複雑・ファジー小説
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- ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。
- 日時: 2016/06/09 23:38
- 名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)
はじめまして!!
ストーカーを題材に書きたいと思っています!
グロ描写・過激描写にご注意ください笑
コメントくれたら嬉しいです!
よろしくお願いします!
プロローグ >>1
#01【 或る夏のこと 】 3 → 26
#02【 狂気 】 27 →
#03【 服従 】
登場人物↓
*佐倉 和 さくら のどか
建築会社で働くごく普通の女性。
出会い系サイトに登録したことをキッカケに生活が変わっていって・・・。
*久住 真 くずみ まこと
カメラマンのアシスタント。
出会い系サイトで和と出会い・・・。
*深町翔太 ふかまち しょうた
和の同僚。
だんだん変わっていく和を心配するが・・・。
*大和飛鳥 やまと あすか
出版社の雑誌記者。
ある事件を追って和たちに近づく。
- Re: ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。 ( No.2 )
- 日時: 2014/10/13 13:23
- 名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)
*1999年5月23日(月)*
君 の こ と が 好 き だ よ 。
言葉じゃ言い表せないくらいに。
ただ愛してるだけなんだ。
*5月25日* 今日も話しかけてくれたね。やっぱりが君が好きだ。
26日* 今日は給食を運ぶのを手伝ってくれたね。ありがとう。
27日* 今日は一度も話してくれなかった。なんで?
28日* どうして僕を避けるの?僕のこと、好きだよね。
29日* 今日は僕の陰口。どうしてそんなことするの?
30日* 君が男と歩いていた。
31日* 君が男と手を繋いでいたね。
*6月01日*
02日* もう僕は必要ないのかな?
03日*
04日*
05日* どうしちゃったんだよ。
06日*
07日*
08日*
09日* もう君なんて嫌いだ。
10日* 誰も僕を必要としていないんだ、きっと。
11日* 君はもう僕の好きな君じゃない。さようなら。
12日* 君に生きている価値なんてない
13日*
* * * * * * * * * * * * * *
毎日同じ日々を送っていた。
朝起きて身支度をして、仕事に出掛けて、帰って寝て。
何か変わることなんて何もない。
通る風景も、会う人だってそんなに変わりはしない。
当たり前にある日常が不満だったわけでもないし、ストレスだったわけでもない。
ただ、何気ない日々に変化が、刺激がほしかっただけ。
ただ、それだけなのに————。
- Re: ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。 ( No.3 )
- 日時: 2014/10/12 20:13
- 名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)
#01 【 或 る 夏 の こ と 】
「出会い系サイト?」
同僚にその言葉を言われ、あたしはついフフッと微笑んで聞き返した。
出会い系サイトなんてやらない。
そこまで落ちた女じゃない。
自分の好きな人くらい自分で見つける。
わざわざ出会いの場を提供してもらうほど年だっていってないもん。
あたしは心の中で一人そう思う。
けど同僚の口から出た言葉は予想していなかったことだった。
「実は、ヤマグチが出会い系やってるらしいんだよ。お前知らない女に成りすまして騙してやってくれよ」
同僚である深町翔太って男が、あたしにそう言った。
ヤマグチっていうのは、翔太の上司でもありあたしの上司でもある同じ課の課長のこと。
山口正英って言う名前。
「えーやだよ、あたし。出会い系って」
あたしはそう言って笑い飛ばす。
「頼む!お前そこそこ可愛いし、絶対にあいつのこと落とせると思うんだけどなーって、先輩たちと昨日話してたんだよ」
そういわれると、嫌な気はしないよね。
山口はあたしも大嫌いな上司だし、先輩たちも後輩たちもみんな嫌ってる。
ちょっとくらいいいかも。
「んー、ちょっと面白そうかも」
あたしはそう言って少し微笑んだ。
嫌いな上司が出会い系サイトだなんて面白すぎ。
いつもクールぶってる割には意外と女をほしがってるんだ。
太ってるただのおじさんで、性格があれだったらそりゃ女もできないよね。
「だろー?よし、登録しようぜ。先輩たちも喜ぶわ。写真だけなら撮り方によっては絶対ばれねえよな」
翔太はそう言って微笑んだ。
なんか面白そう。
あたしは携帯を開き、翔太に教えてもらいながら登録を済ませた。
写真は化粧を変えて、角度を変えたりして翔太に撮ってもらった。
本当に別人みたいになったあたしの写真をプロフィール画像に貼り付けると、翔太は山口のアカウントを探し出して、友達申請を押した。
ばれたら怖いなー・・・・。
「よしっ、これであいつの行動見ようぜ。メール来たら俺に報告な」
翔太は楽しそうに言った。
「はいはーい」
あたしはそう言って微笑み、その日は家に帰った。
* * * * * * * * * * * * * * *
家に帰り、お風呂に入ると冷蔵庫からビールの缶を一本を出し、あたしはリビングへ行き、ソファの前であぐらをかいた。
スウェット生地のショートパンツに黒のTシャツで髪の毛がぬれたまま肩にタオルをかけてビールを飲む。
完全にOFFモードな感じ。
これがまたたまらないんだけどね。
テレビのリモコンを手にとり、テレビをつけた。
音がなくて寂しかっただけだから別に何の番組でもよかった。
つけてすぐにリモコンをおき、携帯を見た。
画面の上に『DM』ってダイレクトメールのマークが出ていた。
あたしはすぐに誰だかピンときた。
山口に違いない。
あたしは微笑んでDMを開いた。
そこにはやっぱり『山口正英』の文字が。
あたしはばれるとまずいから、下の名前の『NODOKA』にした。
DMの内容は、『申請ありがとうございます。これから仲良くしたいと思っていますがどのようにお考えでしょうか?』だった。
うわー、つまんないメール。
さすがモテない男代表って感じ。
これに対してのあたしの返信はこう。
『こちらこそありがとうございます!私も仲良くしたいと思っています。できたら食事とかできたらいいなって思ってます♪』
これに対しての返信はすぐに来た。
いい年こいて携帯ばっか見ちゃって、気持ち悪い〜。
『本当ですか?ありがとうございます♪ところで、NODOKAさんのお名前はなんというのですか?』
『♪』とか、キモ。なんちゃって。
まあ、言い訳すれば本名でもいっか。写真は別人みたいだし。
『佐倉和って言います♪』
すると、『佐倉??』と返って来た。あたしだって疑ってる。
って、そりゃ疑うよね。
『そうですけど、何か?』と返して、『いえ、僕の知り合いと同じ名前だったもので』ときた。
『そうだったんですか?残念ながらその女性じゃありませんよ(笑)』って返したら山口はすぐに信じこんだ。
- Re: ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。 ( No.4 )
- 日時: 2014/10/12 20:37
- 名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)
その後も他愛のない話でDMを繰り返した。
にしても、山口って本当つまんない。
こっちから『会いたい』チックなこと仕掛けても微妙な反応ばっかり。
もう飽きてきた。
あたしはDMを放置して、爪切りをはじめた。
うわー、親指深爪しちゃった・・・。いたーい。
と、そのときDMの着信音が鳴った。
やば、待ちきれなくて二件目のDM送ってきた。気持ち悪。
携帯を開き、新しくきたDMを開くと、意外な結果だった。
DMは山口ではなかった。
差出人は『久住真』。読み仮名は『くずみ まこと』っぽい。
『こんばんは!久住って言います!
NODOKAさんの写真が可愛くてつい申請しちゃいました(笑)
良かったら絡みませんか?
突然ごめんなさいm(- -)m』
っていう内容だった。
これまた嫌な気はしないけど所詮は出会い系サイトに登録してるような男だし、冴えない人なんだろうな。
まあどうせ会うこともないし、DMくらいしてあげるか。
『こんばんは!ありがとうございます((照
いいですよ♪よろしくお願いします』
とりあえずこう返した。
あたしはそれだけ返すと山口にも適当に返信して爪切りを再開した。
テレビはニュース番組が流れていて、ストーカーについてのニュースだった。
『年々増加するストーカー行為ですが、これがまたエスカレートしてきてるみたいですよ』
『どういった風にですか?』
『たとえば、相手を付けねらうだけではなくて、相手の周りの人間にも危害を加えたり、相手を監禁したりと—————』
* * * * * * * * * * * * * * * *
あのあとの久住真とのやりとりはこう。
最初が久住さんで、あとがあたし。
『ありがとうございます!なんて呼べばいいですか?』
『のどかでいいですよ!』
『わかりました!僕のことは真でいいですよ♪』
『りょーかいですww』
『のどかさんは何歳ですか?』
『22です。真さんは?』
『僕は24です』
『先輩ですねwww』
『ですね(笑)じゃあため口でいいかな?←』
『いいですよw』
『ありがとう。のどかって呼ぼうかな?(笑)』
『じゃあ真君って呼びますねww』
『いいよ♪のどかもため口でいいよ』
『わかりましたww』
『っていうか苗字教えて♪』
『佐倉和だよ』
『可愛い名前だね♪』
『ありがとうww』
『何やってるの?仕事とか』
『建築系かな。真君は?』
『俺は一応カメラマンやってるよ。見習いだけど(笑)』
『そうなんだ、すごいね♪』
・・・・・・・・・・ってなやりとりが続いてもう一週間、やめるタイミングがなくなってしまっている。
一方、山口は相変わらず適当に返している。
「山口まだ会おうとか言ってこないの?」
翔太が言った。
「うん。あたしから仕掛けても何も反応してこない。本当つまんない」
あたしはそう言って微笑んだ。
「んーどうにか引っ掛けられねえかなー」
「難しいかもね。あたし飽きてきちゃった」
「そりゃ飽きるよな」
- Re: ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。 ( No.5 )
- 日時: 2014/10/13 13:09
- 名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)
* * * * * * * * * * * * *
その日の夜も、真君からDMは届いた。
『のどかー、暇??(笑)』っていう内容だった。
いつもと一緒。
まるで仲の良い友達や彼氏のように。
あたしはそれにいつも返信してしまうから1ヶ月以上もDMが続いている。
けど意外と楽しく返信している自分がいた。
だからこのDMを無視することはしていないんだと思う。
『暇だよww今仕事終わった!』
あたしはこう返した。
あー、いちいちDMの作成画面開くの面倒臭くなってきた。
そう思ってた矢先、真君からきたのはナイスタイミングな提案だった。
『そういえば和、LINEしてる?』
『してるよ!』
なにを言われるかぐらいわかってた。
『DM面倒臭いし、良かったらLINE教えてー(笑)』
出会い系サイトの人にLINE教えるのはちょっと抵抗があったけど、真君
なら別にいい気がしてきていた。
『いいよ!』
あたしはそう送ると自分のLINEのQRコードをスクリーンショットし、そ
れを真君にDMで送った。
そして数分後、知らない人物からLINEの追加が来た。
【久住真】ってそのままの名前。
『のどかー!真です。教えてくれてありがとう♪』
早速LINEがきた。
『いえいえー♪』
あたしがそう送ると、さすが既読無視で終わりだと思った。
でも彼は違った。
『あのさ、ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?』
なんだろう?
『なにー?』
あたしがそう送ると、数分後に返信がきた。
『電話しない?暇だったらでいいんだけどさ(笑)』
来たのはこの内容だった。
電話・・・。男と暇電なんて高校生以来だよ。
うまく話せる自信ないんだけど。
いや、暇だけどさ。
『今?』
時間稼ぎに、あたしはこう返した。
するとすぐに、『うん!いいの?』と返ってきた。
あたしは少し考えた後、電話してみてもいいかなと思った。
『いいよ!』
あたしがそう送ると、数分後にLINEの着信音が鳴った。
えっこんなに早く!?どうしよう?いいとは言ったけどやっぱり怖い。
あたしは深呼吸をしてから画面に表示された応答ボタンをタッチした。
すると着信音が止まり、向こうの雑音が耳に届く。
うわー、繋がっちゃったよ〜。
「もしもし?のどか?」
向こうから声がした。
低音だけど、どこか柔らかい声。
「・・・もしもし」
あたしも勇気を出して声を出してみた。
すると電話の向こうで真君はハハッと微笑み、「やっと声聞けた」と呟
いた。
少年のように無邪気な声質なのに、大人っぽい低音で、男らしい。
「そうだね」
あたしもそういって少し微笑んだ。
「のどか、声可愛いんだね」
画面の向こうからそういわれ、あたしは自分の胸の中に何か暖かいもの
が満ちていくのを感じた。
「そんなことないよ。真君、声低いんだね」
あたしはそう言って笑った。
「そう?俺声低いかな?」
真君も、電話の向こうで笑っている。
こんな雰囲気、まるで付き合いたてのカップルみたい。
会ったこともないのにどこかに安心感を覚える。
あたしは姿が見えるわけでもないのに、ついついあぐらを直して女の子
座りをする。
いつもテーブルの上においてるビールの缶は、今日はない。
話しながら、また姿が見えてるわけじゃないのに濡れた髪の毛を手ぐし
で直して、ゴムでとめた前髪を下ろして綺麗にとかす。
DMみたいに他愛のない話であっという間に時間は過ぎた。
話すのはDMなんかとは比べ物にならないくらい楽しかった。
学生のときのようなこの胸の痛みは、一体なんなんだろう?
- Re: ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。 ( No.6 )
- 日時: 2014/10/19 18:30
- 名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)
毎日電話して、常日ごろLINEする日々がまた1ヶ月ほど続いた頃、翔太が言ってきた。
「なあ、山口どーなった?」
あ、完全に忘れてた。
山口のDM、1ヶ月以上ずっと放置しっぱなしで何もしていない。
「あ、ごめん。山口にDM返すの忘れてて」
あたしはそういって苦笑した。
翔太は微笑みながらあたしの肩を軽く叩きながら「おい〜!」という。
「ごめんごめん。やったほうがいいかな?」
「んー、もう面倒いもんな」
翔太も苦笑した。
「うん。どーでもよくなってきちゃった」
「だよな。悪かったな。なんか無理矢理登録させちゃってさ。さっさと退会していいぜ」
「わかった。全然大丈夫。ちょっと楽しかったし」
あたしはそういって微笑んだ。
———嘘。ちょっと楽しかったんじゃない、すごく楽しい。
もちろん山口のことなんかじゃなく、真君に出会えたから。
後悔はしていない。むしろやって良かったと思ってる。
あたしはその日、会社が終わるとすぐに携帯を見た。
案の定、LINEがきててニコニコする。
『今日も電話していいかな?www』ってきてた。
もちろんいい。ていうかしたいって思ってるかも知れない。
『いいよ!帰ったら教えて』
あたしはそう返すと携帯をバッグにしまい、家に向かった。
**********************
家に帰ると、いつものように真君から電話がきた。
あたしはいつものようにスピーカーボタンをタッチしてから応答を押し
た。
いつもの真君の声が聞こえてくる。
「もしもし?」
そういわれ、あたしは躊躇なく「もしもーし」と答えた。
最初の緊張感なんて何もない。
けど、相変わらず見えてもないのに髪の毛は気にしちゃってる。
そして通話して1時間くらい経ったとき、一度話題がなくなった。
あたしは何を話そうかなと思っていると、「のどか」と声が聞こえた。
「なに?」とあたし。
「あのさ、俺のどかに会いたくなってきちゃった」
え?
そういわれ、あたしは少し言葉を失った。
「それって———」
あたしがそういうと、真君が言う。
「俺と会ってくれない?」
会っても、いいのかな?
出会い系サイトの男なんてロクな男じゃないよね。
でも真君に会いたいって思ってる自分がいる。
断りたくないって思ってる自分がいる。
実際に顔も見てみたい。
真君は顔写真をどこにも載せてないからどんな顔してるんだろう?
声からして、かっこよさそう。
でもかっこよかったらどうするの?
付き合うの?出会い系サイトで知り合った人と?
いやいや。
出会い方なんて関係ない?
でもやっぱり気にする。
でも、会いたい———。
「・・・・いいよ」
いつの間にか、答えていた。
あたしはこのとき、選択を間違えたのかも知れない———。