複雑・ファジー小説
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- ふたり 《コメントください!》
- 日時: 2012/08/11 13:10
- 名前: きなこうどん (ID: FLOPlHzm)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=11247
こんばんは。
そして、お久しぶりです、という人もいますか?
初めまして、というべき人もいるでしょう。
「この世界で」のきなこうどんです。(上のURLで行けます。)
新たな作品を書き始めたいと思います。
きなこうどんに初めて会う、という方がいれば、前作から読んでいただけるとありがたいです。
できれば感想もお願いします。(図々しいですが。)
前作から引き続きの方、どうもありがとうございます。
個々でいろいろ感じたことはあると思います。
その思いも引きずったままでこの作品を見てください。
もしかしたら、きなこうどんも成長しているかもしれませんね。
身勝手ながら、この頃は忙しいので、更新は遅くなってしまうかと思いますが、温かい目で見ていただけるとありがたいです。
コメントをする方は遠慮せずに、「本音」で!!!
敬語でなくても大丈夫です。いきなり友達感覚でも。
今回もよろしくお願いします。
- Re: ふたり ( No.25 )
- 日時: 2012/08/07 00:52
- 名前: きなこうどん (ID: FLOPlHzm)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「うん。受けない」
でも、そう言いながら遥の心の中には、生きたい、と願う自分もいた。
今なら引き返せる、と。
まっすぐに伸びた視線が、愁の心の中でじわじわと、猛威を振るった。
それを必死に抑えつける。
これはただの確認だから、と自分を納得させる。
たとえ、ここで遥が選択を変えたって……もう、締め切りは過ぎているのだから、と。
たとえ、今の遥の目がいくら輝いていたからって傷つくことは……いけないことなのだ。
「もし、遥がそうしたいんだったら……」
言葉に詰まった。
これが正解だと思った。
さっきまでは。
今はさっきとは全くの逆な選択肢が頭を駆け巡る。
結局のところ、きついのだった。
その迷いは体内を血液が巡るように、季節が春から夏へ変わるように当然のことであった。
最愛の人を、失ってしまう、と愁は怖かった。
そう思うと、涙が溢れてきた。
息を飲んで無理に押し戻そうとしても、無理だった。
——俺は男だから、簡単に泣いてはいけないかな? 今日だけは……許してください。
遥は泣かなかった。
愁は、遥は強い、と思った。
遥は、愁は優しい、と思った。
「いいよ。しなくても。手術なんか受けなくてもいいよ」
愁のかすれた声を聞いても遥は泣かなかった。それは本人が強く、泣かない、と決めたからだった。
——泣かない。愁の前では絶対に泣かない。
それは遥の最後の意地だった。
でも、今日だけは自分を甘やかしたかった。ひとり泣く彼を、ひとりにしたくない、と思った。
——わたしのために泣かなくても、いいから……。
——俺のために笑わなくていいから……。
——お願い。自分のために……。
「ねぇ、愁? あたしもう泣かないから、一生泣かないから、今日だけ許して」
愁の胸に顔を埋めて泣いた。愁は腕に力を込めて、力強く抱きしめた。
自分がいない間に遥がいなくならないように。
愁はこの三週間である決断をしていた。
——俺、やっぱり生きるよ。
- Re: ふたり ( No.26 )
- 日時: 2012/08/07 09:07
- 名前: きなこうどん (ID: FLOPlHzm)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
遥の気持ちを考えたら、この選択が正しい、と思ったからだ。
苦しいけれど、悲しいけれど。
「ごめんね。ごめんね。ごめんね。ごめんね……」
ひとしきり泣いた。
謝りながら泣いた。
病室が怖い。病気が怖い。何より——。
——一緒に生きられなくて、ごめんなさい。
何より——愁を殺してしまいそうになる自分が怖い。この思いこそが
「今の遥」を保っていられる言葉だ。
- Re: ふたり ( No.27 )
- 日時: 2012/08/08 07:59
- 名前: 春野花 ◆tZ.06F0pSY (ID: nZ60vFmZ)
運命が、分かれる時が来ましたね————。
切なくも、泣けてくるも、じん・・・と心に浸透していくこのお話も、終わりに差し掛かってるのかな・・・?
クライマックスがそろそろな予感。w
こんにちはぁ、花ちゃんです★((w
2人とも生きちゃえよもぅっ!!!(泣
そしたら幸せぢゃんっ?!!
・・・・まぁ、色々有るんですよねぇ。。。(メソメソ
泣いちゃったよ2人ともぉっ!! こっちも泣きそうやんけ!!(感涙号泣
さて、分かれた運命がどう動いていくのか楽しみです。
頑張りましょうねぇっ♪ノシ
- Re: ふたり ( No.28 )
- 日時: 2012/08/11 13:06
- 名前: きなこうどん (ID: FLOPlHzm)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
ここで愁が、やっぱり……、と迷わないようになるべく、明るく振舞って、そして、愁がいなくなった病室でひとり泣くつもりだったのに。
一度流れた涙はそう簡単には止まってくれない。
愁が移植を決断してから三週間が経とうとしていた。
ヨネ子はもういなかった。
遥は近い存在の患者が死んでもなお、死ぬことを諦めなかった。
愁は近い存在の患者が生きることを諦めてもなお、生きることを諦めなかった。
愁は何も言わなかったし言えなかった。
しかし、今泣いている遥が過去のどの遥よりも愛しかった。愛したいと思った。
自分たちはなんて無力なんだろう。
運命を見なければ、前にさえ進めないなんて……。
今だけは遥の家族を恨んだ。
憎んだ。
呪った。
その小さな時間の中でもふたりには小さなずれがあった。
それはお互いが向かっている未来そのものが違うからだった。
遥はこの時間がとても幸せだった。
しかし、愁はこの時間が来なければ良かったと思っていた。
- Re: ふたり 《コメントください!》 ( No.29 )
- 日時: 2012/08/12 11:47
- 名前: きなこうどん (ID: FLOPlHzm)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
昔、ふたりはお互いがひとつだと思っていた。でも、違った。お互いが好きになった頃、それぞれがずっと考えていた。
「ひとつ」とは——。
意思を確かめて、信じあうことじゃない。
一緒に生きて、死ぬことじゃない。