複雑・ファジー小説
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- マジで俺を巻き込むな!!—計算式の彼女—
- 日時: 2012/11/11 00:12
- 名前: 電式 ◆GmQgWAItL6 (ID: hWSVGTFy)
- 参照: http://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n4373o/
お初にお目にかかります、電式です。
小説家になろうでも投稿させていただいている、
「マジで俺を巻き込むな!!」を、
こちらでも転載させて頂くことにしました。
本家の小説家になろうでは、
長時間の読書に配慮したデザインと、
閲覧耐久レースな挿絵を公開しています。
気になった方はぜひ。
(これ以上は宣伝になるので……(^^ゞ)
ここのサイトに関しては、
右も左もわからない初心者ですので、
私の変な挙動を見たら、それとなく教えて下さい。
電式、ちょっと忙しい学生なので、
更新ペースはご容赦願います。
******
バーチャル・リアリティが発展した、
シミュレーテッド・リアリティ(仮想現実)世界での物語。
笑いあり、シリアスありの世界を、毒舌主人公の視点でお楽しみください。
よくありそうなQ&A
Q.この話のどこが仮想現実なの?
A.始まりからすでに仮想現実のお話
INDEX
プロローグ
1.井の中の蛙 >>1
第1話 計算式の彼女
1.祟り >>2-3
2.黒煙 >>3-5
3.傍観者 >>8-10
4.特集と日常 >>11
5.重なる怪事件 >>12
6.カレー30% >>17-18
7.白の彼女 >>19-21
8.論理エラー>>23-25
9.不意打ちの彼女>>26-27
10.猫>テスト >>29-31
11.役得である。 >>32-34
12.カツアゲにしか見えない >>35-36
13.おしぼり >>37-38
14.監視 >>39-41
15.危機一髪 >>42-43
16.詰問 >>44-46
17.やっぱり春だった >>47-48
18.どう考えても、電波。 >>49-52
******
感想・コメント
——おこのみやき さん——
>>6-7
作品
それは恋のはじまり。
キミがくれたもの。
——ゆぅ さん——
>>13 返信>>15
>>22 返信>>28
作品
幻蝶
推理のあとは走り出す。
——蒼 さん——
>>14 返信>>16
作品
彼らの旅〜FROM SPECIAL SCHOOL〜
関連作品は、電式が個人的に判断しています。
作品が間違っている場合は、電式までご一報ください。
修正します。
コメントは随時歓迎しています!
- Re: マジで俺を巻き込むな!! ( No.9 )
- 日時: 2012/04/24 18:45
- 名前: 電式 ◆GmQgWAItL6 (ID: ehSJRu10)
前に、部活禁止になるごとに入退部するのがダルいと、テスト前に帰宅部を退部しなかった勇者がいたが、数日後、そいつは無計画にも初日の昼飯と、僅かばかりの現金(一説によると150円)しか用意してなかった為に、空腹から眠れず、風呂にも入れず、挙げ句の果てには干からびて倒れる始末。救急車に乗せられ、2時間ほど病院たらい回しドライブを楽しんだ後、病院で治療を受けたそうだ。
救急車……もっと輸送を速くしないと急患が死ぬぞ。マジ。
まあ、そいつは一命は取り留めたらしいが、それからはそんなエクストリームな挑戦をするやつはいなくなった。というか、学校としては生徒がそんな事件まで起こしておいても、この部活強制システムを廃止にするつもりはさらさらなく、この事件に関してはあくまでも退部届を出さなかった本人の責任とするということらしい。
そりゃPTAからの反発もあったが、そんな反発も時間とともに風化して沈静化してしまい、今じゃこのシステムに異を唱えるのは、一部のプロ意識を持った奥様方と俺ぐらいなものだ。大半の生徒はこのシステムに大人しく従っている。
別に強制だろうが任意だろうが、俺(私)にとっては関係ねえ、と言う人も結構いたりするので、今後この帰宅部と在校部のめんどくさいシステムに関しては変わることはないだろう。というか皆慣れちまったんだな。早い話。
で、話を戻すと実のところ来週から期末テストが始まる。あの勇者の如く干からびないためにも、帰宅部退部をしなければならない。そういうわけで、俺は同じ帰宅部部員のチカ、ジョーと共に帰宅部退部手続きと在校部入部手続きをするため、職員室にやってきた。
余談だが、帰宅部の顧問は、昨日のジョーとの会話に出てきたヅラ先生、略してヅラ先。あだ名はたった今俺が命名させていただいた。本名は|安川《安川》|知博《ともひろ》、見た目40代前半の隣のクラスの担任である。便宜上、在校部の顧問も兼任している。俺達のクラスの保健体育の受け持ちであるが、受け持ってる教科と部活が微妙にミステークな気がするのは俺だけじゃないはず。
「この様子じゃもうちょっと時間がかかりそうね……」
チカはため息混じりに呟く。ジョーは呑気にあくびをし、身体を左右にねじって身体を伸ばしながら言う。
「ま、そう焦らずにゆっくり待とうじゃないか。時間がかかるにせよかからないにせよ、これが終わらないと俺達、家に帰れないんだしさ」
「あんたはそうのんびりしてても平気かもしれないけど、
あたしは期末テストの勉強をやらなきゃいけないの! この間の中間テストの点悪かったし……」
「ふうん。何点だったん?」
「それは……秘密。あんたが今回の期末テストであたしに勝ったら教えてあげてもいいけど?」
「……あっそ」
ドーンという爆発音が聞こえた。また工場が雄叫びを上げたのだ。チカは「まだ燃えてるの?」と廊下の窓から外を眺める。だがチカが眺めているのは工場とは逆方向で、タンクが見えるはずがない。確かに爆発音はかなりの重低音だから音源がどこかは見当つかないが。
チカは真面目なんだろうが、俺には半分ネタでやってるようにしか見えない。違う方向の街並みを見てれば「何かおかしい」と普通は気がつくはずだが、チカは気がつく様子もないので一応言っておこうか。
「チカ、方向逆」
「えっ、何が反対って?」
気がついてない。やっぱコイツは方向オンチの気がありだな。
- Re: マジで俺を巻き込むな!! ( No.10 )
- 日時: 2012/04/24 18:44
- 名前: 電式 ◆GmQgWAItL6 (ID: ehSJRu10)
「突然だが、お前地図読めるか?」
「ち、地図ぐらい読めるわよ! 地理のテストだけはいつも悪くないし」
「へーえ、そうか」
「……何なの、コウ。あたしのこと馬鹿にしてる?」
「いや、今の行動見てると、なんかお前が方向オンチっぽく見えてな。
得意不得意分野は人それぞれだし、別にお前がオンチだといって馬鹿にするつもりはない。
それと、地理の点数と方向オンチはあまり関係ないと思うんだが、
それに関してジョー、お前はどう思う?」
「えっ、そこで俺!? ——まー、そーだな、地図記号ならまだしも、確かに近郊農業とか工業地帯の特色とかが、
地図読める読めないにかかってくるかと聞かれればNOだよな」
「……で、コウは一体何が言いたいの?」
「要は地図が読める読めないっつうのは俗に『空間認識能力』が関係してると言われてる。
地理はその分野が必要になることはあまりないだろってことだ。
先公が来るまでもう少し時間がかかりそうだし、テストでもやってみるか」
俺は鞄から地理の授業で使う地図帳を取り出し、チカに渡した。チカはそれを受けとり、じっと俺を見る。
「……あたしに何させるつもり?」
「ごくごく簡単なテストだ。
その地図帳から今俺達のいる地域の拡大地図を探して現在地を見つけ、
地図の北を実際の北と合わせる。それだけだ。
これが出来れば地図片手にどこかへ出掛けるときに迷うことはないだろ?」
「まあそうだけど——」
チカは地図帳をパラパラとめくって該当ページを探し出すと、北の方角はどっちなのかが分からず、地図帳を540°回転させてみたり、自分自身がくるくる回ってみたりと、奇異な行動をしだす。そしてしまいには「こんなの、コンパスもないのに分かる訳無いじゃない!」と言い出す。
「いや、出来るって。でなきゃ地図の意味ねえだろ? ……んじゃ、ヒント。今は何時何分?」
・・・?(ポク、ポク、ポク、チーン)——という木魚と|鈴《りん》の効果音が聞こえてきそうなぐらいに目が点になってヒントの意味がわからずに立ち尽くしてるチカ。一方、ジョーはヒントの意味が分かったらしく、なるほど、そいいうことか、と手を叩く。
「……それが、地図と何の関係があるの?」
「あ゛ー……だから今日は晴れてるだろ?
太陽は東から昇って西に沈む。正午頃になると太陽はどこにある?
日本の標準時は東経135°の地点で、太陽が真南に来るときが12時と決められてると習ったはずだ。
日没の時刻を午後7時とでも仮定して時間で割っていけば、
今現在太陽が大体どの方角にあるのか出てくるだろ?」
「なーるほど! コウ、あんたって見た目によらず頭いいのね!」
「……一言多い」
「えっと、現在時刻は午後四時十分を回ったところだから、太陽は南西あたり。
地図は大体北が上だから——こう?」
「正解、だな。
今回は太陽の方角が分かっていて、住み慣れた街だから現在位置も容易に見つかったが、
見慣れない場所で現在地を掴むには、
地図上の異なる場所にある三つ以上の目印になりそうなものを、実際に自分の目で見つけることだ。
それが出来りゃ、自分の位置が特定できる。
これはどっかの人の話の請け負いだが、GPSの位置の特定方法も基本的には同じ理屈らしい」
「そんな使い方があるなんて、あたし、地図に対する見方が360°変わったかも」
「一周して元に戻っただと!?」
俺がそこまで話した時、隣のクラスの終礼を終えた例のヅラ先こと安川先生がタイミング良く現れた。細身ながらも体育教師らしい、ジャージに見た目に安定さのある体つきはなかなかのものである。やや不自然さが残る髪型は気にしてないようで、6時間目の体育の授業の名残なのか、額から垂れる汗を深緑のチェック柄のハンカチで拭き取りながらこちらに向かって歩いてくる。
職員室の前には既に4、50人ほどの帰宅部部員が廊下を占拠しかけていた。こうやって見ると、帰宅部部員は男子の割合が結構多いんだな。女子は友人間のしがらみ的な何かが作用していて、友人と一緒にバドミントン部とかテニス部、バレー部、吹奏楽部とかに入ることが多いようだ。
「えっと、ここにいるのは帰宅部?」
先生の質問に対して数人の生徒が「はい」と回答する。ここで待ってて、と先生は言い残し、部活カードを取りに職員室へと入って行った。
部活カードとは、生徒一人に最低一枚はあるもので、カードにはその生徒の入退部記録が記録される。
いくら入退部が頻繁にある帰宅部(在校部)といえど、三年間在籍していても通常はカード一枚で済むのだが、この学校は部活のくら替えには寛容なせいもあってか、「全部活に入退部する」という天然記念物がごく稀にいて、そういう奴は大低カードを複数枚持っている。実際に俺の高一のクラスメイトにいたからそれは確かだ。
そいつらにとってそれはただのスタンプラリー的なノリでしかないのだろうが、教師側からすればその事務処理分だけ無駄な仕事を増やされているわけで、当然いい顔はしない。しかし、部活の選択は個人の自由である以上、それを咎めることが出来ないのが教師として苦しいところだ。
もっとも、その辺についてはそのクラブ一筋の先輩から、ざけんじゃねえよ、と校舎裏とかに呼出し食らって鉄拳制裁が下り、ほとんどがそこで挫折するらしいが。
ある意味そんな逆風にも負けず、入退部スタンプラリーを完成させた奴がいるのなら、俺はその勇気を讃えて100円ぐらいやってもいいと思う。
職員室前でしばらく待つこと5分、安川先生が部活カードの束を片手に戻ってきた。
「長々と、待たせて悪いね。じゃあ今からカードを返すぞ。クラスごとに呼ぶから、自分のクラスが呼ばれたら受け取りに来るように。受けとったら、必要事項を記入すること。カードは後で回収する。分からない点がある者は俺に言ってくれ。えっと、まず、I-A、取りに来い」
それからは特に言うこともなく退部と入部処理を終えての下校、ということになった。それぞれの家路に分かれるまで、特にこれといって特筆するほどの他愛もない話——テストでどこら辺が出そうとか、ヤマかけるならどの辺がいいかとか、そんなことを語りながら。
- Re: マジで俺を巻き込むな!! ( No.11 )
- 日時: 2012/04/29 20:15
- 名前: 電式 ◆GmQgWAItL6 (ID: ehSJRu10)
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第1話-4 計算式の彼女 特集と日常
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さて、そんなこんなで自宅に帰ってきた俺は、鞄を自室に放り投げ、制服から私服に着替えてテレビ前のソファーに座る。
テスト一週間前なのに、えらく余裕こいてるじゃねえかとか思ってる、そこの君(誰もいねえよ)。残念ながら俺は下校してすぐ自宅勉強出来るような精神的スタミナ、それとモチベーションは持ち合わせていない。とりあえずテレビとか家事とか少しこなしてから、ゆったりと勉強を始めようってのが俺スタイル。
どうせ俺が帰宅早々勉強を始めたって、集中力を欠いて効率が落ちるのは目に見えているからな。何と言われようが俺はこのスタイルでいい。“|急《せ》いては事をし損じる”なんて便利な言葉もあるが、正にその通りである。まあこの時間帯にやってるテレビっつったら、どの局もほぼニュース番組だがな。
リモコンでテレビの電源をつけると、ちょうど緊急特集が始まるところだった。やや改まった顔でアナウンサー(男)がニュースを読み上げる。
《本日午前9時20分頃、
○○県加治市港区にある石油精製工場で爆発を伴う大規模な火災が発生しました。
付近の建物では窓ガラスが割れるなどの被害が起こっています。
ここで山本記者が現場上空よりリポートです。山本さん?》
音がここまで到達するようなビッグな爆発だ、付近じゃ衝撃で窓が割れるのは当たり前だろう。ここで画面がスタジオからヘリからの映像に切り替わり、炎と黒煙を吹き上げる円柱状のタンクと傾いた金属製の塔(煙突か?)が映った。現場からやや離れたところからズーム撮影しているのか、映像がぶれている。画面右上には“中継”の文字が躍る。ヘリ独特のキーンという騒音の中、記者がやや声を荒らげてリポートを始める。
《はい、今現在画面中央に映っているのが爆発のあった蒸留塔です!
火災の熱の影響で塔が大きく変形しているのが見て取れます。
また、事故のあった蒸留塔にパイプラインで繋がっていた、
原油貯蔵タンクにも火が及び、タンクが炎上しているのが確認できます!
化学消防車50台以上が現場に駆け付け、懸命な消火活動を行っていますが、
現在は蒸留塔が倒壊する危険があるとして一時撤退、現在はタンクの消火活動にあたっており、
火災発生から6時間以上経った今も炎上・延焼を続け、消火のメドは立っていません。
万が一の二次災害を防ぐため、現場から半径1キロ以内の住民に避難勧告が出されています。
付近の住民で、頭痛や吐き気を訴えて病院に搬送された人数は、
これまでに16人に上っていますが、いずれも軽症だということです。
また、爆発当時、作業員2名が付近を巡回しており、一人は腕の骨、一人は足の骨を折る重傷ですが、
命に別条はないということです。以上、現場からお伝えしました》
えらい騒ぎだな、としかテレビの前の俺は言えない。今回の事故で犠牲者が出なけりゃいいが。
その後、テレビに白髪混じりで眼鏡の堅苦しそうな専門家が現れて、施設の説明とか、どういった経緯で爆発、延焼したのか、いろいろと解説していた。要約すると、蒸留塔というのは原油を蒸発させて、ガスやらガソリン、軽油、重油などを抽出する装置で、爆発したのはその蒸留塔に原油を送り込むパイプ周辺らしい。で、どうして蒸留塔が吹っ飛んだのか、どういういきさつで原油貯蔵タンクに引火したのかは原因不明らしい。
その話も終わり、北陸地方で梅雨明けが発表されたとか、この夏を乗り切るひんやりグッズとか、番組がどうでもいい別の話題に移ったところで、俺はテレビの電源を切った。時計を見ればこの特集だけで40分も割いていたらしい。
俺は台所の冷蔵庫から冷やしておいた麦茶を取り出してガラス製のコップに注ぎ、最後に氷を入れた。やっぱ暑い時は麦茶だよな、と冷房の効いた部屋の中で思いながら一口。
とはいっても、暑い時だけ麦茶を飲むのかと聞かれればそれは違う。夏が終わりに近づいてくると、スーパーで麦茶パックが安売りにされる。節約志向の俺は、去年その麦茶パックを思わず買いだめ、そいつを消費するために12月になっても今だに麦茶を飲んでたのだ。12月に入る頃には味に飽き飽きした反省から、今年は買いだめはしないつもりだ。今年の冬は普通に緑茶が飲みたい。
またもう一口茶を飲んでコップに継ぎ足し、それを持ってパソコン専用の机に座った。コップの外に水滴が付きはじめたそいつを、とりあえず邪魔にならないところに置いてパソコンの電源をオン。俺の家にはスーパーのチラシが届かないから、ネットでチラシを見て今日のお買い得商品をチェックしようってわけだ。
俺の自由に使える金は、当然ながら親からの仕送りから生活費を差し引いた残りである。つまり、生活費を節約できりゃ、俺の自由に使える金が増える。そのためにはこういう日々の努力が必要ってことだ。
ブラウザを起動し、毎回出てくる
「最新のバージョンがあります。アップデートしますか?」
にNOと選択する。
アップデートは、セキュリティーの脆弱性の修正とか大事な要素があるのは分かっている。いつかは更新するつもりだが、面倒なのでどんどん後回し後回しになってしまっているのが現状だ。ブラウザのブックマークから、いつも行っているスーパーのサイトへ行き、パパッとチラシを表示させる。
なるほど、今日は肉と卵が安売りしてるのか。
「おっと、ペンとメモ紙がねえ」
テスト勉強も必要だが、夕食の確保も必要である。ペンとメモ紙を探しに立ち上がった時、手に冷たいものが触れた。
ゴト、ゴロゴロゴロ——パリン!!
「あ〜あ……」
手に触れたのはガラス製のコップ。当たった衝撃で倒れ、机から転げ落ちて見事に粉砕。氷と麦茶が机と床にぶちまけられた。茶がパソコンにかからなかっただけマシか……
「また新しくコップ買ってこねえとな……」
台所から雑巾を持ち出して茶と氷を拭き取り、割れたガラスをホウキとチリトリで回収する。新しいコップはアクリル製にでもしよう。
ゴミ掃除を終えてペンとメモ紙を持ち出し、今日買うものをメモする。どうせ目玉商品は専業主婦の方々にあらかた根こそぎ持って行かれてるだろうが、そこはどうにもならないところだ。学生の俺が昼間のタイムバーゲンに参加する為に、わざわざ授業を抜け出すわけにはいかない。実際にやらかしたら笑い者だ。
「さてと、ちょいと買い物行くか」
パソコンの電源を切って、財布の残高を確認する。そろそろ気温も下がってくる頃だし、出かけるなら今がちょうどいいタイミングだろう。
俺は部屋の照明を消して、家を出た。
- Re: マジで俺を巻き込むな!! ( No.12 )
- 日時: 2012/05/05 13:08
- 名前: 電式 ◆GmQgWAItL6 (ID: ehSJRu10)
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第1話-5 計算式の彼女 重なる怪事件
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一学期期末テスト三日前の金曜日。
「暑い……てか太陽頑張り過ぎだろ……」
朝から照り付ける強い陽射しにさらされながら、今年も猛暑になりそうだと憂いながら登校する俺。毎度の如く汗ダラダラである。
先日の石油精製工場爆発事故は、火災発生から二日後の深夜4時頃に消火された。30時間以上燃焼していたということになる。ニュースで見た映像では、傾いた蒸留塔は倒壊、浮き屋根式の円形タンクも大きく変形し、タンクの亀裂部分からは原油が海に大量に流れ出たらしい。んでもって環境保護団体がなにやら抗議してるんだと。世の中は忙しいね、まったく。
やっとのことで教室のドアを開けると、クラスの雰囲気がいつもと違っていることに気がついた。テスト直前でピリピリしているとか、そういう次元ではない、鉛色の空気。クラスの女子から「え〜なにそれ怖い」なんて声も聞こえてくる。とりあえず教室に入って自分の席に座る。
いつもの日課である教室での二度寝も、今日はする気にはならない。教室を見回すと、男子はそうでもないのだが、女子が不安げにしているのが見て取れる。
「オッス、コウ。今日は寝ないのか?」
ジョーが寄ってきた。
「ん? ああ。それよりもだな、ジョー。ひとつ聞きたいんだが、この重苦しい雰囲気は?」
「連続失踪事件が最近話題になってるのは知ってるよな?」
「連続失踪事件……ああ、この近辺で起きてるあれか?」
連続失踪事件とは、俺達の住む加治市で起きている事件のことである。火災事件も相当なニュースであったが、そのあとに起きたのがこの事件。
5日前の夜11時頃、ある19歳の女子大生Kが“バイトに行く”と行って自宅を出ていったが、予定の時間になってもアルバイト先には彼女の姿はなく、その約1時間半後、彼女の携帯から“助けて殺される”のメールを同性の友人2人に送ったのを最後に行方不明になっている。
その翌日、友人2人のうちの一人、アパートで一人暮らしをしているTが失踪。大学の講義は欠かさず出席していたTの欠席を友人達が心配して彼女の部屋を訪れたのが発見のきっかけだったそうだ。部屋には争ったような形跡が見られ、床の一部にはわずかに彼女の血痕が残っていた。そういう事件である。
電波、停電、火災、失踪と、短期間になにかと名の上がる加治市。個々の事件はなんら関連性がないが、一部ネットではそれをオカルト・都市伝説と掛け合わせて論ずる者が出てきたそうな。
「そう。今朝のニュースで“3人目”が出たって報道があっただろ?」
「あ、そう、今朝はテレビ見てなかったから知らんかった」
「その失踪者の自宅がうちの学校の近所にあってさ」
「なるほど、それでみんなビビってんのか。……それで、三人目ってのは?」
「最初に失踪した人の友人二人のうちの最後の一人、Iさんだとさ。警察が任意の事情聴取をしようとした矢先だってさ」
「ふうん。ならビビる必要なくねえか?」
「どうして?」
ジョーは首を傾げて聞く。
「冷静に考えてみろ。連続で失踪したのは全員それぞれ縁のあった人間なんだろ?
縁のない俺らが次の|目標《ターゲット》になる確率は低い。犯行の現場でも見ない限り安全だ」
すると、ジョーは渋い顔をして言う。
「だとしても、こんな近所で事件が起きてるんだぜ?
被害者は俺達と歳が近いし、次の当事者が自分になるかもって危機意識を持つのは当然だろ?」
「あのな、ジョー。おまえらみんな揃って過剰反応し過ぎなんだよ。
女子がそういう事件に敏感になって怖がるのは理解できるが、男が危機意識を持ってどうする、男が」
大事なことなので二回言っておく。冷房の効いた教室にいたおかげで汗が大分引いてきた。そのかわり喉が渇いてきたので水筒に詰め込んだ麦茶を飲む。
「男だって被害に遭わないとは限らないじゃないか」
「ぷはぁ……そういう場合もあるかもしれないが、男が被害に遭うときは、大低その場でサクッと殺されるか怪我するかのどっちかで、男を狙う動機も金か怨恨のどちらかがほとんど。よっぽどの理由がない限り、わざわざ男を誘拐、失踪させることはないだろう?」
「ひょっとして、そうやって必死に否定しているお前が一番ビビってんじゃないのか?」
「…………。」
「その顔、図星だな?」
「……正直、この街で事件が起こりすぎてて気味が悪いと思っている。
失踪以外、個々に何の関連性もないのは承知だが……なんというか」
「俺も、いや、俺だけじゃない。クラスのみんなは口には言わないだけで、メディアで報道されるほどの出来事がこうやって立て続けに起こるのは、なんかおかしいと思ってる。教室が曇るのも仕方ないだろ?」
おっ、今日は珍しく寝てない、と呟いてチカが現れた。いつも通りの天然ヘアーに眼鏡。見た目からしてまさに日常そのものであり、こいつからは不安げな様子は微塵も感じられない。
「おはよ、何の話してたの?」
「いや、近所で起きてる失踪事件諸々について、茶を啜りながらしみじみと語り合ってた」
「茶を啜りながらって、なにそれ、あんたその歳して中身老人? ……失踪事件って、例の女子大生の?」
「それ」
「あたしさ、今までテレビとかでそういう事件見てた時は、『早く見つかるといいね』ぐらいにしか思ってなかったけど、まさか近所でこんなことが起きるなんて……」
「怖いのか?」
「当たり前じゃない! こんな近所で次々と人が消えていくのよ? 次があたしにならないか、怖がっても不思議じゃないでしょ?」
「いや、お前なら大丈夫だと思うぞ、俺は。なにせ、常日頃から近接戦闘術の訓練に励んでるんだからな。もし犯人が誤ってお前をどっかに連れていこうとしたとしたら、逆にお前に締め上げられて首根っこ掴まれて警察に引きずられていくに決まってる」
そういうとチカは眉間を寄せてムッとした表情を浮かべ、手をパキパキと鳴らした。
「……その“訓練”、今ここでやってもいーんだけど?」
「それは……遠慮する」
「遠慮しなくていいから、ねっ!!」
ね!! を強く発音すると同時に繰り出された右ストレートが俺の目前に迫った。
もちろん、洗練された拳を避けるヒマなど俺にはなかった。
- Re: マジで俺を巻き込むな!! ( No.13 )
- 日時: 2012/05/05 13:33
- 名前: ゆぅ (ID: 2tp76UwZ)
こんにちゎ#
ゆぅと申します@
お話、詠ませて頂きました。
まず、、、タイトルヵらして素晴らしい-ですね*。
タイトルに惹かれてクリックしてみれば内容も素晴らしくて@
暇な時遊びに来てください@
更新!!頑張ってください。
楽しみにしています@