複雑・ファジー小説
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- 世界と一緒だから。
- 日時: 2012/08/19 10:58
- 名前: 白沢祐 ◆xoPT2KzXZY (ID: 49KdC02.)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode=view&no=17934
「世界、愛してるよ」
こんにちは、こんばんは、おはようございます。
この作品は、シリアス・ダーク板で連載させていただいていた作品のリメイク+続編となっています。
旧作『世界と一緒。』のURLは参照にあります。
☆目次
>>5
★人物紹介
久谷竜胆 >>26
代沢世界 >>29
時野始 >>36
☆経歴
08/01 参照300突破
08/04 旧作『世界と一緒。』 参照1500突破
08/10 参照400突破
★更新情報
08/19 四話め。 愛情と狂気は紙一重 5 >>37
☆Thanks!!
揶揄菟唖様 『コドクビワ、キミイゾン。』などを書いていらっしゃいます。
クリスタル様 『鏡の国の君を捜して……』を書いていらっしゃいます。
その他、読んでくださっているみなさま。
では、ごゆるりと
- Re: 僕の世界と愛情と ( No.3 )
- 日時: 2012/07/29 06:26
- 名前: 白沢祐 ◆xoPT2KzXZY (ID: khvYzXY.)
【零話め。 昔の話を少しだけ 3】
そんな彼女を見ていた僕は? 僕は、何を思っていただろう。……なんて、忘れられたら気楽だったのになぁ。世界の父親に促されて、彼女を見つめた僕。そこにあったのは、美しいものを見て感動する心。それと、愛しさ。オマケに吐き気。あぁ、最悪だ。
僕は、彼女を助けようなんて微塵も思わなかった。ただ、汚されていく世界の布の下から頬を伝う涙を、うっとりと見つめていただけだ。泣く彼女が愛しくて、背筋がぞくぞくした。ああ、そうだね。異常だよ。歪んじゃったんだ。
思い出す度に、あいつに殺意がわく。そこらの少女を壊すだけじゃ飽きたらず、僕の大切な世界を汚したのだから。でも、皮肉にも彼女を大切に……それこそ、ガラスのように扱わなくちゃいけないと思い始めたのも、愛しはじめたのも、今の久谷竜胆(ぼく)を作ったのも、あいつだ。感謝しなくてはいけないのかもしれない。
「まあ、僕が世界を守るのは変わらないし」
小さく呟く。
そう。世界を愛し、守るのは僕だよ。この可愛い世界も、吐き気のするほど美しい世界も、すべて僕のものだ。譲る気はない。たとえ、人を殺したとしても。
- Re: 世界と一緒だから ( No.4 )
- 日時: 2012/07/16 12:55
- 名前: 白沢祐 ◆xoPT2KzXZY (ID: khvYzXY.)
【零話め。 昔の話を少しだけ 4】
「竜胆?」
僕の呟きが聞こえたらしく、世界がこちらを向いて首を傾げた。小さな顔にのっかったセルフレームの眼鏡が可愛らしい。僕のものと色違いだけど、たぶん誰も気が付いていないはずだ。……星野と時野は除いて。
「ん? 少しだけ、思い出してた」
「なにを?」
「……むかーしの、思い出かな」
なにそれ、と小さく笑うと世界は再び前を向いた。さらさらと揺れる髪。触れたかったのだけど、邪魔はできないからやめておいた。またあとで触れられるし。ああ、でもまだ15分もあるのか。
小さく、ため息を吐く。世界は思い出さない。過去の思い出は、彼女の中にはない。あるのは、僕が植え付けた都合の良い過去。記憶喪失ってやつ。羨ましくて、反吐が出そうだ。自然と口角が上がる。
でもさ、そのおかげで世界は僕だけのものなんだよ。ほんと、感謝してるよ。世界を、汚してくれてさ。
誰に言うわけでもなく、心のなかで呟いてから、クスリと笑みをこぼすと、また机につっぷした。
- Re: 世界と一緒だから ( No.5 )
- 日時: 2012/08/14 09:47
- 名前: 白沢祐 ◆xoPT2KzXZY (ID: 49KdC02.)
目次
零話め。 【昔の話を少しだけ】 >>1 >>2 >>3 >>4
壱話め。 【君のためと綺麗事を言う僕を許してください】 >>6 >>7 >>10 >>11 >>14 >>15
弐話め。 【ごみ箱行きのラブレター】 >>17 >>18 >>19 >>20
参話め。 【オトコノコの事情】 >>21 >>24 >>25 >>27 >>28 >>30
四話め。 【愛情と狂気は紙一重】 >>32 >>33 >>34 >>35 new!!
- Re: 世界と一緒だから ( No.6 )
- 日時: 2012/07/29 06:26
- 名前: 白沢祐 ◆xoPT2KzXZY (ID: khvYzXY.)
【壱話め。 君のためと綺麗事を言う僕を許してください 1】
ゆらゆらゆらゆら。陽炎のように景色が揺れる。目の前に立った黒髪の男も、ゆらゆらゆらゆらと揺れている。
気持ちが悪いな、と思った。夢だと気がついているから、ひたすらに醒めてくれと願うのだけれど、ゆらゆらした景色は消えてくれやしない。なんていう嫌がらせだろうか。ああ、気持ち悪い。
そんな吐き気をごまかすように、目の前の男を睨みつける。ああ、前にもこんな夢をみたことがあるぞ、と気がついた頃には遅かった。目の前の男はゆらゆらするのをやめて、僕を見て口元を歪めた。嘲笑。濁った青い瞳のそいつは、けたけたけたと笑い出す。僕を指さして、腹を抱えて。
自分のココロとやらなのか。僕はこんなに、自分を卑下していただろうかと首をかしげながらも、とりあえず目の前の僕もどきの首を絞める。襲うのは、吐き気に似た快感。ああ、殺したい。そうすればもっと、心地よくなるだろうに。
そんなことを考えていると、僕もどきは笑うのをやめた。死んだ魚のように濁りきったミッドナイトブルーの瞳が、鳶色に変わる。少し長めの黒髪は、焦げ茶色のロングヘアへと変わっていく。ああ、世界だ。
- Re: 世界と一緒だから ( No.7 )
- 日時: 2012/07/16 20:14
- 名前: 白沢祐 ◆xoPT2KzXZY (ID: khvYzXY.)
【壱話め。 君のためと綺麗事を言う僕を許してください 2】
世界へと姿を変えた僕もどきは、苦しげに顔を歪めて僕を見る。ばっかだなぁ。なんて口元を歪めてみたりして。僕もどきのくせに僕のことを、なあんにもわかっちゃいない。僕はその、ひどく汚い世界の顔が大好きなんだ。
ぐっ、と手に込める力を強くすれば僕もどきは揺らめいて消えていく。そろそろ、お目覚めの時間のようだ。残念さも残るが、まあ仕方がないよね。ぼんやりと自分の手を見つめていると、いつの間にか世界が目の前にいた。がやがやとうるさい教室が、現実だぞーと主張している。
けだるい頭を無理矢理持ち上げると、世界が呆れたように笑った。世界だけじゃなくて、時野と星野もだ。よく寝てたね、なんて言って苦笑いだ。なぜかみんな、片手に弁当やらコンビニの袋やらを持っている。おかしいな、眠った頃は二限目の終わりくらいだったんだけど。首を傾げれば、星野がまた笑った。
「寝ぼけてんな。今はもう、昼だ」
飯食おうぜ、なんて言った星野の言葉にうなずく。よくよく見れば、クラスの奴等はどいつもこいつも楽しげに昼食をむさぼっている。