複雑・ファジー小説

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刀憑〜有象無象の少年と刀の怪〜更新再開
日時: 2013/11/02 22:30
名前: 潰レモン (ID: GTWwVaDQ)

名前:蔵梨 花好樹/クラナシ カズキ
性別:男
年齢:18
容姿:茶髪でよく整えられた少し長めの髪、顔立ちはかなり整っている部類。18歳としては少しだけ小柄。
概要:少々さえない割と駄目な高校三年生。
   進学は決まっているが目標もなく、日々を惰性で過ごしている自他共に認めるダメなヤツ。しかし情熱家で人のために必死になれる男。
   いろいろあって"刀の怪"なる妖怪同士の戦争に巻き込まれる。
   刀の怪を使うセンスにあふれ、火属性に対して異常なほどに適応する。
   ちなみに自分の名前が嫌い。詳しく言うと女々しいという理由で漢字が嫌い。
得意属性:火
契約相手:火焔

名前:火焔
性別:女
年齢:外見年齢約20、実年齢推定五百歳ほど。
容姿:金髪でロングの美少女もしくは美女。意地の悪そうな笑みを浮かべている事が多い。背は花好樹よりも微妙に高い。
概要:いろいろあって花好樹と契約した"刀の怪"。
   数百年刀ごと封印されていた為浮き世離れどころじゃないほど現代知識がないが、織田信長を「織田っち」などと称するなど、変な部分で現代的。
   花好樹を燃やしたい奴No.1にあげている。理由は燃えやすそうな名前。
   刀の怪の戦争にはそれほど興味は無い。むしろなぜ急にそんな物が起こっているのかに興味を示す。
媒体武器:日本刀:銘???
属性:火……?
契約相手:蔵梨 花好樹



刀の怪:武具に取り憑く妖怪。取り憑かれた武器は妖具となり、不思議な力を発揮する。

戦祭:刀の怪と刀の怪が宿った武器を使う契約者のコンビ達が戦い最後の一人を決める意味不明の戦争。幹也曰く"出来レース"。

刀憑:戦祭の中止を目的とする組織。地下に拠点を置き、九重幹也をリーダーとして活動している。

霊具顕現:通称二段階。能力を増幅する武器を生成する。共通効果として第一段階の能力を無効にすることができる。

オリキャラ募集概要
>>20

Re: 刀憑〜有象無象の少年と刀の怪〜 ( No.6 )
日時: 2011/09/25 18:33
名前: 潰レモン (ID: qoVi4/mV)

>>長月さん
コメありですー!
信じられるか?題名は即興なんだぜ?
完全に純粋にバトルし続けるような小説ですがどうぞよろしくお願いします。
火焔たんマジサブカル幽霊!




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

朝です。
学校です。
気だるいです。

「うだ……」

『さあ朝食じゃ朝食!飯を食えば眠気も吹っ飛ぶぞ!さあ行こう花好樹今すぐ行こう花好樹!』

朝の火焔はテンションが高い。
低血圧のオレとしては非常にめんどくさい。

つうか昨日の結団式(命名)の後で恥ずかしいのだからあまり気さくに話しかけられると……やりずらい。

『……むー、てんしょん低いのう。アゲアゲでいこうぜーって昨日のテレビでも言ってたじゃろう』

サブカル幽霊め。

「火焔、母さんは昨日飲み会でダウンして二日酔いで飯を作れないほどです」

それだけ言ってやると火焔は家を出るまで喋らなかった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「おはー」

と言いながら教室へ入ると

「ヘイヘイヘイヘイ!カッズキー!新聞見たか新聞!ヤバイって!ヤバイ!怪死だぜ怪死!しかもこの町で!」

ぐいぐいと友人に朝刊を押しつけられる。
今日はテレビ欄と天気予報しかみてねえ。と言いながら新聞を受け取ると……

「…………ああ。そうか……現実的に考えてそうなるか」

彼の死体、氷が溶けてばらばらの死体として残ってしまった死体。
さすがに大々的にピックアップされている。
つーかオレぶん殴ったからDNA出てお縄とかマジやめて欲しい。
只でさえ神社の地下から刀の窃盗とかいう罪があるのだ。

『でぃーえぬえーとか言うのが何かは分からんが恐らくお前の不安は杞憂じゃよ。刀の怪の能力は普通じゃないからの』

ふーん、信じるしかないな。
にしても、凍月……。また戦うことになったら注意しなくてはならない。
また契約相手を"気に入らない"的な理由で殺させる訳にはいかない。
あのビッチ軍刀が!見た目男だったけど。

『びっちってなんじゃ?』

教える気は無いけど400歳オーバー(推定)の火焔さんには無縁だと思うから気にすんな−。

『む、聞き捨てならんのう。霊として生まれたのは織田っち死前10年くらい前じゃったし封印されてた間は死んでるようなもんじゃから実際は二十程度じゃよ』

1572年生まれ(推定)の火焔。
1582年織田信長死去。
1600年豊臣秀吉天下統一。
……10歳〜28歳……これは………分からずらい……。

かえんさんじゅうきゅうさいとかそういうネタが流行るな。

『二十で通す』

かえんさんじゅうきゅうさい

『二十で通す!』

火焔さん39歳

『よし分かった人体発火だ』

ふひひ、さーせん。
あ、ちょっとまって指熱い熱い!火傷とかマジやめて!火焔さんストップ!

『……花好樹、私の年齢を言ってみろ』

今も昔もピッピピチの二十歳でございます。

『昔はいらん』

すいやせん。
……さて、結構ギリギリに来たのでホームルームが始まるな。
まあ授業中も火焔とだべれるのは暇つぶしに良さそうだ。
ぐがあ、と大きくあくびをしながらオレはそんなことを思っていた。

……そう思っていたのだ。

『花好樹、ここの問題が違うぞ。たわけ』

厳しい……。
まぁ、刀の怪の戦いやら何やらで自習できなくなって只でさえヤバイ成績がさらに落ち込む。なんて事を避けるためにも授業くらいは真面目にやっておくべきかもな−。ノート提出とかで困りたくないし。
にしても、古典の授業はなぜこうも眠いのか。
秋は春と同じく丁度良い温度で眠りやすい……丁度冬服になって暖かいし

『やれやれ、まあ昨日の疲れもあるじゃろうし……しかたない。私が憶えておくから少し休んでいいぞ?』

ん、厳しいのか甘いのか……ま、お言葉に甘えることにしよう。
まったく今真面目にやるのも悪くない(キリッ! とか考えていたくせにもうこの体たらくだ。
情けない。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『寝過ぎじゃ』

「申し訳ない」

今日一日六時間の授業の内四時間の記憶が無い。
ちなみに火焔の持っている"かえんのノート"と無駄に可愛らしい字(しかし筆字)で書いてあるノートに今日の授業の板書はすべてとられていた。
なんという過保護……。

「……火焔、お前の前の持ち主って明智光秀なの?」

唐突に聞いたためか、んー……と火焔は困ったように口ごもる。
少ししてから

『織田っちが悪狐の働きを認めて自分の刀であった私をやったのじゃ。ま、"貸し"じゃったんじゃがな』

「織田信長って実際どんな人だった?」

『……性格的にはお主に似てるかもな?気ままで気弱じゃが、気弱な気持ちをねじ伏せて戦に望んでおったな』

気ままで気弱……オレってそういう風に見られているのか……。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『ねえねえー、いつでも殺せるよー?……お兄ちゃん、なんで殺さないのー?』

花好樹の家から数キロ。
ビルの屋上にて、人がいた。
弓を持った男が。
細く鋭い目、全身を包む筋肉、長く伸ばした黒い髪。

「まあまあ、待ちぃや。あんなんホンマに"いつでも"殺せる。頬っておいてもぶっちゃけ結果は変わらんやろうが」

弓は、答える。

『でもー、経験値は稼いでおかなきゃ−。僕の能力も次の段階に行かないよ−』

男は弓を見ながら快活に笑った。
まるで年の離れた弟の遊びに付き合ってやるかのように

「まぁだまだワイ等と同じ段階にいる奴ぁいてへんて。焦らんでもええ。ちゃんと育ててやる。そして勝ってやる」

『じゃあー、今回は無しー?』

「……そんなに殺したいんか?」

やれやれと男は後ろ頭を掻いた。
弓はそれに対して即座に

『あいつ等お兄ちゃんが思ってるより危険だよ−?今は弱いけどあれ、たぶんまだ契約したてだし』

ふむ、と顎を撫でて吟味する。
数キロ離れてても対象が完全に見えるこの強化された視力で。

「そない言うなら仕方ない。明日にでも殺るか。……今日は愛しのジュリちゃんと夜デートやから簡便な?」

『どうせまたすぐ捨てられるくせにー!』

「るっさいわぁ!気にしてるんやから触れるんや無い!」

Re: 刀憑〜有象無象の少年と刀の怪〜 ( No.7 )
日時: 2011/09/30 21:06
名前: 潰レモン (ID: qoVi4/mV)

『花好樹、すまんが今日も屋上へ行ってもらえるか?』

昼休みに入った途端そんなことを言われた。
火焔は今日の午前中ずっと何かを気にしているようだったが……。
何となく予想はつくけどさ。

りょーかい。とだけ頭の中で返事をしてオレは席を立った。

そして教室を出るとき何人かがこそこそ話を始める。
うるせえ、彼女なんてできてねーよ聞こえてんだよ。

「で?何?」

屋上に着いてまずそこから切り出した。
どうせ刀の怪と契約者に狙われてるとか……

『来るぞっ!』

いつの間にかオレの手に刀が握られている。
予想外だッ!

即座に刀を横一線、なぞるように爆炎が吹き上がった。
ぶおっ!という音とともに燃えながら吹き飛ぶ矢が見えた。

『右じゃ!』

右に向かって範囲をカバーするように爆炎を撒く、別方向から……二人?

『……いや、一人じゃ。場所は動いておらん』

……矢の軌道の操作とか、念力とか、そんな能力か……どっちにしても遠距離攻撃をする相手には

『"せおりー"として接近戦じゃな!』

どっちだ!?

『あっちじゃ!』

幽霊モードの火焔が刀から出てきて指を指す。
八時の方向、少しずつ火焔の指が動いていく。
行くか……。

『攻撃が来たら方向だけ指示する。先ほどと同じように範囲で燃やせ』

「オーライ!行くぜ相棒」

だだんっ、と屋上から幅跳びの要領で飛び出しポンプ小屋や温室の屋根へ次々と飛び移り学校を出た。
……やっべ無断早退だ……さすがに停学処分にはならないだろうが……。

『(……恐ろしささえ感じるのう、花好樹の才は……既に炎と刀をしっかり使えておる。使いこなすにはほど遠いが、鬼才と呼ぶに相応しい)』

火焔がこちらをちらちらと見ている。
攻撃来るときとか大丈夫だろうか……。

「つか火焔、同類と戦う時上手く隠れる方法とか、そんなんないのかよ?一般人に見られるとか勘弁だぞ」

火焔はハッと我に返ったように返答する。
おいおい、今絶対やばかったよね!集中してなかったよね!

『そ、それについては杞憂じゃ。刀の怪の力は他者からの"興味"を削ぐ力を持っておる。目に入ったところで風景と同化して見えるらしい』

らしい、か。

『織田っちに使われていた時に蘭丸が「殿が消えた」とか抜かしておったわ』

蘭丸ェ……。
っと、集中集中……ていうかあれから攻撃が全く来ていない。
逃げ回っているだけだ。あきらめた?

『それは無いの?殺意ははっきり伝わっておるし、それに』

それに?

『力を溜めておる……おぬしがこの前やっていた"げーむ"の"ちゃーじあたっく"と同じような物じゃ』

うわぁ……。
巨大化した矢が迫ってくるとかだったらどうしようもねえよ……。

『それはないな。奴の力の質はだいたい把握した。細かい攻撃が多発する型じゃ』

弓使いのテクニカルタイプみたいなもんか。

『"てくにかるたいぷ"と言うのか。憶えておこ———止まった』

……チャージが終わったのか?
火焔の顔に冷や汗が見えた。
珍しい……とか思う前に火焔が呟く

『狙われておる……周囲の方向全部……上も下も——ッ!』

と再び火焔の言葉が途切れる。
オレの刀がいつの間にか握られているように、周囲に大量の矢が浮遊していた。
おいおい……どうする?
オレは刀を構えて全力で炎を出す準備に入る。

『防げ、逃げろ。喰らうなとは言わん……致命傷は避けるんじゃ』

きゅるっ。という金属のような音が鳴った。
矢が、一斉に飛んでくる。

「お、おおおおああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

絶叫と共に刀を乱雑に振り回す。
刀で斬り、弾き、炎で燃やし、爆風で吹き飛ばす。
上半身、腹から上を中心に守る事にした途端右足に五本ほど刺さった。
膝をつきそうになるが食いしばって刀を振り続ける。
どすっ、と低い音が聞こえた。
ああ、腹にささったな……。
右腕、左肩、腰。次々に矢が刺さった。
全身が鋭い痛みに襲われている。
だが、この心臓と頭くらいは守り通す。
この矢の地獄が終わるまでは刀を振り切ってみせる。

そして、唐突に矢は止まった。
そこまでだ。確認できたのはそこまで。
それ以降の記憶はない。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『花好樹……よく耐えた……』

花好樹は矢の打ち止めとほぼ同時に倒れてしまった。
いくら刀の怪と契約して簡単に死なない強度だとしても、ここまで串刺しにされてなお戦い続けたこの少年の根性は普通では無い。
賞賛に値するとか、
褒められるべきだとか、
そんな"れべる"ではない。
本当に、よく耐えた物だ……。

『すまない。今回は撤退しよう……敵ももう退却したようじゃ。……体、借りるぞ』

私の魂が花好樹に入り込む。
と同時、切っていた感覚の"りんく"が戻る。
激痛と、疲労、私の炎での火傷……。
花好樹には謝っても謝りきれないな、これは。

「さて、母君にはどうやって説明しようか……いや、明日まで寝れば傷も塞がる。この前の廃屋に逃げ込もうかの」

歩き出そうとすると左足が動かなかった。
私は無理矢理片足を引きずって廃屋へ向かうことにした。

距離は特に遠くない。
この町は人も少なく、学生もまだ学校だ。
人に見られる事はまず無い。

「……憶えておれよ、まだ見ぬ同類。花好樹が何をしたというのだ。……狂っておる、この戦争は……!」

ぎりっ、と唇をかみしめる。
ブチブチと切れて血が出るのが分かりハッとした。

花好樹の体じゃったな……やれやれ、また体を傷つけてしまった。

Re: 刀憑〜有象無象の少年と刀の怪〜 ( No.8 )
日時: 2011/10/01 14:53
名前: 潰レモン (ID: qoVi4/mV)


どこだ、ここ……。

辺り一面瓦礫と、火事場……。
人が一人もいない。
死体も何も無い。
しかし、焼けた後だけは人型で残っている。

「なん、だよこれ」

「お前の心象風景ってやつさ」

後ろから話しかけられた。
途端に振り向くとフードをかぶった髪の長い男が立っていた。
背はオレよりほんの少し高く、髪とフードで顔は見えない。
男は淡々と言い続ける。

「お前の心の中。だな……本来は立派なビル街、少し行くと草原、後はずっと海と空。つまらん」

だから、と

「オレが燃やして、穢して、痛めつけて、殺して、荒らして、犯した」

うれしそうに、うれしそうに笑った。
……この、野郎。

「あん?やる気か?だめだめ。勝てやしねーよ。なんたって」

ごしゃっ、と腹に拳がめり込んだ。
なにかアーマーのような物で覆われた重い拳が。

「オレはオマエより強いオマエだ」

吹き飛ぶときに、フードの中が見えた。
紛れもなく、このオレ、蔵梨花好樹の顔だった。




「————っ!」

夢……?
嫌な夢だ。何だったんだアレ……。
腹いてえし。
……この間の廃墟か。
そっか、矢を防げなくて……。

『おはよう。花好樹』

「火焔」

腕を組んで壁に寄っかかっている火焔を見て少し安心した。
しかし、火焔はというとやりづらそうに近づいてきて。

『すまない』

と土下座を始めた。

「オレ、何かしたか?」

『無駄にお主を傷つけた。ほぼ完治しておるが幾分かは私の炎のせいでもある……恨まれても文句は言えぬよ』

ふー、とオレは大きくため息を吐く。
そして

「馬鹿だな、オマエ」

なっ!と火焔。さすがに予想外だったか

『馬鹿とはなんじゃ!ええい、"のーと"をとっておいてるおる恩を忘れ———』

細かいことを最後まで言わせる気は無い。
今は大事な事を言うべきだ。

「オマエが力を貸してくれてるからこれで済むんだ。オマエがいなきゃ死んでるんだ。オマエがいなきゃ戦えない。謝るな。感謝されてくれ」

火焔は目を閉じて少し何かを考える。
一秒にも満たない短い考えだったが、

『馬鹿はお主じゃ……たわけめ』

否定はしねーよ。と返して起き上がる。
なるほど確かに全身傷だらけ。世紀末覇者みたいになっている。
ガクッ、と右膝が崩れる。

「っと……まずったな。こりゃまだバトれはしなさそう」

『……それについてじゃがな』

あん?とオレは火焔を見る。
にたり、とやーな笑みを浮かべて

『弓矢の攻撃の攻略法を掴んだ』

まじか!
食いつくようにオレは聞いた。
火焔はまだニタニタと笑う。

『この戦、同類達との戦いはいわば”ちーむ”戦じゃ。つまり私が戦っていけない道理は、ない』

ボンッボンッボンッボンッ!と四つ大きな火の玉がオレの周りを浮遊しだした。

『この炎、お主では無く私が制御する。あの量の矢でも焼き切る自信はある』

なるほど。防御を担当してくれる訳か。

『まあ足が完治してからじゃな』

とは言う物の、火焔の顔は獰猛で、張り詰めた表情をしていた。
キレている。と言っても良いだろう。
彼女の胸の内には莫大な炎が燃えている。
そして、きっとそれはオレも同じで……

「火焔、」

『うん?』

「勝つぞ」

『ああ』

待っていろ。
次は負けない。
絶対、絶対に

Re: 刀憑〜有象無象の少年と刀の怪〜 ( No.9 )
日時: 2011/10/02 14:29
名前: 潰レモン (ID: qoVi4/mV)

あれから三日。
今日は休日だ。
傷も完治した訳だし、そろそろ行動を起こしたいところだが

「どうよ、火焔。気配感じる?」

『いや、全くないのう。本気で諦められたかもしれんな』

それはそれは、気にくわない。

「地道に探索?」

『そこまで"あくてぃぶ"に動く必要も無いじゃろう。奴らはよく動く"たいぷ"みたいじゃしのう。そのうち勝手に出てきおる』

それまではしっかり準備、か。

『そういえば昨日は不可思議な気配を察知した』

あん?とオレは火焔に説明を求める。

『同類じゃ。こちらに気づいているのに殺気が皆無じゃったな。少し観察してどこかへ行ってしもうた』

ふーん。結構いるんだな、同類も。
さて、そんじゃまぁ練習に行きますか。
部屋着から運動用のジャージに着替える。
自主的に運動なんてすることは無かったんだがやはりこういう状況に置かれるとしないよりはずっとマシだ。
トレーニングの場所はあの神社。
どうやらもう神主さんも管理人もいないようなので使わせて貰っている。
火焔の力を使ってれば人は絶対来ないし。

『…………ん?』

火焔がくるりと窓を見た。

「どした?また変な気配?」

『うむ……。だが、もっとこう……曖昧で分かりづらい。そこらの同類では関知できないくらいに隠れておる』

隠れて獲物を狙ってるって事か?

『いや、殺気は皆無じゃ。だが、ここまで完璧に隠すとなると……今の私たちでは勝てないじゃろうな』

うっわ、マジかよ……。会いたくねえな。

『訓練はやめるか?』

うーん、殺気は無いんだろ?接触してきても友好的なことを願う……って事で。

『楽観的じゃな。まあよい、全力で逃げればどうにかなるじゃろうて』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ふーんふふふーふふーん」

『全く、リーダーであるあなた自ら勧誘って、ご自分の立場をわきまえてるんですか?』

「えー、コーちゃんは俺とのデートは嫌?」

『……それはぁ、嫌じゃ……ないですけど』

俳優か何かかと思うほどスマートで整った顔立ちの男と、銀色の輝く髪を長く長く伸ばしている女性の幽霊。
彼らの名は九重 幹也と白光。
この戦争の参加者で恐らく最も強いタッグ。
そして、戦争を止めようとする組織のリーダーである。
ついでに、

「近隣で道徳心にあふれる馬鹿騒ぎしてそうな同類は?」

『それで検索して良いんですか?……出ました。一組。当てはまらないのが三組』

うへぇ、と九重は肩を落とす。

「一組いるのかよー勧誘めんどくせーよー。残りの三組潰して帰っていい?」

『バカですか。目的の真逆じゃないですかそれ。ほら、行きますよ。あっちの古びた神社です』

「うだー、歩くのめんどーい。完全同化したら一瞬じゃーん」

はぁ、と本日数十回目になるであろうため息を白光は吐いた。

『そんなことしたら近隣だけじゃ無くて世界中の刀の怪が私たちだけを狙い始めますって。それに、幹也さんなら走るだけでも一瞬じゃないですか』

九重は顎に親指と人差し指を当てて、いわゆるどや顔で白雷に言った。

「そりゃあ俺様ってほら、異世界から来てるから」

『はいはい厨二病でしたっけ?かっこいいですねー』

「あー、信じてなーい。またそうやって流すんだー。あーあーいいですよーだこれからはもう引きこもって外出なんてしないですー」

『あっ!ちょっとまってください。ダメ!ダメです!』

「んー?リーダーとしてアクティブな行動は慎むんじゃないの−?」

『う……』

「じょーだんじょーだん。ほれほれ、行くよコーちゃん。勧誘するんでしょ?」

戦争に参加している中でもトップクラスのやる気のなさである。

Re: 刀憑〜有象無象の少年と刀の怪〜 ( No.10 )
日時: 2011/10/02 15:07
名前: 水月◇51watelmoon16 (ID: SuDcL78Z)

初めまして!水月と申します!!
題名に引き込まれ、話が面白くてすらすらと読んでしまいました!!
火焔が面白くて大好きです!!
ではでは、執筆頑張ってください!


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