複雑・ファジー小説
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- 姫は勇者で魔法使い。
- 日時: 2012/11/22 21:59
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: zist1zA5)
どうも、野宮詩織です。
ちなみに、複雑・ファジーでは二本目です^^
小説大会が始まってしまうと、タイトルが変えられなくなってしまうので、【リメイク】という文字を一旦取りました(´・ω・`)
注意
・荒らし、喧嘩、誹謗中傷、チェンメ、このサイトのルールや法律に抵触するような行為は禁止です。
・宣伝も禁止させていただきます(´・ω・`)
・一見、コメディ成分が強いですが、ちょこちょこグロや過激描写が入りますので、苦手な方はブラウザバックを推奨します。
・作者が嫌いな方もブラウザバックを推奨します。
これらを守れる、もしくは大丈夫という方は大歓迎です!!
†callers†
茜崎あんず様、鈴音様、刹那様、nananana様、白波様、緋賀アリス様、風猫様、Kuja様、朝倉疾風様
†Character’s profile†
†Contents†
>>1 >>5 >>10 >>18 >>21 >>24 >>30 >>38 >>41 >>44 >>47 >>48 >>51 >>54 >>56 >>59 >>64 >>67 >>70 >>71 >>72 >>75 >>76 >>79
†Illustration†
>>11 >>15 >>61
†Another†
>>55 >>60
- 姫は勇者で魔法使い。 ( No.67 )
- 日時: 2012/08/27 10:56
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: wzYqlfBg)
- 参照: オルドル「兄さん、ドコー(´;ω;`)」な回。
「……美味しい」
見知らぬ軍服の人が運んでくれたらしい場所は豪華な別荘で、どこからどうみても医療施設ではなかった。
でも、よく考えてみれば「医者に診せる」と言っていただけで、病院に連れて行くとは一言も言ってなかった気がする。
現に的確に処置してくれたようで、だいぶ楽になったし、美味しいご飯までいただいてしまった。
オルドルが作ってくれるものとは違い、卵でとじてあるお粥なのだが、卵一つでここまで変わるものなのか、と食べた瞬間に驚いてしまった。
オルドルのも美味しいには美味しいのだが、ここ五年くらい何ものっていないお粥くらいしか食べていないから、飽きが来てしまう。
極稀にほぐした焼き鮭がのったものも出てくるが、焼き鮭自体がおかずに出てくることも少なくないから、鮭がのっていてもあまり新鮮味はない。
「兄様が作ったものなんだ。 不味いわけが無い」
僕が寝かされているベッドの近くの椅子に足を組んで座っている軍服姿の人が平坦なのに、何故か自信を感じさせるような不思議な声で答えた。
この人には兄がいるようだが、その人は弟に迷惑をかけているだけの僕とは違って、立派なよくできた人のようだ。
研究所の事故の後、僕はロクに動けなくなり、「迷惑しかかけられないなら」、と自殺も考えたが、オルドルに止められてしまった。
僕が自ら命を絶とうとして、身近にある鋭い刃物——包丁を手首にあてたのをオルドルに見つかってしまった時は、オルドルに泣きながら止められた。
僕は生きていても死のうとしても、なににしろオルドルを傷つけることしか出来ていない。
「あの……ちょっと人を探してるんですが……」
お粥を食べる手を一度止めて、軍服姿の人に問いかけてみる。
勝手に家を出てきてしまったからオルドルには悪いが、ここまで来たからにはなんとかして合流したい。
「サフィール・アミュレット——エキャルラット王国の第一王女がどこにいるか知りませんか?」
—*—*—*—*—*—
「へきしっ!」
岡崎枢が住んでいるという辺鄙な森のような場所へ向かうために、街中を歩いていると突然くしゃみが出た。
まさかとは思うが、「約束通り」出かけようとしたところ、オルドルに泣きながら止められたために渋々置いてきたリヤン殿達が妾達の噂話をしているのではないだろうか。
「前から思ってたんだけど、姫のくしゃみおかしくないか?」
その辺の屋台で買ったパリパリチーズスティックなるお菓子を食べているミコガミが問いかけた。
視線が妾の方ではなく、お菓子が入っている紙コップに向いている辺りに悪意を感じる。
「そうか?」
さりげなくミコガミのお菓子を二本かすめ取ったクロヌが妾に代わってそう答えた。
一本は既にクロヌの胃袋に収まっているのだが、残りのもう一本を妾の前に差し出してくれた。
ありがたく受け取ろうと手を伸ばすと、スッとクロヌが手を引き、自らの口に運びかじりつく。
「どうした?」
あからさまに悪そうなクロヌの表情は彼が確信犯であるということを物語っている。
「『どうした?』じゃないのじゃ! 妾の分は!?」
妾だってミコガミがそれを買った時に自分の分を購入しようかと思ったくらい食べたかったのに、クロヌとミコガミが「分ければいい」というから我慢したのに、妾の分が無いというのはどういうことだ。
さっきクロヌが取った時に見た限りでは、残っていたのはあの二本だけだった。
「女っていうのは高カロリーなものが嫌いなんだろ?」
これ見よがしにポリポリとお菓子を食べているクロヌがそう言った。
隣でミコガミもさりげなく頷いている。
「カロリーよりも空気や気持ちを察せない奴の方が嫌いじゃ!」
妾の回答を聞いたミコガミが可哀想なものを見る目で、自分がかじっていた分を半分に折り、口をつけていない方を差し出す。
またいたずらのつもりなのだろうが、引っ込められる前に取れば、妾の勝ちだ。
「痛い痛い!! 盗らないから! 大丈夫だから!」
思い切り彼の手首を掴んだ瞬間、彼が悲鳴をあげる。
どうやら妾が思っていたよりも、だいぶ力をいれてしまっていたらしい。
ミコガミがらぶんどったチーズスティックをかじってみると、予想を遙かに上回る美味しさだった。
キツネ色に焼かれたパリパリのワンタンを口の中でかじった瞬間に、カリッとしたワンタンの食感と中に入っているトロトロのチーズがほどける。
本当に焼きたての状態だと舌を火傷するほどに熱いのだろうが、それもまた一興だろう。
まぁ、火傷はしないに越したことはないが。
「姫の機嫌も治ったことだし、行こうぜ」
ミコガミがチーズスティックが入っていた紙コップを近くのゴミ箱に捨ててから、そう言った。
どうやら、彼らは一つ勘違いをしているようだ。
「妾の機嫌は治っておらぬ! クロヌとミコガミが妾より多く食べているのが気に食わぬ!」
「そうか。 俺達は先に行く」
妾渾身のねだりをあっさりと突き返したクロヌが立ち上がり、スタスタと歩き出す。
一瞬逡巡していたミコガミもすぐに立ち上がり、クロヌについていく。
…………。
「待つのじゃ! お菓子はいらないから、置いていかないで欲しいのじゃ!」
- Re: 姫は勇者で魔法使い。 ( No.68 )
- 日時: 2012/08/29 15:05
- 名前: 風猫 ◆Z1iQc90X/A (ID: 68i0zNNK)
詩織へ
成程! オルドルさんはマジの変態なんですね★
しかし、サフィール本当扱いやすい奴だなぁ……
- Re: 姫は勇者で魔法使い。 ( No.69 )
- 日時: 2012/08/29 20:57
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: wzYqlfBg)
>>風猫ちゃん
オルドル「(`・ω・´)」
オルドルはリヤンに世間を知らせないことで、キャッキャウフフしようと考える子です←
安心と信頼のサフィール( *`ω´)
- 姫は勇者で魔法使い。 ( No.70 )
- 日時: 2012/09/06 16:59
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: rc1iwi.s)
「ここら辺で合ってるはずだぜ」
地図と周りの景色を照合しつつ、ミコガミが言った。
「うむ、案外近かったのぅ」
あの屋台があった商店街から目的地まで徒歩40分強でついてしまった。
商店街までが遠かったため、まだ距離があるのか、と弱気になっていたのだが拍子抜けしてしまった。
それでも、普段歩かないような距離を歩かされたが。
「地図を見る限り、森の中にあるのだが」
地図をチラッと覗いたクロヌが、目の前にそびえ立っているうっそうとした森を見やる。
今は本当に目の前にあるから、森にしか見えないが、商店街の方からこちらを見た時にはこの辺りに大量の木々がわさわさと生えている比較的低めの山が見えた。
————つまり、これは森ではなく山なのだ。
「……登るのか?」
「……登らざるを得ない」
茫然としている妾の問いかけに、珍しく少しショックを受けているクロヌが答えた。
こういう険しい道無き道を通るとなれば、十中八九クロヌは妾をおぶって歩くことになる。
例え、猛獣に襲われ戦闘になったとしても、妾を守りながら戦わなければならない、という大きなハンデを背負うことになる。
—*—*—*—*—*—
しばらく軍服姿の人と話していると、扉の隙間から十歳程度の小さな男の子がもじもじしながらこちらを見ていた。
どうやら、知らない人である僕が気になるけれど、部屋に入って良いのか、ということを判断しあぐねているらしい。
おいで、と手招きをしてみると、パアッと表情を輝かせてパタパタと駆け寄ってきた。
青色の髪をしている僕が言うのもなんだが、このちびっ子の紫色の髪というのは特殊で特徴的だ。
まわりに特殊な髪色の人が多いため、感覚が麻痺し気味だが、クロヌくんの銀髪も特殊であり、僕の青色の髪も特殊だったりする。
ヒジリくんもそうなのかと思っていたのだが、彼は単純に色素が薄いだけらしい。
目の色は小さい頃に魔術で変えたと言っていたし、多分、特殊ではあるが、僕やクロヌくんとは違うものなのだろう。
『お兄さん、誰?』
その男の子が両手に抱えている大きなくまのぬいぐるみのホワイトボードにそう書いた。
どうやら、この子は口が利けないらしい。
風邪でもひいたのだろうか。
「僕はリヤン・ヴェリテ言うんや」
小さな男の子に向かって答えると、男の子が再びホワイトボードに字を書き始める。
書き慣れているからなのか、書くスピードが非常に早い。
『リヤンお兄ちゃんはどこから来たの?』
「訛りが気になるのか?」
ちびっ子の質問を見たベッドの横で足を組んで座っている軍服姿の彼が問うた。
それにしても、こんな弟がいる生活もいいかもしれない。
オルドルみたいに出来た弟もいいけれど、こんなに小さな子だったらもっと愛情を注いで育てられる気がする。
小さな男の子がくまのぬいぐるみを抱きしめたまま、頷いた。
「僕はね、エキャルラット王国から来たんやけど、エキャルラット王国でも公用語を使う地域の生まれやないから、どうしても訛ってしもうて」
小さな男の子と軍服姿の人に答える。
一時期、オルドルの真似をして訛りを直そうとしたことがあり、その時に中途半端にしゃべることが出来るようになってしまったがために、エセ関西弁が通常のしゃべり方になってしまった。
それでも、クロヌくん達が言うには訛りが強い方だ、と言われたが。
「今時訛りがある地域なんてあるのか……。 レアだから、下手に直さない方がいいぞ」
軍服姿の人がそう言った。
そして、指先が出た半手袋をつけた右手で隣の小さな男の子にポケットから取り出したお菓子を与える。
すると、男の子はとても嬉しそうにそれを受け取り、くまのぬいぐるみとお菓子を持ってどこかに走り去っていった。
お菓子で買収されてしまうくらい純粋で幼い子のようだ。
「うるさくて悪いな。 基本的にここの家族はみんなうるさいから気をつけろよ」
軍服姿の人がさっき小さな男の子にあげていたのと同じお菓子を僕にもくれた。
袋を開けずに中身を覗いてみると小袋の中にはピンク、黄色、黄緑、白のカラフルで半透明な金平糖が入っていた。
「枢用だが、一個やる」
軍服姿の人がそう言うので、お礼を言ってありがたく受け取っておく。
金平糖って、砂糖や塩、それからスパイスの類が少ないエキャルラット王国ではとんでもない高級品なのだが、日本ではそうでもないのだろうか。
ヒジリくんの家もなんでかやたらと香辛料類がたくさんあったし。
「ありがとうございます」
姫様たちと合流すりにしても僕が国に帰るにしてもオルドルがうるさいから、いない内に食べてしまおう。
砂糖の塊なのだから当たり前だが甘くて美味しい。
見た目は刺々しくてすごく固そうだが、噛んでみると存外サクッとしていた。
「エキャルラット王国は外交面に問題があるから、今、砂糖とか高いのだろう?」
軍服姿の人が金平糖を頬張っている僕にそう尋ねてきた。
確かにエキャルラット王国は先々代辺りから外交で失敗し続け、他国から冷遇を受けているために段々と経済的に苦しくなってきている。
次に何かやらかした時には一番良くても経済制裁という措置が取られるだろう。
- 姫は勇者で魔法使い。 ( No.71 )
- 日時: 2012/09/12 22:25
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: rc1iwi.s)
- 参照: 〆切ラッシュで多忙なう(´;ω;`)
「迷惑をかけないように妾も歩くのじゃ!」
クロヌとミコガミにそう宣言する。
戦闘時に足手まといになるのは避けられないが、ただ歩くだけならクロヌはだいぶ楽になるはずだ。
「なんというか……十分後には『疲れたのじゃー、クロヌ、妾をおぶるがよい』って言ってる姫の姿が容易に想像出来るんだが……」
「奇遇だな、俺も同じことを考えていた」
自分で言うのもなんだが、妾自身でもその姿が容易に想像できる。
だから、返事の代わりに二人から目を背けておく。
しかし、目をそらしてもなお、二人の視線が突き刺さる。
「姫が有言実行するに五デクラン」
ミコガミがクロヌにそう言った。
デクランという国は既に無いが、そこの通貨については少し聞いたことがある。
妾の理解力ではいまいち分からなかったのだが、要するに価値が暴落したがために紙切れ同然になってしまったお金だったはずだ。
近年はそんなに暴落したものはないが、ハイパーインフレーションの恐怖を伝える教訓として、教科書に載っている。
「分かった」
そう言ってクロヌが財布の中から取り出した一円をミコガミに渡す。
「いくら安いからといって、やる前から渡すとはどういうことじゃ!!」
クロヌの腹に本気で拳の一撃をいれる。
……妾の拳の方が砕け散りそうだ。
「なんじゃ、汝! 腹に鉄板でも仕込んであるのか!」
人のことを殴った挙げ句、右手を抑えてゴロゴロと転がり始めた我ながら不審者以外の何者でもない妾を起こし、背中についた土やら葉っぱやらを軽くはたいて落としながらクロヌが鼻で笑った。
皇族であり主である妾に対して、なんという奴だ。
母上の従者たちのように余所余所しくはされたくないし、別に怒っているというわけではないのだが、少し解せない。
「姫の貧弱な拳で殴ったら、そうなるに決まってるぜ」
呆れた表情のミコガミがクロヌが払い忘れた妾の髪についていた緑色の葉っぱを取った。
これからは不用意に外で調子に乗って暴れないようにしよう。
服は汚れるし、拳は痛かったし良いことなしだ。
「汝ならクロヌにダメージを与えられるのか?」
「お前らは、一体何がしたいんだ」
ミコガミに興味本位で尋ねてみる。
クロヌの最もすぎるツッコミを聞き流して、ミコガミの方を見る。
「出来るぜ! ちゃんと見てろよ」
「ちゃんと見てるのじゃ!」
にかっと笑って妾に敬礼をしたミコガミを真似て、敬礼をして答える。
クロヌの方に向き直ったミコガミが彼の腹を突き上げるべく、アッパーに近い形で拳を打つ。
クロヌも妾のへなちょこパンチとは違うことがよく分かっているようで、重心を後ろに下げた左足の方にかけてミコガミの拳を紙一重でかわす。
そして、その勢いを利用し右足を振り上げ、ミコガミのアゴを突き上げる蹴りを放った。
もちろんそれはクリーンヒットをしたわけで、かなりの距離を吹っ飛んで倒れたミコガミの安否を確かめるべく、彼の元へ向かう。
クロヌも手加減しただろうし、ミコガミも頑丈だから見た目よりかは大した傷はしていないだろうが、心配だということには変わりない。
なんと言ってもクロヌが馬鹿力だということにも変わりないし。
ちなみに、デコピンでとんでもない激痛を味わった妾があの蹴りを喰らったら死ぬかもしれない。
「ミコガ……」
彼の名前を呼ぼうとすると、彼の右手の下の砂に「クロヌ」という文字がダイイングメッセージのように残されていた。
存外、余裕があるようだ。
「ほら、さっさと行くぞ」
クロヌがそう言って、彼がはいているブーツのつま先でミコガミのわき腹を軽く蹴った。
同時に、妾の耳にはメキッという骨が軋む音が聞こえたような気がした。
—*—*—*—*—*—
「うぅ……」
「な、泣かないで欲しいッス」
お母さん達に頼まれた買い物を済ませて家に帰ってくると、何故だか我が家の玄関先で燕尾服を着た大の男が体育座りでうずくまって泣いていた。
顔を見て、リヤンにぃの弟のオルドルさんだというのは分かったのだが、一体何がどうしたら我が家の前で泣き出すというシチュエーションに陥るのかは謎だ。
「兄さん……」
たまに何か言ったかと思えばリヤンにぃのことしか言わないし、何を言っても会話が成立しない。
困ったことに今はお母さんもおばあちゃんも桃々もいない。
桃々に関しては、いたとしても頼りにはならないとは思うが。
「家出でもしちゃったんッスかね……」
「やだ、兄さんが家出するなら、僕も家出する」
姫様がいないせいかプライベートモードに入っているオルドルさんが駄々をこね始める。
そもそも、そんなことを私に言ったところでリヤンにぃの居場所が分かるわけじゃないということにはまだ気付いていないらしい。
「兄さんみたいな人が無防備に一人で歩いてたら、暗がりとかいかがわしい建物に連れ込まれて襲われちゃうよ……!!」
それに関しては、街中にオルドルさんがいない限り大丈夫だ、と喉まででかかった言葉を飲み込み、彼に真意が伝わることを願いつつ、笑顔を浮かべておこう。
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