複雑・ファジー小説
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- よろずあそび。
- 日時: 2011/09/21 21:53
- 名前: カケガミ ◆KgP8oz7Dk2 (ID: WTkEzMis)
- 参照: ロンリー・ジャッジーロなんてなかった。
・初めての方、始めまして。
・私のことをご存知の方は、お久しぶりです。
・かつてシリアス・ダークの方で活動していましたが、一度スランプに陥り、ひと時筆を置いておりました。
当時の作品は私の黒歴史として、もう執筆することもないでしょう。
・ですので心機一転、名前を変えて一からやり直そうとする所存であります。
・今回執筆する作品は、戦闘や能力などのない極めて平凡な生活を背景にし、その舞台で発生する、些細な非凡についての物語です。
・しかしだからといって、登場人物たちがほのぼのと日常を過ごすだけの物語でもありません。
・加えて、この物語は長くてもコピー用紙40文字×34行×110枚(丁度ライトノベル一冊分)を終了目安としています。どうかご理解ください。
・至らない点もありますが、善処しますのでご容赦ください。
それでは、ご案内致します。
この物語が、貴方様の享楽となることを願って。
どうぞ、ごゆるりと。
* * *
* * *
<インデックス>
プロローグ >>1 >>2
第一章 >>5 >>6 >>7 >>10 >>11 >>17 >>18 >>19 >>20
パロディ説明 >>21
第二章 >>24 >>27 >>28
- Re: よろずあそび。 ( No.32 )
- 日時: 2011/09/26 18:21
- 名前: カケガミ ◆KgP8oz7Dk2 (ID: WTkEzMis)
- 参照: 咳が止まらない…。衛生兵…。
>>31 千愛さま
鑑定ありがとうございます^^
確認してきました。まだまだ見直さなければならない部分を修正し、更なる向上へ向けて行きたいと思います。
それでは、貴方様に感謝をこめて。
カケガミでした。
- Re: よろずあそび。 ( No.33 )
- 日時: 2011/10/10 23:53
- 名前: カケガミ ◆KgP8oz7Dk2 (ID: Wsgu.6PA)
「……むー、暴力とは感心しないな。大体君は顔立ちも中性的に整っているのだから、このような予想を立てたとしても、何の疑問もないと思うのだが……」
「だからって、その歯に衣着せぬ言い方はどうかと。……で、キャサリンはここで誰か待ってるの? もしかして彼氏とか?」
「まさか。私はただ、ハルを待っているだけだよ」
「ハル……ああ、五頭さんね」
今話題に出たハル、もとい五頭さんというのは、言うまでもないが僕たちの知り合いだ。もっとも、知り合いという間柄は僕と彼女とのものであって、キャサリンにとっては唯一無二の親友という関係である。
自他共に認める仲の良さ——とはよく言ったもので、端でその関係を見ている僕が感心せざるを得ないほどのものだ。……僕の親友という人間が順平みたいな奴であることを考えると、何だか泣けてくる。
「五頭さんか……。何だか最近、僕を避けてるような気がするんだよね。……何かしちゃったかな……」
五頭さんの名前が話題に出てきたということで、僕はふとそういった言葉を呟いた。
大学で声を掛けても顔を背けられたり、講義などで隣の席になったときに逃げられたり、とにかく彼女は僕との接触を拒んでるように思えるのだ。
昔からそういうことに慣れていた僕だったが、如何せんあそこまで露骨にされると少なからず傷つく。
「……彰。それ、本気で言ってるのかい?」
僕の声を拾ったのか、キャサリンが呆れたような口調と共に白い目をこちらに向けてきた。
「何が」
「いや、別に」
僕は彼女の質問の意図が判らず聞き返すが、彼女は何かに諦めたような態度で話題を終わらせた。一体全体、どういうことだろうか。
「…………まったく、ハルも不憫だな」
続けて、キャサリンはため息を吐きながら何か言葉を漏らす。僕はその言葉を聞き取ることは出来なかったが、今の態度の彼女にそれを尋ねるのは、何故か野暮のように思えてならなかった。
彼女の言葉を最後に、僕たちの会話はぷっつりと途絶えてしまった。何か話題がないかと少しの間思索していると、彼女は視線を僕から空に向けていることに気がつく。あちらも話すことがなくなったのだと解釈し、僕も本来の目的である飲み物の購入を果たすべく、彼女が寄りかかっている自動販売機の隣にあるそれへ向かった。
小銭が無かったので代わりに千円札を入れて、押しボタンのランプが点灯するのを見てから、何を買おうかと考え始める。
何買おうかな……。結構寒いから炭酸の入ったジュースとかは論外だな。えーと、するとホットのお茶かコーヒーの二択になるわけで……。あ、やばい、どうしよう結構悩むぞ。
「……ところで、彰」
何を買うか決めかねている僕に視線もくれず、キャサリンが独り言でもするかのように口を開いた。
「何?」
お茶とコーヒーを交互に指差して、迷いながら僕は答える。もちろん、意識はどちらかといえば自販機に向いているので、あまり彼女の話に集中することは出来ないでいた。
その僕の反応など気にも留めず、淡々と彼女は話を続ける。
「君とデートに行く相手は、君の彼女かい?」
「……質問の意図がよく判らないな」
「特に意味はないよ。ただ気になっただけ」
出たよ、キャサリンの口癖。
彼女はこうやって意図がないのに意味深というか、とにかく聞かれて、何か裏を勘繰ってしまうような質問をしてくる。本人はただ単に疑問を解消したいだけなのだろうけど、それ故に性質が悪いのだ。
無駄に彼女を疑ってしまう自分が、とても馬鹿げて見えてくるから。
「残念ながら、そういう相手じゃないよ。ただの友達」
「ふうん。じゃあ意中の相手、とか?」
「それも外れ。確かに優しくて、容姿も文句の付けようがないくらい綺麗だけどさ。……だからこそ、そういう目では見れないんだ」
「そう」
僕の言葉を聞き、漸く納得したようにキャサリンは口角を上げてにやりと笑った。そうしてから、彼女は自販機に預けていた背中をゆっくりと離す。
何事かと、僕が眼前の自販機に顔を向けたまま、目の端で彼女の挙動を追った。
瞬間、彼女の顔が円柱の上に三角錐を置いたような形の物体——ペットボトルによって遮られる。彼女がこちらに投げたのだろうか。
……って、そうだったら避けなきゃ駄目じゃないか。
本能的に僕は顔を仰け反らせる。同時に、眼前を直線起動で通り過ぎたペットボトルと、空気との摩擦で作り出した風が僕の顔を撫でた。それを不快に感じながら、僕はペットボトルの軌道を予測して、その通過点に右掌を置く。——キャッチ成功。
辛うじて残っている、お茶の温もりがペットボトルから僕の掌へ伝わる。その温度は、キャサリンの僕に対する悪戯心なのか。
「質問に対するお礼さ。嬉々として受け取りたまえ」
顔をキャサリンの方に向けてやると、彼女は目に掛かったプラチナブロンドを手で払いながら、優雅に笑ってそう言っていた。その風貌はまるで、高原に咲く一輪の野花のようで。不覚にも僕の意識は釘付けになる。
「む、君は間接キスというものを意識するタイプなのかい? ……だとしても、安心したまえ。それも含めての報酬とすれば問題ないだろう?」
僕の様子に何か思うところがあったのか、彼女はからかう様にそう付け足してきた。
あー、もー。何だって今日のキャサリンはこんなことを言い出してくるのさ。ていうか、間接キスって何さ。……くそ、改めて言われると余計に意識しちゃうじゃないか……!
頬が熱くなる。駄目だ。彼女にこんな失態を見せたら、何を言われるか判ったものではない——と、察されないように顔を彼女から背けた。
「何言ってるんだよ……!」
「おやおや、心外だな。君にとって私の唇は興味範囲の外なのか。私見だが、これでもそう安くはないと思っていたのだがね」
だが、それも空しく無意味に終わる。
僕の顔色の変化を見逃さなかったキャサリンは、追い討ちを掛けるかのごとく、僕の顔を覗き込むように接近してきた。その距離二十センチ未満、免疫のない僕にとってはぶっちぎりアウトゾーンである。
「……試してみるかい?」
ふっ、と、彼女は顔を微かに傾けて見せた。
「——————!」
あああんもおおおおこんな近くなんて無理無理無理無理! 何々何だよ何なんですかこの娘はあああ! 僕が狼狽するのを狙ってるの? 明らかに狙ってるよね! そういうの苦手って判ってんのに何でこういう事するかなあ! 頭おかしいんじゃないの? 馬鹿でしょ? 馬鹿だと言ってよキャサリィィィィン……!
思考回路がオーバーヒートしている僕を確認した刹那、キャサリンは急に片方の手を後ろに、自販機の方に突き出した。そして疾風のごとき速さでつり銭の返却レバーを回し、ういいんという機械音と共に、自販機から吐き出された千円札を引っ手繰る。
彼女がそれに要した時間——開始から約三秒。
僕がその行動の意図を、理解するまでに要した時間——開始から約五秒。
「なっ……!」
「へへっ」
圧倒的な手遅れである。
取り返そうとして、即座に手を伸ばした僕の腕の下を掻い潜り、キャサリンは僕の間合いから抜け出す。順平といい、春日といい、この娘といい、僕の友人は何故このように反射能力、運動能力に優れている人物が多いのだろうか。……十坂さん? あの人はこんな言葉じゃ括れないよ。
「隙だらけだよ、彰。この千円札は私とハルのケーキに消えるだろうから、憂慮せずに諦めたまえ」
僕からかっぱらった千円札に唇を押し当て、キャサリンは目配せをしながらそういった言葉を口に出した。悪戯が成功した子供のような、無邪気な明るい声で。……ったく、こうも清々しくされたら、怒るに怒れないよ……。
「さて、そろそろハルが来るだろうから、私は行くとするよ。君も、デートの相手を独りで待たせてはいけないよ? この頃は物騒だしね。……じゃ、学校で」
言うだけ言って、用が済んだのかキャサリンは颯爽と踵を返して去っていた。その背中を見届けてから、僕は身体に得体の知れない疲労感が湧き上がってきたのを知る。すると、自然と僕は身体の体重を自販機に預けていた。
疲労感による喉の渇きを潤そうと、躊躇いながらもキャサリンのくれたお茶を飲んだ。
「……何で、緑茶が甘く感じるんだよ……」
どうにも、調子が狂う。
* * *
- Re: よろずあそび。 ( No.34 )
- 日時: 2011/10/11 19:17
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: PLUY1qyp)
おー、彰君大人気ですね、ていうか主人公に共感です。
多分俺もああいう性格は苦手です。
意味の無い質問はしょっちゅう俺も友達にしてますがね。
と思ってたらちゃっかり千円取って行っちゃいましたね。
五頭さんの登場に期待します。
では、次回も楽しみにしています。
- Re: よろずあそび。 ( No.35 )
- 日時: 2011/10/16 17:05
- 名前: カケガミ ◆KgP8oz7Dk2 (ID: AvHGVUY9)
- 参照: 返信が遅れちゃってごめんなさい!(汗
>>34
一応、彰の池面設定の伏線回収といったところですw
キャサリンの性格の、取っ付き難さというのは立ち位置の関係上、仕様となっています。狒牙さんの言葉を私なりに見る限り、どうやらそういった性格の特徴が現れているようなので、良かったと胸を撫で下ろしましたよ^^
今後の展開にご期待ください。
それでは、貴方の言葉に感謝をこめて。
カケガミでした。
- Re: よろずあそび。 ( No.36 )
- 日時: 2011/11/20 00:43
- 名前: カケガミ ◆KgP8oz7Dk2 (ID: ZxuEMv7U)
- 参照: 大変遅れて申し訳ありませんでした。
* * *
キャサリンと話していたことで、どうやら八百子さんとの約束の時間までを潰せたようだ。駅から見える街中のアナログ時計の長針は、既に五十五分を指している。
そろそろ、かな。空になった、緑茶の入っていたペットボトルをゴミ箱に放りながらそう思い、八百子さんの姿を探すべく辺りを見渡した。彼女の性格からして、彼女は時間を守らないような人ではないだろうから、もうそんなに待つこともない気がする。
駅から次々と人が雪崩の如き勢いで吐き出されていく。この街はそもそも、僕の住む街より開発が進んでいて活気がある。加えて、日曜日の昼前という時間帯ということもあり、このような人数は別段驚く必要の無い茶飯事だ。
ふと、僕はその光景を見入ってしまう。
今までの僕なら、このような光景を見ても何も感じず、一々反応して『活気がある』や『別段驚く必要のない』といった思考は浮かばなかっただろう。ただ淡々と無視を決め込んで、坦々と意識から外していた。
「……まいったね」
不意に、そういった言葉が漏れた。
我ながら、割かしドライな人間だとは思ってなかったけどさ。人との関わりを少し見直しただけで、こんなにも世界に色が付くなんて聞いてない。まさしくモノクロからカラーに、ってね。
…………ああああああ、駄目だ。そう思うと、何だか今までの自分がかなり嫌な奴に見えてきたんだけど。え、嘘でしょ? やばいよ何これ痛すぎるよ? ただ僕の中の中学二年生が大暴れしてただけじゃないか! うわ、痛い! 何だか言葉では的確に言い表せない部分というか箇所が痛み出した! 大体こんなの誰も賛辞しないどころか、惨事にしかならないって何故気がつかなかっんだ……!
と、過去の自分の過ちに今更気がつき、頭を抱えながらしゃがみこんだ。もしかしたら声も出してしまっているかもしれない。それ程の羞恥に襲われたのだった。
「ええ、と。……彰くん?」
頭上から、そう声を掛けられる。僕はしゃがんだのだからもちろん前方から視線を外しており、声の主が誰なのか確認できるはずがない。
故に、それが八百子さんによるものだとは露とも思えなかったわけで。
「……何さっ!」
このように、あろうことか乱暴な言葉使いをしてしまったわけである。
「……って、……あ、れ……?」
世界を流れる時間が、止まった。
* * *
「いや、あの……、気が動転してたというか、周囲に八百子さんを確認することが出来なかったというか、その……ごめんなさい」
「……うん、判ったから……さ。顔上げて、ね? そうやって言うの、かれこれ十回目だよ?」
駅から数分歩いた距離にあるファストフード店。その窓際の席に僕と八百子さんは座っており、先程の非礼を詫びるべく、僕は額を深々と下げていた。
ちなみに、あの後少々人目に付いてしまい、それから逃げるようにしてここに入り込んで今に至るというわけだ。
「彰に何があったかは聞かないから。だからほら、謝るのやめて? せっかくの……デ、デート? なんだし、さ」
八百子さんが嗜めるように、苦笑しながら僕にそう言う。『デート』という単語を口に出す際、彼女の頬が朱に染まったような気がしないでもなかったが、言及する必要性を感じなったのであえて黙った。
今の発言で、何故だか狂った調子を整えるように咳払いを一つして、肌をちくりと刺すような空気の中、取り繕うように彼女は注文したホットコーヒーを啜った。苦かったのか、熱かったのか、八百子さんは顔を軽く歪ませた。
「……ははっ」
その様子を見ていると、何故だか笑いが出た。
「あ、漸く笑ってくれた! もー、心配掛けないでよ。……良かったらそのミルクと砂糖くれない?」
「心配掛けてくれてありがとうございます。……あ、苦かったんですね。どうぞ」
「む、何だかその言い方引っ掛かるなあ。笑い事じゃないのよ……っと、この……、くっ……!」
「あー、強引にするとミルクが飛び散りますよ? 僕が開けますから。……ほいっと」
「……ありがと……。…………よし。笑い事じゃないのよ?」
「すいません、以後気を付けますから。……ていうか、八百子さんって意外と子供っぽいところもあるんですね。具体的に言うなら味覚とか」
「こ、子供っぽい? それを言うなら、彰くんだって子供っぽいところあるじゃない! 具体的に言うなら性格とかっ!」
「……性格のことは言いっこなしですよ。ついさっき悔い改めたばっかりなのに」
お互いがお互いを悪意なく見つめ、心地よい沈黙が数秒間続いた。その空気を纏っていると互いの口から笑いが漏れていくのだった。
「あははは。……彰くん、何だか雰囲気変わったね。何て言うか、明るくなったのかな」
「八百子さんこそ、昨日と今日とじゃ別人みたいですよ。同年代の女の子って感じです」
それから暫く談笑が続いた。少女のように振舞う八百子さんの姿は、昨日までの完璧に美しい女性——とどのつまり『高嶺の花』という概念は薄れ掛かっているが、それでも充分、息を呑むほど綺麗だった。
……あーあ、これじゃキャサリンに嘘言っちゃったみたいだ。何が『そういう目では見れない』だよ。気を抜いたら、魂ごと持っていかれそうなのに。
どうにも、調子が狂う。そう呟いて自分自身を嘲笑気味に笑う。
「さて、」
そんな自身の汚点に対しての羞恥心や罪悪感を軽く受け流しながら、僕は今の話題を区切った。その声に呼応するかのごとく、八百子さんはこちらに注意を向ける。
「これからどうします? 恥ずかしながら、僕は行き先も考えてこなかったもので……。ここの辺りの遊び場は予約していないと限られてきますし」
「え? ……ふふ」
僕の投げかけた疑問に対して、彼女は不敵に笑って見せた。待ってました、そう言わんばかりに。
「何言ってるのよ彰くん。肝心なのは場所じゃないの」
そこで一度言葉を区切り、二人分のミルクと砂糖が混ざった、恐らく相当甘いであろうコーヒーを一口。
「遊びの仕方は、八百万。考え方次第で退屈な日常なんて、簡単にひっくり返るわよ」
「……面白い言葉ですね」
「でしょ? 私の信条みたいなものかな。それじゃあ、行こうか」
八百子さんが店から出るように促す。それに従って、僕は立ち上がった。
その言葉が、僕を非日常に巻き込むものだと知らずに——。
* * *