複雑・ファジー小説

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姫は勇者で魔法使い。
日時: 2012/11/22 21:59
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: zist1zA5)

どうも、野宮詩織です。
ちなみに、複雑・ファジーでは二本目です^^

小説大会が始まってしまうと、タイトルが変えられなくなってしまうので、【リメイク】という文字を一旦取りました(´・ω・`)

注意
・荒らし、喧嘩、誹謗中傷、チェンメ、このサイトのルールや法律に抵触するような行為は禁止です。
・宣伝も禁止させていただきます(´・ω・`)
・一見、コメディ成分が強いですが、ちょこちょこグロや過激描写が入りますので、苦手な方はブラウザバックを推奨します。
・作者が嫌いな方もブラウザバックを推奨します。

これらを守れる、もしくは大丈夫という方は大歓迎です!!

†callers†
茜崎あんず様、鈴音様、刹那様、nananana様、白波様、緋賀アリス様、風猫様、Kuja様、朝倉疾風様

†Character’s profile†

†Contents†
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†Illustration†
>>11 >>15 >>61

†Another†
>>55 >>60

姫は勇者で魔法使い。 ( No.72 )
日時: 2012/09/19 07:19
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: rc1iwi.s)

「もしもし、クロヌですか?」
『そうだが』

キョウコとかいうミコガミの妹に「誰かに連絡をいれてみろ」と言われたから、言われるがままアドレス帳の一番最初に出てきたクロヌに電話をかけてみる。
一番最初が「ク」と言うのも少し寂しい気もするが、僕は兄さんがいれば大丈夫だし問題ない。

「そちらにリヤン兄さんはいますか?」

悪い返答が返ってきやしないか怯えながら、恐る恐る問いかけてみる。

『何を言っている。 いるわけないだろう』

クロヌが不思議そうに言った。
その瞬間、ガシャンという固い地面に金属の塊が落ちたような音が静かな辺りに響き渡った。

「え……あ……じゃあ、兄さんはどこに?」

取り落とした携帯を拾って、再びそれを耳に当てる。
向こう側からクロヌの声が聞こえてくるのだが、内容が全く頭に入らない。

『おい、大丈夫か?』

携帯からクロヌの声が流れ続けてくる。
何も言わない僕を見かねてかキョウコが僕の携帯を引ったくり、応答を始めた。

「全然大丈夫じゃないッス。 リヤンにぃがいなくなったとかで、さっきからずっと我が家の前で泣いてるんッスよ」

十四歳の女の子が二十一歳の僕よりもしっかりとした対応をしてみせる。
姫様にこの体たらくがバレたら、クビにされる確率だってゼロではないだろう。

「いないッス。 というか、リヤンにぃは私たちの家によく来るからよくフラフラ出歩いてる、って勘違いされんスけど、我が家とリヤンにぃの家を行き来する以外の外出なんて滅多にしないんッス」

キョウコがクロヌにそう告げる。
このガキ、兄さんの何を知った上でそんなことを言っているのだろうか。

既に調べたが、兄さんはそれ以外にも綺麗なコスモス園とバラ園がある公園にもフラフラとよく出歩いて行ってしまう。
特に十月辺りはバラとコスモス両方が見頃になるということもあって、毎日のように出かけていって、ゆっくり休んでくれない。
兄さんはゆっくり休むのが仕事なのに。

—*—*—*—*—*—

「こら、入っちゃダメって言ってるじゃないか」

くまのぬいぐるみを抱えたまま、どうやってドアノブを開けるかを試行錯誤している枢に声をかける。
そのドアの先の部屋には会う度に枢に餌付けするモアクと彼が拾ってきた突然倒れたという病人がいるから、枢が騒いだら身体に毒だろうということで、中に入れないようにと彼の父親である翔に言われている。

せっかく、久しぶりに他の二人の子供に会えたというのに、二人して翔のことを拒絶するわ罵倒するわで、翔の方は今、泣き寝入りしている。
枢はその布団に入りこんで一緒に寝ようとしていたのだが、泣いているのを見られたくなかったようで、翔は彼を僕たちに預けた。

『だって、ボクも一緒に遊びたいんだもん』

枢がホワイトボードにそう書いて、訴えかけてきた。
枢も翔も寂しがり屋さんだから定期的に構ってあげないと爆発してしまうのだが、困ったことにこの家族はだいたいみんな同じような状態であるために、毎日誰かしらが爆発している。
逆に構ってあげなくても特に何も起こらないのはモアクくらいなものだ。

『リヤンお兄ちゃんは遊んでくれる、って言ってたよ』

枢が今にも泣き出しそうな表情でプルプルと震えながら、ホワイトボードに必死に文字を刻む。
この子はリップサービスという言葉を知らないらしい。
見た目こそ育っていないものの、実年齢は既に人間の寿命を飛び越えているというのに、幼い子供のように純粋なままだし。

「でも、具合が悪い人に無理させちゃダメだし……」

子供の夢をぶち壊しにかかるのはさすがにはばかられるので、遠まわしに「やめろ」と伝える。

『嫌だ、遊ぶんだもん!』

泣いている顔文字付きでそう書き残して、ホワイトボードがついたくまのぬいぐるみを左手で抱えたまま、右手でドアノブを回し、パタパタという床と素足がぶつかり合う音をたてて、枢がリヤンという名の病人と翔や忍さんの異母兄弟であるモアクがいる部屋へ突入していった。

さすがに放置しておくにはいかないから、枢に続いて部屋に入る。
「何故、この部屋に枢が?」と刺すような尖った声色でモアクが問いかけてきたが、スルーしてベッドの上によじ登ってリヤンに頬ずりしている枢を引き剥がす。
しかし、枢はリヤンにひしとしがみつき、頑なに離れない。

リヤンという男が病人のフリをしてこの家に忍び込み、「××」を持つ枢をさらいにきたどこかの国の特殊部隊の人間だったらどうしよう、という発想はないらしい。
枢は「××」を持っている関係で、桁違いの「魔力」を持つ僕や翔よりも遥かに狙われやすいのだ。

僕達であればある程度加減が出来るが、枢はとっさに加減が出来るような生半可な力ではない。
枢をさらいに来た奴を消してしまうともみ消すのはちょっと面倒だし、出来れば、口を効けない状態にして送り返すという手段を取りたい。

まぁ、そのために、わざわざリヤンの監視にモアクを置いているのだが。

Re: 姫は勇者で魔法使い。 ( No.73 )
日時: 2012/09/19 16:14
名前: 風猫  ◆Z1iQc90X/A (ID: 68i0zNNK)

詩織へ

デクラン、今後立ち寄ることがありそうですな。今の現実を風刺しているようで、……となったです(苦笑
かばってくれないと爆発する純粋な子供たち……
なんだか怖いですね。

Re: 姫は勇者で魔法使い。 ( No.74 )
日時: 2012/09/23 19:58
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: zist1zA5)

>>風猫ちゃん

たしかデクランは衰退とかそんな感じの意味だったはずです。
現在も経済云々叫ばれていますが、個人的にはそこまででもないと思うのです。

構ってくれなくて爆発するのが子供だけだといいんですけどね……(´・ω・`)

姫は勇者で魔法使い。 ( No.75 )
日時: 2012/10/28 11:35
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: zist1zA5)

「なんじゃ、オルドルからか?」

携帯の電子画面をタッチして、携帯をしまったクロヌに問いかける。
時々漏れてくる向こう側の声と会話からオルドルとキョウコ殿と通話しているであろうことは予想できた。
しかし、さすがに会話すべてを聞き取れるほどの聴力は持ち合わせていない。
まぁ、持っていたとしても他の人の会話を理由もなく盗み聞きするのはモラルやマナー的にどうかと思うし、やらないと思う。

「あぁ。 しかも、緊急事態だ。リヤンがいなくなった」
「本当か?」
「こんな嘘をついてどうするんだ」

クロヌは無表情のまま嘘を吐くことが出来るから、念のために確認してみたのだが、やはり嘘ではないらしい。

前に言っていたリヤン殿の虚弱体質も本人が言っていた通りで、調べてみたら過去にリヤン殿が勤めていた研究所は当時所長であった男が起こした細菌テロが原因だったらしい。
その細菌自体は所長が研究していたものだったのだが、その助手の一人であったリヤン殿はその発生時にちょうどそれの保管場所にいたがために他の誰よりも多く細菌を体内に取り込んでしまった。
その事故での死者は五十余人。
逆に生き残ったのはその所長とリヤン殿とその時に出張等のために外出していた四人のみであった。

外へでていた四人中、二人はその所長の部下だったらしいのだが、そやつらは残念なことに交通事故と病気で既に亡くなっているため、所長がどんな性格だったかを正確に探ることはできない。

しかし、今の問題はそこではない。
いくらなんでも、そんなに都合よくそやつの部下だけがバタバタ死んでいくのはおかしい。

事故は二年前に起こったのだが、事故当初亡くなっていた人数はせいぜい十人程度であった。
その時点でかなり多いが、その後に「事故が原因で衰弱した」という理由で亡くなったと書かれていたのだ。
それなのに、死因が「頭部を殴打されたため」だなんてちゃんちゃらおかしい限りだ。

つまるところ、所長の部下が殺されて回っている、ということだ。
いつもニコニコと笑っているリヤン殿だが、常に殺されるかもしれない、という恐怖がつきまとわれているのだ。
運良く抗体だかなんだかを少し持ち合わせていたから生き残れたものの、隠蔽のために殺されたのではわけない。

リヤン殿はもちろん、彼を溺愛しているオルドルから見ても恐怖だろう。

「よく行く場所は調べたんだが、いなかったらしい」

妾の悩んでいる顔を見て、クロヌがそう言った。

「【探索サーチ】は?」

同じく真面目に考えていたミコガミが、ふと思い出したようにそう言った。
探索サーチ】はかなり汎用性が高く一度見たことや触れたことのあるものを探し出せる、という名前のままの魔術だ。
当たり前だが、オルドルはリヤン殿を見たことも触れたこともあるのだから、簡単に探し出せるはずだ。

「……オルドルは【探索サーチ】、使えないぞ」

クロヌが衝撃的な事実を口にする。
探索サーチ】は妾でも使えるほどに、簡単かつ使いやすいのだ。

勉強したくない、と断固拒否していた妾だが、【探索サーチ】や【転移テレポート】などの使えないと困るものは無理やりたたき込まれたくらいだ。
妾が母上の執事に厳しい指導を受けている間、クロヌは妾のソファで仮眠を取っていたのは良い思い出だ。
うむ、絶対に許さない。

「オルドルは一般教育課程も終えてないからな」

彼はそう付け足し、ミコガミから携帯を借りて、キョウコ殿にかけ直す。
どうやら、オルドルでは埒があかないと考えたようだ。

「オルドル、学校出てないのか……」

キョウコ殿と通話をしているクロヌを横目にミコガミがそう呟いた。
妾は身辺警護等の関係上通うことが出来なかったのだが、エキャルラット王国の国民は普通教育といって、五歳から十八歳の間の十三年間は学校で魔術や倫理はもちろん、現代ではあまり使わない化学なども無償で教わることができる。

ミコガミも通っていたのだが、飛び級をしたため、十五歳の時に卒業してしまっている。
彼だって、ちゃらんぽらんなように見えて、頭は良いのだ。

「リヤンの居場所が分かった」

携帯を閉じたクロヌがこちらへ振り返ってそう言った。

「隣町まで行っちゃったとか?」

ミコガミが確かにリヤン殿ならやりそうなことを挙げる。
オルドルも、リヤン殿はすぐにフラフラと出歩いていなくなったかと思っても、ご飯の時間になると必ず戻ってくる、と言っていたし。

「いや、違う。 幸か不幸か」

そう言って、クロヌが魔術で電子地図を広げ、リヤン殿がいるという場所を指差した。

「え、ここって……」

それを見てミコガミが絶句する。
ミコガミの視線の先にあるクロヌの指が指す場所はどこからどう見ても。

「××ではないか!」

妾の必要以上に大きな声が木々が生い茂った森に響き渡った。

姫は勇者で魔法使い。 ( No.76 )
日時: 2012/11/11 18:01
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: zist1zA5)

「よしよし、枢くんっていうんか?」

枢を引き剥がそうとした翔を止め、リヤンが柔らかな笑みで自分に抱きついている子供の頭を撫でる。
枢は大層リヤンのことを気に入ったようで、コクコクと頷いてリヤンにすり寄る。
この子が懐くならそんなに悪い人じゃないのは間違いなさそうだが、根が悪い人ではないというだけだ。

家族などを人質にされて、枢をさらいに来たり殺しに来た一般人というのも前例はあるのだし。

—*—*—*—*—*—

「うーむ……」

これは岡崎枢に会いに行くのも大切だが、リヤン殿を探すということも大事だ。
自分の立場と友人のどちらを選ぶか、という非常に困ったダブルバインドだ。

どちらかを後でやればいいのでは、という考えも浮かんだが、リヤン殿が忽然と姿を消したのは家出するつもりで出たからだった場合、妾達がリヤン殿を探していると気がついたら、逃げ出すだろう。
岡崎枢の方もどこからか妾らの存在と目的を知ったら逃げ出してしまう。

つまるところ、どちらかを探している間にもう片方に存在を感づかれ、逃げられてしまい任務を失敗してしまうかもしれないということである。

「とにかく、シャルロット様にもらった資料にはこの近辺での目撃情報が多いとあったからな。 岡崎枢の方が先決だろう」

クロヌはそう告げるが、キョウコ殿の【探索サーチ】の結果、リヤン殿もここから近い位置にいるということが発覚したのだ。
そのことも考えると、距離的にはどちらから探してもいいと思うが、なかなかそうはいかない。

リヤン殿も大切な友人ではあるが、岡崎枢を探すのは国の命運がかかった重大な任務なのだ。

—*—*—*—*—*—

「兄さ……」

俺が慕い憧れている兄の部屋の扉を開けると、そこに彼の姿はなかった。
代わりと言わんばかりに、足元に二つの毛の固まりが纏わりつく。

「わんっ!」
「わふんっ!」

兄が飼っている、いつの間にやら神格化してしまった茶色と黒色の二匹の豆柴がしっぽを振って、遊んでくれ、と言わんばかりに軍服姿の俺の足元をぐるぐると駆けずり回る。
衛生上、キッチンにはいれないようにと兄は配慮しているらしいのだが、兄に遊んでもらえない、ということに気がついてしまった豆柴が他の人に猛アタックを始めるから困ったものだ。

「散れ」

二匹の犬の首根っこを掴み、兄のベッドの上に投げ入れる。
わふっ、と小さく鳴き声をあげた犬がめげずに再び飛びかかろうとしてきたため、パタンと扉を閉めてあれらが出てこないようにする。

扉の内側からバンバンとそれを叩くような音と犬の鳴き声が聞こえてくるのを無視して、わざわざ部屋を訪れた本来の目的である兄を探し始める。

「兄貴、ちょっと『うぐいす』と『ひよこ』借りてもいいか?」

そう言って、今さっき俺が閉めた扉を翔が開けると案の定、二匹の犬が部屋の外へと飛び出す。

「うわっ!」

犬をかわそうとした翔が反射的にドアノブを放してしまい、尻餅をつく。
大の男がそんなところを見られたら嘲笑されそうだが、その姿は俺と犬二匹以外見ていないため、翔本人が少し恥ずかしそうに周りを見渡してから、そそくさとその場から離れる。
目当ての『うぐいす』と『ひよこ』は今さっき部屋から扉から飛び出していったわけだが、あれで大丈夫だったのだろうか。

「わんっ」

ちょっと面白い翔の様子を窺っていた隙に再び二匹の犬が俺の足元に集っていた。
兄様と完全に血が繋がっているから、兄様に近い匂いはするかもしれないが、俺は兄様と違ってこの犬のようにうるさいものはあまり好きじゃない。
兄様もあまり動物自体は好きじゃないらしいが。

「わんっ! わふんっ!」

突然、二匹の豆柴がはちきれんばかりに尻尾を振って、俺の足元から離れて後ろへ駆け出す。
探さなくて済んだ、という安堵の気持ちを抱えて振り返ってみると、道端に落ちていたから拾ってきた、他のパーツに比べて襟足だけが長く伸ばされた青色の髪の毛が非常に特徴的な青年——リヤン・ヴェリテが見事に二匹の犬に絡まれていた。
リヤンは俺と違い、犬が好きなのか、わざわざしゃがんで、自分の元にやってきた犬を撫で回す。
気をよくした豆柴の方も、初対面の相手に「撫でろ」と言わんばかりにお腹を見せてみたりしている。

「モアクさん、この子達も連れて行ってええ……ですか?」

二匹の豆柴を持ち上げたリヤンが訛りが強いものの馴れない敬語を頑張って絞り出してそう言った。
とんだ世間知らずな奴だとは思っていたが、さすがにただでさえ騒がしいリヤンがいるのにその上、やたらとうるさくするひよことうぐいすにまで来られてしまったらたまったものではない。

「ダメだ」

一喝すると一人と二匹が非常に悲しそうな表情をした。
ゴネられることも考えてはいたが、リヤンは大人しく犬二匹を床に置き、「あかんって。 また今度、遊ぼうね」と人に話しかける時と同じように優しく話しかけ、頭を撫でてから、俺の方へ駆け寄る。


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