /B3FYnni)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode
******
別荘を出て中庭を歩き続けること1〜2分。雷夢の目の前に広がるのは、広大な砂浜と果ての無い大海原に続く浅瀬の海。
砂浜は一片の汚れもなく、かといって銀世界ほど白くない美しさ。これ以上に形容できる言葉が見つからないのが残念だ。自分の語彙力の無さに腹が立つ。
海は透き通るような透明度に、サファイアを彷彿とさせる蒼がダイヤモンドのように輝いて、幻想的な風景を作り出している。
こんな形でしか表現のしようがない。
そんな光景が視界の端から端まで続いている。
「あっ、ライム! こっちこっち〜っ!」
その中で、こちらに向かって手を振る人影があった。若干の距離があるため近づいて目を凝らすと、それは水着姿のミカとその同室のメンバーだった。ミカが身に付けているのは、茶色のワンピースタイプの水着。オオカミっ娘なので、茶色の水着のチョイスは正解かもしれない。
「あっ、ミカ達の方が早かったんだ。……他には誰か来てないの?」
「ああ、それなら釣木くんがさっき釣り道具もって岩場に向かってったよ」
「やっぱ釣木は泳ぐよりも釣りなんだな」
釣木千鶴(つりき ちづる)は根っからの釣り好き少年であり、暇さえあれば落合川や電車を乗り継いで海釣りまでしているという。なんでも、父親が釣り堀、母親が釣具店、祖父が釣り船の船長という特殊な周囲の影響らしい。その腕前は大人顔負けで、夏休みにたった一人でカジキを釣り上げたとか。化け物か。
「あっ、ほらあそこ!」
ミカが指差したのは、砂浜の絶景を壊さない絶妙な位置に広がる岩場。その先の方で、日焼け対策万全の千鶴が竿を振っているのが見えた。釣糸がまっすぐ下に垂れているということは、カサゴでも狙っているのだろうか。
「あれ、そう言えばテトちゃんと麗奈ちゃんは? 一緒じゃなかったの?」
「あの二人は海で水着見せるために後から来るって。別に海で見せられようが部屋で見せられようが悩殺はされないけどね」
「ふぅん……。ま、悩殺されてもされなくても、ちゃんと感想はいってあげなよ。そうしてあげないと、彼女二人が傷つくよ」
あの二人と恋人関係になった覚えはさらさら無いのだが、折角のアドバイスなので取り合えず頷いておいた。
と、何故かミカがオオカミ耳を出してピコピコ動かし始めた。
「……あれ? なんか…………聞こえない?」
「ん、そうか?」
試しに雷夢も耳を澄ましてみるが、波の打ち寄せる音以外は何も聴こえないーーいや、何か聴こえる。
どどどどどどど………………。
遠くから何かが走るような音が聴こえてくる。それも半端な勢いではない。
どどどどどどどどどどどどどどどど…………!!
しかも徐々に音が大きくなっている感覚がしてきた。聴覚の誤作動でなければ、それはこちらに何かが近づいて来ているということに他ならない。
どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどっ!!
「…………ぉうぉうぉうぉうぉうぉうぉうぉうぉっ……!」
音の聴こえてくる方に目を向けると、謎の砂ぼこりが大量に舞い、その前方を誰かがこちらに向かって走ってくる。その勢いは雷夢の予想通り半端では無く、腕や脚が早く動きすぎて質量を持っていそうな残像を作り出し、手足が複数本生えているように見えるほどだ。
その人影が近づいて来るにつれ、こちらに向かって来る人物が誰なのかが明瞭に見えてくる。やがて、雷夢はその人物が誰なのか認識するに至った。
「うぉうぉうぉうぉうぉうぉうぉうぉうぉうぉうぉうぉっ!! rrrrrrrぅぁいむくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!!」
クレープという名の変態だった。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照8千突破!】 ( No.264 )
- 日時: 2013/11/05 23:30
- 名前: ノヴァ (ID: FX8aUA2f)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode
「よいしょっと」
今の状態のクレープに関わるとろくなことが無い事を察した雷夢は、透かさず中腰の状態で両手両足を大きく広げ、クレープと相対した。
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!? 雷夢くん、この私の為に水着姿で抱き締めてくれるというのか! よろしい、ならば私も雷夢くんの思いに答えてやろうではないか! 雷夢くんの圧倒的な性能に心を奪われ、やがて憎しみとなりそして宿命と成り果てんばかりの私のこの愛、全て受けとれぇぇぇぇぇぇぇえんとりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
「そい」
無防備にクレープが自分の胸元に飛び込んで来た瞬間、広げた両手で脇腹を固定。同時に身体の重心を後方にずらし自らの身体を傾けさせ、カタパルトの如くクレープの突進の威力を背後に受け流す。そしてそのまま、投げっぱなしジャーマンの要領で抱え込んだ変態を人間魚雷として打ち出した。
その圧倒的な加速力で打ち出されたクレープは、遥か彼方の沖合いに着弾した模様。
腐っても黒魔法使いだ。どうせ無事だろう。
「よし、じゃあテト達が来るまで遊ぼうか」
「う、うん……。そだね」
たった今起きた出来事を無かったことにする適応機制を即座に発動させ、何気無い雰囲気で、雷夢はミカに向き合う。若干戸惑った様子を見せていたミカであったが、それも数秒後には鳴りを潜めていた。
「なら、ビーチなら定番のビーチバレーでもする?」
「おっ、いいねそれ」
「よし、じゃあみんなでビーチバレーしよっ! 春夏ちゃん、久米島くん、愛ちゃん! 一緒にビーチバレーやらない?」
「ビーチバレー!? やるやるっ!」
「あっ、ちょっと待ってよ春夏ちゃん!」
「ビーチバレー…………か。ま、暇潰しにはちょうどいいか」
ミカのお呼びがかかるや否や、愛と一緒に水をかけあって遊んでいた春夏は愛の手を取って駆け出し、亮は手にしていたタブレット端末を傍らに置いていたバッグにしまい込むと、こちらへ向かって歩き始めた。
ちなみに春夏はチューブトップにボーイズレッグ、愛は紺のワンピースタイプのにエプロンを付けた独特の水着だった。例によって愛は背中に巨大注射器を装備している。あんなのを常時着けていて重くないのだろうか。
「亮もビーチバレーとかしたりするんだね」
「さすがにタブレットいじってばかりじゃ駄目だしな。運動しないと身体に毒だ」
「やっぱそうだよな。……よし! じゃあ早速いくぞ、春夏!」
亮との会話を終わらせると、雷夢は足下に転がっていたビーチボールを春夏目掛けて放り投げた。
「おっ、最初は私か! それっ、久米島!」
「今度は俺か……。ほれ、尾丘」
「えっ、私!?」
どうやら自分にボールが飛んでくるのが予想出来なかったらしく、激しく動揺しながらミカはボールを打ち返す。が、当然の如くボールは明後日の方向に飛んでいき、砂浜に落下ーー
「ていっ!」
しなかった。
突然、空中に黒い影が舞い、ボールにオーバーヘッドの一撃。その一撃にて放たれたボールは、誰も反応出来ないスピードで砂浜に着弾した。
「ふぅ……。なかなか気持ちのよい一撃じゃったのぅ」
空中で数回転した後着地したその影は、聞き慣れた口調で腰に手を当てて呟いた。
その影の頭部には愛玩さを感じさせる猫耳。目線を下にずらすと、そこにはしなやかにこちらを誘うような動きの尻尾。
ーー間違いない。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照9千突破!】 ( No.265 )
- 日時: 2013/11/12 20:07
- 名前: ノヴァ (ID: .1vW5oTT)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode
「待たせたのぅ、雷夢殿っ!」
くるりとその場で身を翻したその姿は、間違いなくテトだった。
ただ、いつもと違うのはその姿。その身に纏っているのは、黒と白が見事に調和したフリルの水着。よく見ると、足には黒いニーハイの踝から先がないやつを履いている。日焼け防止なのか色気を醸し出すのかは定かではないが。
「テ……テト?」
「どうかのぅ、我が選びに選んだ水着は?」
テトがこちらの顔を見つめながら近づくたび、雷夢は頬が熱くなっていくのを感じ取った。
まずい、可愛い。
絶対に悩殺されないと心に決めていたはずなのに、現在の雷夢のテトに対する好感度メーターは針が振り切れる一歩手前まで来ていた。もしここでテトが何かを仕掛けてくれば、確実に雷夢は悩殺されてしまう自信があった。
そう思いふとテトの様子を伺うと、何やら身体を小刻みに震えさせている。まるで何かを我慢するかのような。
「ら……雷夢殿…………」
「ん、どうしたテト?」
が、雷夢の問いに答えることなく、テトは身体の小刻みを維持しつつその場にしゃがみ始めた。
「も………………」
「も?」
「もう我慢できぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
「えっ、ちょっ!?」
突如謎の雄叫びをあげたテトは、目視出来ない程の速度の人間魚雷となり雷夢に抱きついた。
瞬間、雷夢のテトに対する好感度メーターが限界を突破しそうになったが、気合いと根性と少々の何かで針が振り切れる数ミリ手前で持ちこたえた。だが、それも長くは続きそうにもない。なんとか離れようと押し退けようとするも、テトは鉄にくっついたネオジム磁石のように離れる様子は無さそうだ。。
「雷夢殿雷夢殿雷夢殿雷夢殿っ!! もう二度と離したくないのじゃっ!!」
「お、おいこらっ! いい加減離れろっ! そもそもこんなことしてたら、麗奈がただじゃすまないぞ!」
そう、雷夢のもう一人の仮恋人、麗奈。テトとは同時に恋のライバルでもある彼女がこの場面を見れば、嫉妬のあまりあの手この手を使ってテトに反撃するに違いないはずだ。
だが、その雷夢の思惑に対しテトは口の端を少しばかり歪めて微笑んだ。
「麗奈殿に頼ろうとしても無駄じゃ……。さっき隙をみてベッドカバーにくるんで縛り付けて来たからのぅ」
「お前一体何やってんだ!?」
「これで雷夢殿と二人っきり……。さぁ雷夢殿、我と一緒にきらめく海へぁっ……!?」
その時、テトが突然顔を朱に染めその場にへなへなと座り込んだ。
「あんたの『ここ』が弱いのは知ってるのよ」
その後ろには、テトの尻尾を怒りと嫉妬の形相で掴む麗奈の姿。その身には紫のセパレートの水着。腰には黄色のパレオを巻いていた。
しかし、今の麗奈はそんな可愛らしい格好からは想像もつかない怒りがオーラとして滲み出ている。
「れ……れいな…………どにょ……?」
「あんた、よくも雷夢くんを独り占めにしようと……っ! しかも私をベッドカバーで身動き取れないように…………許さない……っ!!」
「わ…………わかったのじゃ……れいなどの……。だ……だからその手を……はなして……」
「私の怒り……お返しよっ!!」
「ちょっ…………!? れ……れいなどの……やめっ…………ひゃぁうっ!?」
先程のテトの行為でつもり積もった嫉妬の炎で蹂躙するように、麗奈はテトの尻尾を両手で触り始めた。麗奈の手が触れるたび、テトは頬を朱に染め四肢に力を無くし、抵抗する術を失っていく。
そんな光景が続くこと数十秒。とうとうテトは痙攣するだけで何も発しなくなった。
「おい……大丈夫か、テト?」
さすがに心配になりテトの身体を起こしてみると、その顔は完全に精気を失っていた。眼はぼんやりとして光がほとんど灯っておらず、口からはよだれが一筋垂れている。一瞬魂のような物が頭から出ていそうな気がしたが、呼吸はしているので死んでは無さそうだ。
ここにほっぽり出しておくと熱中症になる危険性があるので、取り合えずパラソルの下に寝かせることにした。
「これも自業自得よ。これに懲りて、雷夢くんの独り占めなんて考えないことね」
「言っとくけど麗奈もやりすぎだ。次にテトにこんなことしたら、麗奈との恋人関係は解消するからな」
「うっ…………わかったわよ。……ごめんなさい」
未だに嫉妬が拭い去れないのか、麗奈は渋々テトと雷夢に謝った。まぁ今回はテトにも非があるから許してやろう。これで万事は解決だ。
「じゃあ、ゆっくり休めよ」
パラソルの下に敷いたシートにテトを寝かせると、雷夢は濡らしたタオルを額に置いてやった。テトは先程の折檻で体力が底を突いたのか、いつの間にか眠っているようですやすやと寝息を立てている。
この機会にと、雷夢はテト面を向かって言えない言葉を耳元で呟いた。
「お前の水着姿、みんなの中で一番だったよ」
その時、テトがほんの少し笑顔になったような気がした。
「何だかんだ言って俺達空気だったよな」
「まぁあの状況で会話に割って入るのも野暮だしね」
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