複雑・ファジー小説

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星憑のエルヒューガ
日時: 2018/02/21 02:56
名前: 夕暮れメランコリー (ID: OxIH1fPx)

星憑(ホシツキ)。
それはいわゆる「ヒーロー」のようなモノであり、この世界の子供の憧れである。
しかし誰一人としてその存在を見た人はいなく、架空の存在であると信じていた。
かくいう僕もその一人であったのだ。
————ついこの前までは。









*********************
初めまして、夕暮れメランコリーです。
こちらで小説を書くのは初めてですので、仲良くして頂けたら幸いです。圧倒的不定期更新。
感想、批評大歓迎ですが、荒しが目的の人はお帰り下さい。

参照が恐ろしいことになっていて作者はとても混乱しております、とにかく亀更新なこの作品を読んで頂きありがとうございます……

※キャラ名色々変更しました。元ネタがわかるとクスリと出来るかもしれません。

【一話:箱庭ノ中】
>>1>>2>>5>>6>>7>>8>>9>>10>>11>>12>>13>>14>>15

【二話:蠍ノ少女】
>>16>>17>>18>>19>>20>>21>>22>>23>>24>>25>>30>>31>>32

Re: 星憑のエルヒューガ ( No.18 )
日時: 2014/07/30 17:43
名前: 夕暮れメランコリー (ID: G35/fKjn)

「あ、あの、これ」
「見て察そうぜ?駅のホームだよ、駅の」
 いや、そのくらいは僕でもわかるけど。あの「箱庭」にこそ汽車は通じていなかったけど、懇意にしていた旅人が持って来た本で見たことがある。
「……何で浮いてるの」
 シグナレスは一度きょとん、とした顔をしたけれど、すぐにお腹を抱えて笑いだした。
「んなの考えたら負けだよ、ま・け。そんなこといちいち突っ込んでたらこれから先、身が持たないぜ?」
「……まぁ、否定できないな。頑張れヨダカ」
「いやいや頑張れじゃなくって!」
 これから先どれだけ非現実的な事ばっかり起きるのかを考えると胃が痛くなる……
 そもそも星憑なんてものが出てきた時点で非現実的だけれども、僕も今さっきその非現実的なものに加担した件は置いておこう。
「ラッキー!あともーちょいで“あいつ”来るじゃん!これ逃したら……げ、あと二時間も来なかったのかよ」
「ま、一本しか通ってないからな、しかも車掌もあいつだけときた。もうちょっと何とかならないのかねぇ」
 会話の内容がいまいち理解できない僕は大人しく駅のホームで汽車を待っている。
 ……星憑の本部についたら色々調べよう。そうしないとやっていけなさそうだ。


 一分後。
 汽笛が微かに聞こえたと思ったら汽車がホームに流れ込んできた。運転席と思われる場所に人影が見えて、僕は直感的にそれが二人の話していた“あいつ”だと理解した。
「よーっす、久しぶりだなシグナルとシグナレス!!何週間?いや何ヶ月ぶり?てかさなーんでこの俺の操縦する『銀河鉄道』を頼ってくれなかったかなぁもう!これさえありゃ任務のある場所へこうばしゅーんとばひゅーんとすぐ着いちゃうのに!画期的だと思わない?ね?思うでしょ?感謝してよねこの俺に!」
「相変わらずうるさいなお前ッ!」
 運転席のドアが勢いよく開いたかと思うと突然のマシンガントークをする少年。歳は僕やシグナレスと同じくらいだろうか。サンバイザーを着用していて、そこに『ジョウホウタンマツ』と思われる星型の飾りがついている。
「ん?こちらのびしょーねん君はどちら様?はっまさかシグナレスにそんな趣味がっ!?いやいやいや俺は別に人の趣味をとやかく言う趣味は持ち合わせてないけどさ?バレたらヤマネコさんとかホモイがうっさいから黙っとけよ?あーそっかそうなのかー……」
「すっごい心外なんだけどそれ」
「え?じゃあシグナルさん?」
「違う」
 そう言ってシグナルさんは僕の左耳を指差す。それでようやくマシンガントークの人も納得がいったようだ。
「なぁるほど。俺らの新人サンか。で、お名前は?」
「よ、ヨダカ、です」
 ちょっと緊張してしまって上手く舌が回らなかったけれど、そんなことは気にしない主義の人なのか、マシンガントークの人は「へーヨダカ君かぁ……ヨダカねぇ……」とぶつぶつ呟いている。
 どうせ名前負けしてるとか思われているんだろうな、と察して悲しくなった。きっと名前が「スズメ」とかだったら皆納得していたんだろうな。
「あ、俺はジョバンニ。この星憑専用路線『銀河鉄道』の車掌してます!」
 びしっとそれらしく敬礼して、ジョバンニは僕に色々聞こうとマシンガントークの準備をしていたがシグナルに止められた。
「とりあえずさっさと出発させろ。聞くのは出発してからでもいいだろ」

Re: 星憑のエルヒューガ ( No.19 )
日時: 2014/07/30 20:00
名前: 夕暮れメランコリー (ID: G35/fKjn)

「りょーかいりょーかい」
 ジョバンニはそう言って運転席へ乗り込んだ。
「おいヨダカ、出発するぞ」
「あっ、はい」
 既に乗り込んでいたシグナルとシグナレスを追って、僕も銀河鉄道に乗り込んだ。


 汽車に乗るのは初めてだが、この汽車の内装が変わっているのかと問われれば、多分さほどでもない。非常にスタンダードな汽車の内装だ。
「五分ぶりだなーヨダカっ!」
「うわっ」
 シグナルさんたちの向かいに座ろうか、それとも別の座席に座った方がいいかと迷っていると突然後ろから抱きつかれた。犯人はジョバンニしかいない。多分。
「……あの、運転は」
「そんなのだいじょーぶだいじょーぶ!知ってるか、この列車自動運転っていうめっちゃ便利な機能つきなんだぜ!だから俺がサボってても全然おっけーって訳」
 どう?すごいでしょ?と自慢してくるジョバンニだけれども、凄いのはジョバンニじゃあなくてその運転システムだ。
 それにしても星憑本部は相当科学技術が進んでいるんだなぁと実感した。「箱庭」が進んでいないだけというのも一部あるけれど、それでも十分他の国に引けを取らない技術ばかりだ。シグナレスの乗っていた空を飛ぶ機械もその一つ。空が飛べるだけでも僕にとってはありえない。
 エーテルやさっきの駅のホームみたいなものは科学技術と切り離そう、うん。
「ところで!ヨダカも星憑なんだろ?何の星憑なんだ?」
「えっと、僕は—————」
 そうだった。
 何のホシビトか教えられていないから、僕自身が何の星憑かわかっていないんだった。
 ジョバンニは凄く興味深々といった顔で見つめてくるし……どうしよう。上手くこの場を切り抜ける嘘なんて思いつかないし思いつけないし、思いついた所で上手に嘘なんてつけない。
「じょ、ジョバンニは……?」
「俺?俺はねー、南十字!」
 予想外の星座。もっと他の————例えば蟹座とか蠍座とか、そんなメジャーなものを想像していたけれど。
 ホシビトはまさしく『星座の数だけ』いるようだ。
「あっでもねー、出来れば「みなみじゅうじ」じゃなくて「サウザンクロス」って呼んで欲しいかな!そっちの方が格好いいから!」
「努力するよ」
 さて。




 ————で、僕は何座の星憑なのさ。
 ————教えなきゃ駄目?本当に?
 ————うん。知っていないとこれから色々苦労しそうだし。
 ————別にさー、本部に着けばわかるんだし今知ろうとしなくてもいいんじゃない?




 この僕のホシビトの性格をどうにかして頂きたいんですが。何故こんなにもひねくれているのだろうか。
「ん?ヨダカどうした?」
「別に何も……」
 ほら、苦笑いしか返せない。

Re: 星憑のエルヒューガ ( No.20 )
日時: 2014/09/07 16:43
名前: 夕暮れメランコリー (ID: G35/fKjn)

「その話題は置いておいてさ、何で銀河鉄道の操縦士になろうと思ったの?」
 ジョバンニは僕が露骨に話を逸らしたのが気にかかった様子だったが、深くは追求せずに質問に答えてくれた。
「んー、単純にお偉方さんからの指示ってのが一つ。あとその頃の俺って星憑になったばっかりだしなんか……まぁ色々あってさ、結構病んでた訳。とてもじゃないけどホシクイ討伐なんてできっこない」
 今は出来るけどな、とジョバンニは付け加えてからこう続ける。
「だからこそ俺に白刃の矢が立ったのかねぇ……ホシクイ討伐の出来ない星憑なんてさほど役にも立たないし、まあ厄介払い?」
 今でこそ笑っているが、このジョバンニという少年は少年で結構いろんな後ろめたい過去を抱えていそうだった。あまり掘り返さない方が彼の精神的にも良いと判断して、僕はその話題を打ち切った。
「後どのくらいで本部に着くの?」
「本部?うーんと、十分くらいだな」
 十分。短いようでそこそこ長い時間。長いようで短い時間でもある。
「つーか待ってよ、あそこの駅から乗ってきたってことは何?「箱庭」に行ってきたの?ひゃー大変だねー、俺なんてずっと銀河鉄道に缶詰みたいなモンだから「箱庭」にお世話になったことはないけどいろんな人から話は聞いてるよー?だっめだめな今の国王サマになってから科学技術は進歩ナシどころか衰退してるし、星憑への理解は無し。そのくせ一丁前に夜空が好きとかぬかしてるんだからどうしようもないな」
 相当な悪意を感じるジョバンニの「箱庭」に対するイメージ。彼自身が「箱庭」へ来たことはないのだろうけど、自分の目で見たことのないものをここまで悪く言えるものなのか。いや、見た事がないから悪く言えるのか。実際に「箱庭」に来たものなら悪口を通り越して「もう駄目だ」と達観するから。ちなみに僕は達観を通り越して諦めの境地に達している。
「そーそー。箱庭に出たんだよホシクイが!最近あそこらへん出てなかったから完璧に油断してた、そんでもって到着遅れて被害は甚大。まったくもって最悪だよ」
 シグナレスが不機嫌そうな顔で話に参加する。シグナルさんはいつの間にか寝てしまっていた。規則正しい寝息を立てている。
「最悪の状態だったけど最高の収穫もあったわけだから別にいいけどさー、なっヨダカ!」
 まさか名前を呼ばれるとは思っていなくて、僕はびくっと肩を震わせた。
「は、はい!?」
 先程の話の「最高の収穫」ってまさか僕のことじゃないだろうか。そう言われるのは悪くないが、あの時はあの時であって、今あんな事が出来るかと聞かれたら自信満々に「出来る」と答えられる自信がない。むしろ無理だ。
「だってさー、こいつ俺が大分体力削っていたとはいえホシクイ倒したんだぜ?初戦で、しかも大型を!だいたい皆初戦は小さいホシクイ一匹倒すのにも苦戦するものなのに……状況も状況だったししょうがないのかもだけど」
 シグナレスの話からだいたいの事情は察したらしいジョバンニが、まだシグナレスの話に理解が及んでいない僕に対してわかりやすく説明してくれる。
「……だいたい皆どうやって星憑本部へ行く足がかりを掴むのかと問われれば、それは本部にホシビト契約者名簿があるから。一時間に一回は新規契約者がいてもいなくても更新されるし、新規契約者がいれば連絡がお偉方に入るから見落とす心配もない。そこから契約者の氏名と住所が勝手に調べられて、もれなくお迎えが来るって訳。この時点で実はヨダカ、お前かなり特殊な事例なんだぞ」
「で、皆がどうやってホシクイと戦う機会を得るかというとだな、ざっくり言えば小型のホシクイを倒せって司令が新人に下る。でも新人一人じゃ心もとないから中堅————俺とか兄ちゃんとか、そこらへんの強さの奴がヘルプに入る。万が一新人一人で倒せなかった場合を想定しての対処だ。いくらヨダカが期待の大型新人で、大型のトドメをさしたと言ってもしばらく任務はこればっかになるから覚悟しとけよ!」
 シグナレスの追加説明が終わると同時に、駅のホームが微かに見えてきた。僕たちが乗ってきたホームよりかなり立派なので、多分あれが本部へ通じる駅。
「おっと、もうそろそろ到着かな?シグナレスお前、シグナル起こしてやれよ」
「りょーかい」
 ジョバンニが僕の視線の先に気付いて呟く。シグナレスはシグナル
さんを起こしにかかっている。





 僕の『新天地』での生活がスタートする。

Re: 星憑のエルヒューガ ( No.21 )
日時: 2014/11/02 20:24
名前: 夕暮れメランコリー (ID: G35/fKjn)

 一言で言えば、綺麗だった。

 ゴミはおろか塵一つ落ちていないエントランス。
 床は恐らく大理石の類だろうが、見たことのない輝きを放っている上に、藍色とも青色ともとれない色をしているので一概に“大理石”と言い切れない。
 周りで談笑しているのは恐らく僕と同じく星憑となった人たち。但し僕より先輩だが。

 その綺麗な本部に一歩、足を踏み入れる。


「おっかえりー、シグナルとシグナレス」
 ちりんちりん。
 不意に、声と鈴のような音が頭上から聞こえてきたので、僕は名前を呼ばれていないけれど上を向いた。声はどうやらエントランスの二階から聞こえてきたようだ。
「あーっクラムボン!てめー任務サボりやがったな!?ふっざけんじゃねーよお陰でこっちは苦労したんだからな!?」
「何の事?僕分からないなー」
 くせっ毛な茶髪で、なぜだか片手で持てるタイプの琴を所持している、僕よりかは絶対に年下な少年がそこにはいた。
 右腕に『ジョウホウタンマツ』と思われる星型の飾りが付いた腕輪をしているし、シグナレス達と親しい仲のようなので十中八九星憑だ。そもそもこの本部にいる時点で星憑だけど。
「で、そこの人は新人サン?もう噂になってるよ、新人が来るって」
「え」
 確かにホシビトと新規契約した人がいればすぐに分かるようになっている、とは聞いていたけれどこんなに早く知られるとは。思わぬ歓迎に戸惑う僕だったけれど、クラムボンと呼ばれた少年はその僕の反応に大変満足したようで、二階から一階に飛び降りてきた。
「やーそれにしてもねー、まさか『あの星座』の星憑サンが男とは……人生って分からないものだねー」
「……『あの星座』?」
 含みを込めたクラムボンの言い方からして、どうやら彼は僕の契約したホシビトが分かっているようだ。
「そ、『あの星座』。まぁ君ならいけそうだけど」
 きしし、ともにしし、ともつかない、強いて言うなら『かぷかぷ』あたりが打倒と思われる笑い声をあげてクラムボンはエントランスの奥に消えていく。
 しかし五歩ほど歩いた所でくるっとこちらに向き直ってこんな事をシグナレス宛に言った。
「そうそうシグナレス、ホモイが呼んでたよ」

 ホモイ。
 その単語(恐らく名前)が出た瞬間シグナレスは闘志を露にした。どうやらシグナレスにとって因縁の相手なようだ。
「よっしゃあのホモイめ、今度こそぎったぎたのけっちょんけっちょんのぐっちゃぐちゃのぼっこぼこにしてギャフンと言わせてやるぜギャフンと!」
 今にでも弓を取り出そうとするシグナレスを「ここ本部だから」と取り押さえるシグナルさん。暴走しがちなシグナレスと、そのブレーキ役のシグナルさん。この兄弟のパワーバランスがだんだん見えてきた。

Re: 星憑のエルヒューガ ( No.22 )
日時: 2015/05/06 17:33
名前: 夕暮れメランコリー (ID: BJQqA4RR)

 それにしても。
 やはりと言うべきか、星憑という存在は少ないようで、ロビーにはあまり人がいなかった。僕たちを除いてそれこそ二、三人程。そもそも世間一般には星憑なんてポラリスくらいしか知られていないのだけれど。
 だからただでさえ広いエントランスがより一層広く感じられた。
「さて、今からヨダカの星座を確認しに契約者名簿見に行くけどシグナレス、お前はどうする?ホモイに呼ばれてるんだろ?」
「いや、兄ちゃんと一緒に行く!ホモイに呼ばれてるとかそんなのすっぽかしても大丈夫でしょ、どーせ大した用事じゃないし」
「……それっていいのかなぁ」
 まだ顔も見ていないホモイさんに心の中でひそかに謝りつつも僕はシグナルさんの後に続いた。





『ようこそ、白鳥座星憑シグナル及び射手座星憑シグナレス、そして新規契約者ヨダカ。私は星憑本部のコンピュータ全てを管理しますマザーコンピュータ「HAL」です。以後お見知りおきを』
 なんだか青白い、とある部屋に入った瞬間どこからか響いてくる声。僕の反応が予想通りで少し嬉しかったのか、にこにこしながらシグナルさんが正面を指差す。
 そこにはよくわからない機械が鎮座していた。黒い大きな長方形の箱が幾つも置いてあって、箱から小さな青い光が幾つも漏れている。部屋全体を明るくしている原因は恐らくこれだ。
 そして、僕の丁度正面にこれまたよくわからない機械が置いてあった。長方形の箱よりかなり小さいし、今度はこれ自体が青白い光を放っている。
「……これは?」
「さっきコイツ自身が自己紹介してただろ、HALだよHAL、なんかすごいコンピュータのHAL」
 存在だけなら知っていたコンピュータだけれど、いざ目の前にしてみると何と言えばいいのかわからない。ただの箱にしか見えないから凄さも分からない。強いて言えば箱が喋っている所だけか。
「つまり、このコンピュータが全ての星憑に関する情報をまとめているんだ。誰が何と契約しているか、今はどうなっているか、生きているのか死んでいるのか、何の討伐に出かけた、とか」
「はぁ」
 やっぱりよく分からない。


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