複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 愛と正義の交響曲(元わかりあうための闘い)
- 日時: 2014/10/03 21:08
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
第3話から、スクランブルエッグに改名しました(笑)
タイトルは狐さんのアイディアを参考にしました!
来てくださったお客様
Orfevre様 時計屋様
かぼちゃ様 さおりん様
腐葉土様 花梨様
夕陽様 みにょ様
狐様 もふもふ様
主要登場人物紹介>>43 サブキャラ紹介>>46
プロローグ>>12
第1話>>13 第10話>>22 第19話>>33
第2話>>14 第11話>>23 第20話>>44
第3話>>15 第12話>>24 第21話>>45
第4話>>16 第13話>>25 第22話>>47
第5話>>17 第14話>>26 第23話>>48
第6話>>18 第15話>>29 第24話>>51
第7話>>19 第16話>>30
第8話>>20 第17話>>31
第9話>>21 第18話>>32
- Re: 太陽天使隊 ( No.21 )
- 日時: 2014/09/23 21:10
- 名前: スクランブルエッグ (ID: EhAHi04g)
スターside
「これは面白い試合になりそうだね」
私は本選出場者の一覧を眺めながら、隣に座っている、私専属の少年執事であるランス=アームストロングくん—通称ラグくんに声をかけた。
彼は茶色のツヤのあるオールバックに少女漫画の登場人物がよくしていそうな大きな翡翠色の瞳に、色白の肌で、黒いベスト姿がよく似合う、可愛らしい少年執事だ。
彼はにこやかな微笑みを浮かべ、口を開く。
「おっしゃる通りですね、ご主人様。でも、失礼ながら、もう試合は始まっているのですが…」
彼の発言に、私はピョンと椅子から飛び上がり、会長室を出てみる。
すると彼の言ったように試合は始まっており、既に3試合も終了してしまっていた。
「ああ、何という事だ!誉れ高き卒業生である、フレンチくんの試合を見逃してしまうとは!」
「ご安心ください、ご主人様。フレンチ様の試合は決着がついてしまいましたが、幸いな事に後5試合も試合が残っております。今から特等席でご一緒に観に行きましょう」
彼は優しく私の手を引っ張って、特等席に案内し、私の左隣に座った。
ふと、右隣を見てみると、テンガロンハットに金髪碧眼、西部開拓時代の保安官の恰好をした私の弟子であり、運営委員のひとりである、ロディくんが足を組んで座っていた。
彼は隣にいる私に気がつくと、帽子のつばを上げて軽く挨拶をした。
しかし、いつもは試合の観戦なんかしたがらない彼が、どうして試合を観戦する気になったんだろうか。疑問に思ったので訊ねて見ると、こんな答えが返ってきた。
「次の試合は俺がひいきしている、ナーニャちゃんの試合なんだぜ、会長!これを見ずにいられるかよ!イーハー!」
相変わらずのハイテンションで、彼はそう言った。
彼は、我がスターレスリングジムの中でも屈指のアホの子である。
単純かつ直情的で猪突猛進、それでいて友情に人一倍熱い男なのだが、警察の犯人逮捕に協力して、暴走車を愛馬で追いかけまわし、街中を大混乱にさせると言う悪い癖がある。
前回も彼の暴走追跡のおかげで、犯人は無事逮捕できたそうだが、その度に街の住民に迷惑がかかるため、もう少し暴走は控えて欲しいのだが、彼は一向にやめる気配がない。
どうしたら彼の暴走癖は収まるのだろうか。
そんな事を考えていると、彼のひいきすると言うナーニャちゃんと言う女の子がステージに上がった。
彼が最終予選を担当した子が、どれほどの実力をもっているのか、実に楽しみだ。
- Re: 太陽天使隊 ( No.22 )
- 日時: 2014/09/23 21:05
- 名前: スクランブルエッグ (ID: EhAHi04g)
ナーニャside
僕は、勝利を信じてリングへあがる(ちなみに一人称は僕だけど、実は女だ)。
1万人を超える大観衆。割れるような声援。特等席には、ズラリと運営委員の人たちが並んで座っている。
そんな僕の対戦相手は、黒髪で少しボサボサした短髪に少し大きく黒い釣り目で、服装は灰緑色で記事の薄いジャンバーにベージュの長ズボン。靴は白を基調としたスニーカーを着て皮手袋をはめた男性、安瀬須澄さん。
彼には申し訳ないけれど、僕にはどうしても勝たなければならない、理由がある。
それは決して、賞金が欲しいからじゃない。
狙っているのは、なんでも願いを叶えてもらえるという、あり得ないほど最高の景品。
別に僕は、その権利でお金持ちになりたいとか、世界征服をしたいとかそう言ったことには一切興味がない。僕の願いはただひとつ—
自分の心の中に潜む、もうひとつの人格、零を消してもらう事。
幼いころから虐められていた僕は、虐められないようにと、自分の心の中で凶暴なもうひとつの人格である、零を作り出した。ひとつの体にふたつの性格。
初めはそれでもうまく行っていたのだけれど、いつごろからか急に零の力が強くなって、僕の意志とは関係なく、表に出てしまうようになっていた。
そのせいで、色々と問題を起こし続けて、大切な家族や友達に迷惑をかけてしまっているため、僕は零を追い出して元に戻る事を決意した。
必ず、この試合に勝って、願いを叶えてもらえる道に一歩前進して見せる!
☆
「ナーニャ、お前弱いな」
彼は倒れている僕を、これでもかとばかりに踏みつける。全身に走る激痛で立ちあがることさえ叶わない。
試合序盤、僕は優勢に敵を攻めていた。
毒を塗ったナイフを振り回し、敵をけん制していたのだが、突如彼の動きが、静から動へと変化した。
僕のナイフ攻撃を、まるで行動を先読みしているかのように、軽々と避けていき、腹に蹴りを浴びせた。
その威力でナイフを手から落としてしまい、それからは防戦一方だった。
もし、このまま負けてしまったらどうなるんだろう?
ふと、そんな思いが頭の中をよぎる。
また、僕は零の言いなりになって、体を乗っ取られて、みんなに迷惑をかけるの?
そんなの、嫌だよ…
自然と溢れ出る涙が頬を伝い、大理石の床を濡らす。
ここで負けたら、零の支配から逃れられられるチャンスを永久に失う事になる。
それだけは、絶対に嫌っ。
その時、特等席の方から、大声で僕の名を呼ぶ声がした。ハッとして顔を上げると、ロディさんが口に手を当てて、大声で僕の名を呼んでいた。
「ナーニャちゃん、あんたならぜってぇ勝てるぜ!」
「どうして…そう、思うの…?」
途切れ途切れになりながらも、僕は彼に訊ねる。
すると彼は「イーハー!」と口癖を言って、
「根拠なんざ何もねぇ!けど、俺には分かるんだ。この試合、あんたが勝つって事がな!」
根拠のない自信。そんなものは持たない方がいいと言う人もいる。
けれど今の僕にとって、彼の根拠のない自信ほど、勇気と闘志を再び奮起させるものはなかった。
その言葉によって、闘志を取り戻した僕はストンピングを続ける敵の足を掴み、彼を押し倒すと、素早く間合いを取って、能力を発動しようと身構える。
「お前はどんな能力の持ち主なんだよ」
「今から見せてあげるわ」
僕は虚空からカードを出現させて、敵に向かって投げつける。
「これは、上条雄介の能力じゃないか!」
彼は目を見開き、驚愕の表情で僕を見つめる。
「僕は他人の能力を、最大3つまで自由に使用する事ができるの」
そして更に非檻さんの人の動きを制限させる眼を発動し、彼が動けなくなったところをハウ後に回って、バックドロップで大理石の床に叩き付けて、気絶させた。
「ロディさん、ありがとう!あなたのお蔭で勝利する事ができました!」
彼に向って大声で喜びの声をあげると、彼はフッと少しカッコいい笑みを浮かべ、その場から去って行った。
- Re: 太陽天使隊 ( No.23 )
- 日時: 2014/09/23 21:13
- 名前: スクランブルエッグ (ID: EhAHi04g)
安瀬side
午前の全試合が終わり、残りの試合は2時間の食事時間を取った後に行われるらしい。
けれど、俺にとってはそんな事はどうでもよかった。
なぜなら、俺は先ほどの試合で負けたのだから。
ため息をつき、スタジアムを出てトボトボ歩いていると、背後から聞きなれた声がした。
「安瀬さん、お久しぶりですね」
振り向くとそこにいたのは、腰まであるサラサラの金髪に碧眼、茶色のチェック柄のインバネスコートと白手袋に探偵帽が特徴の俺の親友である、ヨハネス=シュークリームがいた。
彼は「歩く性別詐欺」と揶揄されるほど整った顔立ちをしている。
もし、彼に喉仏がなかったら、誰がどう見ても美少女に間違えてしまうだろう。
現に、何度も顔を合わせている俺でさえも、彼が女に見える時があるのだから。
「ヨハネスか…どうしてお前、こんなところにいるんだ。事件でも起きたのか?」
彼は故郷ドイツで14歳という若さながら、探偵として活躍しており、その実力はドイツ№1と言われるほどに高い。そんな彼がこの島にやって来たのだから、何か事件があっての事だろうと考えた。すると彼はニコッと可愛らしい笑みを浮かべ、
「そのお話は、そこの喫茶店でご飯でも食べながら、お話しましょう」
☆
彼の勧める喫茶店に入ると、そこは観光客が沢山いる事もあってか、かなり繁盛しているようだった。
高い吹き抜けの屋根には、オレンジ色の電灯がぶらさがっており、それが優しい落ち着きを演出している。
景色のよく見える窓側の席に座った俺たちは、メニューを注文した後、先ほどの話の続きをする。
「どうしてこの島に来たんだよ」
「この大会に、どうしても倒さなければならない敵が参加する事になりましたからね」
彼の言う、どうしても倒したい敵とは一体誰の事だろうか。
「安瀬さんも、よくご存じのフレンチ=トーストです」
彼が真剣な顔で言った。実は彼は探偵である前に、スターレスリングジムの卒業生だ。
スターレスリングジムは世界屈指の超強豪能力者が集まる団体で、世界中から弟子として相応しい人間をスカウトし、能力者の育成に力を注いでいる。
けれど、そこを卒業できたのは、彼を含めてわずか3人しかいない。
それはつまり、彼がその愛くるしい容姿とは裏腹に、とんでもない強さを秘めていると言う意味を持つわけだが、この大会の本選出場者のひとりである、フレンチ=トーストは彼と同等か、それ以上の強さを秘めていると言う。
「でも、どうしてあいつを倒したいんだ。同じジムを卒業した仲間だろ」
「……そう言えるといいのですが……」
彼は視線に影を落とし、少し低い声で言った。
どうやら、彼には俺の知らない秘密があるらしかった。
「仲間じゃないのかよ?」
「フレンチくんと、もうひとりの卒業生である軽井沢隼人くんは、僕と理想の違いで対立しているんです」
彼の話をもう少し詳しく聞くと、さすがの俺も仰天する事実を知る事になってしまった。
なんと、スターレスリングジムのメンバーの大半は人間ではなく、太古の昔に地球に飛来した、惑星エデン出身の宇宙人だと言うのだ。
始めこそ、俺も親友とは言え、さすがに奴の話を信じる事は出来なかったが、奴は冗談を言っているとは思えないほど真剣な瞳で俺に話している。
その様子を見ていると、コイツが冗談を言っているようには思えなかった。
「それで、理想の違いってのは何なんだよ」
「彼らふたりは、僕とは違い、自分たちを世界を束ねるに相応しい超エリートと確信していて、自分たちより劣ると見ている能力者を全て殲滅…つまり、皆殺しにしようとしているんです」
「マジかよ…」
あまりにも危険な思想のため、言葉が出なかった。
お互い長い沈黙が続いたのち、先に言葉を発したのは、俺の方だった。
「でも、たった2人だけなんだろ。だったら運営委員だけで倒せるんじゃねぇか?」
「それがそうもいかないんです。彼ら2人は本当に強くて運営委員と互角に闘えるほどの強さを持っていますし、彼らは運営委員の何人かに軽いマインドコントロールをかけて、自分たちの味方に加えていますからね」
そこで彼は一息ついて、
「そして、その味方で判明しているのが、不動さんとジャドウさんなんです」
- Re: 太陽天使隊 ( No.24 )
- 日時: 2014/09/23 21:31
- 名前: スクランブルエッグ (ID: EhAHi04g)
フレンチside
食事時間になりましたので、僕は近くのレストランに行って、お昼ご飯を食べる事にしました。
大好物のチキンの照り焼きを注文して食べていますと、よく知った顔のお客さんが入ってきました。
白いオールバックの髪にオリーブ色の瞳、白い軍服が特徴の運営委員のひとりである、ジャドウさんです。
彼は僕の座っている席の前の席に腰かけますと、昼だというにも関わらず、赤ワインを注文しました。
そして僕の顔を見て、いつものように含み笑いを浮かべ、渋い声で言いましす。
「フレンチよ。ベスト8進出、おめでとう」
「それは、ありがとうございます。あなたに褒められた事なんて、今が初めてかもしれません」
「だろうな、フレンチよ。俺がお前を褒めた事は一度もなかった。と言う事は、賢いお前なら、俺が何を考えているか分かるはずだが…」
「何が言いたいんですか?」
「フフフフ、スターレスリングジムの卒業生だったお前に、ひとつだけ忠告しておこう。お前のくだらん悪巧みなど、俺には筒抜けであると言う事をな…フフフフ……」
彼はワインを一気に飲み干すと、1万円札をカード投げの要領でレジに投げ飛ばし、瞬く間に霧となって僕の前から姿を消してしまいました。彼の一連の動きを見て、僕は冷や汗を流します。
確かに彼には、僕の得物であるフルートで、軽いマインドコントロールをかけていたはずなのに……
さすがはジャドウさん、どうやらマインドコントロールにかかったふりをしていたようです。この事実に、僕は腕組をして少し思案します。
ジャドウさんをマインドコントロールできないとすると、作戦Aは失敗ですね。
そう判断した僕は、早速作戦Bを実行に移すべく、とある場所に電話をかけました。
☆
カイザーside
私は会長の娘であるハニーと一緒に、公園のベンチに座っていた。
青い空に白い雲、晴れ晴れとした天気ではあるが、私の心は悲しかった。
私は本大会で、地球の未来、人類のために、嘗ての仲間を葬りさらねばならない。
それが、私にとっては何よりも辛い事だ。
けれど、背に腹は代えられない。
地球の人類を守るためには、やはり、実力行使するしか方法がないのだろうか。
もし、彼と話し合う事が出来たら、幾らかは心を動かせる可能性もあるかもしれないと言うものを…
なぜ、きみはここまで心を捻じ曲げて、悪の道に走ってしまったというのだ、フレンチくん。
私には、それがどうしてもわからなかった。
あれほど親切で素直で心優しかったあの子が、どうして、あれほどまでに、冷酷になる事ができるのだろう。敵の攻撃を受け続け、顔を一点集中した攻撃と最後のパロスペシャルで相手の四肢を完全に破壊する残酷さ…
一体何が彼を4年の間に変えてしまったのだろうか。
フレンチ=トースト、彼の野望を打ち砕くためにも、なんとしてでも、第1回戦を突破しなければ……
「兄さん、そろそろ行こう」
ハニーが私の手を引いて促すので、ベンチから立ちあがり、ヨハネスくんたちが来ているであろう喫茶店へと足を進めた。
- Re: 能力者物語 ( No.25 )
- 日時: 2014/09/23 21:20
- 名前: スクランブルエッグ (ID: EhAHi04g)
廉道side
2時間の食事時間は終わり、午後の試合は幕を開けた。
その第1戦目は僕の試合だ。
既にステージには僕の対戦相手である、日向葵さんが上がって待っていた。
彼女は長い金髪に碧眼という、どこからどう見ても僕と同じ日本人には見えない風貌をしている。もしかするとハーフなのだろうか。そんなことを考えていると、彼女が言った。
「私はこんな容姿をしていますが、日本人ですよ。あなたが私の対戦相手である、廉道さんですね。日向葵と申します。お手柔らかにお願いしますね」
なんだか、彼女は今まで見てきたここの出場者とは違い、礼儀正しく好印象を受けた。
彼女が自己紹介をしたので、僕も同じように返す。
「僕は廉道。僕みたいなおっさんが君の対戦相手でいいのかなあ」
「いえいえ、お気になさらないでください。あなたみたいなベテランの能力者と闘えて光栄ですわ」
「それは僕としてもうれしいなあ、あっ、言い忘れていたけど、僕はこの大会の医療班をやっているんだ。この試合が終わったらきみの手当てもしてあげるよ。お互い正々堂々全力で闘おうね」
「はいっ!」
試合開始のゴングが鳴り響き、僕たちの試合が始まった。
☆
葵side
私がこの大会に参加した理由。それは、賞金が欲しいわけでも、願いを叶えてもらいたいわけでもありません。
そもそもお金なら我が家にうなるほどありますし、叶えてほしい願いなんてないのです。
大会に参加した理由、それはただ自分の力が、どれほど世界の強豪相手に通用するかという実力試しで参加しただけにすぎないのです。
ですが、ここでまできたら、あとはどんな相手に対しても全力を振り絞って悔いを残さないように闘うだけです。
「ハッ!」
試合開始のゴングが鳴るや否や、早速彼に蹴りを放ち
ますが、彼は熟練した動きで、繰り出す蹴りを次々に避けていきます。
「うん。いい動きだね。スピードもあるし、キレもある。素晴らしいよ」
「驚くのは、まだ早いですわ」
彼の腰のあたりを掴み、ジャーマンスープレックスで放り投げ、すかさずフォールを奪いにいきます。
ですが、彼はカウント2でわたしを押しのけ立ち上がると、ボクシングの構えを取りました。
「僕は医者だけど、これでも格闘の腕には自信があるんだ。君は蹴りは得意かもしれないけど、打撃はどうかな?」
「もちろん、大得意ですわ!」
彼のパンチに合わせて片方の手で攻撃を弾き、余ったほうの手でジャブを繰り出します。
けれど、リーチが短いためなかなかヒットしません。
「キックもいいけど、パンチもなかなかいいね。僕みたいな大人でなかったら、きっと君は武術大会とか格闘大会で優勝してもおかしくない腕だよ。でも…ここで勝ち残るのは難しいかもしれないね」
「えっ?」
彼は素早く足払いをかけて転倒させますと、微笑み、
「足がお留守になっているよ。腕と足を交互に使ってバランスよく攻撃することが大切なんだ」
私は、彼のアドバイス通りに手足を交互に使って攻撃を開始します。
「君は物覚えがいいね。もうはや僕の動きについてきているじゃないか。きみはこれからもっと成長するよ」
パンチとキックを、上半身をくねらせながら、必要最小限度の動きだけで避けていく廉道さん。
さすがに熟練の能力者は強さが違います。
「僕はもうおっさんだからね。本当はお兄さんって呼ばれたいけど…だから僕は無駄な動きは一切しない。必要最小限度の動きで体力の消耗を押さえるようにしているんだ」
彼は朗らかな笑みを浮かべると、手刀をお見舞いしてきました。
それを避けると、今度は裏拳が飛んできます。
「四方八方、360度どこからでも攻撃できるように、常に神経を張り巡らしていなければいけないよ。こうすることで、敵が攻撃をしてきても瞬時に対応できるからね」
彼はわたしのローリングソパットを受けとめ、そこから逆エビ固めをかけます。
「この技は逆エビ固めと言ってね、どんな変わり身の上手いレスラーも決して逃れられない技だよ。背骨が折れないうちに、ギブアップしたほうがいいと僕は思うな」
彼はお話をしながらもすごい力で背骨を攻めていきます。ですが、そう簡単にギブアップするわけにはいきません。すぐさま能力を発動させ、脱出不可能である逆エビ固めを脱出します。
私の能力は5分間と言う一定時間ながら、敵の攻撃を全て無効化する事ができる、まさに無敵の能力なのです。
対する彼の能力は、本人の話によると傷口から細胞を死滅させて激痛を引き起こさせたり、細胞の活動を活性化させて傷を治したり、自分の体を再生させたりできる能力だそうです。
ですが、私は彼からこの話を聞いた時、彼の能力の弱点が分かってしまいました。
それは—
「たとえ体の傷を再生できたとしても、体力までは再生できません!」
「…!」
私はフルパワーで、彼を大理石の床にパイルドライバーで串刺しにして、勝利を収めました。
試合後、彼は立ちあがって、握手を求めました。
「楽しい試合をありがとう。またいつか、きみと対戦できるといいな」
「はいっ!」
廉道先生の手は、優しく、そして温かいものでした。
彼の分まで闘って見せると約束して、私はステージを降りました。