複雑・ファジー小説
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- 【散文】コワレモノショウコウグン【掲載】
- 日時: 2014/03/26 19:49
- 名前: たろす@ ◆kAcZqygfUg (ID: zLcGFy2P)
- 参照: http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=big&illust_id=40477742
——コワレる程の、愛を捧ぐ。
* * * *
僕の愛はコワレモノ、いつもきみはコワレモノ。
* * * *
●クリスマス短編●
上記参照がクリスマス短編の表紙になってます。
>>23-24
【頭骨と百合のお砂糖漬け-哀願S女と冷笑M嬢の快楽と思われる賛歌の断片-】 R-18
注意:『SM』『同性愛』『グロ』『拷問』『流血』『殺害』『微エロ』『食人』描写有り。
【お知らせ】
●アンソロジー参加者様各位、お疲れ様でした。
素晴しい作品をありがとうございます!
【大事なこと】
●宣伝は結構ですが読んでないのに「面白いです」とか要らないです。 面白い話とか書いてません。 こっちにも挿したら怒るよ。
【先にご注意】
個人的にはカキコ最狂を目指します。
エログロ食人、同性愛なんでも有りの短編集です。
しかしテーマは全編通して「愛」です。
話毎にタイプは変わりそうですが、個別に注意書きとか書くと興が冷めそうなのでこちらで先に言っておきます。
生々しいのが無理な方、ここでブラウザバックお願いします。
他はまぁ、ありきたりな感じです。
●おにーさんがアンチな方はブラウザバック。
●えすえむ苦手な方はブラウザバック。
●大人の性事情とか知りたくない方ブラウザバック。
●指切るとか眼抉るとかグロいの無理な方ブラウザバック。
●↑で入手したパーツをmgmgするとか無理な方ブラウザバック。
●恋愛に夢見てる方ブラウザバック。
●善意在る指摘、添削意見はドンと来い((
●「これはそろそろ消されるんじゃね?」とか感じたらおせーてください。
●一レス読み切りぐらいの気持ちで書きます。ほぼss的な感じ。
長編希望の方、余所へどうぞ。
●コメントは頂ければ喜びますが、一時保存中や話の途中には差さないで頂けると幸いです。 コメント頂いた方、参照貼って頂ければお返しに伺わせて頂きます。
ではどうぞ、貴方の中のコワレモノを、一緒に探してみましょう。
コワレモノショウコウグン、それは誰しもが罹る病です。
【目次】
>>1 表題:コワレモノショウコウグン
>>2 きみにあげる R-12 グロ有
>>3 束縛 (7/25 いちほ 31完結)>>6にて少し解説
>>9 ひとりじめ (8/26 完結) R-15 流血描写 mgmgします。
>>10 S.E.L.D (9/2 いちほ 9/7 9/12更新 9/16完結) 微エロ有
>>25 表題:オスカーワイルドを気取って
>>26 少年採集Ⅱ (1/19いちほ 1/29更新 2/6完結)同性愛表現有り
>>27 金魚姫のままの夢
【アンソロジー企画:この種を孕んで】
>>15 アンソロジー表題:Act Cadenza
>>16 たろす@作 /【この種を孕んで】
>>17 柚子様作 / 「この種を孕んで」
>>18 ハル様作 / Out Of Frame_0 この種を孕んで。
>>19 陽様作 / 【この種を孕んで】
>>20 黒雪様作 / 【Anthologie】 —*この種を孕んで*—
>>21 日向様作 / 「この種を孕んで」
>>22 夕凪泥雲(唯柚)様作 / 【この種を孕んで —青い鳥籠—】
【コメント頂いたお客様】
lp様 / 柚子様 / 友桃様
【企画参加頂いた方々】
柚子様 / ハル様 / 陽様 / 黒雪様 / 日向様 / 夕凪泥雲様
【略歴】
13/07/13 スレ立て
9/05 参照500
9/13 参照600
9/22 参照700
10/6 参照800
10/14 参照900
10/19 参照1000
10/24 参照1100
11/03 参照1200
11/11 参照1300
11/27 参照1400
12/14 参照1500
12/30 参照1600
14/1/19 参照1700
2/10 参照1800
3/26 参照1900
- Re: コワレモノショウコウグン【R-12〜18】 ( No.8 )
- 日時: 2013/08/08 02:20
- 名前: たろす@ (ID: 8uCE87u6)
王子>>7
あら、コメントありがとう。 気付いては居たんだけど、お返事が遅れてしまって申し訳ないです。
子供特有の残酷さってあるよね。
本当はもう少しグロくいこうかと思ったんだけど、そうするとそっちがメインになっちゃいそうで……。 メインテーマとの折り合いが難しいけど、子供特有の残酷さ、無邪気な冷酷さみたいなものを書き出す努力をしたいと思う。
きみみたいな書き方が出来たらな、と思っているからきみに褒められると素直に嬉しいよ((
きみが何か学ぶ程の物が書けているかは疑問だけど、これからも精進します。
コワレモノにはもう大分前からなり始めてるからなぁ……。
気を付けながら書かせて貰いますw
コメント、ありがとうね。
- Re: コワレモノショウコウグン【R-12〜18】 ( No.9 )
- 日時: 2013/12/26 10:37
- 名前: たろす@ ◆kAcZqygfUg (ID: Z9bE6Hnf)
【ひとりじめ】(8/26 いちほ解禁)
「好きだよ」
ただ、そう伝えたかっただけなんだ。
「一緒に居て欲しい」
ただ、それだけが言いたかったんだ。
だらりと手足を弛緩させたきみを見下ろして、僕はただ呆然と涙を流した。
何で、何で、なんでなんでなんでこんな、嗚呼……。
——僕と彼女が出会ったのは初夏の日差しが眩しい日だった。
白いワンピースが輝いていて、きみの姿はそれはそれは神々しかった。 あの時僕にはきみしか見えていなかったし、あの日のきみは今でもはっきり思い出せる。
あまり飾り気のない真っ白なワンピース、少し背伸びをした踵の高いサンダル、ハート型の小振りなハンドバッグ、柔らかそうな黒髪をハーフアップにしていて、きみは友人らしい女の子の手を取って笑っていた。
きみと僕はすれ違って、僕はきみを振り返った。 するときみも振り返って、一瞬だけ目が合ったよね。 その透き通った黒瞳に、憧憬にも似た感動を覚えたよ。
嗚呼——なんて美しい瞳なんだろう。
それから僕は、毎日きみに会いに行くようになった。 遠くから、静かに、ただきみを見ていた。 きみにはきみの世界があって、きみは皆のものだったから、僕はそれで良かったし、きみを愛するとはそう言うことだと思っていた。
でも、夏が止んで秋が枯れて、冬が解けて春が咲く頃には、僕の心はどうにもならない醜さで一杯になっていたんだ。
きみが欲しい。 僕らの、皆のきみ。 でも僕は、僕だけのきみが欲しくなった。
届かないと知っているから、一緒にはなれないと知っているから、だからどうしてもきみが欲しかったんだ。 僕たちの世界が遠すぎると知れば知るほど、僕の中のきみは大きくなっていって、きみは皆のものだと思えば思うほど、心の中の醜い魔物は、僕の耳に囁くんだ。
「きっと彼女は応えてくれる」
きみと出会った日に似たある日、僕は変わらずきみに会いに行った。
無邪気なきみはいつも帰り道に人気のない公園を通る。
芝生や林や、小さな池があって、その公園は僕もよく遊びに行った。 勿論街灯や遊具、図書館なんかもあるけれど、僕にはそんなの必要ない。
きみは気づかなかったけど、何度かきみを尾ける男の人が居て、僕がやっつけたんだよ? きみはいつも、無防備なんだから。
そんな無防備なきみは、今日も暗くなった公園を歩いていた。
きみを見付けただけで嬉しくなって、僕の足取りは軽やかになる。
僕は座って待つことにした。 きっときみは、僕に気付いてくれるだろうから。
暫くして、きみは両側を林に挟まれた歩道の上で立ち止まった。 隅の方に座り込む僕を見付けて、困ったような顔で笑う。
「きみとは、よく会うね」
嗚呼、やっぱりきみは気付いてくれた。 そして僕に声をかけてくれた。
会うだけで帰ろうと思っていたのに。 ただ見ているだけで居ようと思っていたのに。 きみのふんわりとした声が、僕の理性を溶かしてしまう。
「こっち、来て」
そう言いながら僕は立ち上がって、きみを見つめる。
きみは小首を傾げて、それでも僕のあとに着いてきてくれた。 どうして、逃げなかったんだい?
林の奥に進んで、少し開けた所で立ち止まる。 きみは相変わらず少し困った様な顔をしていた。
僕は色々考えて、でも今のまま、ただ見ているだけなんて考えられなくて、躊躇いながらきみに言った。
「ずっと、きみを見ていたよ」
僕の声を聞いて、きみはじっと僕の目を見つめる。
嗚呼、逃げて。 僕が、きみに触れてしまう前に。 心の中で僅かな理性が叫ぶ。
「きみが、好きなんだ。 一緒に居たい」
僕は心の声を聞きもせずに続ける。
きみの顔が、近くなった。 甘い花の香り、暗がりでも透き通った瞳。
きみの白い小さな手が僕の額に触れる。 ただ、見ているだけで良かったのに。
でも、きみは困ったように肩を落とした。 溜め息みたいな声で、僕を諭す。
「駄目だよ、駄目。 怒られちゃう。 もうお帰り」
そう言って、きみは踵を返した。 正確には、返しかけた。
どうして、どうしてそうなってしまったんだろう。
僕は確かにお喋りは上手じゃない。 でも、きみなら言葉にしなくてもわかってくれると思ってた。 例え言葉なんか通じなくても、きみならこの想いを解ってくれると。
酷く悲しくて、何も見えなくて、このままずっときみが僕の前から居なくなっちゃう様な気がして。
気付くと、僕はきみの白い喉をズタズタに引き裂いていた。
どうして、どうして、ただきみを見つめているだけで、ただそれだけで良かったはずなのに。
きみの苦しそうな表情を呆然と見つめて、きみの黒い瞳がだんだん濁っていく様な気がして、僕は逃げ出す事も出来なくて。
きみの声にならない声が、涙と一緒にこぼれ落ちた。
「どうして?」
僕はどうすれば良いのか分からなくて、泣きながら答えた。
「ただきみが、好きだったんだ。 ずっと一緒に居たかったんだ。 それだけなんだ」
きみのひゅーひゅー鳴る喉が静かになって、僕は初めて自分がとんでもない事をしてしまった事に気づいた。
きみの世界から、僕らのきみを、皆のきみを、奪ってしまったんだ。
僕だけのきみが欲しかった。 そんな愚かな欲望のせいで、僕は世界から永遠にきみを奪ってしまったんだ。
僕は泣きながらきみの手に頬を押し付けた。 まだ暖かい、柔らかなきみの手。 まだ暖かい……きみの……手……。
嗚呼、僕はとんでもない事をしてしまったんだ。 もう、きみはどこにも居ない。
きみの世界からきみは居なくなってしまった。 だから、ずっと一緒に居よう。 ずっと傍に居よう。
死んでしまったきみは永遠に生き続けるんだ。
僕の中で。
柔らかいきみの頬、綺麗なきみの指、甘い甘いきみの香り。
僕だけのきみ。
僕だけが知る、きみの味。
僕はすっかり満足して、きみと一緒に帰路を歩んだ。
公園の出口で、きみとよく一緒に居る女の子とすれ違った。
僕は全然興味がないけど、きみがなにか言いたそうだったから声をかけようか。
僕が振り返ると、丁度女の子も振り返る所だった。 目が合ったから、僕はきみを放さない様に注意しながら声をかける。
「彼女を奪ってしまってごめんね。 でももう、彼女は僕だけのものなんだ」
僕がそう言うと、女の子はぎょっとしたように後退った。
でも僕には全然関係ない。 すぐに僕はまた歩き出す。
きみの手を取って、一緒に歩く。 嗚呼、何て幸せなんだ。
* * * *
お母さんと夕食の支度をして、お父さんの帰りを待っていると、美希ちゃんのお母さんから電話があった。
美希ちゃんが帰って来ないらしい。 確かにもう遅いし、とっくに塾から帰って良い時間だ。
私はお母さんと一緒に美希ちゃんを探しに行った。 いつも美希ちゃんと別れる公園の前まで行くと、美希ちゃんのお母さんが待っていた。
「こんな時間にごめんなさいねえ」
美希ちゃんのお母さんは落ち着かない様子でそう挨拶をしたけれど、私も正直すごく心配だった。
美希ちゃんは可愛いし、優しいし、親切だったから。
私はいつも美希ちゃんと公園の前で別れるから、公園の中はよく知らない。
それでも道なりに歩いて、トイレやベンチに居ないか探していると、口の周りを濡らした黒猫とすれ違った。
猫の歩いてきた足跡が何となく街灯に照らされて赤く見えた様な気がして、私は振り返る。
目が合うと、猫は一言にゃあと鳴いた。
私はぎょっとして後退る。 猫の口に、人の指みたいなものが咥えられていたから。
でも猫はちっとも気にした風もなく、そんな私に尻尾を向けて去っていった。
美希ちゃんは、翌朝所々食い荒らされた遺体で見つかった。 猫の行方は、誰も知らない。
* * * *
fin.
- 【9/12更新】コワレモノショウコウグン【R-15〜18】 ( No.10 )
- 日時: 2013/12/26 10:38
- 名前: たろす@ ◆kAcZqygfUg (ID: Z9bE6Hnf)
【S.E.L.D】(9/16 完結)
貴方の唇が、そっと左手に触れる。 そうして漸く、私の休日の朝は始まる。
貴方は必ず起きてすぐ、硝子の棺桶を褥(しとね)に眠る私を抱き締めて、そうしてその綺麗な指で私の髪を梳かす。
貴方の柔らかい掌の感触。 骨張った指の質感。 それが、眠っていた私の意識をもどかしく呼び起こすの。 ゆっくりと、でも、確かに。
寝起きの少し掠れた貴方の声が「おはよう。」と言えば、私の心はいつでも朗らかな朝の斜陽を仰ぐ様に浮き足立つ。 一日の始まりに、貴方以外はなにも要らない。
「今日はこれにしようか?」
どれを手にしても可愛らしい服の中から一着選んで、貴方は大概そう問いかける。 貴方が選んだ物に、不服なんて何もないわ。
私の夜着を器用に脱がせて、着るのに手間の掛かる仕立てのお洋服を、貴方は器用に私に着せる。 貴方がそうしている間、私は貴方の邪魔にならないように力を抜いて身を委ねる。 それしか出来ないけれど、貴方が私に自分で着ろと言わないなら、私は貴方の思うままに任せる。
そんな貴方は、休日は決まってずっと私の傍に居てくれる。 他愛のない冗談を言ったり、普段見聞きする話を聞かせてくれたり、口も付けずに冷ましてしまうコーヒーを淹れてくれたり。 本当に、なんでもしてくれる。
私は全然、面白いことなんて知らない。 貴方の他には何も要らないから、だから専ら聴いているだけ。 それでも貴方は、いつも楽しそうに微笑んでくれる。 それが嬉しくて、でもそんなことしか出来ない自分がもどかしくて、私はいつも曖昧な笑顔しか造れない。
それでも、そんな私を貴方はとても大切にしてくれる。
そうして私は貴方と映画を見て、貴方と音楽を聴いて一日の大半を過ごす。 私は" Oh help me god , please help me "と歌うフレディーに涙ぐむ貴方の横顔がとても好き。 ハリソン・フォードと一緒になって" Say kiss me "と呟く貴方が好き。 兎に角、私は貴方がずっと傍に居てくれる休日が好き。
それから私はお風呂の時間が好き。
私から丁寧に衣類を取り払う貴方の手つきは、それは繊細でどこか哀愁があって、例えるなら私の身に付けたお洋服は、貴方の掌から零れ落ちる砂のような感じ。 何だか酷く欲情を誘う仕草なのに、やり場の無い哀しみを感じる様な、不思議な感覚。
貴方はいつもそうするように、私の体の隅々までその綺麗な手を滑らせて、馬鹿みたいに時間をかけて私の髪を洗う。 その手つきと表情がまた物悲しくて、どうしてこんなにも悲しい気持ちになるのに、私の眼からは涙が零れないのかと呪わしい気持ちになる。
それから貴方は決まって、決して上手くは無いけれども、だからと言って下手でもない歌を口ずさみながら自分の髪と体を一通り洗う。 それから、手持ち無沙汰な私の向かいに静かに座る。
二人で入るには小さな浴槽だけれども、その分貴方との距離も近くて私は好き。
「しっかり肩までね」
浴室中の湿気を揺らして聴こえる貴方の声。 貴方と同じ体温になれるなら、頭頂までだって浸かるわ。 貴方と同じ熱を分かち合えるのなら。
そう、私には貴方と分かち合えるものが何もないの。 この想いも、愛情も、歯痒さも、寂しさも、何もかもが一方通行。
貴方がくれる優しさも、暖かさも、哀しみも、その全てに応えてあげられない。
募るばかりで、溢れだす事も出来ずに居るこの愛を、どうして持て余さずに居られようか。 溢れだす頃には全て哀しみと恨めしさに変わってしまう想い達を、どうして抱き締めて居られようか。
それでも、やっぱり私の休日は変わらない。
お風呂から上がれば貴方が私の長い髪を乾かす。 長い上に量もあるから、乾く頃には貴方が汗だく。 それでも貴方は満足そうに言うの。
「綺麗だよ」
私はすごく嬉しくて、私が選んでこうなった訳でもないのに、とても誇らしい。 貴方のその嬉しそうな笑顔に出会えただけで、私はこんな自分自身さえ愛おしく思える。
貴方に連れられて寝室へ向かいながら、ただその幸せの余韻に浸るの。 いつもそうするように、貴方の唇が首元を這う間も、貴方の綺麗な手が私の胸へ延びる間も。
こんなにも愛おしいのに、どうして言えないの?
早く抱いてと。
薄情な貴方の手はいつまでも私をなぶるばかり。 狡猾な貴方の舌はいつまでもお腹の上で燻るばかり。 もっと下へ、もっと奥へ。 そう願う程に、狂おしい未練と声にならない喘ぎが脳内を廻る。 私は、貴方が満たされるまで待つしかない。 でもそれが、不思議と幸福な時間。
貴方は時間をかけて私の体に舌を這わせ、私の体を指でなぞり、それからいつも声も出ない程に激しく犯す。 何一つ分かち合う事は出来ないけれど、貴方の事を受け止められる体で良かった。 そう、心底思う。
私は貴方がどんな反応が好きなのかを知らない。 貴方がどんな風に交わい合うのが好きなのかを知らない。 それどころか、私は貴方がどんな女の子が好きなのかさえ知らない。
だけど、私は貴方が私の体を求めてくれている事だけは知っている。 それだけで良いの。 他には何も望まない。
私は声を出すことも、自分から動くことも出来ずに、ただ貴方を受け入れ、受け止める。 それだけで、愛し合っている様な気分になれる。 だからこのまま、私の中で果てて。
そう願って間もなく、私は熱を持った貴方の愛を受け止める。 私の中で脈打つ貴方が、どうしようもない程に愛おしい。 例え私が快楽を得ていなかったとしても、この想いに嘘はない。
だけれどその愛おしさは、急速に冷えて哀しみに変わる。 そろそろ貴方と一緒に居られる時間が終わってしまうから。
荒い息のまま私の上で微笑む貴方。 私の頬を撫でながら私の眼を見つめる貴方。 どうして声にならないの? こんなに愛しているのに。
それから貴方はもう一度一緒にお風呂に入って、私に吐き出した、仄かな熱と粘度を含んだそれを綺麗に洗い流す。 なんだか、一緒に過ごしたこの一日を洗い流して居るようで、私は言い知れない寂寞に囚われる。 これから待つ永い孤独を、どうして埋めよう。
貴方がもう一度この長い髪を乾かす間、長い事悩んで私の夜着を選ぶ間、私をそっと硝子の棺桶へ連れ去る間、私はただ、これから始まる長い孤独を埋める術を探す。 見つからない事は、誰より知っているけれども。
「お休み」
貴方の声が聞こえて、貴方の柔らかい唇が、私の冷たい唇に触れる。
お休みなさい。 いつまでも待っているわ。
そうして櫃の蓋が閉められ、一枚の硝子に隔たれた貴方の寝室に灯された明かりが消える。
私は、これで良いと思っていたはずなのに、何故だか今日は酷く哀しい。 これが私の在るべき形だと思っていたのに、何故だか今日は酷く切ない。
分かち合える物は何もないけれど、溢れだす程の愛情がこの胸に有るの。 だけれどもそれは、溢れだす頃には全て哀しみと恨めしさに変わってしまう。
与えるべく生まれた愛情は、与える術を持たないままこの胸の内で渦巻くの。
与えられなかった愛は、いつかこの胸の中で飽和してしまう。 もしも飽和し切ってしまったら、その先は腐蝕して往くの?
それとも溢れだす時の様に、何か別の儚い想いに変わってしまうの? この愛情が憎しみに変わって、私の胸を犯し始めるなんて、考えたくはないけれども。
もしも次にこの翡翠の眼が醒めた時、神様が私に言葉を与えてくれたなら、きっと私はこの想いをこう名付けるでしょう。
飽和性過剰愛情疾患、とでも。
そして私は、嫌と言うほど自嘲するでしょう。
所詮は、愛玩人形の憂鬱と。
ただ犯してくれれば、こんな風に苦しまずに済んだのに。 所詮は人形、と接してくれれば、こんな風に愛することも無かったのに。
この美しい憂鬱が、私は酷く憎らしくて、酷く愛おしい。 例えば抱かれる為だけに生み出された体でも、こんな愛情を抱けたことが、酷く嬉しい。
結局私は、貴方のラブドールで良かった。 そう、心底思う。
* * * *
fin.
——陽様のブログ「CRAZY!」の記事「愛とは何でしょう?」に、心からの感謝をこめて。
- Re: 【企画】コワレモノショウコウグン【アンソロ始動】 ( No.13 )
- 日時: 2013/10/09 19:07
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
はじめまして^^
雑談掲示板のほうでは書きこみありがとうございます。雑談のほうでは雛乃っていう名前で投稿してます、友桃(ともも)と申します。
最初注意書きを読んだときに、乙一さんのような感じの小説を書かれる方なのかなと思ったのですが、
実際に読んでると予想外にとても綺麗な小説で驚きました。
エログロの度合もあるんですけど、それ以上に語り手の愛する人に対する過剰なくらいの気持ちがすごく綺麗だなと思いました。綺麗って言葉が適切なのかどうか私にもわかりませんが←
あとたろす@さんの書かれる文章も、綺麗な小説だなぁと思った要因かと思います。とても読みやすかったです^^
ちなみに【ひとりじめ】が一番好きです。
途中途中、「あれ?」って思いながら読んでたんですけど、最後に違和感の理由がわかってもう一度読み返しました。
光景が目に浮かびました^^
また読みに来ます。
更新頑張ってください(*^^*)
- Re: 【企画】コワレモノショウコウグン【アンソロ始動】 ( No.14 )
- 日時: 2013/10/14 06:12
- 名前: たろす@ ◆kAcZqygfUg (ID: smnt7Sg1)
友桃様>>13
はじめまして!こちらにもコメント頂けたのですね、ありがとうございます^^
確かに、説明文だけ読むと乙一氏風かも知れませんねw 多少は影響されているでしょうし。
お褒めの言葉、ありがとうございます。
何と言うんでしょうか……。
愛って、詰まるところ誰にも形容できないと思うんです。
だから、作中の人々にとって美しい物、善い物であって欲しい。
そう思ってここまで話を作ってまいりました。 なので綺麗と仰って頂けると素直に嬉しいです^^
まだまだ一人称は手探り状態なので、お褒め頂けるほどの物でもありませんが^^;
変な話なのですが、【ひとりじめ】は我ながら中々良い出来だと思っていますw
どんな話もそうですが、僕はどんな話でも結末を知ってもう一度読むことでその話の本当の姿が見えると思います。
なのでもう一度読み返して頂けるってとても嬉しいです!ありがとうございます!
まだまだ至らない所だらけですが、またお越しいただけるよう精進させて頂きます!
コメント、ありがとうございました。