複雑・ファジー小説

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ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。
日時: 2016/06/09 23:38
名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)

はじめまして!!

ストーカーを題材に書きたいと思っています!
グロ描写・過激描写にご注意ください笑

コメントくれたら嬉しいです!

よろしくお願いします!



プロローグ >>1
#01【 或る夏のこと 】 3 → 26
#02【 狂気 】 27 →
#03【 服従 】



登場人物↓

*佐倉 和 さくら のどか
建築会社で働くごく普通の女性。
出会い系サイトに登録したことをキッカケに生活が変わっていって・・・。

*久住 真 くずみ まこと
カメラマンのアシスタント。
出会い系サイトで和と出会い・・・。

*深町翔太 ふかまち しょうた
和の同僚。
だんだん変わっていく和を心配するが・・・。

*大和飛鳥 やまと あすか
出版社の雑誌記者。
ある事件を追って和たちに近づく。

Re: ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。 ( No.22 )
日時: 2016/05/08 16:20
名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)

「出張?」


真君と付き合って四か月が経ったある日のこと。

あたしは喫茶店で言った。

真君は少し驚いたように言った。


「出張とかあるんだねー、どこ行くの?」


いわれ、あたしは正直に答える。


「千葉。そう遠くはないから二日後には帰る。って、別に関係ないよね」


「関係なくないよ。千葉にいる間に浮気されたんじゃ、たまったもんじゃないもん」


真君は冗談を言って笑った。


「そんなことしないから」


あたしもそう言って笑顔を向けた。


「どうだかー」


真君はそう言ってストローでアイスコーヒーを一口飲んだ。


「真君こそね」


あたしがそういって笑うと、「するわけねーよ」と微笑んだ。


「で、誰と行くの?」


真君がそういい、あたしは平然と「同僚と一人部下」と呟いた。


「同僚って、前話してた深町くんのこと?」


真君はたまにこうして、詳しくしつこく聞いてくることがある。

心配なのはわかるけど、もう少し信じて欲しいとも思う。


「そうそう、深町と冴木」


翔太のことを真君の前では苗字で呼ぶ。

まったく仲良くないかのように。

しかし、真君がこんな嫉妬深いと知る前に翔太のことを話してしまったことがあり、それ以来同僚といえば翔太しかいないと思い込んでいる面があるみたい。


「冴木って?男?女?」


いわれ、あたしは携帯をいじりながら「男だけど全然大丈夫だから」と言った。


「本当に?」


真君はあたしからずっと目を離さない。

あたしはじっと携帯のディスプレイだけを見つめて平然を装って答える。


「冴木くんは大丈夫だから」


「そっか、ならいいんだ。別に疑ってるわけじゃないけど、つい心配でさ・・。いつもこんな質問ばっかでごめんな」


そういわれると——あたしはすぐに携帯を置き、真君を見て言う。


「あ、ううん!ちがうの、全然良いよ。それだけ気にしてくれるんだもんね」


フォローする。これの繰り返しだ。

最近なんだか、調子狂う。

どこかで真君に合わせはじめる自分がいた。

合わせなきゃやっていけないような気がして、いつの間にかあたしはすべて真君のペース。

でも本当にやましいことなんて何もしていない。

あたしはいつだって真実しか言っていない。

ばれてもまずいことなんてない。

出張のことだって、本当のこと。

翔太と後輩の冴木君がいくのも事実だし、冴木君は学生時代から付き合っている可愛い彼女がいて、彼女のことをいつも自慢気に話している。

むかつくけどあたしになんて全然興味ないし。


「だから安心して。連絡はこまめにするようにするから」


あたしはそういって真君を見て微笑んだ。

真君は「うん、ありがとう」と言ってニコっと笑った。



















出張の日。

あたしたちは朝駅で待ち合わせると三人で千葉へ向かった。


「またユキちゃんか?」


新幹線の中で携帯をいじる冴木君に翔太が言った。

冴木君は「えっ!ち、ちがいますよ」と携帯を隠した。

翔太はニヤニヤしながら「嘘つけー、な?」とあたしを見てきた。

あたしもニヤニヤしながら「冴木君?」と言って冴木君を見た。

冴木君は一度沈黙したあと恥ずかしそうに「すいません」と言って笑った。

ユキちゃんっていうのは、冴木くんの噂の彼女。

高校二年生のときからずっと付き合ってるって言ってたから、大学の四年とこの会社の二年を含めると七年も付き合ってるってことか。

すごいな。


「長続きの秘訣は?」


あたしがそういうと、冴木君は照れくさそうに言った。


「そうですねぇ、我慢をしないこと、とかですかね」


言われて、あたしは少しハッとなった。


「我慢、か——」


あたしはそういって乗り出していた身を引き、背もたれにもたれた。

あたし、我慢してるな。


「やかましいわ」


翔太はそう言って笑い飛ばした。


「嫌味か?ん?」


翔太はそう言いながら冴木くんを軽く叩く。


「ちがいますよ!」と言いながら冴木君は笑っている。


我慢っていうか、気を遣っている。

これは確実だと思う。


「はいはい、そこまでー。真面目な話するよー」


あたしはそういって手を二回叩いた。

二人はこちらを向く。

あたしは手帳を開いてから言った。


「今日ホテルについたらまず昼食を摂って、14時から先方の会社でプレゼン。今日は18時には終わる予定だから、そのへんブラブラしよっか」


あたしがそういうと、冴木は「はい!」と言って自分の手帳を出して書き込みはじめた。


「今日は楽だな」


翔太はそういって窓の外を見た。


「そうね。明日がハードスケジュールなんだけどね」


「せっかく千葉に来たのに仕事ってのがな〜」


翔太はそう言いながら頭を搔いた。


「確かに。でも旅行だったら沖縄とか関西がいいなー」


あたしが言った。


「沖縄もいいね〜。去年の慰安旅行沖縄だったっけ。今年はどこだろうな」


「また沖縄でもいいけど、海外も行ってみたい」


「海外かー。韓国とか?」


「ヨーロッパがいい」


「お前昔からそれ言ってたよな。フランスとかイギリスとかさ」


翔太はそういって微笑んだ。

あたしは翔太と出会って、付き合う前からずっとヨーロッパに行きたいとか話をしていた気がする。

翔太ちゃんと覚えてたんだ。

なんだか少しだけ嬉しくなった。

Re: ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。 ( No.23 )
日時: 2016/05/08 20:31
名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)

「だってオシャレな感じするじゃない?」


あたしはそういって翔太を見た。


「まあ確かにな。って言っても、治安が良いところならどこでもいいや。俺は」


「夢ないなー」


そんな会話をしているとあっという間に千葉についた。

駅を出たあたしたちはタクシーで予約していたビジネスホテルに入った。

フロントへ行き、「予約していた青井建築です」と翔太がいい、「少々お待ちください」とフロントの女性が言った。


「三名様でご予約でよろしかったでしょうか。お部屋は二部屋です」


女性にそういわれ、「はい、合ってます」と翔太。


「では、こちらが鍵になります」


女性から鍵を受け取り、三人でトランクをガラガラと押しながらエレベーターへ。


「じゃあ俺らは302。お前は303でいいな」


翔太はそういって303と書かれた鍵を渡してきた。

302はツインルーム。

303はシングルルーム。

あたしは一人だから当たり前か。


「はーい」


あたしはそういって303号室の鍵を受け取る。


「一人で寝れるか?」


翔太はにやにやしながらそういってあたしを見た。


「寝れますー」


口を尖らせながら答える。


「寂しかったらいつでも行ってやるからな」


翔太はわざと気取ったように顔をキメて、両手を広げた。


「はいはい、かっこいいかっこいい」


あたしはそういって微笑んだ。

エレベーターを降り、少し真っ直ぐ行ったところに302号室と303号室があった。


「じゃあ、荷物を置いて着替えたらフロントに集合ね」


あたしはそう行って部屋へ。

「うぃー」と翔太の声、「はい」と冴木君の声が聞こえた。

部屋に入ると、思っていたより広い部屋だった。

あたしは荷物を一旦ベッドにあげ、トランクからタオルや化粧ポーチ、

着替えなどをテーブルの上に出し、ベッドに座った。

ふかふかな布団は気持ちよかった。

その時、携帯の通知音が鳴った。

あたしはカバンから携帯を出し、画面を見た。

ラインが25件届いていた。

あたしは画面をみてついため息。

全部真君からだった。

新幹線の中も、タクシーの中も携帯をいじっていなかったので、大体3時間返信をしていない。

内容はいつものようなしつこいライン。

『おい』とか『返信よこせ』とかそんなん。

やっぱり面倒臭いなって改めて思う。

仕方ない、返信してやるか。

『ごめん今ホテルについた!』と返信し、携帯を投げた。

するとすぐに返信がきた。

『ちゃんと一人部屋だろうな?』

『そうだよ!』

『証拠は?』

は?証拠?

なに、あたしってそんなに信用ないのかな?

『どうしたらいいの?』

あたしはそう返し、『自分で考えろ』ときた。

あー、うざい。

なんでこんなことでいちいち言われなきゃいけないの。

あたしなんかしたかな。

『わかんないや、ごめん。今から仕事だから行くね』

とか思ってるくせにラインは下手に出る。

これで全部丸く収まる。

仕事とか言ってるけど仕事は14時からだからまだ時間はあるんだけどね。

ちなみに今は12時過ぎ。

これから翔太と冴木くんとランチしてそれからプレゼン。

だいぶ余裕があるけどラインをブチる口実は仕事だけ。

いつだか友達と遊びに行ってくるって言って返信遅くなったら怒られた。

でも仕事って言えば、いつも頑張ってねって応援してくれる。

真君の扱いに慣れてきた。

案の定、返信は『そっか。頑張ってね!行ってらっしゃい』だった。

あたしはディスプレイを見て既読をつけると、自然と笑顔がこぼれた。

携帯をテーブルにおき、キャリーケースからスーツとブラウスを取り出し、来ていた私服を脱いでスーツに着替えた。

服を畳み、ベッドの上に置くとコンコン、とノックの音が聞こえた。

ブラウスのボタンをまだ閉めてなかったあたしは「は、はーい!」と言いながら焦ってボタンを閉め始める。


「入るぜ」


入ってきたのはスーツになった翔太だった。

あたしは急いで翔太に背を向けボタンを閉める。


「ん、ごめん。着替え中だったか」


翔太はそう言って部屋を出ていこうとした。


「も、もう大丈夫!」


あたしはそういって振り返り、髪の毛を手ぐしで整えた。


「そうか」


翔太はそう言うとあたしの近くのベッドに腰をかけた。


「どうかした?」


あたしがそういうと、翔太は「いや」と言ってあたしを見た。


「その、暇だったからさ」


「冴木君は?」


「冴木は自販機行った。お前グレープで良かったか?」


「頼んでくれたの?」


「ああ」


あたしはグレープジュースが好きで、翔太はこれも覚えていてくれたみたい。


「あとさ・・・ちょっと話したいことがあって」


翔太にそういわれ、あたしは「ん?」と言って翔太を見た。


「・・・あのさ———」


翔太がそういったとき、「先輩!買ってきましたよ!」と冴木が入ってきた。


翔太はため息をついて俯いた。


「ここにいたんすね。あ、あとグレープジュースなかったんでお汁粉でも———」


いわれ、「お前タイミング悪すぎ」と翔太は微笑み冴木君の頭を軽くたたいた。

冴木君は「え?」と素っ頓狂な顔をしている。あたしはそんな二人を微笑みながら見ている。


「で、話ってなに?」


あたしがきくと、翔太は「いや、なんでもない。忘れて。じゃあ行こうか」と言って冴木君と一緒に出て行った。

なんだったんだろ?話って。

そのあとあたしたちは予定通りしばらくぶらぶらして、プレゼンを終えた。

















ホテルにつくとあたしは疲れてベッドに身を投げた。

携帯からは通知音が。

相手はわかってる。真君だ。

だからこそ見る気になれない。

さいわい、あたしは今日何時に仕事が終わるかを教えていない。

だからしばらくは返信しなくても怒られないであろう。

『仕事何時まで?』

これがきていた内容。

あぶないあぶない。

これに返信したら終わり。







———って、普通彼氏にははやく返信したいって思うものだよね。

あたし何やってんだろ。

これが正解なのかな。

でも真君のことは好き。

これはわかる。

付き合ってれば嫌なところもたくさん見えるのなんて当たり前だし、仕方ないよね。

あたしは返信を催促してくる真君が嫌なだけで、他は好きなんだもん。



何も問題ない。

付き合ってもうすぐ三か月ってときに、こんな状況って普通だよ、うん。



でもあたし随分軽い女になったな。

Re: ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。 ( No.24 )
日時: 2016/05/11 20:16
名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)

初めて彼氏ができたときから、キスはまあオッケーにしてたけど、セックスは付き合って一年は経たないと嫌って思ってたのに。

っていうか今も思ってるし。

翔太の時だってそうだった。

翔太はあたしが嫌って言ったらちゃんと一年待ってくれた。

そのあとだって、あたしがそういうのあんまり好きじゃないってわかってくれてるから頻繁にしてくることなんてなかった。

だから実際、三年半くらい付き合っててセックスした回数なんか指で数えられるほど。

いつもキスやハグで、あたしは幸せだったし、別れるとき翔太もそれで幸せだったって言ってくれていた。

でも男だからやっぱり本当はしたかったのかなとか思うけど、それでも我慢してくれてあたしは嬉しかった。

それが付き合ってたった三か月未満のうちにやっちゃうなんて。

雰囲気っていったって、断るタイミングはあったよね。

やっぱりまだはやかったかな、なんて今更思う。

真君ってそういう欲強い人なのかな。




それとも普通なのかな。




あたしが子供なだけで、世間の女の子はこんなもんなのかな。



ああ、わかんない。


男がどういうこと思ってるかなんてさっぱりわかんない。

翔太がいい人すぎたせいで、感覚が狂ってるだけかな。

それともみんなこんな風に思うのかな。

そんなことを考えているとまたコンコン、とノックの音が聞こえた。


「はーい」と言ってドアをあけると、翔太が立っていた。


「おつかれ」


翔太はビールが入った袋を片手に微笑んだ。


「おつかれ」


あたしがそういうと、翔太は「冴木のやつ、ユキちゃんの電話するからすいませんとか言われちゃってさ。どう?」と言ってあたしを見た。

あたしは「いいよ」と微笑み、翔太を部屋に入れた。

あたしは窓際のソファに座り、翔太もあたしの隣に座り、ビールを袋から二本だしてテーブルに置いた。


「ほら」


翔太はそう言ってビール一本あたしに差し出した。

あたしは「ありがと」と言って受け取る。

二人でプルタブをあけて「おつかれ」と乾杯し、一口飲んだ。


「はあ、うまい」


翔太はそう言って微笑み、缶をテーブルに置いた。


「お前最近どうなの?・・・って聞いてもいいかな」


翔太は気まずそうにあたしをみて言った。

あたしは何のことだかすぐにわかった。

真君のことだ。


「・・・ああ、いいよ、別に」


あたしはそう言って缶を置く。


「一応、付き合ったんだよね。あのあと。今も付き合ってる」


「えっ。そうだったの?ごめんなんか、部屋にまで来ちゃって」


「全然いいよ、そんなこと」


あたしは焦る翔太に微笑みかけた。


「ならいいけど」と翔太は苦笑。


「どこまでいったの?」


翔太にいわれ、あたしはそれも気まずそうに言った。


「初めて会ったその日に、キスされちゃいまして・・・」


「その日?やるな、その男。で、付き合ってどれくらいなの」


「三か月」


「へえ。そうなんだ」


「うん・・・それで、少し相談なんだけど・・・・・」


あたしは語尾を濁して言った。翔太は「ん?」とあたしを見る。


「実はこないださ・・・あたしんちに突然きて・・・それでそのあとさ・・・・」


だめだ。さすがに元カレに言いづらい。


すると翔太は「まさかお前」とひきつった表情で言った。


「もうヤッたのか」


そういわれ、あたしは気まずそうに「はい・・・」と呟いた。

翔太は「まじかよ」となんだか嫌そうな顔をして言った。







そりゃそうだよね。









翔太には一年も待たせたくせにだもんね。


「俺とは相当やりたくなかったみたいだな」


翔太は冗談風に笑いながら言った。


「いや!全然そんなんじゃないの!ただその、きっと久しぶりの恋愛で・・・おかしくなってて」


すると翔太は微笑んで言った。


「なんか悔しいけど、別にいいんじゃねえの」


「え、おかしくないかな」


「なにが。普通なんじゃね?そのくらい」


「ほんと?」


「うん。俺は別に無理やりとか嫌だし、そこまでやりたいと思わないから別に良いけど、普通の男はすぐにでもやりたいもんなんじゃねえの?」


「わかんないけど、そうなのかな・・・。翔太はなんで思わないの?」


「やりたいって思わないっていったらウソになるけど、でもそんなことより好きな人が隣にいるだけで幸せだろ。確かにキスはしたいけどさ」


翔太はそう言って微笑んだ。


「どうしてキスはしたいって思うの?」


「なんか、その人に触れたいって言うか。キスは愛情表現みたいなもんだろ?逆に和はキスしたいって思わないの?」


「キスは、確かにしたいかも」


「だろ。男にとってセックスはきっと女からみるキスと同じなんだよ。俺が特殊なだけ」


「そうなんだ。翔太が特殊で助かったよ」


「感謝しろよな」


「うん!」


あたしはそう言って翔太を見た。

翔太は驚いたような表情を浮かべ、すぐに真顔になった。


「翔太?」


あたしがいうと、翔太はゆっくりと顔を近づけ、あたしの頭を左手でおさえた。











あたしは唇が近くなっていることにびっくりして目を見開き、翔太の目を見た。

翔太はあたしの唇に触れる寸前、動きを止めた。

あたしが翔太を見ると、翔太はニコッと微笑んで言った。


「お前ちょろすぎ。こんなんじゃ俺、普通にキスできたよ?」


翔太はそういうと顔を離し、最初と同じくらいの距離に戻るとビールを飲んだ。


「ちょ、なによ」


あたしは戸惑いを隠そうと笑いながら言った。


翔太はビールを置いて言った。


「特殊だけど、俺だって男だよ?今ここでお前襲うことだってできるんだぜ。お前雰囲気に飲まれやすいんだから、もうちょっと注意しろよな。だからヤられるんだよ」


そっか、あたしって注意力が足りないのか。


「なんだ。そういう意味か。びっくりしちゃった」


あたしは安心してヘラヘラした。

翔太は微笑んで「なに、あのままキスしてもよかったの?」と言ってきた。


「ま、まさか」


彼氏いるのにそれはまずい。


「なんだよ。じゃあしちゃおうかと思ったのに」


またいつも冗談。


ちょっとドキドキしてしまった。反省。


「なにいってんの」


あたしはそう言って微笑み、翔太の肩を軽くたたいた。

翔太も笑ってビールを飲んだ。


「後悔してんのか、そいつと付き合ったこと」


翔太が言った。









後悔?










あたし、真君と付き合ったこと、後悔してる?

Re: ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。 ( No.25 )
日時: 2016/06/09 23:36
名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)

ちがう。














これは後悔じゃないよ。

だってあたしは、真君が好きなんだもん。

面倒臭いって思ったからって、嫌いになんてなれないよ。











後悔してない。










ただ、行き詰まってるだけ。


「ううん、してない」


あたしはそう言って一口、ビールを飲んだ。

翔太は一瞬あたしを見ると、表情を変えることなく「そっか」とだけ呟いた。


「じゃあいいじゃん。お前は間違ってないよ」


翔太はそう言って冗談っぽくあたしの髪の毛をぐちゃぐちゃにした。


「ちょっとっ」


あたしは髪の毛を直しながら微笑んだ。


「何かあったらまた聞くから」


翔太はそう言ってニコニコとした笑顔をあたしに向けた。

翔太と別れて、友達に戻れてよかった。

翔太はあたしにとって必要な存在だ。

恋人とか、友達とか、そんなものじゃ説明がつかないくらい大事な何か。


「うん」


あたしも笑顔で翔太を見た。

そしてあたしは思い出したように言う。


「そうだ、翔太」


「ん?」


「里琴ちゃんっているでしょ?」


里琴ちゃんに頼まれていたことを忘れていた。


翔太は「ああ、中原さん?」とうなずく。


「そうそう。翔太、彼女のことどう思う?」


あたしがそういうと、翔太は少し戸惑ったように苦笑していう。


「ど、どうってなんだよ。元気でいい子なんじゃない?」


「そういうことじゃなくて。その、恋愛として」


「恋愛って・・・。別に、なんとも思ってないよ」


「好きになれそうにもない?」


あたしはがっついて聞く。

翔太は困りながら答える。


「いや、わかんねえよ。そんな風に見たことないし」


「じゃあそういう風に見てみて」


「は?どういうことだよ」


翔太はそう言って微笑んだ。


「ほら、そろそろ翔太も、彼女ほしいでしょ?」


あたしは必死に理由を考えた。


「別にいらないよ。前も言ったろ、俺が好きにならなきゃ意味ないだろ」


「そうだけど・・・。好きになろうとしなきゃ何も始まらないでしょ?」


「でも、そんなのいつの間にか始まってるもんだろ」


「だったら今日から始めようよ」


「なんだよそれ。いいよ俺の話は」


翔太はそう言いビールを一口飲む。


「里琴ちゃん可愛いし、いい子だし。翔太とお似合いだと思うんだけどなあ」


「いいってば」


翔太は笑い飛ばす。


「だって—————」


あたしがまた話しだそうとすると、翔太は「はいはい」と言ってあたしの言葉を遮った。


「わかったわかった。一旦そういう風に見てみればいいんだろ」


「お、さすが物分かりがいい」


あたしがそう言って微笑むと、翔太も微笑んでもう一口ビールを口に運んだ。


「じゃあ今メールしなよ」


あたしはそう言ってテーブルの上に置いてあった翔太の携帯を手にとった。


翔太は「ちょっと待てよ」と言って携帯を取り上げる。


「なによ」


「急すぎねえか」


翔太は焦った表情で言う。


「こういうのは思ったときに行動するの」


「いやいやいや。急すぎてついていけない。それになんで急に中原さん?俺全然仲良くないよ」


「里琴ちゃん翔太に気があるって聞いたから」


あたしがストレートそういうと、翔太は「え?」と驚いた顔をした。


それから翔太は「なんだよそれ」って言って微笑む。


「と、とにかく!あたしがアシストしてあげるから!任せて」


あたしはそう言って翔太のラインを勝手に開き、里琴ちゃんを選択した。


『なにしてる?』って打ち込んで、速攻送信ボタンを押した。


「おいっ」


翔太はそう言いながら携帯を取り上げ、画面を見た。


「うそだろ・・・」


翔太は落胆した表情を浮かべた。


「まあまあ、いいじゃない。ここからどうするかは翔太が決めればいいし」


和がそういうと、翔太は「お前な」と呆れた顔をした。


「俺今別に誰とも付き合うつもりないし、中原さんが可哀想だろ」


「あんたからラインきただけできっと喜ぶし、食事くらい行きなさいよ。付き合うかどうかは別として」


「なんでそうなる・・・」







*****************************************************

Re: ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。 ( No.26 )
日時: 2016/06/09 23:36
名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)

家に帰ったあたしは真っ先にお風呂に入り、十件たまっていた真君へ返信した。

本当に面倒くさい。

でも、好き。

こんな矛盾があるのが恋愛。

翔太のときは、面倒くさいことなんてなかった。

嫉妬しても、翔太は素直に言ってくれたり、あたしのわがままに付き合ってくれてた。

メールだって、お互い好きなときに返していた。

たまに電話して、たまに夜会ったりなんかして。

何回も何十回もハグをして手を繋いでキスをして。

高校生らしい恋をしていた。

誰にでも優しくて、いつも明るい、ムードメーカー翔太はすごくキラキラしていて、本当に素敵だった。

みんなが翔太と付き合えているあたしをうらやんでいた。

もちろんそれも嬉しかった。








真君は、一体どんな高校生だったんだろう。








みんなからどう思われていたんだろう。

って、別にそんなことどうでもいっか。

大事なのは今なんだから。

真君と付き合ってから、こんな風に一人で考えることが多くなった。

今までは何もこんな深く考えてなかったのに。

やっぱあたし翔太にあまやかされてただけだったのかな。

ちょっと申し訳ない。

ラインの通知が鳴った。

真君だろう。

いつものように携帯を手に取ると、あたしは驚きのあまり携帯を落としてしまった。










『深町翔太とヤったのか』








画面にはそう表示されていて、画像が送られてきていた。

それは、翔太とあたしがソファで話している写真。

翔太があたしの髪の毛をぐちゃぐちゃにしているところ。

あたしは呼吸が乱れた。




















どういうこと?















どうして真君がこんな写真を?

っていうか一体どこから?

窓の外から映されたアングルではない。

正面にあたしたちが映っているということは、部屋の中・・・・?

疑問しか出てこなかった。





どういうこと?









あたしの心臓は今にも飛び出てきそうなくらい鼓動がはやくなっていた。





やましいんじゃない。

何もしてないんだもん。

あたしの心臓が驚いているのは、なぜ彼がこの写真を撮れたのかということ。

ただそれだけ。

あの場にいたとしか考えられない。

あたしは震える手で携帯を拾い上げ、ゆっくりと文字を打った。


『翔太とはただ飲んでただけ。っていうか何この写真?どういうこと?』


恐る恐る返信をした。

あたしが落ち着こうと携帯を置いた瞬間に通知はなった。

あたしはまたビクッとしながらも、画面を見る。




『なんだっていいだろ。飲んで、何もなかったわけねえだろ。元彼だろこいつ』


どうしてだろう。

あたしは翔太のこと、同僚としか話していない。
















ねえどうして————?









『どうして知ってるの?この写真どうしたの?意味わかんないよ』


あたしは急いで返信した。


『今は俺の質問に答えろ』


そう返ってきた。

どうしてあたしが責められてるの?

今何が起こってるの?











どういうこ—————。















目を見開いたその瞬間、あたしは見つけてしまったんだ。























棚の上のクマのぬいぐるみの目がまっすぐにあたしを見ていることに。













そんなこと当たり前って思うかもしれないけど、何か変な気配したんだ。

あたしの知っているクマのぬいぐるみは、こんな目をしていなかった。

クマはあたしを見ている。

あたしは恐る恐るクマに近づき、ベッドに足をかけて手を伸ばすと、ぬいぐるみを手にした。

ぬいぐるみをよく見てみると、目はシルバーで、あたしの目をとらえている。

あたしは呼吸を荒げ、震える手でクマの背中をチャックを開けた。







綿の底には、小さな小型カメラ。










見つけた瞬間、あたしは「きゃあ!」と声を出してぬいぐるみを投げてしまった。

投げられたクマはベッドに転がり、それでも尚あたしを見ている。

あたしは整わない呼吸をしながら、あることを思いついた。







一つあるとしたら、他の場所は——————?


そう思った瞬間、あたしはキッチンへ。

キッチンの家電や食器がごちゃごちゃになっても、あたしはカメラを探した。

そして見つけた。

冷蔵庫の上のホワイトボードについている黒い磁石。

よく見たら裏に小さなカメラがついていた。

あたしは目を見開き、次はトイレへ。

トイレも棚の上をたくさん探し、ナプキンを入れていたかごの取っ手にカメラ。

風呂場へ行き、まず脱衣所を探した。脱衣所は電球の裏に、風呂場は天井の電気と窓のカギに。









あたしはそれらを見た瞬間怖くなり、泣きながらその場に崩れた。



膝をつき、カメラを床にたたきつけた。









あたしは「いや・・・・・いや・・・・・」と呟き頭を抱える。













やだ、こんなの嫌だ。

ということは、あたしの生活はすべて見られていたってこと?

仕事にいくときも、寝るときも、料理をしているときも、食べているときも、着替えているときも、トイレしているときだって、お風呂に入ってるときだって、きっと見つけてないだけでカメラは他にもある。













死角ができないようになっている。全部、全部——————。












「いやあああああああああ!!!!!!!」




あたしはそう叫び、髪の毛が乱れるくらい頭を掻いた。




あたしは泣きわめいていたその時だった。





















悪魔は、姿を現した。


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