BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

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ハイキューBL
日時: 2015/03/04 22:00
名前: 鑑識 (ID: xLaEhu2C)

はじめまして、鑑識と申します。腐男子です。
高1なのでそう大した文は書けないかとは思いますが、リクエストなどは随時募集です。めっちゃ募集です。

ここの利用は初めてなのでなにかおかしいとことかマナー違反とかあったらガンガン言っていただきたいです。思いつきで始めたのでだいぶ緊張してます。

内容としてはハイキュー!!、中でも大地さん受け、ぼくあか、及岩あたりが中心になるかと思います。最近は音駒にも手を出したがってうずうずしています。
更に月島も手を出してます。幅広げすぎてよくわからん。

文章の特徴としては、読んでいただければわかると思いますが無駄にめちゃんこ長くくどい地の文。オチがない。ありがち。そのあたりが上げられると思います。

ガシガシ声かけてください。どうぞよろしく。



11/?すいませんいつかわからないですが閲覧数10000オーバーありがとうございますありがとうございます!!これからもがんばります!


※荒らしは絶対にスルーしてください!

構わず私とのお話または小説に没頭してください。対応は絶対に私がします。みなさんの優しさと正義感を、悪い方向に取られることがないように、対応には気をつけて。
ひとまずの注意喚起、削除依頼等は責任をもって私がします。サイトの説明にも書いてある通り、このサイトには荒らしが来て当然だと私は思っています。ひとつひとつに目くじらを立てず、大人な対応をよろしくお願いします。

みなさんの理解と協力、どうかどうか。



ぼくあか >>01 >>28 >>29 >>40 >>56 >>83 >>84 >>91 >>92 >>93 >>130 >>131 >>144 >>145

月島くん関係 >>34 >>53 >>62 >>140←new(月影)

大地さん受け >>3 >>16 >>18 >>34 >>46 >>94
>>97 >>102 >>108 >>109 >>114 >>117 >>121 >>127 >>141 >>147 >>150 >>151 >>157 >>158 >>167 >>168←NEW!!(牛大フェア開催中)

↑編集がめんどくさウエッホウエッホ諸事情により更新止まってます。この中にないやつもだっぷり存在するので、あくまで参考程度に見てください。

その他

けんくろけん >>12 >>2 




いつだかわかりませんが二万オーバーうれしい!ありがとう!


Re: ハイキューBL ( No.227 )
日時: 2015/01/04 14:37
名前: 鑑識 (ID: xLaEhu2C)


【めんどくさくて辛くて虚しくて哀しくて苦しくて幸せなこと】



一回目は、幸せだった。彼という人物のすべてが流れ込んでくるような、一つ一つの所作に逐一胸が重くなるような、地に足ついているのに浮こうとしているような、そんな感じ。はっきりとした意識の中で、眼前に広がるのは色素の薄い瞳。今更緊張なんて微塵も感じるはずもなく、しかし濡れた瞳や光の届かない眼孔にはある種の興奮を覚えた。
じっくり、ゆっくり、丁寧すぎるくらいに丁寧なそれは、もういっそ人思いにと訴えかけたくなってしまうのだけど、そんなことをした暁には彼がふてくされて、一方的に責め立ててくることは想像に易かった。俺が彼のことをそうまで好きでなければ文句の一つもないのだけど、俺というやつは彼が喜ばないままに自分だけが愉しむことをよしとしない。
我ながら面倒な男だと心の奥底でひっそりほくそ笑みながら、太腿に咲いた紅い華を撫で付けた。

二回目は、獣のように。先程までの考え事とか彼を愉しませるとかそんな余裕なんてもう全く無いままに、押し付けられた質量をただただ受け容れる。痛みと違和感には慣れることなんてきっとこれからも無いのだけど、心が満たされるこの感覚には慣れてきた。慣れたと言ってもその感動が減るわけではなくて、上へ上へと積み重なるばかりで、崩れ落ちても周りを固めるそいつらは、余計確固たるものを作り上げていくのだった。
はじめのうちに叩いていた憎まれ口は、今や小学生低学年レベルの語彙力となって口をついた。鼻から口から漏れる声に嫌気がさす。少し頭を持ち上げて下唇をかんでやれば、血の味がした。

三回目は、少しだけしとやかに。ぐちり、と滑りを帯びて耳に残る音を立てていたものは、乾きと共に違和感を増幅させていく。既に痛みは感じない。
生理というやつは、お腹の奥底でフェンシングをされているようだ、とわかりにくいたとえ話を聞いたことがあったけれど、もしかすればこの感覚に近いのかもしれない。同じく内側から、突き上げられる感覚。やはり生理も慣れにくい痛みであるらしいし。どんどん要素が重なっていく。自分は男である筈なのだけど、もしかすればこのまま女になってしまうのかもしれない。もう二度も体内に注ぎ込まれたそれを、少しでも彼のために使えるかもしれない。
そうすれば今よりもマシな気持ちでいられるだろうか。彼との関係も、ずっと簡単になるのだろうか。
からからの喉から絞り出された声に、彼は蓋をした。

四回目は、半ば必死。そこまでしてこの行為に意味があるのだろうか。いや、俺が男である以上、少なくとも必要性は皆無だ。痛くて苦しくて、終わっても残るのは虚無感ばかりで、あぁもう考える度に嫌になる。
前に同じことを考えたとき、ネットで調べてみたけれど、幸福感というものが残るらしい。らしい、というのは、俺がそれらしき感情を抱いたことがないからだろうか。しかしやめられないということは、心の奥底でそれを求めているのだろうか、毎度感じているのだろうか。
わからない、わからない。何を考えているのかわからなくなってきた。腹の奥で踊り続けるそれに、臓器と意識が持っていかれる。もはや声さえ出なくなった喉は知らないふりで、床に落ちてしまった羽毛布団に手をかけた。

五回目は、流石に続かなかった。滴り落ちる液体の色は暗闇に見えないけれど、見えなくたって普段見慣れたそれの詳細くらいわかる。内側で留まるその液体は、俺の身体では処理することも利用することもかなわないから、きっと明日はお腹を下す。
下着だけを身につけて、顔を洗って戻ってきてみれば、強盗に荒らされたのかと疑うくらいの惨状だった。どうして壁に掛けていた絵画が床に落ちているのだ。テレビのはじっこに液体が付いているのだ。彼はシーツの無いベッドで悠々とタバコをふかしているのだ。
後処理をしようと伸ばした腕の先に、ティッシュがないのだ。

はぁ、とひとつため息をつくと、落とした視線の先に片はじが潰れたティッシュケースが目に付いた。拾い上げて、点々と広がる水滴を拭き取っていく。

「まったく、何をどうしたらこうなるんだ」

と、言おうとしたのだけど、喉が震えて痛みを発するばかりで、掠れたそれはもはや音にすらなっていなかった。

「お前が逃げるから、悪いんだ」

代わって彼の声ははっきりとよく響く。タバコはやめろと言っているのに、聞かないままもう二年になるだろうか。
俺のせいかよと文句は物理的に言えないから、卑怯なものだ。

「睨むなよ、さっきまであんなに可愛かったのに」

大きなお世話だ。

精一杯の嫌悪の表情で睨みつけたつもりだったけれど、気付けば口元が緩んでいる。憎いのだけど、まだ違和感が残るのだけど、気分は最悪なのだけど。
彼のにやけた顔を見ると、部屋に残る嫌な臭いが体を駆け巡ると、痛む節々に眉をひそめると、なんだか、なぁ。


もしかして、これが幸福感?






お題は「淫語または情事を匂わせる言葉なしで濡れ場」でした。

Re: ハイキューBL ( No.228 )
日時: 2015/01/06 17:29
名前: 鑑識 (ID: 0WV2matm)



「ねぇ、お腹すいた」
背後から聞こえる声に頭を振った。それを拒否と捉えたのか、今度は丸めた背中に額をこすりつけて、「腹減った腹減った」作戦に出る。きっとこの後は背中に抱きついて「ねぇ聞こえる俺こんな腹減ってんだよ」作戦に切り替わるのだろう。
ふわふわの毛並、否、髪の毛、いいや、毛並というのが正しいのだろうか。彼の髪の毛における存在の所在なんてものは知ったことではないけれど、なかなかに心地の良いそれが俺は嫌いではない。
だからほら、足が上がってしまうのだ。ズルズルと引きずられるように、背後の男を引きずって。



(彼と好みと瞳の話)



男を拾ったのは先月、家の裏にある公園でのことだ。雨の日に、ダンボールに入る弱った彼を、というありがちなシチュエーションで、縋るような視線と合ってしまったのがいけなかった。謎の加護欲を発揮してしまった俺は、ダンボールの中から彼を引っ掴んで、家の中へと連れ込んだのだった。
夜遅くに雨に打たれていた彼を、ボウルに溜めたぬるま湯につけて、ふらふらと彼を残してコンビニに彼専用食品を買いに向かい、人肌が恋しいらしいから毛がつくのもためらわず添い寝もした。一人暮らしなもので彼女もしばらくいなかったから、俺も他人の温度が恋しかったのだ。

さて、ここまで言えばわかると思うけれど、男、とは、猫のことである。
ただし彼という男、もとい猫は、男であって男ではなく、猫であって猫ではなかった。
あぁ意味がわからないだろう。意味がわからない気持ちがよくわかる。
なにせ俺は、朝目が覚めたら隣に抱いていた猫が、人間の、それも男になっていたという事件を体験しているのだ。きっと他の誰よりその気持ちがわかる。

そのあとはまぁ、特筆すべきこともない。懐かれたし家もないだろうし、相変わらず彼の瞳には加護欲をそそられるモノがあるし、と、家に住まわせるものを決めたのだった。
まとめ買いした猫缶をまずいと言われたことには、流石に腹が立ったけれど。意地でも食べきってもらおうと思う。

と、回想終わり。


ようやく重い腰をあげた俺に、「ねえ聞こえる以下略」作戦を実行しようとしていた彼は、大喜びでついてくる。猫缶の入っている棚で一旦止まり、それからまた台所へ歩き始めると、それに合わせてそっちじゃないよそれでいいんだよと服の裾を引っ張ってくるのが、かわい、いや、面白い。実に面白い。
猫のくせに猫缶を嫌うところは相変わらず気に食わないが、しかし無理に食べさせようとすると、逆らわないものの苦しそうに食べる姿はなかなかに精神的なダメージを与えられる。そのために、おそらく一週間分であろう猫缶の量は一向に減らないままだ。賞味期限はいつまでなのだろう。

冷蔵庫を開けると、彼が右の肩から顔を出した。猫のくせに俺よりもいくらか高い身長もこれまた気に食わない。初日は抱き込めた体にいまや抱きつく形になっているのが、とてもとても気に食わないのだ。
そんな俺の気も知らない彼は、ずいずいと冷蔵庫から吐き出される冷気を受けようと首を伸ばす。邪魔だけど、言っても聞かないから放っておく。ベーコンと野菜ミックスを取り出した。

「野菜炒め?」
「ん、お前好きだろ」
「ピーマン入れないなら好き」
「入れるけど」
「えぇー!」
「…俺とピーマン抜きの野菜炒め、どっちが好き?」
「カワハラの方が好き!」
「じゃあ俺はピーマン食べたいから俺のために我慢してな」
「…カワハラ、ずるい」

話がつく前に取り出していた、瑞々しいピーマンに手を掛ける。白いまな板によく映える青緑色に、息を呑むのが背後にわかった。包丁を入れて中を開き、種を取り出して三角コーナーに捨てていく。未だに納得していないだろうに駄々をこねないのは、前にそれをして俺が指を切ったことがあるからだった。かわい、面白いやつだ。

「…ね、今日さ」
「散歩に行くか」
「やった!ね、電車乗りたい!」
「んー、お前うるさいからなぁ」
「静かにするから、ね!」

じゃあ、と喜ばせるための一言を吐く喉は、くつくつと震える。はじめから断るつもりなんてないのに、彼の表情がせわしなくて楽しいものだから、ついつい意地悪をしてしまう。どうやら俺はよっぽど彼が好きだ。
いや、いや、好きと言っても、彼が俺を好きなほどでは、いや、待て、今のなし。

「じゃあさ、あそこ行こうよ!公園!」
「あー、あそこ涼しいしなぁ」
「決まり!」

いつの間にか隣に移動した彼を見やれば、いつだって俺の目を見て話す彼と視線が絡んだ。薄めた瞼の奥に、日本人離れした色が覗いている。
彼の瞳は、青、というよりも、蒼、というような、俺の語彙力ではうまく表せないけれど、とにかく綺麗な色をしていた。黒色で艶のある髪とはミスマッチな色の筈なのだけど、しかし彼にはよく似合う。

「お前の目、好きだわ」
「えっ」
「髪も綺麗だし」
「えっえっ」
「すげぇ顔もいいし」
「なに、嬉し」
「ただなぁ、性格がなぁ」
「どういうこと!どういうことなの!」
「言わせんの?」
「言わないで」

コイツはかっこいいのだ。とにかく何もかもが日本人離れしていて、日本から抜けて人間離れしていると言っても過言ではないような、綺麗すぎるくらいに綺麗な顔(欲目含む)。
俺は面食いらしくて、その全部が結構愛しかったりするんだけど。

「じゃあ言うけど」
「じゃあってなに!」
「俺はお前の性格が一番気に入ってる」
「じゃ、え、」

あとその、すぐ赤くなるところとかも、好き。
とは、言わないでやろう。



いや、どちらにしても、きっと今にこの唇は塞がれる。


「お前赤すぎ」
「カワハラだって」
「俺はいんだよ、見んな。ピーマン増やすぞ」
「やめて!」
「あと出かけるのも、ピーマン食べきらなきゃ無しだからな」
「えー!」
「全くお前はかわいいな」
「えっ」
「あっ」






カワハラ=川原さん。フツメンという設定のイケメン。
お題は「朝起きたら人間になってた拾い猫をついつい可愛いと思っちゃうやつ(ありがち)」でした。我ながらカワハラ欲しい。

Re: ハイキューBL ( No.229 )
日時: 2015/01/04 14:46
名前: 鑑識 (ID: xLaEhu2C)

我ながら、不遇な恋をしたものである。世の女性の中には、不遇な恋をした後にハッピーエンドが待ち受けていると本気で思っていて、いっそ憧れている人もいるようだけれど、実際にこの立場に立ってみるといい。たまったものではないから。代わってあげるから。


(トライアングル・チャベリング)


ここで、俺の恋における不遇ポイントをいくつか紹介したいと思う。
まず一つ目に、相手に好きな人がいる。もちろん、俺以外の、だ。俺の性格上略奪愛なんかは向かないように思えるけれど、一応考えてはみた。まぁ、妄想の上だ、うまくいかないことはないんじゃないかなんて幻想を抱くに終わったけれど。傷が増える一方だ。
次に二つ目、俺の好きな相手、ここでは仮にBとしておこうか。Bはなかなかに眉目秀麗だ。その上清廉潔白、文武両道、有智高才、と、つまるところの才色兼備で秀外恵中なのだ。
代わって俺は平々凡々もいいところ、いや、ブサイクと言われたことはないのだけど、彼と並んでいるところを想像してみれば、まぁ、実に釣り合わないものだ。
最後に三つ目。Bも俺も、男である。いやはや、上の二つだけならまだ希望があったと言うのに、俺という奴はなかなかに運に見放されているようだ。性別上の問題はどんな恋愛術のベストセラーにも載っていないし、載っていたとしてもそれがどうしたと言わんばかりのあまりに高い壁がある。

いやぁ困ったものだ。どうしたものか。諦めようか。
さてこの問答は何度目なのか。数えるのもすっかり飽きた頃だけれど、しかし飽きても諦められないモノがあるらしい。とことん報われない。

はぁ、と、彼に恋をしてからおそらく通算1000回目を迎えた記念すべき溜息と同時に、頭上に影がかかる。
この昼休みという時間に俺の元に来るのは、ええと、そう、Cだ。クラスメイトの、C。だとしたら俺はAだろうか。どうだっていいか。

「どしたのよ、ため息なんかついちゃって」
「いいやなんでも。飯行くか」
「おー!今日は弁当?食堂?」
「弁当」

やった!と喜ぶ彼は、既に俺の弁当の中身に想いを馳せている。一応あげないからな、と反抗の素振りは見せるけれど、口元を尖らせる彼の口元は緩み切っているからきっと無駄だ。手に取ろうとした机の脇の弁当袋は、俺より大きな手にひったくられる。中身が振れないようにそっと、しかし強引に奪い取ったそれを持って、あ、と漏れた俺の声を置き去りに教室を飛び出していく。
そんなことをしても行く先はいつもと同じだろうに、どうやら彼は俺に構ってもらいたいらしい。
はぁ。通算1001回目。多分おそらくきっと、それくらい。


ーーー


4階のさらに上、それまでとは一風変わって鉄製の階段を登っていく。かつんかつんと音を立てるのが案外心地いいものの、冬は寒くて夏は暑いこの場所は基本的に駆け抜けるべきポイントである。ドアノブに手をかけて、一般的なドアよりも少しだけきしんで重い扉を押し開けた。むわり、ふくらんで弾ける空気は蒸し暑い。

「遅いー」

聞こえる声に、しかし視線の先に主はいない。扉からちょうど死角になっている日陰に顔を出してみれば、案の定そこにいた主はちょいちょいと手招きをした。それに従って、というのも癪なだけ俺は彼に苛立ちを覚えているようだけど、勢い良く隣に腰掛ける。ひんやりと冷たいコンクリートが心地良い。

「はい、これ」
「何勝手に持ってってんだバカ」
「えー俺なりの優しさなのに」
「このくらい自分で持てる」

渡された弁当箱は無事なようだったけれど、憤慨の意を込めて緑色の取っ手をふんだくった。あー、と残念そうな声を上げる彼に一瞥をくれることもなく、包みを解いていく。
見慣れた黒い弁当箱をあけてみれば、今日はなかなかに豪華なラインナップだった。
卵焼き、マイタケとベーコンのバター炒め、アスパラの肉巻き、ポテトサラダ、あとミニトマトにレタスに、白米にはゆかりがかかっている。きらきらと輝いて見えるのはきっと、光の反射だけではないはずだ。

「今日もうまそーだね」
「…どれだよ」
「肉巻き!」
「ダメ」
「えーケチ」
「卵焼きならいいぞ」
「んー、」
「嫌なら無し」
「あー食べる!卵焼きがいいな!」

俺の提案に納得したらしい彼は、薄い唇を上下に開く。アホらしい顔をしたこのスタイルは、俺からの「あーん」、もとい、餌付けを待つ体制なのだった。もちろんこれを甘んじて受け容れる俺ではない、はずだったのだけど、しばらく強請られるうちに慣れてしまった。少しばかり悔しい。あーん、いや、餌付けをする度に少し誇らしげな瞳を向けられるのも癪だった。
考え事のうちに半分に切ってしまった卵焼きを隅に置いて、もう一つの方をつまみあげる。自慢の箸の腕に彼は少しだけ口元を緩めて、うっすら開いた瞼の裏からはやくはやくと催促する。
舌の上に黄色を乗せると、箸ごと食らいつかれた。そのままもぐもぐと少し味わって、引いた箸には銀色の糸が繋がっている。旨い、と目を細めるよりも先に、俺のことを見つめてくるこの時間はなんなのか、毎回謎のままだ。

「うまい!」
「そうかそうか」
「俺のパンも食べる?」
「いらない」

無下に断るとパンを押し付けて絡んでくるのを適当に流しつつ、弁当に手を出してくるのを強烈な捻りを加えた指先によって抑えつつ、打って変わって始まった世間話に適当に相槌を打ちつつ、ゆかりごはんにてを伸ばしたところで、なにやら強烈な視線を感じた。
なんとなしに頭を上げた先の視界に、入ったのは、長身の男。遠目に見ても、眉目秀麗。目に入れても痛くなさそうで、清潔感があって、実は寡黙なのだと聞いたことがあるけれど、結構笑うところを見るのは、俺の視線が彼を追っているからなのか。

蜃気楼か、これは。
俺は何と、いや、誰と視線が絡み合って、いや、今はじけて俺の隣の、いや、また合った、いや、いや。俺の隣の男で視線をさ迷わせる瞳に、ついに捉えられた。
彼は誰だったっけ。見覚えがあるのだけど、それどころかいつも見る顔なのだけど、でも、何故だか記憶のそれとは噛み合わない。
彼はあんなに憎々しげな表情を浮かべるのか。
俺が知らないだけなのかもしれないけれど、見たことがないだけなのかもしれないけれど、しかし彼にあの顔はあまりに似合わない。感情をむきだしにして、他人に、他でもない俺に、あんな表情を向ける姿は、彼ではないような気がした。

あれは本当に、Bなのか。

隣でパンを食べ終わったらしいCに声をかけられた。あぁ、と、返事ができたのか、このからからの喉からは、声が出たのか、わからないままに、Bが、近付いてくる。

ねぇとかなぁとか、うるさいんだお前は。あの男が見えないのか。全く浅すぎる眉間の皺は、滅多にその表情を見せない証拠なのに。近寄る足取りがふらついているのは、それだけ心情の昂りを抑えられない証拠なのに。

それだけ彼を動揺させる原因は、他でもない俺と、何よりその隣でバカな顔をして笑うお前にあるというのに。

大きな足は俺の目の前で止まった。彼と絡んだまま離れない視線の先で、にっこり見慣れた顔をする。

「君は、誰かな」

あぁ、澄んだ声だ。思っていたとおりの、綺麗な声。
しかし憧れの、俺が恋をした男に初めて話しかけられたのに、どうしてこうまで俺の心はときめかないのだろう。少女漫画のあのエフェクトは、やはり漫画の中だけの産物だったのか。

「ねぇ、どっか行ってくれない?」

想像通りの声、見慣れた表情、ただ一つ違うのは、精一杯に向けられた侮蔑の目。


あぁこれが、俺の恋か。





あああ半端半端!間違いなく続きは書きません!
お題は「三角関係」(雑)でした。設定書いてるだけで終わっちゃうよこんなの!序章もいいとこだ!

ワンドロ企画、以上になります。

Re: ハイキューBL ( No.230 )
日時: 2015/01/04 17:27
名前: くるる (ID: atRzAmQi)



鑑識様
お久し振りです。
高校生というものは、大変ですしね。
ご自分のペースで。私はいつでも楽しみに
していますから。
にしてもオリキャラBL...!!!!
やっばいです、得体の知れない気持ちに
私は心が踊りっぱなしでしたw

あの、鑑識様の御友人も、その、腐男子ですか((
もしそうだったら、嬉しすぎて泣く。
腐男子とてもいいとおもっています。むしろ素晴らしい。流行れ腐男子。
...私の周りには腐っている男子はいないので...。



続き、楽しみにしています。
ご自分のペースで頑張ってください。

Re: ハイキューBL ( No.231 )
日時: 2015/01/11 11:53
名前: 鑑識 (ID: xLaEhu2C)

相変わらずオリジナルです。1日ドロー。



初めて話したのは1週間くらい前のことだ。いま現在、入学してから約一年半、一度のクラス替えを経てから換算すれば約半年。それだけ経って、彼との初会合と言ってもいいそれは、ほんの少しだけ前のことだと、そういうことだ。







友達の帰りを待って、はや一時間。すぐに終わるのだと言った古典の講習及び再テストは一向に終わる気配を感じさせないままに、刻々と時間だけが過ぎていく。
眩しすぎるくらいの西日が差す教室には、俺の他にもう一人、男が座っていた。距離でいえば俺から見て斜め後ろのさらに斜め後ろの後ろの後ろ。近いようで実は案外遠いその距離で、男は俺と同じように友人でも待っているのか、それともただ黄昏ているのか、黙々と座っている。
俺はといえば暇つぶしに取り出した携帯端末でアプリとネットとを開いたり閉じたりして、つまり全く暇つぶしになっていない暇つぶしに勤しんでいた。後方に座る男の姿は見えないけれど、きっと教室に入ってきたときの体制そのままに、窓の外を眺めているに違いない。俺にはそれが少なからず、気持ちが悪かった。
そもそも彼はクラス内であまり、いや、ほとんど話すところを見たことがないような男であったから、彼がどんな男なのかを俺は知らない。今のところの印象は、ただの気味の悪い男、いや、そういえば顔立ちは少しばかり整っていたか。とにかくその程度のものである。

俺の友人と呼べる存在の中には彼のようなタイプはいなくて、これからも特にできる予定はなかったのだけれど、だからだろうか、俺のほんの隅っこに置かれていた興味心がつんつんと刺激を受けて、ついつい漏れたのは明らかに彼に向けられていた声だった。思いのほか大きな声が出たばかりに訂正も聞かず、恥ずかしさのあまり後ろを振り向くこともできないまま、恐らく「なぁ、」と低く響かせた喉を恨む。好きな女子の前では震えた声しか出ないくせに、無駄な時ばかり働いてくれやがる。

「もしかして、僕に話しかけた?」

はっきりと返された声に皮膚が粟立った。きっと後ろを向けば無機質な瞳と視線が合うのだろう。彼がどんな顔をしているのか、少し気になるけれど、いいや今はやめておこう。怖気付いたとか、そんなのではない。
逃げ場を求めて視線を向けた携帯端末は、真っ暗な画面に揺れる瞳を映している。

友達が少ないとか人と話さない人間にはいくつかパターンがあるものだと、俺は勝手に考えている。例えば純粋に経度の対人恐怖症的な、つまりおおかた自分に自信がない人。例えば声が小さいとかコンプレックスが強くて、ちょっと高校生活を失敗してしまった人。
俺のこの16、7年程度の人生でもそういった人間はそこそこ見てきたけれど、彼はどうやらそのどれにも当てはまっていないようだ。

「そう、だけど」
「何か用かな」
「いや用とかは、無いんだけどさ」
「ふぅん」

それっきり、彼は黙ってしまった。俺はといえば彼の声が案外と低かったことに何故だか驚いていて、そしてその声はやけに頭に反響する。二人ぼっちの静寂な空間の中に、彼の声だけが、俺の頭の中だけに、ループしている。

「なぁ、」
「なに?」
「何してんの」
「何って、何も」
「は?誰か待ってるとか、そういうんじゃないのか」
「いいや、そういうんじゃないよ」
「ふぅん」

今度はこちらから、会話を切った。正直な所、もっと彼の話を掘り下げて聞いてみたかったけれど、これ以上深入りするには彼との距離が遠すぎた。まず未だに振り向くことさえできない自分の意気地の無さに腹が立つ。
充電切れの警報を鳴らした端末の電源を切った。別に、人と話す時に触っているのは失礼にあたるとかいう紳士的な配慮ではなくて、なんとなく、ただなんとなく。

「ねぇ、」
「、なんだよ」
「君は何してるの?」
「友達を、待ってんの」
「へぇ、今日は部活休みなんだね。サッカーだったよね?」
「え、なんで知ってんの」
「君、球技大会の時大活躍だったじゃない」
「あぁ、そうか、そうだったかも」

なんとなく、彼にはなんでも見透かされている気がするのはなぜなのか。いやそりゃあ、俺が一方的に彼という存在を、言い方は悪いけれどいまいち認知していなかっただけであって、彼は俺のことを知っていても何らおかしなことはないのだ。
体勢を変えて、窓側を正面に机に肘をつく。窓の反射で彼の顔が見えそうで、もう少しだけ顔を逸らしてみれば彼の顔が見えそうで、しかし俺のなんらかのストッパーがそれを留めさせた。

「お前はいつ、帰るんだよ」
「あれ、お邪魔だったかな」
「そんなんじゃない」
「じゃあもう少し、いてもいいかな」
「別に俺に許可取ることじゃないだろ」
「そうだね。じゃあ、君ともっと話をしたいな。これには許可がいるだろ?」
「…別に、構わない、けど」

やはり彼は俺の友人の中に、いや、これまで会ったことのある人間のカテゴリーには属さないように思える。どうにも調子が狂うこの感じは、しかし嫌ではなかった。むしろ少しばかり心地がいいような。
ガタリ、後ろの男が立ち上がる気配に、慌てて姿勢を正面に戻した。背後の笑い声は俺に対してのものなのか、きっとそうではないのだと祈りたいものだ。
俺に気配を察知する能力なんかはないから、俺の三つくらい後ろの席から聞こえた音で、場所を把握した。しかし静かな音だ。この静かな部屋にお似合いの、彼の雰囲気にもお似合いの。
きっといま、座った。


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