BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- ここの生活
- 日時: 2016/08/16 13:37
- 名前: 朝倉 (ID: DVcR0E4k)
適当に自己満に近いオリジナルBL小説載せたいと思います。
気が向いた時に閲覧していってください。
- Re: ここの生活 ( No.24 )
- 日時: 2016/09/14 23:36
- 名前: 朝倉 (ID: aW5Ed34M)
脱獄の話は気が引ける。今、否定をしたら何されるかわかったものではないし、勝手に賛成(参加)の意志していると出されても困る。
俺がヤグモの前で足を止めると、ヤグモは変わらず空を見上げている。まるで、俺の姿が見えていないかのように変わらずといった態度。隣にしゃがんでいる隼人を見ると彼は俺を見上げていた。その見上げ方は輩そのもの。普通に見上げるなら顎も上げるが、視線だけを上げているようなものだ。
「服のことについて聞きたい」
ヤグモは依然とした態度、隼人は声をかけてくる様子がないのに痺れを切らした俺は小さく問う。
「…警察は悪人を捕まえて裁くのが仕事だ。だが、街でした悪行は、見つからなければ捕まることもない。捕まることも無ければ悪行を働く悪人は増え、警察は職を失ってしまう。職は金を左右する。金は人を動かす。職を失わない為に警察は考える」
「………何の話をしてるんだ?」
「てめぇにはわかんねぇかぁ?その小さな脳で考えろ」
いきなり話し始めたヤグモは変わらず空を見上げていて、口だけを動かして話す。静かな声だがよく通るから耳に届く。だが、俺には何の話をしているのか解らず眉を寄せて問うと、片方の口角を上げて馬鹿にするように隼人が笑う。
「…人には必ず弱点がある。そうだろう?服の色、いつかは知れる。俺達の事を知りたいなら、ついて来い」
「ったく、てめぇは焦らすの好きだなぁ!」
空を見上げていた顔をゆっくり俺の方へ向けると、その深い闇のありそうな深緑色の瞳にまっすぐ捕らえられた俺は答えを求めていないヤグモの質問に口出すことも、ヤグモの目から視線を外すことも出来ない。殆ど表情筋を動かすことなく言うヤグモに隣にいた隼人は少し嬉しそうに笑う。悪戯を企んだ子供のような笑み。
後方から俺の背中に何かがぶつかってきて前へ踉。その時、やっとヤグモの目から逃れられた気がした。息を吹き返せた気がした。さっきまで生きていた感覚が全く無いぐらいだった。時が止まったような感じだ。周りは動いていて、それも理解出来てるけど、自分だけが存在していないような感覚だった。
- Re: ここの生活 ( No.25 )
- 日時: 2016/09/15 00:16
- 名前: 朝倉 (ID: aW5Ed34M)
踉いた俺はバランスを崩して前に出ると目の前の壁に両手をついた。嫌でも横に倒れた方が良かったのかもしれない。
なんとか、前に転ばずに済んで良かったと俯いていた顔を上げようとすると、隣から低い声が聞こえて、そちらへ先に顔を向けた。
「おい」
二文字だが決して短くは無い呼びかけ“お”の語尾が長く感じた。それは声の主の元々の口調からのもので。
声の主を見ると、俯いてゆらりと立ち上がり下から上へ上げた顔は先程とは全くの別人で、鋭い眼光は俺を見ている。その顔は鬼の形相である。ただよらぬオーラ。それに驚いて俺は肩を上げる。そこで、ようやく、壁に付いた手の方に気配を感じてそこへ顔を向けると、およそ30cmの距離にヤグモの顔があった。
そう、俺はヤグモの顔を挟む形でヤグモの後ろの壁に両手をついてしまっていたのだ。
対して近いと言える距離ではないのかもしれないが、そんなに近くで見ない顔がハッキリ見えていると近いと感じてしまう。ヤグモは驚きもせず、動作一つせずにただ無表情で俺を見ていた。
俺は慌てて手を壁から離してヤグモからも1m程距離をとると謝る。
「わ、悪い…!」
「1回あの世の川、見てくるかぁ?」
「えっ、何でヤグモじゃなくて隼人が怒ってるんだ?!」
「名前で呼ぶな。俺は怒ってねぇぞぉ」
「怒ってるでしょ!完全に!ひぃ、やめっ」
ヤグモへ謝ると隼人に胸倉を掴まれた。低く捧げられた言葉に隼人が怒っていることが何故か問うが聞く耳を持たない隼人は俺の胸倉を掴む手とは反対の手で拳を作り高く上げる。俺に向いた拳が振るわれる瞬間悲鳴を上げて目をギュッと瞑り来るであろう痛みに僅かながら備えた。
だが、暫くしても痛みがなく、ゆっくり目を開けると、作られた拳の隼人の腕をヤグモが引いて止めていた。
「…お前は何に対して俺に謝ったんだ?隼人も、なに怒っている」
ヤグモから発せられた言葉は俺をポカーンとさせるのに充分だった。普通ならば、空気を読んで止めてくれたんだろうと思い感謝にお礼を言おうと思っていたが、至って真剣そうに突拍子もないことを聞いてくるヤグモは天然なのだろうかと思う。
「チッ!ちったぁ避けろ。鈍い亀野郎」
「当たってない。それに亀じゃない」
俺に向けていた怒りも少しは収まったのかヤグモに掴まれていた腕を振ってヤグモの手を払うと聞こえるように舌打ちした隼人はヤグモに愚痴垂れる。
ヤグモはその言葉には、さっきのことだと理解しているのか、隼人の言い草に表情は変えずに反論しているが、亀とかそこを気にしている場合ではないだろうとツッコミどころが違うと思ってしまう。
- Re: ここの生活 ( No.26 )
- 日時: 2016/09/20 23:54
- 名前: 朝倉 (ID: aW5Ed34M)
隼人の手から解放されて、気を落ち着かせるように胸に手を置いて呼吸をする。隼人とヤグモのやり取りを見て、先程自分にぶつかってきたものは何なのか確かめようと、あたりを見渡すと、すぐ足元に上半身裸で黒ズボン、スキンヘッドの頭、右肩に龍の刺青を入れた体格の良い男が腹を両腕で抑えて顔を歪め倒れていた。腹が痛いのか苦しそうに唸り声を上げている。
男がぶつかってきたんだろうことは解ったが、俺は反射的に驚いて後ずさり、倒れている男と距離をとる。後ろにいたヤグモの肩に俺の背中が当たってしまうと、隼人からまた「おい」と声をかけられるが、それよりも、倒れている男が何故その状態に至ったのかを知る為にもう一度あたりを見渡すと、数人の大柄な男達がこちらを見てニヤニヤと嫌な笑みを浮かべていた。
男達より少し前に出て、こちらへ歩み寄った一人の男は拳を手で叩き、前で構え、戦闘態勢に入ってこちらを待っている。
俺は息を飲んで冷や汗を垂らしながら震えそうになる膝を我慢することで体は微塵も動かせない。
俺は争う事や闘う事には滅法弱い。この拳で人を殴った事など一度もない。そんな人、日本には沢山いるだろうと思いながら弱音を隠していると、隼人達も男達に気づいたようで。
「あ?ンだ」
「次は貴様らが俺達の相手してくれんのか!細っこくて弱そうな奴とチビと、そこのチキンくんが!」
隼人の疑問に前に出ていた男はそう言うと大きくゲラゲラと笑い出した。つられて周りの男達も笑う。そんな彼らを見てヤグモと隼人はどうするのかと俺はゆっくりそちらを見ると、ヤグモは何処か遠くを見ているような呆れているような眼差しで無表情を変えずに彼らをじっと見ていた。一方隼人は片眉を上げて「あ?」と言うと喧嘩に乗ったのか前へ男に歩み寄り始める。俺はどうすればいいか分からず、ヤグモを見やると、ヤグモは視点を変えずに全く動かない。瞬きをしているのかも曖昧だ。あわあわとヤグモと隼人を交互に見る。
隼人が男の前に立つと、体格の差が明らかに違って隼人が小さく見えてしまう。(実際、俺よりは小さいけど…)
先程まで吹いていなかった風が吹き抜ける。一線交えるかというところで、ピーという耳に響く煩い音が雑音を後にスピーカーで流れた。俺は音が鳴ると両耳を抑えて屈む。周りの男達も同じようにすると、煩いと嘆く。隼人も少し離れた所にいるリキも神山と呼ばれる青年も放送機を見ていた。ヤグモを見るとヤグモは両手を組んで背中を壁に預けると軽く俯き瞼を下ろしていた。
俺も放送機を見ると、命令が下され、外所謂庭(?)と建物の中を繋ぐ重い扉が開いた。
“昼飯の時間だ。さっさと檻へ戻れ馬鹿共”
- Re: ここの生活 ( No.27 )
- 日時: 2016/09/22 00:45
- 名前: 朝倉 (ID: ai5/g0Y4)
男達は名残惜しそうにぞろぞろと足を重そうに引き摺りながら建物へ入っていく。隼人も憂さ晴らしが出来なかったからなのか舌打ちをして後頭部を乱暴に掻いた。
リキと神山と呼ばれる青年がこちらへ近づいてきて、また固まると、リキも青年も人の良さそうな笑みを浮かべて声をかけてきた。
「惜しかったなぁ〜隼人」
「あ?あんな、雑魚、興味ねぇ」
「戻るぞ、監守にぶっ叩かれる前に。」
「なぁなぁ、ヤグモもやる気はあった?」
「……ない。興味が無い」
「あ〜、だよね〜、ヤグモにしたら興味ないかぁ〜」
4人が俺の存在を忘れて建物へ向かって歩き出すのを見て少し後から追った。
- Re: ここの生活 ( No.28 )
- 日時: 2016/09/24 00:07
- 名前: 朝倉 (ID: aQG7fWp7)
神山と呼ばれる青年が前にいるリキ、右隣を歩くヤグモ、ヤグモの前を歩く隼人に楽しそうに話をしている。
俺は、一番冷静で天然っぽいヤグモの後ろを歩いた。2、3m程距離をとって。
リキは肩越しに後ろを向いて後ろに向かってゲラゲラ笑って会話する。時折リキの隣を気だるげに歩く隼人がニヤッと笑って口を挟む。それに隼人の後ろを歩くヤグモは無表情で何も公言しない。だが、穏やかな4人の空気に彼らが囚人には見えなかった。
昼食の場所は囚人達、皆を集めて一つの大きな部屋(?)檻のような所で、ナンバーの書かれた飯の乗った皿と箸やらスプーンを持って食べるようにとのことだ。
俺達は自然と一箇所に固まって輪になるように座って食べた。
「あー!うめぇー!こんなんじゃ足りねっつんだよ」
「んだから、俺は言ったわけよ」
「神山、口に物を入れたまま喋るな」
リキは早食いで一気に食べる。神山と呼ばれる青年は飯を口に入れながら話す。それが汚いとヤグモが講義を上げて、その光景にだっせぇと隼人が笑って手本のように綺麗に飯を食べる。
「…おい、自分の分は自分で全部食え」
「……分かっている。だが、家族が」
「てめぇの家族が食ってるか食ってねぇかはどうでもいいが、俺の周りで餓死する奴を俺は見たかねぇ」
炒飯は旨くて俺も一口食べると、あっという間に皿は空になった。逆にヤグモは全く手をつけていない様だったから声をかけようとすると、それを静かに隼人が過ぎる。隼人がヤグモに視線を寄越すこと無く、綺麗に炒飯を食べながらヤグモへ説教の様に言うと、ヤグモが了承して、ゆっくりと食べ始める。
それを俺達3人は嫌でも目に入れ、耳が言葉を受け取る。
俺はヤグモと隼人の仲が良いなと思う。リキは、2人を微笑ましく見ている。神山と呼ばれる青年も同じく微笑ましそうに見ていたが、突如デレっとした顔をすればニヤニヤ企んだ笑みを浮かべて、2人を見て言った。
「隼人ってさぁ、ほんとヤグモのこと溺愛してるよねぇ〜」
「はあぁぁあー!?」
その言葉に驚いてその場から立つと同時に声を上げたのは俺だけだった。