複雑・ファジー小説

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ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。
日時: 2016/06/09 23:38
名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)

はじめまして!!

ストーカーを題材に書きたいと思っています!
グロ描写・過激描写にご注意ください笑

コメントくれたら嬉しいです!

よろしくお願いします!



プロローグ >>1
#01【 或る夏のこと 】 3 → 26
#02【 狂気 】 27 →
#03【 服従 】



登場人物↓

*佐倉 和 さくら のどか
建築会社で働くごく普通の女性。
出会い系サイトに登録したことをキッカケに生活が変わっていって・・・。

*久住 真 くずみ まこと
カメラマンのアシスタント。
出会い系サイトで和と出会い・・・。

*深町翔太 ふかまち しょうた
和の同僚。
だんだん変わっていく和を心配するが・・・。

*大和飛鳥 やまと あすか
出版社の雑誌記者。
ある事件を追って和たちに近づく。

Re: ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。 ( No.12 )
日時: 2015/06/19 23:14
名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)

"気持ち"っていうのは、とても複雑なものなんだよね。

どれだけ愛しても必ず応えてくれるとは限らないし、伝えたいことをうまく言えなくて誤解されることもある。

僕のこの"気持ち”はね、誰にもわからない。

そもそも、理解して欲しいとも思っていないさ。

これは僕に限ったことじゃなくて、君にも言えることだと思うよ。

理解して欲しい相手なんてたった一人しかいないだろ?

でも理解してもらえないことだってたくさんあるよね。

というより、この世で理解してもらえることよりも、理解してもらえないものの方が圧倒的に多いと思うんだ。

人は人、自分は自分——なんてこと、わかってるんだ。

それでも僕は、僕の中に"自分"がない。

僕の中にもう一人の僕がいる。

頭で考えていることと、実際に行動していることは比例しないと思うんだ。

頭ではこうした方が幸せになれるってわかりきっているのに、心ではその逆のことを望み、人は心を優先する。

例えていうのなら、地位や名誉があって、世間から名声があがっている嫌いな人を頭で好きになり、心ではなにをしてもだめで、売れない役者なんかをしている人を好きになる、みたいなことかな。

頭が好きになるのは"権力"で、心で好きになるのは同じく相手の"心"そのものだ。

自分を支配するのは結局、人間性なんかではなく、生き抜いてゆくための賢さ。

誰もが自分のために他人を利用して生きている。








僕だって、そう。













好きな人ができて付き合うのも一緒で、結局は自分の欲求を満たすため。

好きな人と付き合いたいっていう欲求。

本能的に男が女に、女が男に求めているのはその人自身ではなく、自分を満たすための道具。









昔、僕は兄貴の彼女と恋愛関係になってしまったことがある。

兄が彼女を連れてきてから、何回か家に来るようになって、それから僕も彼女と仲良くなっていった。

兄と喧嘩したとき、彼女は僕を頼った。

それからは度々二人きりで会うことも少なくなかった。

もちろん、兄には内緒でね。

いつしか僕らはお互いに惹かれていった。

最初はハグからはじまり、ついにセックスをする仲にまでなってしまった。

これは浮気以外の何ものでもない。

しかも兄貴の彼女とだ。

けどそんな日々は長く続かなくて、そんな関係になってから半年くらいで兄貴にばれてしまったんだ。

もちろん兄貴は怒って僕を殴り、彼女と別れた。

それから兄は僕に冷たくなって、彼女も次第に僕との距離をあけていっていた。

あからさまに僕を嫌う兄はとても邪魔だった。





















兄がいなければ、彼女が僕を避けることもなかったはずなんだ。



兄がいなければ、彼女と僕は正式に付き合っていたかも知れないんだ。



兄がいなければ、僕が家に居づらくなることもなかったんだ。



兄がいなければ、兄がいなければ、兄がいなければ———。





僕はそう思いながら、無意識のうちに台所へ行き、ぎらぎらと鋭く光る刃物を手にしていたんだ。

Re: ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。 ( No.13 )
日時: 2015/06/21 16:34
名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)

ある日突然、彼女は僕と連絡をとることすらしなくなってしまった。

どうして?僕のこと好きだったんじゃないの?

あるとき、何気なく街を歩いているとき、彼女をみかけ、僕は彼女に話しかけた。

最初はとても避けていて、口も利こうとはしなかった。

だけど僕が問い詰めると次第に口を開いた。

色々話し合った挙句、友達にはなれないっていう結論に至った。

友達なんて、中途半端な結論にたどり着かなかったことに僕は安心したよ。

それで僕は言ったんだ。


「じゃあ恋人になってくれるよね?」って。


でも彼女は言ったんだ。「無理だよ」って。

意味がわからないだろう?

僕らは体を重ねた仲なんだよ?おかしいと思わない?

結局ね、男女に"友情"なんてものはないってよく言うけど、僕もその意見に同感なんだ。







"友達"って、一体どこまでが友達?








ハグをするのは、友達?キスをしちゃったら、何かが変わるって、みんなそう思うと思うんだ。

キスは、愛情表現。

でも実際、セフレとか、付き合っていない関係でも一線越える人間だっているよね。





結局"友達"ってなんなんだろうね。





男と女は、仲良いってことはそれだけ相手を認めてるってこと。

好きじゃなくても、キスしようと思えばできるんじゃない?

きっと、どちらかがキスをしたら相手は少なからず相手を異性としての意識を持つんじゃないかな。

どちらかは少しくらい相手を異性として見ているんじゃないかな。

どちらかが好きになってしまったら、友達としての関係は終わり。

男女の関係になっちゃうんだよ。

仲良くしていて、好きにならないわけがないと思うんだ。

男女の親友って、本当は存在しないと思うんだ。

いつ変な雰囲気になってもおかしくないってこと。

相手を信用しているから?いや、そんなものは虚言だよ。

男はいつだって、そこそこ可愛ければ仲良い女を"女"として見てる。

友達でいたいから壊さないだけで、女よりもずっと力が強い。

襲おうと思えばいつでも襲える。

襲わないのは、友達なんだって言う理性がどこかにあるから。

女はいつだって、仲良い男を"男"として見てる。

男と女の違いは、見た目にどれくらいとらわれているかってこと。

男が求める女は理想が高いけど、女が求める男は結局中身。

ちょっかいかけたりして、構われたら簡単に好きになる。

大事なことだからもう一回言うよ。

男と女に"友情"なんてものは存在しない。

人が人を好きになることなんて理屈じゃない。

本当はものすごく簡単なことなんだよ。

Re: ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。 ( No.14 )
日時: 2015/06/29 19:50
名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)

真君と付き合って1か月が過ぎた時のことだった。

この頃、あたしと真君はもう既に何度かデートを重ねていた。

この日も、デートの日だった。


「仕事最近どう?」


カフェであたしが聞いた。


「まあ、順調って言ったら嘘になるのかな。アシストタント止まりのまま」


真君はそう言って苦笑した。

あたしはコーヒーを一口飲み、真剣に言う。


「アシスタントでも頑張ってるじゃない」


「頑張っても結果がついてこなきゃ意味ないよ」


「そんなことないよ。無意味なことなんて何もないし」


「だと良いけどね」


真君はそう言って苦笑した。


「和は?どう?」


真君は話題をあたしに変えた。


「あたしは、特に何も変わらない日々」


「俺のこと、誰かに話した?」


「へっ」


「話してないの?どうして?」


その瞬間、真君がまるで別人のように見えた。

なぜかはわからない。

なんだか突然、知らない誰かと話しているかのように思えた。

あたしは一瞬何かに刺されたように胸が痛くなった。


「いや、特にその・・・そういう話題にならなくて」


あたしは頭の中で必死に正解を探した。


「俺のこと、話したくないの?」


真君の目に光はなかった。

強く責めるように、大きな瞳はあたしを映し出す。

あたしはつい、言葉が出なくなってしまった。


「どうしたの?なあ」


真君はそういってあたしの腕を揺すった。

なぜだろう?口が動かない。

なぜだか、彼を怖いと思ってしまった。


「そんなこと、ないよ」


あたしは必死に堅い口を開き、言葉を発した。


「照れちゃって・・・話せなかったの。友達に」


あたしがそう言うと、数秒の沈黙のあとに真君はふふっと微笑んだ。


「そっか、かわいいな」


笑顔を見るなり、あたしは同時に安堵の表情を浮かべた。

呼吸は荒く、いつの間にかたくさん走ったみたいに苦しくなっていた。

今の恐怖感はなんだったのだかは、わからない。


「うん・・・ごめんね」


あたしはそういって微笑んだ。

その微笑はいつもの微笑みなんかじゃなくて、ただの作り笑顔だった。


















このときに気づいていたら、あたしの運命は変わっていたのかも知れない。

Re: ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。 ( No.15 )
日時: 2015/07/06 23:48
名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)

その翌日のことだった。翔太があたしを見るなり楽しそうに近寄ってきた。


「和!今日空いてるか?」


翔太にそういわれ、あたしは「ちょっと待って」と言って手帳を出し、今日を日付の欄を見た。

そこには何も書かれておらず、真っ白だった。

あたしは真っ白なページを翔太に見せて「空いてるよ」と言った。


「なんで?」


あたしはそう言いながら手帳をしまう。

この間ついムキになって怒ってしまい、それ以来翔太と話していなかったため、少し怖かった。

しかし、翔太はニコニコしながら言った。


「給料入ったし、飯でもどうかなって思ってさ」


「おっ、翔太の奢り?」


あたしは微笑みながら言った。


翔太は「仕方ねえな」と笑ってみせた。

「やった、焼肉がいいなー」

あたしはいつものようにそう言って笑った。

翔太は「おう、じゃあ仕事終わり連絡して」と言って廊下を歩いて言った。

翔太は勝手にキレてしまったあたしを怒っていないようで、本当に安心した。

きっと、気まずいのが嫌で誘ってくれたんだと思う。







その日の夜、あたしは会社の前で翔太と会いそのまま焼肉屋へと移動した。

歩いている最中、あたしは口を開いた。


「あのさ」


あたしがそう言うと、翔太は立ち止まったあたしを見た。


「ん?」


そういわれ、あたしは翔太の隣まで歩み寄った。


「このあいだは、本当にごめん!」


あたしはそう言って翔太に頭を下げた。


「えっ、なんだよ急に」


翔太は驚いた表情であたしを見た。

あたしは顔を上げて言う。


「屋上で、勝手に怒っちゃって・・・」


あたしがもぞもぞというと、翔太は微笑んだ。


「なんだ、そんなことかよ。気にしてねーから心配すんな」


翔太はそういってあたしの頭をポンポンと軽く叩いた。


「本当に?でも、あたし勝手に・・・」


あたしは俯いて言う。

翔太は、また笑いながら言った。


「お前な、俺を誰だと思ってんだよ?生きてきたなかで俺、お前に何回キレられてると思ってんだよ。今更どうってこともねえよ」


「翔太・・・」


「どんだけキレるやつでも、好きだから付き合ってたし、今関係は変わったけど嫌いになんてならねーし、むしろ好きだから親友なんだろ?俺のこともっと信じろよ」


翔太はそういってあたしを見た。

翔太はいつもこうだ。

あたしが理不尽なこと言っても、どんなことをしても、いつもこうやって笑って許してくれた。

間違った道に進めば本気で怒り、笑顔で迎えてくれる。

あたしはそんな翔太が大好きだった。

いや、「だった」なんて、嘘かも知れない。

あたしは翔太のことが今でも大好きだ。

恋愛感情ではないけれど、そんなものよりもずっと確実で暖かい何か。

翔太とは何があっても縁を切りたくない。

あたしは確実にそう思っているし、大事に思っている。


「ありがと」


あたしはそう言って微笑んだ。

翔太も笑顔であたしを見ると、「あー腹減った、はやく行こうぜ」と言って歩き出した。

あたしも歩き出し、小走りで翔太の隣まで行った。

Re: ス ト ー カ ー の 恐 怖 を 。 ( No.16 )
日時: 2015/07/08 16:55
名前: 美咲 (ID: cdCu00PP)

店につくなり、あたしは肉を焼きながら唐突な質問をぶつけた。


「翔太は彼女とか作らないの?」


そう言うと、翔太は「なんだよ急に」と言った。


「いや気になってさ。あたしと別れて二年も経ったわけだし、そろそろできてもおかしくないでしょ?」


「そうかもしれねーな」


翔太はそういって一口食べた。


「好きな人とか、いないの?」


あたしがそういい、翔太は「いねえな」と微笑んだ。


「いいなって思える人がいねえ」


「でもあんた、意外とモテるでしょ?その気になればちゃっちゃと作れるでしょ」


「作ろうと思って作るもんじゃねえよ。付き合いたいって思わなきゃ付き合いたくないしな」


「そんなこだわってたら一生彼女できないわよ」


「うるせーよ。俺は一人でもいいんだ」


「何言ってんの、もてるくせに。こないだも告白されたって噂聞いたけど」


「あぁ、エミだろ?あいつはただの後輩」


ちなみに、エミっていうのはあたしたちの課の新人社員。

噂聞いたって言ったけど実はエミちゃんから直接聞いた。


「断ったの?」


あたしはホルモンを焼きながら言った。


「当たり前じゃん」と翔太。


「へええ、そんな余裕こいてる場合なの?おばさん、はやく孫見たいって言ってたじゃない」


あたしは笑いながらそう言った。

翔太のお母さんは翔太とあたしが付き合ってたときから孫が欲しいってずっと言っていた。

あたしはその期待を裏切ってしまったけれど、今でも翔太のお母さんとは仲良くさせてもらっている。


「知るか、相手は俺が好きにならなきゃ無理だな」


「どういうのが好きなのよ」


あたしはそういって網の上で焼けたホルモンを皿に取る。


「可愛い子〜」


「は?贅沢言わないの」


「だよな」


なんて会話をしているうちに、時間は経った。

気づけば、もう二十二時を過ぎていた。

あたしはつい飲みすぎちゃって、眠くなってきた。


「眠くなってきちゃった」


あたしがそう言うと、翔太は「は?」と言って横たわるあたしを起き上げる。


「そろそろ帰るぞ。ほら」


翔太はそう言って無理矢理あたしを立たせ、あたしは翔太の首に腕をまわしてレジへ。

翔太はお金を払い、外に出ると「大丈夫か?」と言ってあたしを見る。

大丈夫じゃない。

飲みすぎて気持ち悪いし、視界はぼやける。


「むりー」


あたしはそう言ってウトウトする。

翔太は舌打ちをして「しょうがねーなー」と呟きあたしの腕をふりほどくとしゃがみこんだ。

瞬間、あたしは急に意識が戻ってきた。


「家まで送ってやるから」


翔太はそういってあたしを背中に乗せて立ち上がった。


「待って、いいよ。重いし遠いもん」


「いいって。そんなんで事故にでも遭ったらたまったもんじゃねぇだろ」


翔太はそう言いながら歩き出す。

正直歩きたくないし、このまま眠りたい。

でもさすがに悪い気はする。


「いいよ、帰れるから」

あたしはそういって降りようとするけど、「いいから暴れんな」と言って翔太はあたしをおぶったまま歩き続ける。

あたしは動きたくなくて、「・・・・ありがとう」と言って力を抜いた。

その時、カバンの中でたくさんの通知が鳴っているとも知らずに———。


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