複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 星憑のエルヒューガ
- 日時: 2018/02/21 02:56
- 名前: 夕暮れメランコリー (ID: OxIH1fPx)
星憑(ホシツキ)。
それはいわゆる「ヒーロー」のようなモノであり、この世界の子供の憧れである。
しかし誰一人としてその存在を見た人はいなく、架空の存在であると信じていた。
かくいう僕もその一人であったのだ。
————ついこの前までは。
*********************
初めまして、夕暮れメランコリーです。
こちらで小説を書くのは初めてですので、仲良くして頂けたら幸いです。圧倒的不定期更新。
感想、批評大歓迎ですが、荒しが目的の人はお帰り下さい。
参照が恐ろしいことになっていて作者はとても混乱しております、とにかく亀更新なこの作品を読んで頂きありがとうございます……
※キャラ名色々変更しました。元ネタがわかるとクスリと出来るかもしれません。
【一話:箱庭ノ中】
>>1>>2>>5>>6>>7>>8>>9>>10>>11>>12>>13>>14>>15
【二話:蠍ノ少女】
>>16>>17>>18>>19>>20>>21>>22>>23>>24>>25>>30>>31>>32
- Re: 星憑のエルヒューガ ( No.1 )
- 日時: 2013/08/11 00:27
- 名前: 夕暮れメランコリー (ID: hMEf4cCY)
【一話:箱庭ノ中】
この国は星が綺麗だ、と数年前に来た旅人が言っていた。それを聞いた僕の母親はたいそう気をよくして、この国について(もちろん良い所のみ)頼んでもいないのにペラペラと喋り出した。
僕の家は食堂を営んでいて、しかもその時は十二時と言う絶好のランチタイムだった為、席は殆ど埋まっていた。初めて見る顔の人は僕の母親の饒舌さに驚き、常連さんは呆れたように笑う。それがこの食堂のよくある風景。
さて、その時母親が何を話していたかできる限り思い出してみよう。大丈夫、僕記憶力は良い方だから。……そうそう、この国についてだった。
この国は絶対王政を敷いていて、それは二百年ほど前から続いていること。だから高貴なる血を引いている王が国のトップに立つのは当たり前なこと。現在の王はとても夜空を大切にしていること……等など。そこで旅人は「だから灯りが全て蝋燭の火なんですね」と妙に納得した。
僕の口からこの国について説明させて貰うと、この国は他の国との外交を一切禁じていて(しかも理由が「他国の汚れた文化を我が国に持ち込ませると素晴らしき我が国まで汚れる」らしい。笑ってしまう)、そのため他の国では「箱庭」と呼ばれている。恐らく「箱庭」呼ばわりのことは、この国では僕くらいしか知らない。僕だって二年くらい前、旅人同士の会話で小耳にはさんだ程度だし。
……話がそれたので、この国についてのことに戻すと、後は王が夜空が大好きなことだ。しかし王はただ夜空が好きなだけであり、それについての探求心は持ち合わせていない為に、月や星については全くの無知と言っていいだろう。いい年した大人が「月は自ら光っている」なんて言うか、普通。人前では言えないがあの王は馬鹿の部類に属してしまう。
王がそんなどうしようもない人だから、国民にもやっぱりどうしようもない人は存在してしまう。王支援派と言う名の宗教団体(僕の母親とかね)とか。
まぁ、僕が最も「どうしようもない」と思う人の話をしようか。
僕の家の前に住むアイツの話を。
- Re: 星憑のエルヒューガ ( No.2 )
- 日時: 2013/08/11 16:43
- 名前: 夕暮れメランコリー (ID: hMEf4cCY)
アイツは、一言で言えば「豚」だった。いや、体型がそうと言うだけであり、本物のように愛嬌のある顔はしていない。僕はそいつの顔を思い出すことにすら嫌悪を抱くので、残念ながらアイツの顔を詳細に表現できない。
さて、それだけならまだ僕は「どうしようもない」とは思わない。問題なのはアイツの性格なのだ。
その悪評は近所に轟いていて、「うちの子供が玩具を取り上げられた」だの「空き地を独占された」だの「石を投げられて、それが額にぶつかった」なんてのもあった。じゃあそいつの親はどうしているかと言うと、なんでも父が政府のお偉いさんで母が金持ち……らしいので不用意にそんな文句を言ってしまっては、どうなるかわかったものではない。
僕は基本面倒くさい事に首を突っ込まない主義なので、家が正面であるにもかかわらず、一言も会話を交わしたことなどなかった。いや、正確には「交わりたくなかった」。
そう、あのよく晴れた今日の昼下がり。
あの日卵の在庫など切れなかったら。
弟が遊びに行かなければ。
僕がアイツと遭遇する危険性を察知し、裏口からお使いに行っていれば。
————アイツと鉢合わせ、なんて絶望的な事態にはならなかった。
「よぉ」
完全無視しようと思っていたのに、あろうことかあっちから話しかけてきた。もうこうなってしまえば逃げる、なんて選択肢は閉ざされてしまった。だってあっちは脂肪だらけとはいえ巨体で、対する僕はよく女と間違えられるくらい細身だ(いや、女顔ってのもあるんだろうけど)。
「こ、こんにちは」
僕は適当に挨拶してその場をやり過ごそうとした。しかし相手が僕を見逃してくれる、なんて奇跡は起きなくて。
「こんにちはも何も、お前とは初対面なんだけど」
じゃあ初めましてと言えばいいのか。
「まーどうでもいいや。お前、名前は?」
自分から名乗れよ、と言いたくもなったがそこはこらえて自分の名前を言った。こんな時は相手の言うがままにした方が得策なのだ。
「ヨダカ、です」
ヨダカ。確か何処かに生息する鳥の名前で、声だけは鷹に似ているからと言って「夜の鷹」の名前をもらってしまった鳥。
何故僕がそんな名前になったのかわからない。母親に聞いてもはぐらかされてしまい、十五歳となった今でもわからないままだ。
でも僕本人はこの名前、結構気に入っている。名前の響きも綺麗だし、「夜の鷹」なんてちょっと格好良いじゃないか。
しかしこの名前が裏目に出た。
「————んだよ、お前も「鷹」が名前に入ってンのかよぉ」
凄く嫌な予感。
「改名しろ今すぐに!と言うか何故お前がこの俺と同じく名前に「鷹」が入っているんだ!恥ずかしいとは思わないのか!申し訳ないとは思わないのか!」
理不尽すぎるだろ!