複雑・ファジー小説
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- 【第4話】変革のアコンプリス【オリキャラ募集中】
- 日時: 2014/06/04 14:35
- 名前: 壱路 ◆NNJiXONKZo (ID: Rn9Xbmu5)
壱路と言います。前作を放置しながら懲りずに第2作です。
今作の舞台は「某クエのようなRPGのような、武器はあり魔法もあり、魔族も魔物も獣人も人間もいる世界」の予定です。
変なことを言いますが、真剣な話を書く気はないです。自分なりの適当な話を書くつもりです。
真剣な話でも真剣になりすぎないというか……そう出来るかどうかは別として。
変革のaccomplice。意味は「共犯者」ですね、変革の共犯者。
ーーーーーーーーーー
登場人物 >>1
その他設定 >>2
目次 >>3
オリキャラ用テンプレ >>4
プロローグ >>5
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※ 4/3 見切り発車開始。
※ 4/14 "ラナ・カプリース"の落書き投下。見苦しいですがこちらに >>21
※ 5/3 ようやく第3話に終わりが見えてきた。長かった…
※ 5/9 図書館に掲載してみたテスト。
※ 5/11 "テオドール"の落書き投下。(>>34) iPhoneで適当に殴り描いてます。
※ 6/4 作者のやる気低下により更新をローペースに。今に始まった話ではないですが。 月2,3回くらいの予定です。
- Re: 【第1話】変革のアコンプリス【オリキャラ募集中】 ( No.11 )
- 日時: 2014/04/04 22:51
- 名前: 再英78 (ID: 7rpLseUw)
題名に惹かれて来ました|Σ=つ・ω・)つ
世界観とか設定もの凄く美味しいですモグモグペロォ…(^ω^ )
加えて丁寧につづられていく文章のおかげで、色々と物語の中が想像できました。
ひんぬーの姫様ときょぬーのラナさんのやり取りが個人的にツボです。
どちらも捨てがたいですが、私は姫様派です。
更新頑張って下さい、応援しています。
ついでに獣人のオリキャラを投下します。しかし、獣ということはウサギとかアルパカとか、そういう動物の血を継いでいると考えていいでしょうか?
名前[エレオノーレ・ジョールトゥイ]
性別[女]
年齢[二十七歳]
性格[口数は少なく、あまり自ら動かずに人から指示されたことに従う。自己主張が皆無で周りに流されやすく、また本人もそれでいいと思っている。嫌いな奴にはとことん厳しく、最悪噛み付いてくる。
大の男でも敵わぬほどの大食いで、基本なんでも食うが感想は辛辣。戦闘面になると相手を食うために本気で殺しにかかってくる。]
種族[獣人]
容姿[身長201センチ、体重92キロの巨体を持つ。
赤みがかった黄褐色の短髪。鋭く釣り上がった黄目を持ち、丸みを帯びたライオンの耳を持つ。まるで縫い痕のように鼻から両端の顎にかけて黄褐色の毛が生え、肌色との境を作る。
首から鎖骨にかけてもっふもふに生えている。約8センチメートルの犬歯をそなえる。鼻は<のような感じで出っ張っており、ライオンのソレ。
お尻からは尻尾が除き、房状に体毛が伸長し色は暗褐色。
ラフな服装を好み、黒いパーカーにジーンズ、スニーカーが普段着。尻尾を収納するとベルトからの圧力がかかって痛いので、常に出している]
その他[ライオンの獣人。百獣の王として有名であり、最も強い動物だと思われている事が多いが、本人は「最強はゾウだ」と否定している。
完全な夜行性であり、朝や昼ではテンションが死んでおり、夜になっても大体そんな感じ。1日の大半は寝ている事が多く、低血圧。
力強い脚力と強力な顎を持ち、大形の動物でも引き倒して狩ることができる。気に入った奴には頭を摺り寄せ、舌で舐めたり、歓待的な場合には頭をこすりつけたり、額や首に鼻を寄せるなど色濃くライオンとしての本能を受け継いでいる。
幼少期に奴隷狩りにあい、実際に買われたが、あまりの空腹になんのためらいもなく主を食い殺した。この頃から人を殺すことにたいして抵抗がなく、また空腹時であれば誰であろうと見境なく襲う。
中立を貫き、どちらにも加担しない。
1人称は俺、2人称はあんた、3人称はあんたら。]
サンプルボイス
「……エレオノーレ・ジョールトゥイ。宜しく」
「来んな、あんただけ来んな。俺に近づくな、視界に入るな」
「……まぁまぁ普通。けど塩入れすぎ。もう少し減らしたほうがマシ」
「……ん。あんたの頬柔らかい。おいしそう。……舐めただけなのになんで驚く?」
- 変革のアコンプリス ( No.12 )
- 日時: 2014/04/04 22:54
- 名前: 壱路 ◆NNJiXONKZo (ID: HC9Ij0EE)
- 参照: 第1話「不遜な従者と気苦労姫」−③
彼女の境遇を考えると、もう少し卑屈か、利己的になってもおかしくはない。だが彼女は境遇を盾に泣き寝入りすることも、自暴自棄になることもなく生き、育ち、そして今は真なる自由の為に立ち上がろうと奮起している。
だからこそ、世話役としてだけではなく、託された者として、ラナは他の道も示さなければならない。まだ彼女には他の未来や可能性があるのだからーーーそう思い少し身を引き締め、声色を鋭くさせる。
「……これから話すのは世話役としてじゃなくて、アンタをこれまで最も近くで見てきたラナ・カプリースとしての言葉と思って聴いて。いい?」
「ん?うむ、心得た」
「よし。アンタのやろうとしていることの先にあるのは、あのオッさん、アンタの父親が目指していたのと同じだと思うのよ。だからこそさ、私にはアンタは父親の背中を追っている様に見える」
「…………」
「亡き父の成し得なかったことを成し遂げよう、なんて生き方を縛られてる風に感じるんだ。自由を求めてるアンタが一番不自由だなんて滑稽もいいとこだよ……リーゼロッテ」
「ラナ」
「私はアンタに感謝してるよ。まだ赤ん坊同然だったアンタを託されたせいで、必死で、意地でも生き抜かないといけなかった。ま、そうでもなかったらどっか適当なトコで野たれ死んでたろうね。……アンタはパッと見、色白過ぎるだけの人間に見えるから、私を見捨てて、人間に紛れて自由を謳歌することも出来たのにね。全く、とんだ馬鹿姫様だよ」
「馬鹿姫、か」
「だから、さ、何のしがらみもなく自由に生きていいんだよ。アンタの立てた計画は否定しないよ。けど、そう上手く行く保証もないんだ。魔族を見捨てろって言うんじゃない。ただ、今の世界の流れは個人じゃどうにもならない程に定められている。そういった流れに唯一対等に対抗出来るのが時間なんだ。私達は魔族、人間よりも寿命が長いのは知っているだろ?魔族が諸手を振って大通りを歩けるようになるまで待っーーー」
姫様こと、リーゼロッテの見事な手刀がラナの額に振り降ろされた!
「ーーーてえ!?何すんだ馬鹿お嬢!!人がせっかく真面目に話してたのにさ!!」
「怒るところはそこか……いや、馬鹿者はお主じゃ。余を誰だと思うておる?」
「馬鹿」
余りにも無防備に手刀を受けたラナは額を抑え、涙目で即答する。
が、リーゼロッテは馬鹿の一言に異を唱えることはなかった。寧ろそれどころか胸を張る。
「そう、余は馬鹿じゃ。人間共の常識を知らぬ、世界の流れなど微塵も分からぬ。そして、上手く行く算段もない計画を立てた上に実行しようと宣う大馬鹿者じゃ」
「……いいんスか、馬鹿を認めて」
「多少は他の意を汲み取らぬか!……まあいい、ラナ、先ほどお主は余が父上の遺志に囚われておるのではないのかと申したな?お主には言い訳にしか聴こえぬだろうが、そんなことはないよ。余は余の意思で父上の遺志を追っておる。これは決して余が娘であるからと言う訳ではない。昔、お主から聴いた父上の成し遂げようとしていた事に余は感銘を受けた。そして昨年、世界がこうなってしまった今こそそれを成し遂げるべきだ、とな」
ニッと微笑み、そのままティーカップを手に取る。
「ラナよ、余もお主に感謝しておるよ。物心ついた時に余の側におったのはお主だけじゃ。余は母上の顔も、父上の声も知らぬ。故に想像の中ですら語り合う事も出来ぬ」
「お嬢……」
「だから、まあ、家族と呼べるのはお主だけだな。家族を見捨てるなど出来るはずがないであろう、馬鹿者」
「カップに指突っ込んでますよ」
「うぁっっっつぅっっっ!!!」
リーゼロッテが反射的に手を振り上げた瞬間にまた一つ、還らぬティーカップが生まれた。
「さっき普通に飲んでたじゃないスか、何で今更」
「さ、さっ、一口くらいなら、ちょびっとだけなら飲めるわ!!」
「うわーお、何気に初めて知った。お嬢猫舌なんだ」
「そんなことよりはよう!冷たい物!」
「お嬢、氷の魔法使えるでしょ」
「……あー、あー」
「馬鹿だなあ、ウチの箱入り娘は……そだ、布巾取ってくるか」
だけど、本当に世界を変えるとまではいかなくとも、きっかけを作り出すのは彼女の様な者なのかもしれない。
その彼女は本気だ。本気で今の世界を変えようと考えている。
その時が来たら、私は精一杯手を貸そう。必要ないと言われても無理矢理手伝うし、介入してやる。たった一人の家族だから。
そう密かに決意し、箱入り娘に見えない様に目を拭ってから部屋を出る。
- Re: 【第1話完】変革のアコンプリス【オリキャラ募集中】 ( No.13 )
- 日時: 2014/04/04 23:55
- 名前: 壱路 ◆NNJiXONKZo (ID: HC9Ij0EE)
>再英78さま
漢字+英語の組み合わせはありきたりですけどね(^ω^三^ω^)
丁寧とはまた恐れ多い…慢心することなく精進しますよ!
ちなみに自分はラナ派です。動かしてて楽しいキャラしてくれてます。
獣人に関してはですね…自分の中でも曖昧です、すいません(白目)
鼠や猫の血がどう足掻いても人間と混ざることなんてないよなあ……?というわけで設定まで書き換える始末です。
発生源が不明なままですが……血を引いているということで概ね間違いないです。
そしてエレオノーレ嬢。まさかの高身長!
もっふもふも、女性らしからぬ雄々しさ故でしょうかね。エサ代…食事代も馬鹿にならなさそうですなあ。
採用とさせていただきますね。投稿ありがとうございました!
そして第1話のあとがき。
人間視点だったプロローグから一転、魔族であるリーゼロッテとラナのティータイムになりました。
フリーダムなラナですが、実は結構な苦労人のようで。
そんなラナを家族と呼ぶリーゼロッテ、二人の因縁?をいつか暇が出来たら書いてみたいものです。
第2話からは登場人物紹介のトップにいるテオドールを出すつもりです、が、あんまりにも個性が強過ぎた魔族コンビに霞んでしまいそうで不安になってます。
頑張れ王子。頑張れ自分。
関係ないですが作品タイトルである「変革のアコンプリス」。かなり気に入ってます。脳内でつい何度も繰り返すくらい。
つい口に出してしまいたくなる響きだと思うのは自分だけでしょうか。
- 変革のアコンプリス ( No.14 )
- 日時: 2014/04/05 15:52
- 名前: 壱路 ◆NNJiXONKZo (ID: HC9Ij0EE)
- 参照: 第2話「王子は憂う」−①
イデアール王国。軍事技術や戦闘技能など、戦いに関する技術だけだあれば他の大国に引けは取らないが、他の面では見劣り、領土も信用もそこそこの国である。
しかし、それは二十年前までの話。イデアール出身の勇者が魔王を討伐した年から、イデアールは急速に成長した。
「我が国の勇者が魔王を討伐した」と言う他の国にはない唯一のアイデンティティを武器、もしくは宣伝材料とし、他国や資産を多く保有する貴族らに出資を募ったり、多くの武器や戦闘技術の指南などを売りに出した。
大戦が終結した直後だ、世界各国が武力を放棄して、人間らが一丸となってより良い世界を作り上げようと動き始めてもおかしくはなかったのだが、イデアールがそうなる前に動き出した。
世界中から武力を放棄されれば、それしか取り柄のないイデアールは世界から取り残されるし、商売相手もいなくなる。「魔王を討伐した勇者を出した国」という唯一のアイデンティティも宝の持ち腐れとなる。
そうならないために、「もし魔族が再興して復讐してきたら」「もし獣人までもが人間に歯向かってきたら」「もし何かがあった時、自分の身くらいは自分で守れるように」などといった、「もし」の思想を世界中に植え付けた。勇者特権があったからなのか、多くの国々や貴族らはそれを難なく受け入れ、イデアールから武器を、技術を買った。
そうして得た資金を元に農業のような第一次産業から大衆娯楽といった第三次産業まで、他国の水準に達していなかった産業を育てあげた結果、領土はかつての数倍となり、過去に類を見ないほどの大国へと変貌を遂げた。
その驚きの成長振りを成り上がりだ、血と鉄で育った国だ、と揶揄する者も国内外問わずいるが、それを受けて怒り出す者はいない。命を脅かされることのない生活、平和で美味しいものが食べられる日々の前には何を批判されようと霞むからだ。
その成り上がりの象徴とも言えるのが、国名を冠するイデアール宮殿だ。国土の一割はこの宮殿の敷地だなどと噂される程の規模である。当然、事実ではない。
その宮殿内部にある広大な庭、の一角にて人知れず剣戟を交わす二人の男がいた。
一人は黒髪の短髪で、顎髭を多少生やした、歴戦の戦士と思わせる風体をしている。切り結びながらも余裕のある表情がよりそう思わせる。
対峙するワインレッドの髪をはためかす青年には、余裕が入り込む余地は無さそうだ。そしてまた、重い一撃を剣で受け止め、苦い顔を見せる。
「防戦一方ですね、このまま押し切ってやりましょうか」
グイ、と男が剣にかける力を強め、それを止める青年は更に押される。
「こ、の…っ!」
だが、青年も受けるばかりではなかった。手首を捻り、剣を男の剣の樋にぶつけ、かかる力の向きをズラさせる。
青年の剣というストッパーを無くした男の剣は、勢い余りそのまま青年の左側へと振り降ろされ、無防備を晒す。
「おお?」
「うおおおおおっ!!」
思わず感心する男に、青年は正面から右脚で蹴りを繰り出す。男はそれを左腕で受け止め、よろけながら数歩後ずさりする。
「っとと、やるじゃねえ、です、か!」
男が猶予など与えないとばかりに、即座に剣を構えては地を蹴って突進、勢いをつけて横薙ぎに斬りかかる。
その一撃を剣で半孤描くようにして上方へといなし、それによって開いた男の脇に刃をビタリと突き立てる。
「…………」
「…………」
互いに押し黙る。静寂を打ち破ったのは青年のすぅ、と息を吸う音だった。
「こ、殺す気かお前はー!!」
「ハハハ、十年間剣術を習ってきてようやく初勝利ですね、王子」
「笑って誤魔化してんじゃねえぞ!!」
「やー、昔はがむしゃらに剣を振るうだけだったことを考えたら、つい、ね」
「そのつい、のせいで死ぬかと思ったわ!!」
剣を放り投げ、息を切らしながら男に詰め寄る青年。男はと言うと、豪快に笑い飛ばしていて反省の色を見せるそぶりもない。
危うく死にかけた青年、王子の名はテオドール・ロト・ヴィレ・イデアール。この国の第三王子である。
- 変革のアコンプリス ( No.15 )
- 日時: 2014/04/06 02:05
- 名前: 壱路 ◆NNJiXONKZo (ID: HC9Ij0EE)
- 参照: 第2話「王子は憂う」−②
「いやあ、それにしても腕を上げましたね王子。一つ前はともかく、最後の一撃すら難なくいなされるとはね」
芝の上にどっかりと胡座をかき、つい先程の攻防をしみじみと振り返るように頷く。王子・テオドールはそれを受けてしたり顔でふんぞり返るーーーことはせず、寧ろ不服そうに口をへの字に曲げている。
「馬鹿言え、本気じゃなかったくせによ」
「本気でしたけどね」
「最後の一撃の力だけはそうだろうけどな。お前が本気になってたら、俺が敵うわけないだろ」
テオドールも同じように、男の正面に胡座をかいて座り、話を続ける。
「アクスト・ライザー。世間知らずの俺でも知ってるぜ、ウチの国から出た『最後の勇者』や他のお供と一緒に魔王退治に行った、一行の一人。それがアンタだ」
「そんな昔の話を持ち出されても……というか、その話したことないですよね、俺」
「つい先月自分で調べたんだよ。いつも弄ばれてるようで追い付けない、段違いの強さに腹が立ってな」
アクストは弄んでるつもりなんてないんですがね、と困ったように笑う。
「そりゃ、強えわけだよ。当時の大戦の最前線で剣を……アンタの体格的には斧か?まあいいや、腕を奮っていたんだもんな。そんな歴戦の戦士に俺が敵うわけねえって」
「でも今勝ったじゃあないですか」
「手、抜いたろ」
「捻くれてるなあ」
「アンタの本気は知らねえけど、本気じゃないと分かってて勝っても、釈然としねえ。納得もいかねえよ」
「王子の捻くれっぷりは筋金入りですね」
「ほっとけ」
プイ、とテオドールはそっぽを向く。手を抜かれて勝っても嬉しくないという、男としての本能か、プライドがそうさせるのだろう。
十年以上の付き合いのアクストはその子供染みたとも言える態度には慣れているのだろう、特に神経を逆撫でするような小言を言うでもなく、笑って見留めている。その態度を崩すことなく、けどね王子、と切り出す。
「戦場じゃあ勝った者勝ちなんですよ。相手の身分も、境遇も、体調も、負傷もお構い無しにね。俺が相手をしてきたのは魔族だけですが、この魔族には妻子がいるから倒すのは止めよう、なんて思ってる間に殺されるでしょうね」
「明るい顔してブラックな話をするなよ……そのくせ、アンタが言うと妙に説得力があるし」
「ハッハッハ、覚える必要のない現実ですよ。ま、何が言いたいかと言うと、勝ちは勝ちです。例え俺が本気じゃなかったとしても、それは勝ちですよ。貴方は強くなってます、胸を張ってください、テオドラ王子」
ポンと肩を叩き、お世辞でもなく権力者に取り入ろうとする卑しさもない、賛辞の言葉を贈る。
些細なことは気にせず、素直にその言葉を受け止めれば良いのだが、王子はグリンと首を回し至極下らない怒りを歴戦の戦士に向ける。
「テオドラって呼ぶの止めろってんだろ!」
「あ」
「あ、ってなあ!」
普段からそう呼ばぬよう気を付けていた筈のストッパーが外れてしまったのだろうか。まあまあ、とテオドールを宥めるが、あまり反省はしていなさそうだ。
「いいじゃないですか別に。テオドールって名前はともかく、フルネームまで含めるとなんか長くなるから気に食わない、って王子、時々愚痴ってるじゃないですか」
「そうだけどな!なんかな!テオドラってのは俺の中では、なんかこう違うんだよ……それにそう呼ばれてたら本名がテオドラって間違えられそうだし、下手したらテオドーラって間違えられそうだし?」
「それは無いと思いますがね」
怒ったり、しぼんだり、悩んだりコロコロと感情を変えるテオドールを面倒そうにするのを堪えながら眺めるアクストは心得ていた。こうなったら勝手に収まるのを待つのがベストだと。
そして意外にも、その時が来るのは早かった。テオドールは不意に動きを止め、何かを見つめだした。アクストもそれに気付き、視線を追ってみると、自身の側に置いてある剣に辿り着いた。
そして王子は憂う。己の無知を。変わって行きながらも変わらぬ世界を。